算数の文章問題が苦手な小学生を克服に導く2つのコツ
計算はできるのに文章問題が苦手という小学生は少なくありません。しかも、一緒に解き直そうとしても「簡単すぎてどう説明したらいいか分からない!」という問題も多いはず。そこで、算数の文章題に悩む親子へ向けて、小学校教員の神保勇児さんが克服するためのコツを伝授します。
算数の文章問題、間違いあるある
子どもが文章問題を間違えているのを見て、「ウチの子、大丈夫かしら?」と思う人もいるかもしれません。ですが、特別できないわけではなく、実はよくある間違いなのかもしれませんよ。
【あるある①】ひとつの言葉を見て立式する
小学1年生の算数では下記のような文章問題が出題されます。
例題1
みらいさんはあめを5こもっています。
おねえさんから8こもらいました。
あめはぜんぶでなんこになりましたか。
例題2
みらいさんはあめを13こもっています。
8こたべました。
のこりはなんこですか。
上記の問題には、「ぜんぶで」「のこりは」というたし算やひき算を連想させる言葉が入っています。問題によっては「あわせて」「ちがいは」を含む問題もありますよね。
しかし、単語ひとつでたし算かひき算かを決めればいいと覚えてしまうと、つまずいてしまう可能性があります。
なぜなら、小学2年生になると、下記の問題のような問題が出てきます。
例題3
カードをもっていました。
おねえさんからカードを8まいもらったので、24まいになりました。
はじめは何まいありましたか。
単語で判断しようとする子の場合、「8まいもらった」とあるせいで、8+24=32になると考えてしまいがちです。
大人にとっては、「24−8=16でしょ」と簡単に解ける問題なので、「どうやって説明すればいいのかわからない」と思うかもしれませんが、2年生の子につまずきが多い傾向がある問題です。
【あるある②】立式に必要な数を選べない
文章問題が難しくなってくると、出てきた数値をとりあえず使って計算しようとする子もいます。
例えば、次のような問題です。
例題4
1本136円の280mL入りのジュースを4本買います。
代金はいくらですか。
正しい式は、「136×4=544(答え544円)」です。しかし、当てずっぽうで問題を解く子は必要な数値を選ぶことができません。
「136×280=38080(38080円)」「280×4=1120(1120円)」など出てきている数値を使って計算してしまいます。
【あるある③】答えの単位を忘れる間違える
計算はできているのに単位を忘れたり、間違えたりする子はとても多いです。決して問題を理解できていないわけではなく、非常にもったいない間違いです。
【あるある④】式ではなくひっ算を書いてしまう
文章問題で回答欄に式を書かなければいけない場合、「136×4=544」「24−8=16」というような式をかかなければいけません。ですが、その場所にひっ算を書いてしまう子もいます。
【あるある⑤】出てきた順番に立式する
下記の例題を見てください。
例題5
みらいさんはみかんを6こもっています。
だいちさんはみかんをが9こもっています。
どちらがなんこおおいですか。
上記の問題で「6−9=3」という間違いをしてしまう子がいます。ひき算と気付いていても、大きな数から小さな数を引くことが分からないのです。そのため、問題に出てくる数の順番で式を書いてしまうのです。
文章問題の苦手を克服する2つのコツ
上記のような間違いをする場合でも克服することはできます。コツを紹介しましょう。
【コツ①】簡単な数値に置き換える
小学校高学年になってくると、文章問題の数値に分数や小数を扱います。数値も2~3桁になり、計算も複雑になってきます。そのため、文章問題を難しく感じてしまう子もいます。
例えば、下記は小学6年生の分数のかけ算の例題です。
例題6
1dLで4/5㎡ぬれるペンキがあります。
このペンキ2/3dLでぬれる面積は何㎡ですか。
一瞬、難しく見えてしまいますね。では、文章はそのままにして数値だけを簡単にしてみましょう。
1dLで3㎡ぬれるペンキがあります。
このペンキ2/3dLでぬれる面積は何㎡ですか。
数値を変えただけでものすごく簡単に感じませんか?
そして、文章の意味が理解できると1dLでぬれるものを2dLだったらどうか、など数字を変えてとも解きやすくなります。
【コツ②】問題を読んで図にする
文章問題は図を書くと理解しやすくなります。
しかし、文章問題が苦手な子は、問題文の内容がよく分かっていない場合があります。その場合、下記のような方法で、図にできるようにしていきましょう。
1行ずつ読んで図にしていく
問題文を1行ずつ読み、どんな内容なのかを確認して図に加えていくようにしましょう。そうするとうまく図にすることができます。
例えば、前述の<例題3>場合、次のように図にしていきます。
例題3
カードをもっていました。
おねえさんからカードを8まいもらったので、24まいになりました。
はじめは何まいありましたか。
- 「カードをもっていました」だから、テープ図の左の部分をかきます。
- 「8枚もらった」なので、テープ図の右の部分をかきます。
- 「24まいになりました」だから、テープ図全体が24となります。
- 図をきちんと書いてあるかを確認します。
結果、下記のような図が出来上がります。
結果の見通しを立てる
問題の意味が理解できていない子の場合、問題を解体し、順序立てて聞いてみると理解できる場合があります。
<例題3>の場合、最初にカードを何枚持っているか分かりませんよね。ですが、8枚もらったことは分かります。
「8枚もらった場合、最初に持っていたときに比べてカードの数は増えたの? 減ったの?」と結果の見通しを聞いてみましょう。
そして、「24まいになりました」は何をしたら、24枚になったのかを聞きます。
子どもに、「最初に何枚か持っていて、8枚もらったから24枚になった」ことに気付かせるのです。
なぜ、この式になるのか説明させる
図にした後は、この図が、なぜこの式になったのかを説明します。
そして、親が説明したことをノートにメモをさせてみてください。そして、逆に子どもから親に説明してもらいます。
そのとき、親は説明をほめてあげてください。説明することへの意欲につながります。
ただし、説明する段階に入るのは、同じような問題を正解できるようになってからです。文章問題の苦手な子にいきなり説明させても答えられないどころか逆効果になってしまいます。
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神保勇児さんへの相談はこちらから親が文章問題を教える3つのポイント
では、最後に文章問題を教えるときの3つのポイントを紹介しましょう。
【教え方①】式にすることだけを大切にする
文章問題を解くためには立式することと、正しく計算をすることが必要です。ですが、最初から2つ同時にできるようにする必要はありません。
文章問題を克服することをテーマにするのであれば、まずは計算は間違ってもいいので、問題を読んで正しく立式することに集中しましょう。極端な言い方をすると、計算間違いに怒り、子どものやる気を奪ってしまうようであれば、計算は電卓を使っても構いません
【教え方②】問題文と図と式を関連付ける
文章問題は、これまでに文章を図で表すことで解きやすくなると伝えましたが、子供に教えるときは、文章→図→式という一方通行になっているのは少しもったいないです。
下の図のように問題文と式と図をそれぞれ関連付けると文章問題の理解が進みやすくなります。
例えば、図と式を並べて「式のこの数字は図のどこの部分なの?」「式のこの数字は問題文のどの部分?」「図にあるこの数字は問題文のどの部分?」など、文章、図、式をいろいろな方向で理解し合うと類似問題も解きやすくなっていきます。
【教え方③】1つずつできるようにしていく
算数の文章問題に限った話ではないですが、勉強はスモールステップで進めていくことが大切です。文章問題はできるようになるまでにいくつもののステップがあります。
文章問題の克服へのステップ
- 結果の見通しができている。
- 図が描けている。
- 似たような問題の図が描けている。
- 立式に必要な数値を選ぶことができている。
- 立式できている。
- 単位をかいている。
- 図の説明ができる。
- 立式の説明ができる。
- 類似問題が解ける。
- 自分で問題づくりができる。
正解or間違い、で考えてしまうと、つい注意したくなってしまいます。しかし、スモールステップで考えると、「間違えてしまったけれど、正解に近づいてきている」など、子どもの成長に気付くことができ、アドバイスもしやすくなるはずです。
子どもを否定するのではなく、認めながら、親子で苦手を克服する喜びに向かってがんばってくださいね。
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国立大学大学院卒業後、公立中学校、国立大学附属中等教育学校で2年間講師を務めた後、大阪府の公立小学校と東京学芸大学附属大泉小学校で勤務し、現在、教師歴約20年。また、算数の教科書の執筆(啓林館)のほか、書籍・雑誌の執筆、教育委員会主催の研究会講演、オンラインセミナーを行っている。