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2020.04.22

ママ友の態度や子どものことが気になり過ぎる。マイナス思考への処方箋はある?

公認心理師・佐藤めぐみさんがアドバイスする「専門家が答える 親子の悩み相談室」。今回、読者から寄せられた悩みはマイナス思考によるストレスと、親の性格が与える子どもへの影響について。子育てに心配事はつきものですが、あまり神経質になり過ぎると疲れてしまいますよね。思考をポジティブに変換させることはできるのでしょうか。

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【今回のお悩み】

もともとマイナス思考で心配性。子どもが学校で友達に嫌な思いをさせられたという話を聞いたり見たりすると、子ども以上に落ち込んで必要以上に心配をしてしまいます。また、相手は忙しかっただけかもしれないのに、ママ友のあいさつが素っ気なかっただけで「何かしてしまったかも?」と不安になってしまいます。不安そうな親に育てられた子どもに悪影響はあるの? 感情のコントロールができるようになりたいです。(小学3年生・女子の母/42歳)

子どもの勉強や友達関係、習い事、ママ友…。一つ問題が解決するとまた別の問題が発生するなど、親の悩みは尽きないものなのかもしれません。でも、問題に直面するたびに落ち込んでいては心のバランスが保てなくなってしまいます。

佐藤さんが教えてくれたのは、“マイナス思考を変える方法”と“子どもへの悪影響を解消する方法”。マイナス思考に陥りがちな人も、ほんの少しの心掛けでストレスを軽減させ、グンとラクになる処方箋があるようです。

<ママ友事情についてはこちらの記事もチェック!>
ママ友はいらない?いなくて困る?小中学生のママ100人に聞きました

この記事を書いた佐藤めぐみさんに相談してみませんか?

ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ソクたま相談室」なら、オンライン上で佐藤さんに子育ての悩みを相談できます。

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マイナス思考の人は、心の会話の“質”と“量”を見直そう

人は、誰しも心の中で自分自身と会話をしています。口には出さずとも、頭の中でポンポンと言葉が飛び交っていませんか? 

思考がプラスかマイナスかというのは、心の中で行う自分自身との会話の“量”と“質”とに直結しています。マイナス思考の人はその言葉の量が多く、質的にも自分を苦しめる言葉を用いているのが特徴的です。

心の会話量を減らしてみよう

実は、今回のケースのようにストレスを抱えている人ほど心の中の会話量は膨大です。「ああでもない、こうでもない」と、自分の中で押し問答していることはないでしょうか? 先々の分からないことに対して、仮定を作り上げていませんか? 

まずは普段から「いま私は何を悩み、何を考えているかな」と1分間、冷静にモニタリングする時間を作ってみましょう。いろいろな会話がうごめいているのをキャッチできるはずです。特にお母さんたちは「あれしなきゃ、これもしなきゃ」と思考が忙しいもの。だからこそ、目を閉じて心の中でどれだけ言葉を発しているかということに気付いてあげることが大事なのです。自分の心の会話を観察してみると、“考える必要のないこと”、“考えても答えが出ないこと”が多いことに気付くことができます。

そして、次に行いたいのが“自分の考えを疑う”こと。不確定要素の事柄に対して「~かもしれない」「~が起きるかもしれない」「~だったらどうしよう」といったフレーズを繰り返していると、思考は収まりません。

「こんなことを考えていても、本当の答えは分からない」「なぜ、考えても答えの出ないことに時間を費やしているんだろう」といったように、良い意味で自分に突っ込みを入れて無駄な要素を減らしてみましょう。これは自分を客観視するという心理スキルの一つですが、そうすることである程度、不安な気持ちが和らぎます。

会話を意識することでスッキリと、心をシンプルにすることができます。

心の会話の質を高めよう

次に、心の中の会話の“質”について考えてみましょう。

事実に余計な要素をプラスして会話をしていませんか? 例えば「今夜はハンバーグを作ろう」という心の会話に「上手く作れるかな、時間が足りないかも」など、マイナス思考の人の多くは事実にプラスアルファの要素を足してしまう傾向があります。事実にプラスする要素が多いため結論までなかなかたどり着かないことも、悩みを長引かせてしまう原因になります。

「読心術」を使うのはやめよう

また、今回の相談のようにママ友関係に悩む人は多いですが、相手の気持ちや言動を100%理解し正解を出すことは不可能です。

私たちは、人の心を読むことはできません。それなのに、他人の考えを推測してしまうことは多くありませんか? 自分のコントロールが及ばない他人の心の中まで考えることを、私は「読心術」と呼んでいます。読心術思考はマイナス思考の一つで、読めもしない人の心を読んで確信を持ってしまうこと。

今回の悩みで“素っ気ない”と感じたのも忙しかっただけかもしれないし、コンタクトをしていなくてよく見えていなかったかもしれません。理由を考えればいくらでも挙げられますが、本当のところは分かりませんよね。こういったことを考えないようにする、もしくは別の(ポジティブな)理由を考える練習をしてみるのも良いでしょう。

「自分のこういう考え方が嫌だから変えよう」と心の会話の質と量を意識することで、少しずつ思考を変えることはできます。“マイナス思考”という長年のテンプレートも、コントロール可能なのです。

次章では相談者のもう一つの悩み、親のマイナス思考が子どもにどう影響するかということについて解説しましょう。

親のネガティブ思考は子どもに伝播する?

今回の相談のように、自身のマイナス思考が子どもにも影響するのではないかと心配する人も多いでしょう。

人の思考は、生まれ持った気質に上乗せするかたちで“学習要素”が大きく影響します。

人の思考を形成する“学習要素”

“学習要素”の形成は、小さい頃の親とのコミュニケーションがもっとも影響すると言われています。親というのは“一番長く一緒に時間を共にする人”という意味なので、母親だけではなく祖父母や父親という場合もあるでしょう。

また、親がどんな発想でどんな言葉を発しているのか、どんな姿勢で振る舞っているのかも子どもの物事の捉え方に大きく影響します。一般的には、小学校低学年くらいで思考スタイルの“テンプレート”ができあがるといわれています。

例えば車を運転中に赤信号を見た時、皆さんはどのように感じますか? 

「あぁ、早く行きたかったのに…」

「運転に疲れたから、ちょうどいい休憩になるな」

信号一つ取っても、人の捉え方はさまざまです。しかし、子どもを乗せている車で「今日は赤信号ばっかりで嫌だな、もう!」と文句を言ったら子どもは「赤信号って、こういう風に人は思うものなんだ」と、ネガティブなものだと認識するのです。

マイナス思考に限らず親の思考は子どもに影響する可能性があります。今回、相談してくれたお母さんが自分の心の中だけに悩みを留め悩んでいる姿勢や発言をしていないというのであれば子どもに影響する部分は大きくないかもしれません。しかし、何げなく発する口癖であっても子どもの思考スタイルの形成に関わるということは覚えておきたいですね。

子どもの心配事には親の“察する力”が必要

今回のケースのように、「子どものことを必要以上に心配してしまう」と悩む母親は多くいます。親ですから心配するのは当然ですよね。大切なのは、子どもの心配事に対してどのように向き合うかという姿勢です。

子どもの心配事との向き合い方①:察する力

小学校の中~高学年になると、親が心配して「どうだった?」と聞いても子どもが「こうだったよ」と答えてくれることはほとんどありません。

したがって、幼児期以上に求められるのが親の“察する力”。言葉で聞いても具体的には得られないであろう情報に気付く力が大切になります。

まずは「あれ? 何か変だな」と気付くことが第一段階。それに気づいてあげられないと、子どもが何らかのかたちで発しているサインに気が付けなくなってしまいます。

ただ、気づいた段階で「どうだった?」「何かあったの?」と聞いても、本人が言いたくない状況であれば母親が問い詰めてくることに対して反抗的な態度を取ってくるかもしれません。

子どもの心配事との向き合い方②:環境作り

前回の記事でもお薦めしましたが、“言いやすい雰囲気、環境作り”が大事です。

子どもに「居心地がいいな」「ママだったら聞いてくれるだろうな」と感じてもらえるような家庭の雰囲気です。「親は、どんな状態でも受け入れてくれるんだ」という思いが子どもにあると、親に相談しやすくなるもの。もちろん、これは一日で作り上げることのできるものではなく小さい頃からの積み重ねです。

【前回の記事はこちら】

公認心理師が教える/ウザい・嫌いにショック! 反抗期に親はどう向き合えばいい?【連載 専門家が答える 親子の悩み相談室②】

また、子どもが話しかけてきたらどんなことでも「知りたい!」という気持ちで接することも心を開くポイントになります。アニメのキャラクターのこと、学校で流行していること、お母さんにとっては正直、興味のないこともあるかもしれませんが、そういう部分で話に乗ってあげることで気持ちは開いていきます。興味のないことだからと素っ気ない対応を繰り返し、親が聞きたいことだけを問い詰めていたら、子どもは「親は自分の話を聞いてくれないのに、言いたいことだけは言ってくる」と感じるようになります。子どもにとって“大事なこと”に興味を示すことで“話しやすい雰囲気”を作っていきましょう。

マイナス思考が子どもの心に寄り添う?

実は、マイナス思考は悪いことばかりではありません。“気づきやすい”という良い点もあるんですよ。察する力のアンテナがすごく張っているんです。

逆に主観的な人、強い信念や自信を持っている人というのは“察する力”が弱いことも…。“頭が良かった”、“運動神経が良かった”、“積極的だった”というポジティブな要素が強い両親は、子どもの失敗に対して「努力すれば乗り切れるはず」とか「お父さんはテストでいつも100点だったぞ」と自分の過去の栄光から子どもにアドバイスしてしまうことがあります。しかし、いま困っている子どもへのメッセ―ジとしてはあまり良いものとはいえません。

自分の子ども時代はさておき「うちの子はこう言ったら頑張って乗り切れるな」「うちの子はこう言うと、負担やプレッシャーに感じるな」など、親は子どもが今どう感じているかに気付いてあげないといけません。「自分はこうだったから」ではなく、「この子はこうだから」という発想、わが子の視点を親が一緒に考えてあげることが大切になります。

子どもの悩み、ママ友の悩みも5年、10年経って振り返ると「何であんなことに悩んでいたんだろう」「あれも今となっては良い思い出」と感じることも多いはず。今回相談してくれたお母さんがお子さんのことやママ友関係で悩むのは、人の心に寄り添うことができるからなのだと思います。その“察する力”は良い部分に使って、考えても答えが出ないことに関しては悩んだり考えたりする時間を長引かせず、割り切ることも時には必要だと意識してみてくださいね。

この記事を書いた佐藤めぐみさんに相談してみませんか?

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<構成・執筆>濱岡操緒

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佐藤めぐみ

公認心理師、オランダ心理学会認定心理士。欧米の大学・大学院で心理学を学び、「ポジティブ育児メソッド」を考案。現在は公認心理師として、育児相談室・ポジカフェでの心理カウンセリング、ポジティブ育児研究所での子育て心理学講座、メディアや企業への執筆活動などを通じ、ママをサポートする活動を行う。アメリカ在住。中学生の娘の母親として子育てにも奮闘中。

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