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ソクたま会議室
2022.02.07
テーマ: ウィズコロナ時代の教育・子育てを考えよう

オフラインとオンラインの良さを融合することで、今より生きやすい社会を構築できるかもしれない/タレント・福田 萌

福田 萌

2021年、家族でシンガポールに移住したタレントの福田萌さん。コロナ禍という状況に加え二人の子どもを抱えながらの移住という決断に苦労することは多かったようですが、救われたのは自身が主宰する母親たちの憩いの場「ママズオンラインサロン」でした。

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コロナ禍の渡航、隔離生活、言葉の壁。ハードすぎた数ヵ月

私たち家族がシンガポールに住まいを移したのは、2021年の3月。けれど、世界的に新型コロナウイルスの感染が広まっている中での入国となるため、家族全員で入国することはできませんでした。シンガポールからの要請に従い夫は2月に、私と子どもたちは3月に入国。

夫不在の中での引っ越し作業も大変なものでしたが、それよりもつらかったのが入国後2週間の隔離期間でした。もう、「しんどい!」の一言に尽きます。娘も息子も、ホテルの部屋から出られないことはストレスに感じていないようでしたが、疲れないから寝てくれない(笑)。また、配られたお弁当やデリバリーも日本人向けというわけではないので、食べてくれないことがあると心配で…。何より、ゲームやYouTube漬けの日々で、母親として罪悪感に苛まれることが多くありました。

ようやく生活の基盤が整ってきた4月から娘は小学校へ、息子は幼稚園へ通うことに。渡航前はシンガポールでの生活をすごく楽しみにしていて、「英語の街に行くんだ!」と二人とも張り切っていたんです。ところが、まず立ちはだかったのが言葉の壁でした。

ハードルを自ら乗り越えたことで、一つ成長した娘

娘と息子、それぞれ小学校と幼稚園に通い始めた当初は全く英語が話せなかったため、周りの友だちとコミュニケーションが取れなかったのです。娘は、学校に行っても遊ぶ子がいなくてとてもつらそうにしていました。

でも、私が「日本人が多い学校に転校してもいいよ」と持ちかけると「私はまだ、頑張ってる途中。だからもう少し頑張りたい」と話したのです。娘と同じ系列の幼稚園に通う弟と支え合いながら、本当に頑張っていたと思います。

「頑張りたい」という強い意志を示した娘に対し、私ができるのは見守ることだけ。歯がゆい気持ちもありましたが毎朝、登校する娘の背中に向かって「今日も頑張れ!」と心の中でエールを送っていました。学校の先生に様子を聞いたり、学校の子のお母さんにメールをしてママ友の輪を作ったりということはしましたが、子ども自身で解決する部分が大きいと思ったので「学校どうだった?」「友達できた?」などと質問攻めにしないように気を付けました。

今はそれぞれ楽しく学校、幼稚園に通っています。そして、最近感じるのが娘の成長。ハードな環境を自分の力で乗り越えたという経験からでしょうか、周りの人の気持ちや痛みの分かる優しい子になったと思うんです。

状況に応じて迅速にアップデートするシンガポールのコロナ対策

シンガポールのコロナ対策は、日本よりも徹底していると感じます。マスクを装着しなければ罰金、外出や食事を共にする人数はもちろん、家族なのか友人なのかといった関係性までもが感染状況に応じて設定されます。

全ての施設の入退場時には「セーフ・エントリー」という記録システムを利用しなければなりません。ワクチン未接種者はどの施設にも入れないため、シンガポールのワクチン接種率は83.2%(2022年1月27日現在)。世界的に見ても、接種率が非常に高い国です。

学校では簡易検査キットが配布され、週に1度検査をして校内で陽性者が出ないように対応しています。幼稚園に通う息子が、ちょっと咳が出たり鼻水が出たりするだけで帰宅を促されるのは母親としてしんどい部分もありましたが…。

オンライン授業に関しても、とても慣れているイメージ。オンラインか対面かという切り替えの体制がとても迅速なんです。

シンガポールでは、スパッと決定が成され陽性者の情報は必ず共有されます。ある意味ドライな印象ですが、感染したことで何か言われたり誰かに謝ったりという風潮がないのは日本と大きく違う点でしょう。そして、従わざるを得ない状況に追い込まれるため、日々アップデートしている印象もあります。

日本のママは優秀! 頑張っている自分をもっと大事にしてほしい 

シンガポールに移住してもうすぐ1年が経ちますが、常に感じているのが日本は子育てのハードルが高いということ。

例えば、子連れでの外食は「周りに迷惑をかけないように静かにさせなきゃ」と気を遣い、母親と父親が交代で食事をとる…とにかく大仕事な感じがありますよね。一方、外食が基本のシンガポールでは、子連れに優しいのが当たり前。

また、朝食は屋台で食べるか家政婦が作ったものを食べるという家庭がほとんどで、わが家が暮らすサービスアパートメントも朝食サービス付き。家事代行も、上手に活用している家庭が多い印象があります。どの家庭も基本的に外食が多いので、「何で、家でご飯作ってるの!?」と言われることもありました(笑)。

だからこそ、「日本のお母さんは本当に頑張ってる!」と声を大にして言いたいんです。仕事や家事に追われて毎日クタクタなのに、日本にはそれが“母としての当然”という風潮がありますよね。

日本は基本的に母親の方が子育てに注力するというのが普通になっていますが、シンガポールでは母親が仕事をして父親が専業主夫というパターンも珍しくありません。夫婦の役割、母親・父親の役割にしばられていないステレオタイプ的な役割が少ないと感じるのです。

そして“母親はこうあるべき”という暗黙のルールがないため、ママ友の会話もとても自由に感じます。「私、料理しないわよ」と平気で言うママもいれば、「家事代行やシッターについてどう思う?」という話題が上がれば「利用したい」「私は自分で子育てするべきだと思う」など、それぞれがハッキリ意見を言い合うんです。

日本の共働き世帯を悩ます待機児童問題についても、シンガポールではほとんど聞いたことがありません。シンガポールのママ友には、「保育園に入れないことなんてあるの!?」と驚かれます。

多角的に見てシンガポールの方が子育てがしやすいかもしれないと感じていて、自分の子育てに対するハードルが下がっていく感覚もあります。また、シンガポールは多民族国家でいろいろな文化が混ざり合った国だから、“人は人”という考えが前提にあるとも思います。それゆえ他者の目を気にすることなく、自分の気持ちを思うままに発言できるという点は本当にラクだなって…。

私が強く伝えたいのは、日本のママたちがとても優秀だということ。だから、頑張っている自分をいたわって認めて、自分を大事にしてほしいんです。これは、私が主宰する「ママズオンラインサロン」でママたちと交流する中でも常に感じていることです。

自分の子育てを否定されない。そんな居心地の良い場を作りたかった

ママズオンラインサロン」は、2019年5月からスタートしたママ向けのコミュニティ。「一人でしない、みんなでする子育て」をスローガンに、立場や住んでいる場所、肩書を全て取り払って「一人のママとしてつながりたい」という私の思いをきっかけに立ち上げました。

私自身、出産前は漠然とではあるものの子どもが生まれてもそれなりにうまくやりくりできると思っていたんです。ところが、実際は全然違って悩んだり迷ったり、孤独を感じるという日々が続きました。私が出産した当時は周りに出産経験のある友人が少なかったため、誰かに相談することもできなかったのです。そうすると頼みの綱となるのがネットの情報なのですが、子どもの発達や育児中の不安などを検索して出てくるのは怖い情報ばかり…。悩みを吐露するブログを書いて「こんなことも知らないの?」「子育ての覚悟を知らない」「母親になる資格がない」など、辛辣な意見が届くこともありました。

私と同じように、子育て中に孤独を感じるママは多いんです。そして、本音で話せる場所も少ない。だから気軽に何でも話せる場所、ストレス発散やリフレッシュができる場所を作りたかったんです。

福田萌さん主宰「ママズオンラインサロン」の詳細はバナーをクリック!

ママズオンラインサロンを運営する中で一番大切にしているのが、“絶対に否定しない”ということ。「子育ては十人十色」というルールを大前提に置き、誰もが安心して相談できる場所として活動しています。「誰かに否定されるかも…」と思うと、なかなか自分の気持ちを発信できないママは多いと思いますが、絶対に批判されることがないので肩の力を抜いて発言できるし、誰にも言えない悩みを相談をする人も多くいます。そして、どんな考え方も生き方も尊重することで発展的な意見交換ができるんです。

メンバーは現在150名ほど。悩みや迷いはさまざまですが、共通しているのが「妻であり母親でもあるけれど、自分自身も輝きたい」という思いを強く持っていることだと思います。

掲示板への投稿やオフ会で積極的に発言する人もいますが、子育ての情報を得るためだけに活用してくれている人も多くいます。また、子育て中のママだけでなく妊活中の方や独身だけれどいつか結婚を考えている方、子育てがひと段落した先輩ママ。パパメンバーもいるんですよ。

以前は、オフ会など都内在住者にメリットのある部分も多かったのですが、コロナ禍ということもありオンラインでの交流をメインにシフト。そのため日本全国、海外からの参加者も増えました。

休校期間中はメンバー同士で子どもたちに絵本の読み聞かせをするというイベントを開催し、月に1度のZoomによるオフ会も定例化。自宅にいるからこそ、外出できないからこそ生まれた活動がたくさんあります。印象的だったのが、新たな道を切り開くことのできたママ。先輩ママたちからの「小学校に入学したら大変よ。保育園のうちはまだラク」という意見から、「じゃあ、保育園のうちに!」と起業したんです。

サロンがあるから“会えない”寂しさは感じない

子育て中の悩みは尽きないものですが長引くコロナ禍、新たな悩みに頭を抱えるママが多くいます。でも、だからこそ「サロンがあって良かった」とメンバーが話してくれました。そして、それは私自身も感じていること。子どもが生まれたばかりの頃に抱いていた「一人でもいいから悩みを受け止めてくれる人、一歩先に行く人がいてアドバイスをもらえたら」という孤独な願い。それがかなったと感じています。

サロンという場所があって世界中にママ友がいるような感覚だから、日本を離れたことの不安や寂しさも発散できています。Zoomでコミュニケーションは取れるし、YouTubeで発信することもできる。家族や友達と直接会うことはできませんが、オンラインが発達したことで心理的距離を感じないというのは大きな発見でもありました。

もともと夫は、「福岡に行くようなものだから、気軽に行こうぜ」と話していたんです(笑)。5時間ほどで日本に戻れるので、今のこの状況が良くなったらサロンのママ友に会いに行きたい!というのが今の私の夢でもあります。

夫の変化が、移住して一番良かったと思うことかもしれない

シンガポールに移住して良かったと感じることの中に、夫との関係性もあります。

日本にいた頃、夫は子育てに協力的だとは言えませんでした。いわゆるワンオペ状態で、私一人で子育てしている感覚。シンガポールに拠点を移した今は夫もリモートワークが多いため、夫婦で補い合いができていると感じます。

娘は中間反抗期にあたる年齢で口答えが多かったり巧みに言い訳を並べたりすることが多く、正直イラっとしてしまうことがあるんです。でも、夫が娘に対して「今の言い方は良くないんじゃない?」と入ってくれたり、毎朝娘の勉強に付き合ってくれたり。子どもたちの様子がよく見えるようになったからでしょうか、夫が担当してくれることが増えて日本にいる頃より気持ちがラクになりました。

もちろん、夫への要望はまだまだあります(笑)! 夫は無意識ながらも自分が子育てのサブリーダー的な立ち位置だと思っている節があります。リーダーである私が動けるのであれば、サブリーダーの役目はなし。そんな感じで前のめりになっていない部分が結構あって、もう少し当事者意識を持ってほしいと思うことはあります。

でも、もしかするとそれは私がリーダーとしてやり過ぎているという部分があるのかもしれません。子どもたちの成長を一緒に見守りながら少しずつ、夫にバトンを渡していけたらいいなと思っています。

アップデートを重ねることでオンラインの可能性はまだ引き出せる!

2020年の4月に緊急事態宣言が発令し、急速に進んだ教育現場でのオンライン導入。今の子どもたちはデジタルネイティブ世代ではありますが、社会全体で慎重に考える部分は少なくないと感じます。ネットリテラシー教育は十分でしょうか? オンライン授業に関しては、親がコミットできる時間の大小で差別化される面も併せ持っているのではないでしょうか?

もちろん、オンラインにはメリットがたくさんあります。娘が、日本で通っていた塾にオンライン通塾というかたちで継続できているのもオンライン体制が整ったからこそ。習い事の送迎の負担、移動時間の負担もなくなりますし、英会話やプログラミングなどは進捗が分かりやすく、学習内容によってはオンラインの方が有効的なものも多いでしょう。

また、現代社会における希薄化した地域コミュニティに代わる側面もあるかもしれません。それは、ママズオンラインサロンを主宰していて感じたこと。オンライン上であっても、交流の中から生まれる絆は確かにあるのです。

トンネルの出口を誰かが差してくれるような役割になっていったら、知恵を共有し精神的な支え合いができたら…子育てで感じる孤独感を和らげることができるのではないでしょうか。

オンラインの良さをもっと引き出すことができるように、オンラインとオフラインをうまく融合させるために、トライアンドエラーを繰り返しながら日々アップデートしていくことが必要でしょう。そしてそれが、全ての人にとって今より生きやすい社会を構築できる可能性につながるのだと思います。

福田萌

1985年生まれ。岩手県出身。現在シンガポール在住。横浜国立大学在学中から芸能活動を開始、タレントとして多くのメディアで活躍中。プライベートでは2012年にオリエンタルラジオの中田敦彦氏と結婚、二児の母でもある。2019年には自身の子育て経験を生かし、母親向けのコミュニティ「ママズオンラインサロン」を開設。YouTubeチャンネル「福田萌のYouTube-Moe ch.もえチャン-」では、シンガポールでの生活や子育ての様子を配信中。

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