視覚過敏とは?原因や症状、困りごとへの12の対策を専門家が解説
聴覚、視覚、触覚、嗅覚などの感覚が過剰に敏感な「感覚過敏」。今回はこの「感覚過敏」の中でも、なかなか気付かれにくい「視覚過敏」の原因や困りごと、対策などについて詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
視覚過敏とは何か?
視覚過敏とは感覚過敏の一つで、目から入ってくる光や色などの刺激に過剰に反応してしまい、不快感や不安感を覚える状態のことをさします。1980年代にカリフォルニアの学校心理士ヘレン・アーレンが明らかにし、「光の感受性障害」や「アーレンシンドローム」「アーレン症候群」とも呼ばれます。
日常生活においては、「目からの情報」がとても多いので、視覚過敏のある人はさまざまな困りを抱えていると考えられますが、原因やメカニズムがはっきり分かっておらず、有効な治療は今のところないのが現状です。
なお視覚過敏以外の感覚過敏には、「聴覚過敏」「触覚過敏」「味覚過敏」「嗅覚過敏」があります。
<感覚過敏について詳しい記事はこちら>
子どもの感覚過敏をセルフチェック、特徴や正しい対応を知って親も子も生きやすく
視覚過敏の症状(セルフチェック項目)とは?
では、視覚過敏の人はどのような症状を抱えているのでしょうか。ここからは、視覚過敏の症状が出やすい「光・明るさ」と「目から入る情報量の多さ」の2つに分けて、その症状を詳しく説明していきますので、ご自身や「うちの子そうかも…」と思う人は、セルフチェックしてみてください。
光や明るさに対する過敏反応
・太陽の光や蛍光灯がまぶしすぎて目を開けていられない、正面を見ていられない
太陽の光がまぶしすぎて不快になったり、目が開けられなかったりすることがあります。子どもであれば、学校生活の中で外で行われる体育や全校朝会などで、困りを抱えている可能性も考えられます。また、部屋の中の蛍光灯がチカチカして不快に感じる人もいるようです。
・パソコンやタブレットの画面が明るすぎると感じてしまう
パソコンやタブレットなどの画面が明るすぎると感じてしまい、学習や仕事に影響が出 てしまう場合があります。
・白い紙だとまぶしく感じてしまい、目が開けられない
原稿用紙やノートが白い紙の場合、目を開けていられなかったり、注視できなかったり することがあります。そのため、紙やノートに書いてある文字を読んだり、書き込んだりするのが難しく、さまざまな場面で困りを抱える場合もあるようです。人によっては、文字が歪んで見えることもあれば、重なって見える症状もあります。
目から入る情報量の多さからくる過敏反応
・商業施設や遊園地など、人混みや物の多い場所に行くと頭痛や吐き気などの身体症状が出る
人混みや物の多い場所は、目から入る情報量が多いため、身体症状が出てしまいやすいもの。ただ何度も行くことで見通しがもてるようになるため、慣れることもあるようです。しかし新しく慣れない場所に出ると、また一度に多くの情報が目に入ってきてしまうため、頭痛や吐き気などの症状が出てしまうことがあります。
・集中して目を使うと頭痛や吐き気などの身体症状が出る
長時間のテレビや動画視聴、パソコン作業、読書により、頭痛や吐き気などが起こることがあります。いわば過集中のような状態になるため、このような症状が出てしまうと考えられます。
視覚過敏の原因とは?
では、視覚過敏の原因は何なのでしょうか。考えられる原因を5つ挙げていきます。
視覚過敏の原因①:目の疾患
角膜炎や緑内障、白内障などの目の疾患によって視覚過敏になることがあります。目の疾患が疑われる場合は、眼科を受診してみるとよいかもしれません。
視覚過敏の原因②:脳機能の障害
発達障害は、先天的な脳機能の障害が原因の一つと考えられています。アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5では、発達障害の一つである、自閉スペクトラム症の特性の一つとして、視覚過敏など感覚への過敏性が記載されています。
ただし、視覚過敏があるからといって発達障害があるとは言えません。もしも発達が気になる場合は、専門機関に相談してみることをおすすめします。
視覚過敏の原因③:脳の疾患
てんかんは脳の慢性疾患です。発作時に脳の機能が乱れ、視覚過敏の症状を引き起こすと考えられています。
視覚過敏の原因④:片頭痛
片頭痛をもつ人は、頭痛を感じているときに太陽や室内照明などの光を過敏に感じたり、光が誘因となって頭痛発作を起こしたりすることがあるようです。
視覚過敏の原因⑤:ストレスや不安、緊張
ストレスや不安、緊張が強いときは、身体の感覚も過敏になるため、感覚処理にも影響を与え、視覚過敏の症状を引き起こしてしまうことも考えられます。
ここまで、視覚過敏の原因と考えられるものをお話してきましたが、視覚過敏を含め感覚過敏の原因は、はっきりと分かっていない部分もあるため、全てがこれらの原因に当てはまるとは限りません。
視覚過敏の子どもが日常生活や学習面で抱える困りごととは?
では、視覚過敏の子どもが、日常生活や学習場面で抱えやすい困りごとには、どのようなものがあるのでしょうか。「光や明るさに対する過敏反応」、「目から入る情報量の多さからくる過敏反応」に分けて説明していきます。
「光や明るさに対する過敏反応」による困りごととは?
①太陽や蛍光灯が明るすぎて不快感を覚えたり、体調が悪くなったりしてしまう
光の刺激に強く反応するので、外で行われる授業などで辛い思いをしてしまいます。また、教室の窓際や照明の真下では光がまぶしくて学習に集中できないことも考えられます。
②パソコンやタブレットの画面が明る過ぎて学習に集中できない
現在は学校でもよく使用するタブレットですが、画面が明るすぎて不快に感じてしまい、学習に集中できなかったり、参加が難しかったりすることもあるようです。
③黒板の文字をノートに書き写すのが難しい・ノートに書いた文字を読むことが難しい
白い紙がまぶしくて目を開けていられない・注視が難しいため、文字を書いたり、書かれた文字を読んだりすることが難しい場合があります。これは、「白い紙に黒い文字」のようにコントラストがはっきりしているとまぶしく感じたり、文字が歪んで見えたりしてしまうからです。また、テスト用紙も基本的には白いため、苦労してしまいます。学校生活では、白い紙は使用頻度が高いこともあり、その困りも大変大きいと考えられます。
「人混みや物の多い場所など、情報量の多さによる過敏反応」による困りごととは?
①楽しい行事で体調不良になってしまう
遠足や集団で行われる学校行事など、人が一斉に集まる場面で頭痛や吐き気などの体調不良になってしまうことがあります。遠足は本来は楽しい行事ですが、慣れない場・人の多い場などが行先の場合は、目からの情報量が多すぎて、パニックを起こしたり体調不良になってしまいやすいようです。
②一定時間のテレビや動画視聴、読書により、頭痛や吐き気などの不調な症状が出てしまう
長時間でなくても、一定時間以上テレビや動画を視聴したり、読書をしたりすると、体調を崩してしまうことがあります。過集中のような状態になるため、目を使いすぎてしまい、結果的に情報過多になってしまうようです。
視覚過敏による困りごとへの対策方法とは?
視覚過敏の子どもは、日常生活や園・学校生活で多くの困りを抱えています。しかし適切な対策を行うことによって、困りごとの軽減を図ることは十分可能です。
ここからは、「光や明るさによる過敏反応への対策方法」、「目から入る情報量の多さからくる過敏反応への対策方法」の2つに分けて対策方法を挙げていきます。また、その他にできるおすすめの対策方法をお伝えします。
光や明るさによる過敏反応への対策方法
光や明るさへの対策方法として、以下の9つの方法が考えられます。
①太陽がまぶしすぎて不快な場合は、偏向・遮光レンズ、色付きの眼鏡やサングラスをかける
②タブレットやパソコンを使用するときは、光度をなるべく下げる。
③パソコンを使用するときは、ブルーライトカットフィルターを使用する
④タブレットやパソコンを使用するときは、音声読み上げ機能を活用して、画面を見る時間を減らす
⑤真っ白な照明ではなく、色のついた照明を使う
⑥教室での座席は、窓際や照明の真下を避けて配置してもらう
⑦紙は、真っ白ではなく色がついているものを使用する
⑧白い紙の上に色付きの半透明の下敷きを載せる
⑨テスト用紙は反射の少ない紙に印刷してもらったり、色付き半透明の下敷きを活用させてもらったりする
なお、視覚過敏による困りごとの対策には、以下のような商品がおすすめです。
・色付きのメガネ
・色付きのノート
・色付きのリーディングルーラー
・色付きの半透明下敷き
目から入る情報量の多さからくる過敏反応への対策方法
情報量の多さへの対策方法としては、以下の3つが挙げられます。
①見通しを持てるようにする
混雑した場所や物の多い場所へ行くときは、「これから人が多いところに行くよ。〇時くらいには帰ってこられるからね」など、見通しをもつことができるように予め説明しておきましょう。
②疲れたら、休憩できる場所を見つけておく
③事前に「〇分だけ見る・読む」と時間を決めておく
テレビや動画の視聴、読書時間は、その子どもによって適切な時間を探り、「〇分間見たら、終わりにしようね」「〇分間読んだら、終わりね」などの約束を前もってしておきましょう。
その他にできる視覚過敏への対策方法
上記のほかにもできる視覚過敏への対策方法をご紹介します。
①子ども自身が「自分はどんな場面、状況が苦手なのか」を知ることができるようにサポートする
子どもと一緒に話をしながら、「太陽の光は苦手だけど、蛍光灯ならば大丈夫だね」など、子ども自身が自己理解を深められるようにすることで、自分で対策を講じることができるようサポートします。
②園や学校に合理的配慮を求める
園生活や学校生活で困る場面があるときは、対策を学校にお願いし、合理的配慮や支援を求めましょう。なお合理的配慮には、以下のようなものが挙げられます。
・窓際は避けるなど、光の強さが気になりにくい席にしてもらう
・席にパーテーションを置かせてもらう
・気分が悪くなったときのための空間を確保してもらう
・視覚過敏用の眼鏡をかけるのを許可してもらう
視覚過敏かもと思ったときの相談先とは?
視覚過敏のため日常生活や園・学校生活での困りごとが多い場合は、必要に応じて医師や心理士などの発達の専門家に相談し、子どもも親も不安感を減らすことが大切です。なお、主な相談先は以下のとおりです。
・眼科
・保健センター
・小児科
・児童精神科
・児童発達支援センター
・発達相談センター
日常生活は、視覚情報であふれています。ですから、視覚過敏があると困りごとは大変多いと考えられます。わが子が視覚過敏で苦しんでいると心が苦しくなってしまいますし、親も不安になってしまいますよね。
子どもも親も不安感を減らしていくために、いろいろな人のサポートを得ながら、一緒に対策を考えていくことが大切です。子どもにとって安心、安全と思えるように支援し、環境を整えてあげてください。また最終的には、子ども自身が「困り」を減らす対処法を身につけていけるようにサポートしてあげましょう。
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特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。 繊細で気難しい息子(6歳)の母。 教員時代は、「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行う。また、息子が繊細で気難しいことで、“子育てにおける困り感”・“お母さんの心のモヤモヤ”をたくさん経験。 「特別支援教育と息子の育児で得た学びを“今”困っているお母さん・お父さんに伝えていきたい。」、「お子さん・お母さん・お父さんの困り感を減らしたい。」の思いでブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。