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2021.10.29

小学生の音読で何が身に付く? 効果と練習法を解説します!

小学生の宿題の定番というと、国語の教科書の音読ですよね。でも、音読の宿題を一生懸命に取り組む子は少ない気がしませんか? 早口で読んだり、やる気なさそうに読んだり、声が小さかったり…。そもそも、音読を宿題に課す理由や子どもの学習に与える効果は何なのでしょうか? 元小学校教員のライター・高村ミチカさんに解説してもらいます。

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音読が宿題に出される理由とは? 

多くの小学校で、宿題に出されている音読。特に、低学年はほとんどの学校で毎日音読の宿題が出されています。一方、高学年になると、子どもや地域の実態に応じて、だんだん少なくなる傾向に。

「毎日聞かなくちゃいけなくて正直うんざり!」

「同じ文章ばっかり読んで、これって意味あるの?」

と感じている保護者も多いのでは?

そこで、まずはなぜ音読が宿題に出されるのかについて解説しましょう。

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そもそも学習指導要領では、音読を国語の「知識及び技能」として位置付けています。各学年の目標は、次の通りです。

【音読の目標】

低学年中学年高学年
語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること。文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読すること。文章を音読したり朗読したりすること。

この目標から、音読が宿題として課される理由が推測できます。低学年・中学年・高学年に分けて、詳しく見ていきましょう。

語のまとまりに気付くため(低学年)

音読の低学年の目標は、「語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること」特に大事なのが、“語のまとまり”に気付くことです。

例えば、

あかい りんごを たべた。

という文章を音読するときには、次の3つの段階を踏みます。

  1. “あ”を、“あ”と発音することを理解する。
  2. 「あかい」というひとまとまりの言葉として認識する。
  3. 「あかい」が「りんご」につながり、「りんご」は「たべた」につながる語と語のつながりを意識する。

つまり“あ・か・い”というバラバラの平仮名が、音読を通して「あかい」というひとまとまりの言葉として、また「あかい りんごを たべた。」という一つの文として認識されるのです。これが、音読をする大きな理由。

もちろん、学校でも音読の指導をします。しかし、定着のためには繰り返しの練習が必要。そこで家庭での音読、子どもが保護者と一対一で音読を聞いてもらうことで、語のまとまりを意識して読むことが定着できるようにしています。低学年で毎日音読の宿題が出る背景には、このような意図があるのです。

ちなみに、低学年の教科書で「あかい りんごを たべた。」のように、単語と単語の間を開ける「わかち書き」がされているのも、意味による語のまとまりを意識しやすくするためです。

文章の大体を捉えるため(中学年)

音読の中学年の目標は、「文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読すること」

音読をスラスラ読むには言葉の意味が分かっていることはもちろん、文章全体を把握していないと難しいもの。意味の分からない言葉があったり、文のつながりを理解していなかったりすると詰まってしまうからです。逆に、音読をスラスラ読める状態は文章の大体を捉えることができているといえます。

授業で扱う前に、予習として宿題に音読を出す場合もあるでしょう。もしくは、授業と並行して理解を深めるために繰り返し音読をしてもらうことも考えられます。

中学年の目標である文章の理解を深めるために家庭での音読をお願いしているのです。

表現力を高めるため(高学年)

音読の高学年の目標は、「文章を音読したり朗読したりすること」

ここでいう音読や朗読は、ただ文章の内容を理解して音声化することではありません。自分の思いや考えが聞き手に伝わるように読むことです。声の大きさや抑揚、速さや間の取り方といった音読の技能を生かして、表現を工夫することが求められます。

自分の思いや考えを音読につなげるのは、簡単なようで実は難しいものです。これは、歌を歌うときと似ています。どんなに思いがこもっていたとしても、強弱や抑揚をつける技能がなければ十分に表現できませんよね。自分の思いや考えを表現できるために、技能を高めるために、家庭でも繰り返し音読をするのです。

教科書に載っている文章全てが、表現を工夫することに重点を置いているわけではありません。そのため、高学年になると教科書を音読する機会が減っていきます。代わりに、詩や名文の音読が宿題に出されることもあるでしょう。

小学生が音読をすることで得られる効果とは

音読が宿題に出されるのは、言葉や文章の理解を深めたり表現力を高めたりする効果があるから。しかし、音読の効果はそれだけではありません。

本章では、小学生が音読をするとどんな効果が得られるのかについて解説をしていきます。

語彙力がアップする

教科書の文章には、新しく知る言葉がたくさん出てきます。初めて目にする言葉で全く意味が分からない言葉もあれば、聞いたことはあるけれど意味が曖昧だという言葉もあるでしょう。黙読だけでは読み飛ばしてしまうことがあるため、自分が分からない言葉になかなか気付くことができません。

声に出して読むと、つっかえてしまう言葉や文章が出てきます。これは、理解が十分でない箇所。このことに自然と気付くことが、とても重要なのです。

分からない言葉に意識が向けば、どんな意味なのかを考えるきっかけになるでしょう。まずは、前後の文脈から判断して大体の意味をつかむことができます。さらに、辞書で調べる習慣をつければ、意味を確実に理解することができます。

また、アクセントによる意味の違いに気付くことができるのも音読ならでは。日本語には“雨”と“飴”、“箸”と“橋”のように、アクセントによって意味が変化する単語があります。これらは、声に出してみないと正しくその言葉を使えているのか確かめることはできません。

正しく言葉を理解し、語彙力を高めるという意味で音読は有効なのです。

適切な話し方が身に付く

音読練習は、声を出す練習でもあります。

適切な声の大きさというのは、自分ではなかなか分からないもの。誰かに聞いてもらう経験が大切です。

音読の宿題は親などの大人が聞いてくれるため「相手に伝えよう」という意識が働き、はっきり発音したり声の大きさを調節できたりするようになります。また、より伝わりやすくするために、強弱をつけたり間を空けたりするなど工夫をして話すことにもつながるでしょう。

つまり、音読を続けることで相手に伝わる適切な話し方を身に付けることができるのです。

集中力が高まる

音読をすると、脳の前頭前野が活性化します。テレビを見たり、ゲームをしたりするときにはほとんど活動をしていない部位です。

前頭前野には、感情をコントロールする役割があります。そのため、刺激されることによってやる気や集中力が高まるともいわれています。

また、前頭前野は記憶や学習を司る部位でもあるため記憶力のアップにも役立つといわれます。そのため、他の勉強をする前に音読を取り入れるのも効果的です。

小学生の音読効果がもっと高まる練習法

ここまで、音読をする理由や効果について説明をしてきました。しかし、実際に家庭で音読している子どもの姿を見て「全然効果が感じられない!」と感じる保護者も多いのではないでしょうか。

ここでは、音読の効果を高める練習方法についてを学年別に詳しく解説します。

低学年:姿勢と口形を意識する

まず、音読をする前に確認をしたいのが姿勢姿勢を正しくすることで声が出しやすくなり、はっきりと発音することができるようになります。

ポイントは、背筋を伸ばすこと。体を真っすぐにすると肺から声帯へ空気の通り道ができるので、声を出しやすくなるのです。椅子に座るときは、足の裏を床につけることを意識します。また、万歳するように腕を上に伸ばすストレッチをすると背筋が伸びるので、音読の前に行ってみるのもおすすめです。

次に、口形(発声するときの口の形)を確認してください。口の開きが小さいと滑舌が悪くなり、聞き取りにくくなります。逆に大きすぎても、顎に余計な力が入ってしまいます。聞き取りやすい声が出せる口の形を子どもと一緒に確かめてみましょう。

低学年:“動作化”してみる

低学年の“読むこと”で大切なのは、登場人物の行動を具体的に想像すること。登場人物になりきって、体を動かしてみましょう。すると、動作の表現の理解を深めることができます。

例えば、

思わず 手を たたきました。

という表現。これだけでは、どんな風に手をたたくのか分かりませんよね。拍手をしたのかもしれないし、誰かをたたいたのかもしれない。

けれど、

「なるほど。」
と、思わず 手を たたきました。

といったように前後の文脈があると「手をたたく」は、思いついたときに“ポンッ”とたたく動作だと分かります。同じ言葉でも、動作が違ってくることがあるのです。

このように、音読の動作化を取り入れてみると文章の理解をより深めることができます。

高学年:音読記号を付けてみる

高学年では、工夫して読むことを意識してみましょう。役に立つのが、“音読記号”音読記号とは、抑揚を付けたり間を空けたりするなど、工夫しながら読むところに書き込む記号のことです。

記号の付け方に、特に決まりはありません。強く読むところは二重線、弱く読むところは一重線、間を空けるところは“<”を入れるなど、子ども自身が分かるものであればOK。

ただし、記号の付け過ぎには要注意。やみくもにただ記号を付けるのでは、あまり効果がありません。物語文なら登場人物の心情が変化するところ説明文なら筆者の主張が書かれているところに着目して記号を付けると良いでしょう。

高学年:古文を暗唱する

高学年では「易しい文語調の短歌や俳句、古文、漢文などを音読したり暗唱したりすることで、言葉の響きやリズムに親しむこと」が、国語の知識・技能として位置付けられています。そのため、教科書にも『枕草子』や『平家物語』などの古文が掲載されています。

だからといって、古文の文法や単語を覚える必要はありません。教科書には、古文と一緒に必ず解説が載っています。この解説を読んで意味を理解できれば良いのです。

大事なのは、「言葉の響きやリズムに親しむこと」。初めは、耳慣れない言葉に抵抗を感じる子どもも多いでしょう。しかし、繰り返し音読をしていくことで文語調の表現に慣れ、言葉の響きやリズムを楽しむことができるようになるはずです。

小学生の音読効果を高める親のサポートとは

最後に、音読に対しての親のサポートの仕方を解説します。1年生の間はしっかり聞いてあげていても、学年が上がるに連れて音読の宿題にマンネリ感を覚えるのは、親も子も同じ。子どものやる気を削がず、やる気をアップさせるには一体どうしたら良いのでしょうか。

“ながら聞き”はしない

ついついやってしまいがちなのが、“ながら聞き”。家事をしながら、仕事をしながら聞いているということはありませんか?

しかし、“ながら聞き”をしていると、子どもは「聞いてくれていない」と思ってやる気を失ってしまうことがあります。音読は、聞いている相手がいるということがとても大事。相手に伝えるために、声の大きさや速さを調節したり、抑揚を付けて工夫したりすることにつながるからです。子どもの前で姿勢や口の大きさ、声の調整などを確かめながら聞いてあげられるのがベスト。

とはいえ、どうしても時間が取れないことはあるでしょう。その場合にも、音読が終わった後に感想を話すなど、しっかり聞いていたことを子どもに伝えるようにしましょう。

タブレット等の録音機能を使う方法もあります。夕飯の支度をしている間に、子どもに音読を録音しておいてもらいます。夕飯を一緒に食べながら、録音を聞きましょう。「〇〇が上手だったね」とその場で褒めてあげると、子どものモチベーションアップにつながります。また、自分の音読を客観的に聞く経験によって「次はもっと〇〇に気をつけて読もう」と自覚することもできるのです。

つっかえても、叱らない!

子どもがやる気をなくしてしまう最大の要因は、“うまくできなかったときに、叱られること”。初めて読む文章や慣れていない文章を読むときには、どんなに国語が得意な子でもつっかえてしまうことは多くあります。

むしろ、つっかえた部分に学びがあります。つっかえてしまうというのは、その言葉や文の理解が十分でないということ。分からない言葉は辞書で調べたり、理解が難しい文はもう一度前の文章から読み直してみたりするように促してみましょう。

「なんでスラスラ読めないの!」と責めるのではなく、「分からないところに気付けてラッキーだね」と励ましてあげてくださいね。

褒める内容は具体的に

音読は、褒めポイントを探しながら聞きましょう。そして、音読が終わったときには具体的に褒めてあげてください。

「口がしっかり空いていて、聞き取りやすかったよ」

「〇〇というせりふをわざと早口で読んでいたのがいいね。驚いた気持ちを表していたのかな」

「まとめの部分で、一度間をとったのが分かりやすかったよ」

といったように、どの部分がどんな風に上手だったのかを説明することが大切です。ただ「上手だったよ」だけだと、マンネリ化する原因になりかねません。

ぜひ、子どもが工夫しているところや頑張っているところ見つけながら聞くようにしてみてましょう。

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毎日、宿題に出される音読。音読には、文章を理解することや表現力を高めること以外にも、語彙力がアップしたり話し方が上達したりするなど、さまざまな効果があります。そして、この効果を最大限に発揮するためにも、親のサポートは欠かせません。音読は、聞いてくれる相手がいることが大切です。

普段忙しくてなかなか聞くことができないという人も、ちょっとした工夫で子どもの力を伸ばすことができます。まずは、子どもの音読の“褒めポイント”を探しながら聞いて、具体的に褒めることから始めてみてくださいね。

【参考資料】
小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説」文部科学省

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高村ミチカ

小学校教員からライターへ転身。教員の経験を生かして、​​効果的な学習の仕方や子どもへの関わり方、教員の働き方などを発信している。またオンライン相談サービス「ソクたま会議室」では、保護者や教員の相談を受ける専門家として活躍中。1つのキャリアに縛られない働き方を目指し、本やWEBなど様々なメディアで企画や編集の仕事にも携っている。

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