保護者が抱く微妙なモヤモヤ。隣のクラスと教え方や指導法が違うのはなぜ!?
「隣のクラスでは百人一首をやっているのに、わが子のクラスではやっていない」。同じ学年なのに「どうして?」と思ったことはありませんか?いま現在では「学年全体で足並みをそろえて教えていこう」とする小学校が多いのですが、隣のクラスとやっていることが違うこともあるのはどうしてなのでしょう。
目次
小学校には学校ごとの「年間計画」がある
最初に、小学校では「年間計画」に沿って授業や行事等が実施されるということから説明しましょう。
「年間計画」とは
- 学校独自のものであり、学校によって内容には違いがあります。
- 各学年ごとに“国語では〇月に〇〇を教える”、“教科書のどのページを教え、どのくらいの時間をかける学習内容なのか”といった詳細、生活指導に関することや授業時間、安に時間までがしっかりと示されます。
- 教科以外では運動会や遠足、社会科見学の実施時期、展覧会あるいは学習発表会などの実施予定も示されています。
- 保健指導に関することは養護教諭、給食指導に関することは管理栄養士が担当。教職員全員で教科ごとに分担し、1冊の年間計画を年度前までに仕上げます。
【年間計画の一例】
文部科学省「学習指導要領解説」より
年間計画は主に教師が使うものとして作成するので、初めてその学校に勤めた教師でも分かりやすくスムーズに学校の方針が理解できるというメリットがあるでしょう。中には、保護者に年間計画を開示している学校もあるでしょう。
年間計画に似たものとして「行事予定表」もありますが、年間計画と行事予定表は別物。行事予定表には“何月にどんな行事があるか”、行事のみについて示してあります。行事予定表は主に教務主任が中心となって作成し、4月の保護者会などで保護者に渡す学校も多いでしょう。
年間計画のおおもととなるのが、「学習指導要領」です。したがって、学習内容はどの公立小学校でもほぼ同じということになります。ただし、地域によって多少の違い(北海道ではスケートの授業を設けているが、沖縄では設けていないなど)はあるでしょう。
学年での教え方・指導法の統一は徐々に強まってきている
私の教師生活の中では、“授業参観では授業内容、授業で使う道具、子どもに話す言葉や子どもに指示する言葉など全てを同じにする”という方針の学校もありました。“そろえる”ことで“学年がまとまっている”ということを保護者に知ってもらおうと考える学校のようでした。
私自身は、全く同じ教科、教え方にするならクラスを分けることもないだろうと考えていました。担任にも個性があります。クラスに集まってきている子どもたちの性格もさまざまなのです。
最近の学校では、特に学年全体でそろえる傾向がだんだんと強まってきているようです。若手の先生が増え、教える内容が増えていることも影響しているかもしれません。学年で足並みをそろえないと授業が終わらないということもあるのかもしれません。
文部科学省・生涯学習政策局政策課調査統計企画室の調査「公立学校における本務教員の年齢構成」では、平成16年にはベテランが多かったようですが、平成28年にはベテランと若手で二極化しています。団塊世代のベテラン教師が大量に退職し、ドサッと若手が入ってきたことも考えられます。若手を育てるために学年でそろえた方が教えやすくなる、ということもあるのもしれません。以前と比べて学習内容が多くなっている今、子どもにどのように教えたら良いのか分からない若い先生が増えていればなおさら、学年で足並みをそろえたくなるのかもしれません。
それでも、クラス間で多少のズレが生じることはあります。
担任の指導法や教え方がクラスの個性に
ある私立小学校では、「4年竹組」「4年桃組」といったようにクラス名を担任が決めているそうです。また、遠足に行く場所も学年でそろえる必要はなく、担任が決めているとのことでした。このように、クラスごとにやることが違ってひとつの国のようになることから「学級王国」いう言葉があるのは聞いたこともあるのではないでしょうか。
公立小学校で遠足に行く場所を各担任が自由に決めることは、ほぼないでしょう。学級王国ができあがると「うちのクラスはやってないのに、あのクラスはやっている」「不公平じゃないか」と考える人も出てきます。
しかしながら、公立小学校でも担任の先生の裁量が大きい部分はあります。基本的に公立小学校では、一人の先生が全部の教科を教え、給食や掃除の指導なども行います。学校によっては音楽、図工などに専科を設けているところもありますが、ほぼ一人で子どもを教えます。教師も人間ですから、子どもの指導の仕方は一人ひとり多少の違いは生まれます。どこかの教育サークルで勉強している先生(教育団体によって考え方が全く逆になることもあります)や、自分流の教え方をする先生などさまざまです。
こういった担任の教え方や指導法による“違い”をクラスの個性として楽しんでくれれば良いのですが、中には疑問に感じたり不安を抱いたりといった保護者もいるでしょう。どのような教え方・指導法が良いかというのは教師にとって日々、試行錯誤です。私自身、長年信じ続けていた教え方がベストではなかったという経験はあります。また一度、身についた教え方や指導法は簡単には変えられません。それでも、子どもたちにより良い学習環境を与えたいと努力しているのです。
学級崩壊やいじめ、成績の良し悪しに極端な偏りがあるなどが生じている場合は別ですが、“違い”は決して、悪いことではないと私は考えます。
担任の教え方や指導法に疑問を感じた時はどうすればいい?
クラスによって授業内容や指導法が異なる…こういった場合、よほどのことがない限りは見守ってほしいというのが“私の考え”です。
担任には担任なりの考えがあるもの。それでも気になったのであれば、保護者会や個人面談などのときに聞いてみるのも良いでしょう。なぜ隣のクラスではやっていて、うちのクラスではやっていないのか教えてくれるかもしれません。もしくは「学年で一度話し合ってみます」と言ってもらえるかもしれません。
“必ずしも隣のクラスと同じことをやるのが一番良いということではない”ということ、“教師も日々、切磋琢磨しながら教え方や指導法を研究している”ということが分かれば、保護者の皆さんのモヤモヤも少しスッキリするのではないでしょうか。
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東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/