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ソクたま会議室
2021.05.24
テーマ: いい先生ってどんな先生?

いい授業をするのは当たり前、子どもたちの自由な発想を引き出しながら深い学びにつなげていく/小学校教諭・ぬまっち先生

沼田晶弘(ぬまっち先生)

沼田晶弘(ぬまっち先生)

「ぬまっち」の愛称で親しまれ、子どものワクワクを引き出すユニークな授業を実践し脚光を浴び続ける沼田晶弘先生。テレビ出演、執筆、講演、商品開発などマルチな活動を続け、ビジネス界からも注目を集めています。「すごい先生」「いい先生」として取り上げられる機会も多い彼が考える先生の役割とは?

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教育業界の中だけにどっぷりはまってしまうのはダメ

僕が 、“面白くていい先生””型破りな先生”として多くの方々に知られるようになったのは、2011年。

当時4年生を受け持っていたのですが、クラスのみんなで選んだ”内閣”が学級をリードし、”文科省”の子がテストの予想問題を作るなど授業の運営に関わらせる、音楽を流して終わるまでにクラス全員で掃除を終わらせる、などの取り組みが取材されて新聞に載ったんです。

その4年後、掃除の方法が少し進化して、音楽のサビの部分になると子どもたちが一斉に手を止めダンスを始めるようになりました。クラスのみんなで楽しく踊りながら掃除を効率的にこなす「ダンシング掃除」が、今度はバラエティ番組で紹介されました。

同時期に、WEB媒体の「この先生がすごい!」という特集で僕のインタビュー記事が載り、ひと晩でTwitterのフォロワーが1万人増えるというとんでもないことが起き、電車に乗っていると知らない人が「ぬまっち先生ってすごいよね」って僕の話をしている光景に出くわすなど、“周り”がガラッと変わりました。

いわゆる「有名な先生」となって取材や講演などの依頼がたくさん舞い込むようになり、嬉しかったですし、子どもたちもとても喜んでくれました。

一方で、「僕がやってきたことは、そんなにすごいことなのか」「周りの先生もこれくらいやってる人はいっぱいいる気がする」といった、素朴な疑問を抱いたことを思い出します。

僕は教員になった当初から、「教育業界の中だけでどっぷりはまることがないようにしよう」と常々思っていました。

日本にいる教員の数は、日本の就業人口の1%だそうです。その1%の教員が、残り99%を占める家庭の子どもたちを教えていることになります。ならば教員は、残り99%の世界も十分知った上で、「どんな授業にしたら子どもたちと楽しく学べるか」について考えたほうがいいのではないかと思ったのです。

だから僕は、できるだけ定時に仕事を切り上げ、学校以外の世界の人と積極的に交流してきました。先生である以上、いい授業をするのは当たり前。それで目の前の子どもたちを楽しませたい

99%の社会や世間の空気感と、子どもたちが「やりたい!」「楽しそう!」って思うことをキャッチしてくっつけることが、僕の役割なのかなと思っています。

『ONE PIECE』方式のクラス運営で、子どもたちのやる気に火をつける

子どもたちを馬に例えるのが合っているのか表現に悩みますが、クラス運営を競馬に例えると、先生の僕は騎手で、馬は子どもたちなんです。レース(クラス運営)がどんな風になっていくのかは馬(子どもたち)にかかっています。騎手(先生)ができることは、走り過ぎたら「今は勝負どころじゃないよ」と手綱をひき、時と場合に応じて「ここはインコース」「ここはアウトコース」などと導いていくこと。

1年単位で考えると、1学期は手綱を持ち、2学期は様子を見ながら乗っているうちに子どもたちがペースをつかんで勝手に加速しはじめ、3学期になると自分の意志と力で走る子どもたちから振り落とされないように僕がしがみつくという感じになります。

漫画でいえば、『ONE PIECE』方式のクラス運営をしています。従来の少年漫画のように、ヒーロー(主人公)が一人いるのではなく、「クラスはいろんな得意分野をもつ子どもたちの集団」と考え、その場その場で得意な子の才能を開花させながら、全体に波及させていく。

子どもによってやる気に火の付くタイミングはさまざまです。まずは火を点けやすいところから火を付け、1年かけて全員のやる気に火をつける。僕の自慢の仲間たちになっていくんです。

一人の発言をきっかけにクラス全員で盛り上がり、教師の想像を超える授業になる

授業では、教科書での学びを自分ごととして吸収することが大切だと思っています。たとえば国語の授業では、登場人物や物語の情景を自分に置き換えて考えるようアプローチしています。

昨年度は4年生の授業で「ごんぎつね」を皆で読んだのですが、一般的な授業では物語の最後にきつねの「ごん」は死んだのかどうかが論争になるんです。でも今年受け持ったクラスの子どもたちは、そこに一切興味を示さなかったんです。

ある子が、作者の新美南吉さんの生い立ちを調べてきて、「ごんは新美南吉さんなのではないか?」という仮説を立ててきたんです。クラス中で議論になり、めちゃくちゃ盛り上がりました。

学習指導要領はおさえつつ、子どもたちの自由な着眼点や発想を引き出しながら物語を味わうと、深い学びにつながるんです。

できない理由を探すのではなく、どうしたらできるようになるか工夫する

子どもたちの発想を生かす場は、授業だけではありません。昨年度は、コロナの影響で給食を楽しく食べることができませんでした。

じゃあどうするか。そこで実践したことのひとつが”恵方給食”です。節分の時期、「どうせ静かに食べなくちゃいけないのなら、みんなで恵方を向いて食べよう」といって恵方を向いて給食を食べたんです。

すると、子どもたちも「これいいじゃん」と、恵方についていろいろ調べてきて「節分を過ぎると恵方が変わるみたい。今度は北北西だよ」ということを教えてくれれば、「まじか!」といってクラスみんなで北北西を向いて食べたり、別の子が「恵方は人によって毎日違うらしい」という話を聞きつけてくれば、各自が自分の恵方を調べて給食を食べたり。友達と話ができないという状況は変わりませんが、何だか楽しいでしょ。

できない理由や楽しめない理由を探すのは簡単なんです。どうしたらできるようになるか、楽しめるようになるかを工夫することが大切なんです。マインドセットをポジティブに変えるというのも、先生の大切な役割だと思いますね。

教師になって今年で15年。将来の夢は、2つあります。ひとつは、365日毎日教え子におごってもらうこと(笑)。もうひとつは、教え子たちに有名になってもらって『情熱大陸』など人物ドキュメンタリー系の番組に登場してもらい、小学校時代の恩師として僕がコメント出演することです。

その日を楽しみに、日々子どもたちとワクワクしていきたいですね。

<取材・執筆>長島ともこ

沼田晶弘(ぬまっち先生)

沼田晶弘(ぬまっち先生)

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。1975年東京生まれ。東京学芸大学卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。同大学職員などを経て、2006年から現職。子どものやる気を引き出す斬新でユニークな授業が話題となる。『板書で分かる世界一のクラスの作り方』をはじめ、著書多数。教育関係のイベント企画、講演活動等も精力的に行う。

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