社会人経験者の教員採用に賛否。「塾が学業成果にコミットしてる」「教員免許を取る意味が」…それぞれの意見
深刻な教員不足を解消すべく、全国の教育委員会が教員免許を持たない社会人の教員への採用に力を入れています。このことについて、全国の子育て世代はどう思っているのでしょうか。「ソクラテスのたまご」がアンケートを実施しました。賛成と反対、それぞれの声を紹介します。
「教員免許を持たない社会人経験者の教員採用」の背景
学校の教員として教壇に立つために必要なのが教員免許。教員になるためには教員免許を取得したうえで教員採用試験に合格するのが基本的な流れです。
しかし、定年による教員の退職者が増えている一方で、教員を志望する若い世代が減っているため、教員不足が深刻化しています。その背景には、教員の長時間労働が社会問題化していることがあります。
残業時間が月45時間をオーバーしている教員は、小学校で64.5%、中学校では77.1%と、非常に高い割合です(※2022年10〜11月の文科省調査)。しかも公立校の教員には残業代が支給されません。
また、日本大学の末冨芳教授らの調査によると、2023年度4月の始業日時点で、公立小中学校の実に2割以上で教員が不足していたことが明らかになっています。このような背景から、全国の教育委員会が教員免許を持たない社会人の教員採用に力を入れているのです。
対象となるのは、民間企業で一定期間働いた経験がある、あるいは特殊な技能を持っている社会人経験者。彼らが各都道府県に教員採用試験の受験資格を与えられ、合格すると、「特別免許状」という免許状を取得でき、教壇に立てるようになるのです。
教員免許を持たない社会人が教員として指導することについて、全国の子育て世代はどう思っているのでしょうか。
「社会人経験者の教員採用」アンケート調査の結果
「ソクラテスのたまご」は全国の小中学生の子どもを持つ子育て世代101人に「教員免許を持たない社会人を教員として採用すること」についてどう思うかという独自のアンケートを実施しました。その結果、「賛成」は44%、「反対」は23%、「どちらでもない」は33%となりました。
あるいは高い専門性を身につけている人材が子どもたちを指導し、教員の人手不足も解消することができるこの取り組みに対し、賛成意見が多いものの、反対意見もありました。「手放しでは喜べない」と思う理由は何なのでしょうか。賛成・反対それぞれの声を紹介します。
「教員免許は不要」賛成の理由
賛成意見の中で多かったのは、「必ずしも教員免許がなくてもいいのではないか」という声です。その分野に特化した人や社会人に出た経験のある人から学ぶことで、子どもたちの学びの幅が広がると考える人が多いようです。また、「教員不足の解消につながるため賛成」と回答した人もいました。
その分野の専門の人に学ぶことができる。全国の教員不足、教員の長時間労働の解消につながる。また、大学で教員免許を取れる学部はたくさんあるが、必要な単位の獲得が大変で、諦めた人はけっこういると思う。その中に良い人材があると思うともったいない。良い人材の活用のためにも、採用したらいいと思う。ただ、子どもとの接し方は事前に研修などすることが絶対必要と思う。
(40代後半・女性・兵庫県)
免許の有無も大事だが、これだけ塾産業が学業成果にコミットしている時代に、学校の本当の価値は「人が人を手塩にかけて大人に育てる」というものだと思う。そのため、多様な価値観や経験のある社会人が学校現場に入ってくることはいいと思う。労働環境や待遇の整備もしっかり進めてほしい。
(40代前半・男性・東京都)
教員免許を持たなくても、それと同様の実力、能力のあるかたはたくさんいる。地域限定や一般教養等の小さな試験を設けてクリアすれば「特別指定者」的な資格を与えて教育活動、教員の補助的な仕事ができれば教育の可能性が広がると思います
(30代後半・女性・沖縄県)
教員の人手不足を補うのにも役立つと思います、そして教員免許を持たないが様々な分野の専門性のある人を雇えば子供たちの可能性をもっと広げる事が出来ると思います。専門性といっても大学生や定年後の大人でも良いと思います。
(40代前半・男性・静岡県)
「教員免許は必要」反対の理由
反対意見で多かったのが、「教員免許を持たない人が子どもを指導するのは不安」という声です。教える分野についての専門的な知識や教養があっても、子どもに対する指導の仕方や、接し方を十分に学んでいない人が教員になるのは心配という意見が多数あがっていました。
免許がない社会人が教員になるという事は運転免許がない社会人が車を無免許で運転する事と同じです、教員免許がないという事は教員として学校で子供達に勉強を教える資格がありません、教員免許を持たない社会人が教員になれてしまったら、この先教員免許を取る意味も必然的に無くなり日本の教育現場は必ず崩壊しますし子供達の学力も必ず低下するので反対です。
(40代後半・男性・東京都)
教員免許は、その人に教員としての技術や適性なども含めて判断をされとれるものであると思うから。免許がない先生に預ける安全性や安心をどのように保障していくのか、その辺の不安はどうしても拭えないので、反対です。
(30代後半・女性・埼玉県)
教員であっても適正にあわない人が多く見受けられるのにそういった教育、資格を持たない人を学校内へ入れることの不安は大きいです。実際に教員免許を持っている方の就職率や学校内の先生方の待遇を改めるのが先ではと思います。
(40代前半・女性・長野県)
教員自身の学力や教養、指導力だけでなく、教員として子供と接しても良い人物かどうか人間性や資質をきちんと見極められるのか疑問。免許を取る意思はない、けれど教員にはなりたいと思う人はどういった意図で教員になりたいのか?と邪推してしまう。例えば数日事前講習などがあったとしても付け焼き刃の知識で児童に接してほしくはないと思う。
(30代前半・女性・大阪府)
「どちらでもない」の回答で多かったのは、「教員免許の有無に関わらず、その人の人間性と子どもたちに対する熱意を重視したい」という意見でした。
教員免許があっても問題を起こす教員もいれば、免許がなくても有能な指導者もいる。免許や教養があるかどうかではなく、子どもときちんと向き合ってくれるかどうかは、大切な子どもを預けるうえで保護者が重要視することのようです。
<参考資料>
・TOKYO FM+ 「教員免許」を持たない「社会人経験者の教員採用」…増えている背景は? 人員不足、長時間労働解消…専門家が解説
・中国新聞デジタル 教員免許持たぬ「社会人教員」の採用広がる 人員不足や長時間労働の解消へ
・読売新聞オンライン 公立小中学校の20%以上で教員不足、昨春より5ポイント悪化…日大教授ら調査
・TBS NEWS DIG 残業「月45時間超」が中学校教員で8割近くに “過労死ライン”超えも…依然長時間勤務続く【文科省・教員勤務実態調査】
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