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2019.02.05

【オルタナティブ教育】“世界一子どもが幸せな国”で盛んなイエナプラン教育とは?

ユニセフが実施する「先進国における子どもの幸福度調査」で世界一となったオランダ。同国で非常に盛んに取り入れられている教育の1つが、イエナプラン教育です。日本でも、2019年に初めてのイエナプラン校が、長野県佐久歩町に開校予定となっており注目され始めています。日本の既存の教育とは違う視点で“学ぶこと”と向き合うイエナプラン教育について紹介します。

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イエナプラン教育の歴史と現在

現在は、オランダで最も盛んに取り入れられているイエナプラン教育ですが、ルーツは、1923年にドイツの教育学者ペーター・ペーターセンがイエナ大学で試みた「異年齢グループで教育を受ける教育実践」にあります。

その後、第二次世界大戦などの影響もあり、ドイツ国内では大きな発展を遂げることはできまなかったものの、1950年代には新教育運動の母体組織に属していたオランダ人女性のスース・フロイデンタールが同国へ導入。自分の子どもたちが受けていた教育に失望していた彼女は、ペーターセンのイエナプラン教育自分が求める学校の姿を見出し、普及のための活動をしていきました。

その後、1962年には、オランダに初めてイエナプランスクールが開設され教育改革の後押しもあって学校数は増えていき、現在は公立私立を合わせ220校以上のイエナプラン小学校があり、約4万5千人の子どもたちが日々学んでいるそうです。

また、オランダでは、教員養成大学にイエナプランコースを設けるなど、教員の養成にも取り組んでいます。教材やカリキュラムなどの面でも、他の国の教育や考え方を積極的に取り入れるなど、常に内容が刷新され続けているのです。

“人は違っていい”がイエナプラン教育の出発点

イエナプラン教育が大切にしているのは、「人はお互いに異なる存在である」ということ。お互いの年齢・人種・国籍・性別・性的傾向・社会的背景・信仰・性格といった違いから互いに学ぶことができると考えられています。

そのため、イエナプラン教育の学級編成は、異年齢の子どもたちで作られるマルチエイジグループ(根幹<ファミリー>グループ)というスタイル。

4歳から12歳の子どもたちを4~6歳、6~9歳児、9~12歳児など、年齢に合わせてグループ分けをして、グループ内で教え合い、違いを認め合うなかで大切な社会経験が得られると考えられています。 異年齢の子どもたちが同じ空間で学びあうシステムが基盤にあるので、子どもたちはお互いの違いを自然と受け入れられるようになり、相手を理解し尊重する姿勢を大人になってもずっと継続できるのではないでしょうか。

また、個の単位は、人だけに限りません。人が一人ひとり異なるように、イエナプランスクールでは、1校ずつに違いがあります。

学校の立地や宗教、子どもたちや教師たちの特性などは、学校によって大きく異なるため、授業で取り上げる内容やその手法も異なっていくのです。 しかし、どの学校でも「人間」「社会」「学校」の側面から述べられる「イエナプラン教育の20の原則」という考え方に基づいて今必要な教育が実践されています。

“学ぶことを学ぶ”が子どもの自尊心を育む

イエナプラン教育の特色として、“自主的に学ぶこと”を学ぶ子どもたちの姿が挙げられると思います。“学ぶことを学ぶ”とは、子ども自身が目的を持ち、その達成のために学習内容や方法を選択・実践していくことです。

また、今必要な学びを子どもたち自身が選んでいくので、イエナプラン教育には科目ごとに学校や教師が決めた時間割はありません。イエナプラン教育で必要だと考えられている以下の4つの基本活動を、子どもたち自身が循環的に時間割へ盛り込んでいくのです。

イエナプラン教育4つの基本活動

<対話>

子どもたちとグループリーダー(教員)が参加する場。目標に対する計画を立てる場にもなります。

<遊び>

体を動かしたり感情を表現したりする活動や教育学上の効果が期待されるゲーム遊びなどをする時間。一緒にお互いのことを必要だと知り、自分自身への気づきが得られます。

<仕事>

子どもたちが自分自身で立てた計画を実行する時間。レベルの向上を目的とするグループリーダーによる指導と、自分で考えた方法で黙々と学習するブロックアワーという時間が交互に行われます。

<催し>

週の始まりと終わりの時間やグループの仲間たちの誕生日、学校行事などをする時間。喜怒哀楽を仲間と共有し“共に生きる”ことを体験する場として設けられています。

この4つの基本活動を盛り込んだ時間割は、それぞれの子どもで異なります。そのため、教科も教材も方法も学ぶ環境も違うのです。 自分で立てた計画をベースにしながら必要に応じて先生に教えてもらったり、ひとりで問いと向き合ったり、仲間と相互に関わり合ったりする学習は、その子自身の自尊心を高めることに大きく影響しているのではないでしょうか。

学びへの責任が挑戦心を後押ししてくれる

さらに、イエナプラン教育には、ワールドオリエンテーションという活動があります。日本でいうところの総合的な学習に近いものです。日本では、ほかの授業を補うために利用されたり、理科・社会的な要素を含んだものだと捉えられたりしがちな時間ですが、イエナプラン教育ではすべてにかかわる重要な学びとして考えられています。

日本で一般的な学習方法といえば、“先生から習う”ですが、イエナプラン教育には、一方的に教師から習うだけの授業はありません。あくまで子どもたちが自身で問いを見つけ、その問いを追求するための方法を自分で見つけていくプロジェクト形式の授業が行われます。

もちろんその中には教師からの指示があることもあります。しかし、子どもの“知りたい”“学びたい”があってこその指示や授業なので教師はいわばファシリテーターのような役割を担っているのです。

さらに、教室を家族で過ごすリビングルームとして捉えているイエナプラン教育。この空間は、教育学的側面から子どもたちが学びに集中できるよう作られています。安心・快適な学びが保障された空間が用意されているからこそ、子どもたちはちょっと難しいと思われることにも挑戦できるのです。

子どもたちは、“学ぶことを学ぶ”中で問いを立て、学びを設計していくから、自分の学びに責任を持ちます。だからこそ目の前の課題を“自分ごと”として捉え向きあえるのではないでしょうか。

イエナプラン教育をきっかけに考えたいこと

子どもたちの自発的な学びをサポートするイエナプラン教育。この教育を成り立たせるためには、“子どもを1人の人間として信頼し尊重する”姿勢がとても重要だと思います。

イエナプラン教育における教師の基本姿勢は、どの活動においても中立的なファシリテーターであり、答えに導くためだけの存在ではありません。この姿勢は、子どもを信頼していなければとることが難しいですよね。

イエナプラン教育をする・しないにかかわらず、子どもの自発的な学びをサポートしたいのなら、子どもの意思を尊重する姿勢は保護者にも必要だと思います。

ただし、日本でイエナプラン教育を採用したいと思っても、その場所や機会は限られています。まずは家庭でイエナプラン教育の“子どもを信じて尊重する”姿勢から取り入れてみてはいかがでしょうか? 

子どもの将来を案じて、口出しをしたくなることもあると思います。しかし、子どもを信じて見守ることで、自発的に学ぶ姿勢が育まれるかもしれませんよ。

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クリス

元小学校教諭のフリーライター。教職に疲れ現場を離れたはずが、気がつくと教育のニュースをチェックする日々。少しでも現場を経験した自分が教育現場のためにできることを考えた時に、先生と保護者、地域をつなげるリアルな教育情報を伝えたいと思い、ソクラテスのたまごに参画。とここまで真面目に書いたものの、普段は愛猫とたわむれるかアニメやマンガにおぼれる日々を送っている。 ブログ https://qris.hatenablog.com/top

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