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2019.11.14

いじめによる不登校 勉強が解決の糸口になることも/いじめ探偵・阿部泰尚【第8回】

いじめが原因で始まる不登校。いじめ探偵の阿部さんは、「いじめの対処ができない学校に通学する価値はない」と話す一方で、不登校中でも子どもの可能性を守るためにできることはないかと考えます。これまでに学校や教育委員会で誠実な対応が取られなかった6000件以上のいじめ案件に関わり、事実究明に奔走する阿部さんが考える復帰への準備とは。

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復帰への準備・対策は何のために行うのか

復帰への対策とは、具体的には勉強です。前回の記事でも書きましたが、私がこれまで出会った被害者のほとんどが、いじめで成績が下がり、不登校になりさらに下がっていました。しかし、学力や成績は子どもの将来に関わっています。

そのため、私は子どもの精神が相当に落ち着いたら復帰へ向けての対策をしようと説得をすることがあります。復帰とは、学校の環境改善が望めず転校をする場合や地域によってマチマチですが、学校外での教育を認めている場に行く場合も含まれます。

どのような説得法かというと、私はシンプルに質問をします。
「耳の痛い話だと思うけど、勉強の方はどうかな?」

そして、進学率のデータや今学校でやっているところなどの話をします。データはそれだけで説得力があります。
高校のランクによって進学できる大学はほぼ決まっているのです。そして次のように話し気持ちをあおります。

君をいじめた連中は学校に残り、勉強を続けている。多分、塾にも行っているし、それで言えば、ランクの高い進学先に行くかもしれない。理不尽だと思わないか?

続けてこう言います。

「私なら君の成績を格段にあげることができる。幸い、学校に無駄な時間を取られることはないから、集中して成績のみあげてしまう対策ができる。」

私は塾講師をしていたことがあるので、勉強のテクニックを教えることができます。勉強法の回ではないので、詳しくは書きませんが、私の方法はわからないところまで遡って、簡単な問題から再スタートし、独特の暗記法で基本的な知識をつけていく方法です。

私がテクニックを教えた子の全てが、不登校期間の間に成績が上がり、学校に復帰する頃には、授業よりだいぶ先の学習に入っています。ケアレスミス以外は確実に正答するので小テストはほぼ100点。授業での発言も的確であるため、復帰後はクラスメイトからの目線が変わります

子どもが自主的に動くことを尊重する

私が大切にするのは、いじめられていたときにも感じていた「見返してやる」「自分の力で解決してやる」といういじめに反発する気持ちです。

一方で、問題によく当たっていることを褒め、正答すれば褒め、間違っていてもその思考を褒めます。これはいじめの被害で落ち込んでいた自己肯定感を向上させる意味も含まれています。

次のようなケースもありました。

A君の場合

小学5年生から不登校になったA君は、もともとは中学受験を希望していましたが、小学4年生で始まった友人からの嫌がらせがいじめとなり、学校が誤った対応をしたために、いじめが常態化。登校しようとすると目眩がするなどの症状が出てしまい、不登校になりました。

私は夏休みが明けてから相談を受けたので、すでに半年も学校に行っていない状態でA君本人と会いました。A君は私に、「学校に行きたい気持ちは強いけど、(加害者以外の)友達に何か質問されたら答えられない」と話し、悩んでいました。また、「学校の授業にも出ていないので、勉強についていけなかったらどうしよう」と考えていました。

ですから、私は勉強法のテクニックを教えました。同時に学校と加害者からの謝罪の会や学校のいじめへの具体的対応についての約束事について話を進めました。

話し合いは翌年までかかりましたが、その間、A君の授業や学力への不安はほぼなくなっていました。A君は私に「学校で自分の力(学力)を試してみたくなった」と話してくれました。

A君の学力向上の秘密は、学校に行っていない間に私と作った時間割表に従って、効率よく勉強を自発的に進めたことにありました。学齢的にまだSNSなどが浸透していないこともあり、集中して学習ができたという部分も大きな影響を与えました。

時間割については、学校のような時間割ではなく起床から就寝まで曜日別に円グラフで作成します。45分間程度の単位で1から8時限まで休憩や昼食を挟みながら進めました。時間割表については、A君からの申し出でその都度調整しました。自発的に時間割を作ることに効果があるようで、A君は「休んでいる時の方が、効率的だった」とクラス復帰後は話していました。

学校に行かない日々を子どもの未来へ費やすために

いじめで子ども本人が学校を休みたいと言ってきたときは、本人の中ではもう限界をむかえていることが多く、そのSOSは見逃してはならないものです。

大人の中には、学校に通うことが最大の価値観という人がいますが、ストレスは大人でも人を死に追いやってしまう怖いものです。ましてや、それが子どもだとすれば、ストレスへの耐久性は、経験を積んでいる大人より低いと考えるのが妥当なはずです。休むことで、一時の平穏を得られるのであれば、大いに休むべきです。

まずは無条件で休ませて、落ち着いてきたら、効率的な自習を始めると復帰への的確な準備となります。

一方で学校のいじめ対応には時間がかかるケースがほとんどです。即日、数日中に対応できたというケースは珍しい部類に入ります。

特に学校がいじめ対応への要領が悪い場合は、働きかけを含め、いじめの調査なども長期に及ぶことは珍しくありません。しかし、学生は期間が定まっているので、日々機会損失が発生していきます。学校へ行かない間の日々も無駄にしないためにも「休んでもいいが、落ち着いたら勉強を始めよう」という対応を私はおすすめします。

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阿部泰尚

特定非営利活動法人ユース・ガーディアン 代表。 1977年、東京都中央区生まれ、東海大学卒業。 2004年に、日本で初めて探偵として子どもの「いじめ調査」を行ない、当時ではまだ導入されていなかった「ICレコーダーで証拠を取る」など、革新的な方法を投入していき解決に導く。 それ以来、250件を超えるいじめ案件に携わり、NHK「クローズアップ現代」をテレビ朝日、TBSラジオ、朝日新聞、産経新聞他多くのメディアから「いじめ問題」に関する取材を受け、積極的に発言をし続けている。日本テレビ「世界仰天ニュース」でもいじめ探偵として取り上げられている。 著書に「いじめと探偵」 (幻冬舎新書 2013/7/28)。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー、国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務めている。

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