「先生になるのやめた」。教員志望の学生が“進路変更する理由”で半数以上を占めたのは……
教員の労働環境が、しばしばニュースで取り沙汰されています。生徒の人生に関わるやりがいのある仕事ですが、あまりの大変さに疲れ果ててしまう方も多いようです。その影響は大学生にも及び、教員志望で入学しても「先生になるのやめた」と進路変更するケースも多いとか。そこから浮かび上がる、教育現場のリアルとは……?
教員を志望していた学生の半数以上が“後ろ向き”に
大学生メンターによる校内塾運営で学校の働き方改革を支援しているトモノカイは、教員を目指したことのある日本国内の大学生400人に対して、進路に対する意識調査を行いました。
教職の道に進もうと、希望を持って入学したあの日……。「教員を志望したきっかけはなんですか?」の問いに対する回答を見ると、「小中高時代に出会った教員の影響」「昔から子どもや人に教えることが好きだった」「教育関係のアルバイトでやりがいを感じた」など、誰もが将来をはっきり見据えていたことが分かります。
しかし「今も教員になることを志望していますか?」と質問したところ、意外な結果に……。
なんと後ろ向きの回答が計51.9%にも及んだのです。
一度は教育の道を志したはずなのに、なぜこのような選択になってしまったのでしょうか。
その理由を知るべく、「教員志望だったがやめた/後ろ向きな一番の理由は何ですか?」とも質問しました。
教員の道を変更した大きな理由は、「労働時間が長く、部活動や行事などで休日出勤も多いことを知ったから」が半数以上でした。
実際、文部科学省の調査によると、国の定めた「月45時間」の残業をオーバーしている教員はかなりの数にのぼるそうです。小学校では64.5%、中学校では77.1%。特に中学校では月45時間どころか月80時間残業が36.6%……。そんな過労死ラインの世界に飛び込むのはやっぱり勇気がいりますよね。
その他の理由については、そこまで大差はないものの「教職課程の履修科目が多いなど教員になるまでの道のりが遠いから」「公立校は残業代が支給されないから」などの声が挙がっています。
教育実習の前に「現実」を知って、進路変更
先のアンケートで後ろ向きの回答をした大学生に対して、進路を見直したのはいつなのかも質問しました。
すると、ほとんどが「教職課程を受ける前の段階」と回答。「教職課程で座学やスクリーニングの受講/試験勉強をしている段階」も比較的割合が高めでした。
教育実習といえば、教員免許取得の一歩手前。いよいよ夢が現実になる!ということで、これからの自分を見据えてたくさん情報収集したのでしょう。
教員のリアルを知る→進路変更→教員数減少→教員一人ひとりの負担増……という負のループは教員の働き方改革によって変わっていくのでしょうか。
2017年に文部科学省がおこなったアンケート調査によると、「教員の不足数」は小学校で316人(常勤266人、非常勤50人)、中学校で254人(常勤101人、非常勤153人)だそうです。これは危機的ですね……。教員の負担増はもちろんですが、生徒一人ひとりに目が届かないため“十分な教育”ができているのかも不安が残るところです。
深刻なニュースはまだまだ続きます。
- 2018年:島根県松江市の中学校において、教員不足で3年生の英語の授業が1カ月間できなかった
- 2019年:千葉県千葉市において保護者向けに「教員募集」のチラシを配布
- 2023年:高知県教育委員会の教員12人が、高知市の商店街で「身近に教員免許を持っている方がいれば紹介をお願いします」などと声をかけながら、チラシの入ったティッシュを配布
2021年度、公立小中高校と特別支援学校において「精神疾患」を理由に休職した教員は約6,000人だそうです。過酷な現状→教員の数が減る→さらに増える教員の負担→子どもたちへのシワ寄せ……。
いくら熱意にあふれた大学生でも、このような現実を知ったときに「自分はこの負のループの中に飛び込んでいけるのか」と立ち止まってしまうのも分かる気がします。
どこかで流れが変わること。大学生が教員を志望し続けるためには、やはりその一手に尽きるのかもしれません。
<参考資料>
・PR TIMES(株式会社トモノカイ)
・NHK クローズアップ現代 あなたの先生は大丈夫?教師の過重労働 その果てに何が
・imidas 学校の先生になりたい人が減っている!? 〜教員不足で露見した過剰労働の現実
・NHK 高知 NEWS WEB 深刻な教員不足 県教育長が街頭で教員確保へ協力呼びかける
・西日本新聞 深刻な教員不足 しわ寄せは子どもたちに
・TBS NEWS DIG 残業「月45時間超」が中学校教員で8割近くに “過労死ライン”超えも…依然長時間勤務続く【文科省・教員勤務実態調査】
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