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学びの最前線
2022.04.18

将来に必要な力が育つ!導入する小中学校が増加中の「Springin’(スプリンギン)」とは

たくさんの種類があるプログラミングアプリ。その中で小中学校などの教育現場にも導入されているアプリのひとつが「Springin’(スプリンギン)」です。そこで、開発者である中村俊介さんに、プログラミングアプリの有用性や子どもにどんな影響・成果を与えてくれるのか話を伺いました。

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プログラミングはコミュニケーションスキル

小学校では2020年度から、中学校では2021年度からプログラミング教育が必修化され、プログラミングアプリを授業に導入する学校も増えていきました。

しかし、保護者にとっては、「プログラミングアプリで何ができるの?」「ゲームで遊ぶのと何が違うの?」と、疑問に思うことが多いかもしれません。

そもそも、プログラミングとは何なのでしょうか。大量のアルファベットや数字が羅列する”プログラミング言語”をイメージする人も多いかもしれませんが、プログラミングアプリ「Springin’(スプリンギン)」の開発者であり、株式会社しくみデザイン代表の中村俊介さんは次のように話します。

「そもそもプログラミングとは、思い通りにコンピュータに動いてもらうために行う指示のことです。相手が人間なら、『アレ取って』と言うだけで、何となく何を取るのかを想像して取ってもらえるかもしれませんが、コンピュータは、人の”気持ちを察する”ことができません。

コンピューターには、アレが何で、どのように取ってどこに渡すのか、一つひとつの動きを順番に指示しなければいけないのです。その指示のために使う、コンピューターと人間の共通(専用)言語がプログラミング言語です。

つまり、プログラミングとは、人間がやりたいことを伝えるためのコミュニケーション手段のことであり、そのツールが文字であるか絵であるかは、あまり大きな問題ではありません」(中村さん、以下略)

「プログラミングをする」というコンピュータ専用の言語(プログラミング言語)を、カタカタとテキストで打ち込んでいく方法が主流でした。

しかし、最近は図形やイラストを操作してプログラミングができる「ビジュアル言語(ビジュアルプログラム言語)」も多く、それが子ども向けプログラミングアプリで行っているプログラミングなのです。

プログラミングアプリに意味があるか

プログラミングに必要な要素が図形やイラスト、ブロックなどでビジュアル化され、キーボードを打つことが難しい子どもでも、簡単にプログラミングができる仕組みになっているプログラミングアプリ。

ですが、作られたアプリ内でプログラミングをすることも将来に役立つのでしょうか。

「プログラミング言語を勉強してコードを書けるようになっても、それが将来役に立つとは限りません。プログラミングの世界は常に進歩しており、AIによるコードの自動生成もすでに始まっています。つまり、今子ども達がプログラミング言語を学習しても、その言語が大人になるまで残っている保証はないのです」

英語が海外の人とコミュニケーションを取るためのスキルだとすれば、プログラミングはコンピューターとコミュニケーションを取るためのスキルです。ですが、いくら英語の文法を暗記しても実践の場で使えなければ意味がありません。

プログラミングも、必要なのはプログラミング言語を必死に覚えることよりもコンピューターとコミュニケーションを取る(正しい指示をする)力を育むことです。

「大事なのは、試行錯誤をしながら、自分の目的にどうやって到達するか、ということです。プログラミングアプリを使うことで、試行錯誤しながら創造する力や、相手を意識しながら表現する力、周りから学ぼうとする姿勢など、社会に出てから役立つさまざまな力を養うことができます」

そのような背景もあり、プログフラミング教育の一環としてくプログラミングアプリは小中学校などの教育現場でも取り入れられています。

代表的な子ども向けプログラミングアプリ

プログラミングアプリは、その目的によって、「プログラミングそのものを学習するアプリ」と「プログラミングを使って何かを作るアプリ」に大別されます。代表的なアプリの特徴を中村さんに聞きました。

Scratch(スクラッチ)

MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで開発されたビジュアルプログラミング言語で、アプリ化もされています。テキストのプログラミング言語の構文をブロックに置き換え、ブロックの組み合わせによってさまざまな動きを表現できます。論理的思考力が身につく子ども向けプログラミングツールです。

Viscuit(ビスケット)

「メガネ」と呼ばれる2つの丸いエリアの中に同じ絵を入れ、その配置の違いによって絵を動かすことができます。ルールさえ覚えれば、小さい子でも簡単に使いこなせます。プログラミングの原理と楽しさを知る入門ツールです。

Springin’(スプリンギン)

「Springin’(スプリンギン)」の目的は、プログラミング言語を学ぶことではなく「作品をつくること」です。絵とアイコンを組み合わせるだけのシンプルな操作で、絵本やゲーム、楽器など、自由度の高い作品づくりができます。

<ほかにも子ども向けアプリを紹介している記事はこちら>

プログラミングアプリ15選!子どもに合ったアプリの選び方を教えます
プログラミングアプリ15選!子どもに合ったアプリの選び方を教えます
世の中にたくさんあるプログラミングアプリ。どれが子どもに合っているかなんて分からないですよね。そこで、信頼性できる子ども向けのプログラミングアプリを15個厳選。.....

「Springin’」は“紙と鉛筆”レベルでプログラミングできる

上記のようなプログラミングアプリの中でも、現在、小学校を中心に約300校で導入され、授業でも活用されているのが「Springin’(スプリンギン)」(※)です。

「Springin’(スプリンギン)」の目的を「作品をつくること」と明言する中村さん。アプリ内に、言葉による説明は一切ありません。重力や回転といったアイコンで直感的に操作できます。

「Springin’(スプリンギン)」の操作画面

「今の世の中は基本的にデジタルです。何か新しいものをつくりたいと思ったとき、プログラミングという手段があるかどうかで、できることは全く変わります。

とはいえ、そのために学習が必要になると、作品完成までの道のりが遠のいてしまいます。ですから『Springin’(スプリンギン)』では、使い始めるまでの時間と労力をできる限りショートカットできる仕組みを考えました。

目指したのは、“紙と鉛筆”の簡単さと自由さ。クオリティの高い作品づくりを実現するため、ペイントツールとサウンドツールの充実度にもこだわっています」

例えば画面内のボールを下に落としたいと思ったとき、一般的なプログラム言語では、重力の法則を踏まえて順序よくコードを入力していかなければいけません。

しかし、『Springin’(スプリンギン)』では、下方向の重力のアイコンを設定するだけです。

同じように、ボールを転がしたければ「回転」、固定したければ「ピン留め」のアイコンで、図形やイラストを好きなように動かすことができます。身近な物理現象や自然現象などの感覚的に知っている動きをプログラミング手法として取り入れています」

操作画面。例えば、風車のマークをタッチすると回転するようにできたり、スケート靴のマークは滑らなくなるなど、「できたらいいな」と思うことのほとんどが感覚的に実践できる

さらに、自分で描いた絵に音と動きを組み合わせて、動く絵本やゲーム、迷路やパズルなど、自由な発想で作った作品は、アプリ内の『マーケット』機能を使って公開したり、他の人の作品で遊んだりすることも可能。

「未就学のお子さんから大人まで、幅広い層の方が作品づくりを楽しんでいます。中には、子どもと一緒に初めて、今や『マーケット』の人気ゲームプログラマーになっているお母さんもいますよ」

YouTubeでは、「Springin’(スプリンギン)」の操作や作品を視聴することができ、操作性のよさがよく分かるほか、創造力もかき立てられます。

Springin’チャンネル

※小中学校に導入されているのは教育機関向けサービス「Springin’ Classroom(スプリンギンクラスルーム)」です。プログラミングの機能は「Springin’(スプリンギン)」と同じです

学校での「Springin’(スプリンギン)」の活用

学校の授業の中で、Springin’(スプリンギン)はどのように活用されているのでしょうか。

「各教科の授業の中で、学習効果をより高めるためのツールとして活用していただいています。

国語を例に挙げると、まず『道案内をする』というテーマで、目的地までの道順を説明する文章を作成します。その後、『Springin’(スプリンギン)』を使って、文章通りに点が移動する動画をつくり説明が正しいかを答え合わせします。

ほかには、社会の授業で調べたことをクイズ形式にしたり、音楽の授業で録音機能を活用してオリジナル楽器をつくったりしている学校もあるようです。

『Springin’ Classroom(スプリンギンクラスルーム)』は、その場で作品をシェアできる(学校内のみ)で、作品の発表や提出などもスムーズです」

当初は私立小学校への導入が多かったそうですが、徐々に公立の学校にも広がり、現在はプログラミング教室や塾などにも多く利用される場は増えていきそうです。

保護者が実感!「Springin’(スプリンギン)」で身につく力

「Springin’(スプリンギン)」を始めた子どもの保護者から、「本をよく読むようになった」「自分から勉強するようになった」という声が多く聞かれるようになったという中村さん。

「作品づくりというアウトプットが、インプットの重要性や楽しさを知るきっかけにもなっているのではないでしょうか」と話します。

一般的にプログラミングで身につくといわれる「論理的思考力」をはじめ、「創造力」「試行錯誤力」「物語力」「表現力」「マーケティング力」の6つの力に関して、Springin’(スプリンギン)によって子どもにどのような変化があったかをアンケートしたところ、前向きな回答が多数寄せられたそうです。

また、失敗を恐れて挑戦しない子どもが増えているといわれる中で、「アイデアをひらめき、それを形にするようになった」「楽しそうに試行錯誤するようになった」など、積極的に挑戦する姿勢が身についていることもうかがえます。

一方で、保護者の立場からは、「プログラミングアプリに熱中して長時間やりすぎてしまうのでは?」「パソコンがないとプログラミングはできないの?」などの懸念も聞かれます。

プログラミングアプリの注意点とは

「アプリの長時間利用やそれに伴う視力低下を心配される保護者もいらっしゃいますが、目が悪くなる原因はデジタルツールに限ったことではありません。ゲームなどと同様に、家庭内のルールを話し合ってもらえればと思います。

ただ、モニタの光が刺激になるので、寝る前は避けた方がいいですね。実は、『Springin’(スプリンギン)を始めてから、子どもがゲームをしたり動画を観たりする時間が減った』という声もあるんですよ。与えられたコンテンツに受動的に関わることと、自分で考えてつくることの違いなのかもしれません」

また、『プログラミングをするにはパソコンがなければダメ』というのは、もはや昔なのだそう。

「もちろんプロのプログラマならパソコンは必須ですが、マルチタッチの楽しさをより体感できるのはスマホかタブレット端末です。子どもの場合は、画面が大きいタブレットの方が操作しやすいでしょう」

「Springin’」で叶う真のプログラミング教育

学校でプログラミング教育が導入されたのは、プログラミング言語を習得させたりプログラマを育成したりするためではありません。その大きな狙いは、プログラミング的思考を育むこと。中村さんも、「プログラミングはあくまでも手段」と言います。

「実はSpringin’(スプリンギン)も、『オブジェクト指向』『イベント駆動型』『コンポーネント指向』といった現代プログラミング手法を体験できるように設計されています。でも、将来プログラマを目指すのでなければ、それらを理論や技術として学ばなくても問題はありません。

『Springin’(スプリンギン)』では、作品づくりの達成感はもちろん、試行錯誤しながら創造する力や、相手を意識しながら表現する力、周りから学ぼうとする姿勢など、社会に出てから役立つさまざまな力を養うことができますし、無意識で身に付けたその力が社会に出てから必ず役に立つと信じています」

“紙と鉛筆”のように感覚的かつ自由に、「Springin’(スプリンギン)」でものづくりの楽しさを体感することが、予測不可能な社会の中でも臨機応変に自分らしく生きていく力を育んでくれるはずです。

<画像提供>株式会社しくみデザイン

加藤朋実

広告代理店、企業の広報を経て、2008年よりフリーランスライターとして活動。子育て、ライフスタイル、教育、医療、住まい、グルメなど、幅広いジャンルで執筆を行う。人物インタビューや企業インタビュー、イベント取材など、取材経験も多数。そのほか、コラム原稿や書籍原稿の執筆なども手掛けている。趣味は音楽鑑賞と読書、野球観戦。プライベートでは一児の母。

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