英語が苦手な中学生がコツをつかめる3つの勉強法を分かりやすく解説します
英語は嫌いじゃないのになぜか点数が取れない。そんな中学生は勉強方法が間違っているのかもしれません。せっかく時間をかけて勉強していてもコツをつかめていなければもったいありません。そこで英語講師の佐竹美緒さんが英語の苦手を克服する勉強法を紹介します。
目次
高校1年生の時点で半数以上が英語が苦手
英語に限らず、勉強には“動機づけ”がとても重要です。動機づけとは、やる気やモチベーションのことで、「内発的動機づけ」と、「外発的動機づけ」があります。例えば、K-POPが好きな子が韓国語で歌いたいと思うのは「内発的動機づけ」が強い状態、テストや入試などを目的に学ぶのは「外発的動機づけが強い状態」です。
ただし、英語が苦手な中学生は、“動機づけ”が低いのかというとそうとはいえません。むしろ、最初は動機づけが高かったのに途中で低くなってしまった可能性もあります。ベネッセ教育総合研究所が行った「高1英語学習の実態調査」によると英語が苦手な高校1年生は55.4%で、そのうち76.7%が中学生の時に英語が苦手になったと回答しています。
中学生が英語を苦手に感じる理由
さらに、同調査では中学1年生の前半の時期ですでに英語が苦手になったという回答が18.2%でした。これは恐らく、小学校までの英語では聞いたり話したりする活動が多かったのに、中学生になると英単語のつづりや文法を正確に覚えているかどうかを定期テストの点数として示されるからではないかと思われます。
今の中学生は英語が教科化される前の小学校で英語を学び、英語が成績化はされてきませんでした。中学生になって初めて英語で成績がつくという経験をしたことになります。単語のつづりや文法知識の正確さを求められるようになり、苦手意識を持つようになったと考えるのが妥当でしょう。
英語は本来、コミュニケーションの手段ですが、英語を“外国語として学ぶ”日本人は英語を教科の一つとして学んでいます。そうなると、テストの良し悪しに一喜一憂することになり、英語本来の“コミュニケーションをすること”を楽しめなくなり、それが中学生が英語を苦手と感じる一因でもあるのではないでしょうか。
つまずきやすい英語のポイントと克服法を紹介
ここからは、中学生がつまずきやすい英語のポイントと克服するための勉強法を紹介していきましょう。
【つまずきポイント①】単語のつづりと発音が一致しない
中学生がぶつかる壁のひとつが、英語のつづりと発音を大量に暗記しなければならないということです。実は、英語の母語話者も10人中1人が単語を正しく読むことに困難を抱えているという研究があります。
英語は同じ文字でも単語によって発音の仕方が変わることがあります。例えばcut(切る)とput(置く)ではuの発音が違います。また、fight(戦う)のghやknife(ナイフ)のkは発音しません。
さらに、can(~できる)、car(車)、cake(ケーキ)のaは、全部発音が違います。
このため、英語では「知らない単語は読めない」という事態が起こります。つまり、全ての単語で、形(つづり)・発音・意味をセットで覚えなければならないのです。
克服するための勉強法
フォニックスを習得する
英語のつづりと発音の関係は、全てが不規則という訳ではなく、ある程度はつづりと発音が規則的に対応しています。この、規則的な部分だけでもきちんと読めるようにしようとする試みが“フォニックス”と呼ばれる指導法です。
フォニックスとは、つづりと発音の法則を学ぶことで、正しい読み方の予測ができる学びでアメリカやイギリスの教育に取り入れられています。開隆堂出版株式会社の公開データ「英語指導資料 中学で学ぶ英単語 平成24~27年度版」によると、身に付けることで知らない単語でも7割程度は発音できるようになると期待されています。
例えば「cat」という単語を聞いたとき、この単語がk-a-tという3つの音で成り立つことが分かりますよね。このときフォニックスの法則に則って「kと発音する文字はcかkのどちらかである」という知識があると、音からつづり字を思い出せるようになります。
またfatやhatという単語を見た時、「catとは一番目の文字が違うだけだ」ということに気づけば、どのように発音すればいいか自分で考えられるようになります。
フォニックスにはいくつも学習法がありますが、最近は「シンセティックフォニックス」という手法が注目されています。日本語の書籍も出版され、家庭でも使いやすい構成になっているので、試してみるといいかもしれません。
【つまづきポイント②】過去形になるときにどう変わるのか分からない
中学生が英語を苦手と感じる理由に、不規則動詞の活用もあります。英語では過去形と過去分詞形には動詞の語尾に-edをつけるというルールがありますが、不規則動詞はこれに当てはまらない活用の仕方をします。
例えば、choose(選ぶ)という動詞は、過去形がchose、過去分詞形がchosenとなり、語尾に-edが付きません。
不規則動詞のほとんどが日常的によく使われる動詞ばかりなので、英語を使う機会が多ければ、頻繁に見たり聞いたりすることで、徐々に間違えなくなっていきます。
ですが、日本の中学生が英語を実際に使う機会はほとんどないので、暗記力に頼るしかありません。不規則動詞を読んでも聞いても理解できるようになり、さらには書くことも話すこともできるようになるには、相当な練習量が必要です。
実際にはなかなか使えなくても、知識として身に付けておく必要があるということで、テストにはよく出される傾向にあります。
克服するための勉強法
中学校で学ぶ不規則動詞は約70個だけ
中学校で学ぶ不規則動詞は、教科書によって違いはありますが約70個前後で紹介されていることが多いようです。意外と少ないと思いませんか?
このうち、think(考える)-thought-thoughtやbring(持ってくる)-brought-broughtのように、似たような変化の仕方をする単語をまとめると、覚え方はもっと楽になります。
不規則動詞の活用は、Youtubeを検索すると実に様々な覚え方が無料で紹介されています。下記のように変化の仕方のパターンをまとめた動画もありますので、視聴してみるといいでしょう。
【つまずきポイント③】英単語がもつ複数の意味に混乱する
学校の授業で習った意味はしっかり覚えていても、学校で習った文脈とは違う文脈で使われると意味が通じない、問題が解けなくなるということはないでしょうか。
英単語は辞書を引くとたくさんの意味が書いてあります。英語に苦手意識がある中学生はどれを覚えたらいいか分からないのかもしれません。
暗記した意味が完全に当てはまるときしか理解できない、というのではなく、「この意味とこの意味で使われるなら、こういう解釈をしてもいいかもしれない」と考えられるようになると、どんな文脈で出て来ても「たぶんこういう意味じゃないだろうか?」と推測できるようになります。
克服するための勉強
スキーマを習得する
このようなつまずきをクリアするには「スキーマ」を避けて通ることができません。スキーマとは、日本語にはない英語ならではの物事の捉え方のことです。
例えばtakeという動詞には「取る」という意味があります。
しかし、ほかにも…
take a busはバスに乗る
take a bathはお風呂に入る、など
日本語の感覚では全く違う行為に対して同じtakeが使われます。
また、take offには、「(服を)脱ぐ」という意味と「(飛行機などが)離陸する」という意味があり、日本語の感覚では、なぜ同じ表現を使うのか理解しにくいところがあります。
もし、英語と日本語が物事を同じようにとらえているのであれば、言葉を一対一で暗記していけばいいので、漢字を覚えるようにどんどん覚えられるはずです。ですが、実際には単語や文法を覚えるために、日本語とは異なる物事の捉え方まで理解し、覚えなければならないのです。
スキーマを理解できてない状態では、「英語はいくら勉強してもできるようにならない」と感じるのも無理はないでしょう。
スキーマ習得にオススメの本を紹介
慶應義塾大学環境情報学部教授の田中茂範さんの著書では、haveやgiveなど中学生が学習する動詞のコアな意味が分かりやすく解説されています。英語の母語話者が基本語をどのように解釈しているか、なぜ日本語にするとたくさんの意味が出て来るのかよく分かります。
英文法についてのスキーマを身に付けるには、言語学者の大西泰人さんの著書が分かりやすいです。英語の基本的な動詞と同じで、英文法も、英語の母語話者の中ではとてもシンプルなルールで使われていることが理解できます。
ほかにも英語の語彙を増やしていくには、下記のアイテムなどを活用するのはいかがでしょうか。
【おすすめアイテム①】英単語カレンダー
リヴォルヴ学校教育研究所が出している「英単語カレンダー」は、毎日1つの英単語がカレンダーの中で紹介されています。
英単語は、中学校の教科書と一致しているわけではありませんが、このカレンダーのいいところは、発音が近い単語を近くにそろえているところです。毎日少しずつ発音の違う単語が出て来るので、発音が分からないということがありません。毎日見ているうちに自然と英語の音のルールも身に付きます。
【おすすめアイテム②】BBカード
トランプのような作りになっていて、楽しく遊んでいるうちに、様々な英語の表現が身に付くように出来ています。
どんな言語でも、子どもは言葉遊びを通じて語彙を増やしていきます。日本語でも歌、しりとり、早口言葉、ダジャレなど、様々な言葉遊びがあり、こういう遊びを通じて日本語らしい音の組み合わせや日本語特有のリズムを身に付けていくのです。BBカードは英語らしい音の組み合わせや英語特有のリズムを身に付けるのにも効果があります。
書くより暗唱で苦手を克服できる可能性も
保護者の世代の人は、英単語を覚えるときに「ひたすら書け」と言われてきたと思います。もしかすると英語が苦手なわが子に書くことを勧めている人もいるかもしれません。しかし、書いて覚えるという勉強法の効果が疑問視されるようになってきました。
書いて覚えることが支持される理由に、五感を使うため脳が刺激されるというものがあります。また、何度も書くことで、手続き的記憶となることも期待できます。
手続き的記憶とは
例えば自転車に乗ったり、車を運転したりする時に、頭で手順を考えなくても、身体が自動的に反応する、というような記憶方法のこと。
ですが、書いて覚えるよりも暗唱する方が効率良く覚えられるという意見もあります。暗唱の場合、英単語を1回書く時間で4回以上言うことができます。この時、やみくもに暗唱するのではなく、どんな意味だったか、どんな発音だったか、どんなつづりだったか、思い出しながら暗唱するのがいいそうです。これを“想起”といいます。
ひたすら書くのも決して悪くはないのですが、書くことが目的になってしまうと英単語で埋め尽くされた紙を見て満足し、結局覚えられない可能性があります。
また、子どもによっては、“書くこと”自体が精神的な負担になる場合があります。
書くという動作は、目で見た物を再現するよう腕から指に指令を出し、その指令通りに手指を動かす、という複数のプロセスが合わさっています。このプロセスのどこかに弱いところがあると、書く作業がスムーズにいきません。
このような子は、英単語の書き取りなどを宿題に出されると、ほかの子よりも時間がかかり、かえって勉強の効率が悪くなってしまうこともあります。
とはいえ、英語教師の中でも、「漢字や英単語は書いて覚えるものだ」と考えている人が多いのも事実ですが、子どもが書いて覚えるよりも暗唱するほうが得意であれば、学校に対して「書く以外の覚え方に慣れている」ということを伝えてみるといいかもしれません。
親が英語好きになることが一番のサポートになる
子どもを英語好きにするために親ができる方法。それは、親が英語を好きになることです。
どの教科でも、親は「自分にできなかったことを子どもにはできるようになってほしい」と思いがちです。特に英語は、「自分は話せないからこそ、子どもには英語ができるようにさせたい」と思うケースが多いです。
ですが、子どもに勉強させる前に、自分自身が英語でコミュニケーションする楽しさを味わってみてください。
親が臆せずに外国人と楽しそうに話す姿を子どもに見れば、子どもは自然と「自分もそうなりたい」と思うものです。何も子どもの見本となるよう流暢に話せと言っているわけではありません。
英語を上手に話すことよりも、肌の色や髪の色など見た目が違っていても、話す言葉が違っていても、お互いに歩み寄り、分かり合うことができる、ということを背中で示してほしいのです。
英語はあくまでもコミュニケーションの手段、一つのツールでしかありません。英語に限らず外国語を学ぶ目的は、自分とは違う考え方や生活習慣の人を受容することなのです。ぜひ、率先してお手本を見せてあげてください。子どもはその背中を見て育ちます。
苦手を得意に変えた子はどんな子か
英語が苦手な中学生の中にも、本心では「できるようになりたい」と思っている子もいます。前述の調査でも、社会人になったときに英語が必要になると感じている高校1年生は9割もいます。
英語が苦手な中学生は「自分は英語を使わなくて済む仕事を探すから英語はいらない」などと言い出すこともありますが、中学生の段階であきらめてしまうのは、とてももったいないことです。
私の知り合いに中学生の時に英語が苦手だった人がいます。中学卒業後、工業高校、大学に進学し、大学生になっても同級生と比べて英語は苦手と感じていたそうですが、コツコツと英単語だけは覚え続けていたそうです。その効果は大学院になってから現れてTOEICが600を超えるようになりました。その後、希望の企業に就職することができ、今では海外を相手に仕事を行っています。
ほかにも、中高時代に英語はずっと苦手だったという大学生が奨学金を受けて留学し、英語がペラペラになって戻って来たこともあります。
彼が留学をしたきっかけは「トビタテ!留学JAPAN」という文部科学省が展開する留学促進キャンペーンです。高校生と大学生が対象で、英語力よりも「海外で何を成し遂げたいのか?」という情熱が選考基準となります。
「トビタテ!留学JAPAN」のような制度では、小さいころから自分の五感を使って豊かな経験をし、自分の言葉で自分の思いを表現できる子が際立ちます。
英語への苦手意識を克服していくことは大切です。ですが、テストの点数ばかりを意識するのではなく、五感を使ってさまざまな経験をし表現する力も育んでください。それが大人になり社会に出たときに“コミュニケーションとしての英語”が使える人物になっていくはずです。
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イギリスで修士号を取得した後、海外数ヵ国で勤務した経験を持つ。結婚を機に英語講師に転身し、大学や専門学校で教えて10年以上経つ。大学入試二次試験や大学院入試の英語指導、TOEICやGTECなど国内の各試験指導に加え、TOEFLやIELTSなど留学対策も手掛ける。英検1級、TOEIC 950。