コロナ禍は今までのPTAを見直すチャンス !義務感・負担感軽減への4つのヒント
長島 ともこ
「活動に時間がさかれすぎる」「儀礼的な話し合いが多い」など、存在意義も含めネガティブな声も多いPTA。新型コロナの影響で活動も軒並み縮小されていますが、PTAの存在意義やコロナ後のPTA活動について、PTA関連の著書を手掛けるライターの長島ともこさんが解説します。
無くすよりも、まずは見直しを
「子どもたちのすこやかな成長」を目的に、保護者(Parents)や教員(Teachers)が互いに協力し合い、運動会など学校行事のサポート、登下校の見守りをはじめさまざまな活動を行うPTA。
2020年春の一斉休校、繰り返される緊急事態宣言などにより、全国のPTAでは、これまで担ってきた学校行事のサポートやPTA主催のイベント運営などが、軒並み中止・縮小されています。
さらに、感染予防の観点から、通常総会や役員会、運営委員会等も中止もしくは簡略化して開催している状況が続いているPTAが多いのではないでしょうか。
しかし、このような状況でも、多少の制限はあるものの学校はこれまで通りにまわり、子どもたちも無事に学校生活を送ることができています。
「PTAって本当に必要なの?」「PTAなんて無くてもいいのでは」という声も聞こえますが、子どもたちの成長をサポートしていくためには、学校と保護者との協働は欠かせません。PTAは、この一部分を担っています。
コロナ禍が続く今、PTAは、「なくす」というよりも、「見直す」絶好の時期にきているのではないでしょうか。
PTAは入退会自由の任意団体
どう見直したら良いかについて考える前に、大前提として、私たち保護者が知っておきたいことがあります。
それは、「PTAは、社会教育法第三章第十条で規定される『社会教育関係団体』=会員が自主・自立的に運営を行う入退会自由の任意団体である」ということです。
みなさんの学校のPTAは、PTA本部が子どもの保護者全員に加入か非加入かの意思を確認し、加入する保護者は入会届を提出することをもって会員となる 「任意加入スタイル」になっていますか?
”子どもが入学したら、保護者は自動的にその学校のPTAに加入し会費を払う”という“強制(自動)加入”スタイルの場合は、PTA会員を募る本部と加入を検討する保護者のどちらもが気持ちよく活動できるような加入の仕組みを検討したり、加入方法について不明な点や腑に落ちない点がある場合は、本部役員やクラス委員に問い合わせたりなど、”PTAは任意団体である”というPTAの“根本”の部分について、保護者の一人ひとりが認識を深めたいものです。
<PTAの基礎知識についてはこちらの記事をチェック!>
PTAをよりよくする4つのヒント
現代は、PTAが誕生した1945年当時に比べると、共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、仕事、子育て、家事と忙しい日々送る保護者が増え続けています。
コロナ禍を“これまでのPTA活動のあり方を問い直す契機”と捉え、保護者が負担に感じることなく、参加しやすいコミュニティにしていくための4つのヒントを紹介します。
【ヒント①】活動内容を見直し、“棚卸し”を図る
コロナ禍でのPTA活動や集まりを改めて見直しましょう。ぜひ、PTA本部で対話を重ねながら下記に振り分け、活動の“棚卸し”をしてみてください。
- なくしても良い活動や集まり
- 頻度を減らした上で続けたい活動や集まり
- コロナでできなかったが落ち着いたら復活したい活動や集まり
これまで対面で開催していたPTA総会を書面開催もしくはWEB開催にしたことで、本部役員による会場設営や当日の議事進行など時間と手間を省くことができ、「PTA本部、学校、保護者の負担が減った」という声が多く聞かれます。
「コロナが収束したら対面に戻す」といった前例踏襲の発想から脱却し、これを機に、アフターコロナも書面もしくはWEB開催を通例化していきたいものです。
【ヒント②】役員、委員選出のルールを見直し、人員の縮小化を検討する
「全家庭が毎年なんらかの係を請け負わなければならない」など、独自のルールを設けて役員、委員選出を行ってきたPTAが多いと思います。
ですが、コロナ禍が続きPTA活動が縮小している今、このルールの存在意義を見直すチャンスです。必要に応じてこれまでのルールを撤廃もしくは変更し、役員、委員の配置や人員を縮小していくのも一案です。
ちなみに私は今年度、子どもが通う公立中学校で広報委員長をつとめました。「各クラスから1名ずつ広報委員を選出」というルールでしたが、年度始めの委員選出会がコロナで中止。止むを得ず、前年度末の委員募集アンケートに〇をつけてくれた方からランダムに声をかけ、人数も例年の3分の2程度で活動を行いましたが、全く支障はありませんでした。
委員や係によっては、”各クラスから何名選出”といったしばりをなくすだけでも、義務感・負担感の軽減につながるのではないでしょうか。
【ヒント③】オンラインを活用し、活動参加への敷居を下げる
コロナ禍において、メールやSNS、ビデオ会議といったオンラインは、日常生活に欠かせないコミュニケーションツールとして存在感を増しています。PTA活動においても、ビデオ会議アプリ「ZOOM」などを導入し、保護者会や親睦会は仕事とかぶらない平日の夜や週末に行うことにより、活動参加への敷居が下がることが期待できるのではないでしょうか。
保護者への連絡は、学校から配信する「学校連絡メール」を利用しているPTAが多いようですが、PTA独自の双方向連絡システムを導入することで、こまやかな情報共有が可能になると思います。
【ヒント④】PTA活動を「外注」する
PTA活動の保護者負担を減らすため方法のひとつとして、「外部の力を借りる」ことも注目されています。以下は、共にPTA役員経験のある保護者が立ちあげたPTA支援サービスです。
- PTA’S(ピータス)
「PTAはもっとラクちんでいい」をコンセプトに、印刷・清掃・クリーニング・行事の警備やサポート・備品レンタル・記念品の選定など、これまで保護者が行っていたり、やむくもに業者を探していた業務を業種やエリアから対応可能な企業を検索できるマッチングサイト。情報共有ツールkintone を提供するIT企業サイボウズと協同開発した「PTA専用アプリパック」を2022年2月頃リリース予定。
- ファミリード
PTA保護者向けのオンライン講座や講演会(家庭教育学級)の企画・運営をサポート。食育・マネー教育・英語教育などさまざまな分野の認定講師の中から希望に合う講師を探し、直接依頼することができます。
“これまでに経験したことがない””得意なメンバーがいない”PTA活動を抱えてしまうと、メンバーのモチベーションは下がる一方です。これらの業務をアウトソースすることで、時間的、精神的負担が軽減されることが期待できます。
PTAを自分ごとと捉え、時代に即したコミュニティを
先行き不透明な日々が続きますが、こんな時代だからこそ、「これまでずっとやってきたから」「周りの学校もそうだから」などと流されず、PTAの本来の目的である「子どもたちのすこやかな成長のため」に自分たちは何をしたらよいのか、
必要に応じてアンケート等でPTAについての意識調査を行い、保護者同士で、保護者と学校で対話を重ねていくことが必要なのではないでしょうか。
PTA活動は、本来、仕方なくやる、イヤイヤやるものではないはずです。
アフターコロナを見据えて
- 保護者一人ひとりがPTAを”自分ごと”として捉え、対話の機会を設ける
- 可能であれば、アンケートなどを行い“現状”を把握、共有する
- 組織のあり方、運営スタイルを見直し変えられることから変えていく
などにより、義務感・負担感が軽減し参加しやすいPTAに変わっていくことができるのではないでしょうか。
フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。