【小学校の教育】アクティブラーニングとは? その意味をわかりやすく解説!
「アクティブラーニング」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。2020年度から導入された新学習指導要領の中でも重要なキーワードとして多くのメディアで取り上げられてきましたが、アクティブラーニングとは、そもそも、どんな意味なのでしょうか。なぜ必要なのでしょうか。小学校の教育に、どのように取り入れられているのでしょうか。アクティブラーニングについて知っておきたい基礎知識を紹介します。
目次
アクティブラーニングの意味は?
アクティブラーニングとは、ひと言でいうと課題の発見や解決に向けた主体的・能動的な学びのこと。授業の中で、先生から一方的に話を聞く“受動的”な学習ではなく、自ら調べたり書いたり、先生と生徒あるいは生徒同士で意見を発表しあったりなど“能動的”に学習することを表します。
アクティブラーニングという言葉が知られるようになったのは、2014年ごろ。
日本では、文部科学省が定めた小・中学校、高校、大学と、それぞれの教科の目標や大まかな教育内容である「学習指導要領」をもとに教育が行われています。
「学習指導要領」は、グローバル化や情報化など社会の変化を見すえながら、ほぼ10年に1度改訂を行い、子どもたちがこれから生きていくために必要な資質や能力の見直しを図ってきました。
新しい「学習指導要領」は、文部科学省に置かれた審議会・中央教育審議会(略称・中教審)で有識者による議論や意見の募集により作られていきます。この中教審で、アクティブラーニングという言葉が初めて登場したのが、2012年でした。
「これまで日本の大学に多かった講義中心の授業を脱却し、教員と学生がコミュニケーションを重ねながら主体的に答えを見出す授業=アクティブラーニングを推し進めていこうとなりました。
2014年ごろから、『大学だけではなく小・中学校、高校も一貫して見直し、授業の“中身”だけでなく“方法”、“何を学ぶか”ではなく“いかに学ぶか”を重視した教育を』という流れになり、アクティブラーニングが一気に注目されはじめたのです」と話すのは、茨城県古河市立総和南中学校長の森田泰司さんです。
アクティブラーニングと主体的・対話的で深い学び
実は、2020年から実施されている「新学習指導要領」には、それまで記されていたアクティブラーニングの言葉が消えています。
文部科学省によると、「アクティブラーニング」という表現は、定義があいまいな外来語で抽象的であるから、とのこと。
これをふまえ、「新学習指導要領」では日本語で、主体的・対話的で深い学びという表現に置き換えられ、「アクティブラーニング」は主体的・対話的で深い学びを実現するための視点としてとらえられています。
いずれにしても、保護者目線で考えると、意味はなんとなくわかるけれど、アクティブラーングにより学校の授業はどう変化するのか、子どもはどのように成長していくのか…など、イメージがしづらいものです。
「そもそも学童期の子ども、特に小学校1~2年生の子どもたちが、1時間ずっと座りっぱなしで教員の話を聞くのは、心身の発達から考えても無理なんです。
ですから、1時間ずっと先生が話すのではなく、子どもたちが自分の考えをノートに書いたり、友達同士によるグループ学習で話し合い、話し合ったことを発表する機会を設けるなどという授業の工夫は、これまでも行われてきました。
小学校のアクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)とは、全く新しい教育概念というわけではなく、教職員が小・中学校教育でこれまで取り組んでこと改めて意識し“より深い学びにつなげる”ことに意味がある、と思っていただけるとわかりやすいと思います」(森田さん)
アクティブラーニングで育む自分で考える力、問題解決力
なぜ今、“アクティブラーニング・主体的・対話的で深い学び”が大切なのでしょうか。
「ひと昔前、知識は学校の先生から教えてもらったり、本を読んだりして得るものでした。しかし、超情報化社会の現代、知識はインターネットでいくらでも手に入れることができます。これからのAI時代を生き抜くためには、子どもたちが自分で考える力を身に付け、得られた知識を活用しながら新しいアイディアを生み出したり問題を解決したりする力を育むことが必要になってきます。そのために必要なのが、主体的・対話的で深い学びなのです」(森田先生)
以下、主体的な学び、対話的な学び、深い学びを実現するために、実際に学校でどんな取り組みが行われているのか紹介します。
主体的な学びの実現に向けて
最初に基礎知識を教える際、子どもたちの興味・関心をひきつけるよう導き、子ども自身が“知りたい”“学びたい”と能動的に授業に参加するよう促します。自分から手を挙げるなどのアクションは起こさなくても、先生が話している内容をしっかり聞き、分かろうと努力していることも“主体的な学び”といえます。
対話的な学びの実現に向けて
出した問いに対し、先生が手を挙げている子どもを一人指して答えてもらって終わりにするのでなく、先生と子ども、子ども同士、地域の人と子どもなどで対話しながら自分と他者との意見を比較したり、新たな気づきを得たりしていきます。
深い学びの実現に向けて
授業の最後に、自分なりにこれまで考えたことや新たに調べたことを関連づけながら振り返ることができるよう導いたり、自分が課題を調べたことを、さらに調べて新たに分かるよう促すことが深い学びにつながります。
“主体的・対話的で深い学び”の実現のためには、授業を担う先生の技量が大きくものをいうように感じますが、
「各自治体の教育委員会主催の研修や研究授業、学校訪問などを通し、現場レベルで先生たちの意識を変えていくような取り組みがなされています。校内ですぐれた先生の授業を見合うのも手っとりばやいですし、効果的だと思いますね」(森田さん)
これまで、先生は“教える人”でしたが、これからの時代は、子どもたちをつなぐコーディネーター、ファシリテーターの役割を担っていくのだと思います。黒板でチョーク1本もって、「これが大事なんだよ。これテストに出るよ」という教育は終わったのです。
「教員は学習の成果をペーパーテストの結果で一面的に見るのではなく、課題に集中し、目標設定して取り組みながら人間性を磨いていくサポートをしていかなくてはいけません」(森田さん)
親は“教育キーワード”にふりまわされず、どっしり構えて
アクティブラーニング、プログラミング教育、ICT教育、GIGAスクール構想etc。新学習指導要領による教育がスタートした2020年は“教育改革元年”として、これらの言葉がさまざまなメディアで取り上げられました。
このような状況を目の前に保護者はさまざまなことを思います。
「教育内容がいろいろ変わっているけれど、うちの子に何か新しいことをさせたほうがいいのかしら」
「プログラミング教育が始まるのなら、うちの子をプログラミング教室に通わせたほうがいいのかしら」
「パソコンを買ってあげたほうがいいのかしら」・・・などと考える人も多いと思いますが、
しかし、「保護者の方は何も心配することなくどっしり構え、これまでどおり、お子さんを学校に送りだしてあげてください」と、森田さんは強調します。
「プログラミング教育は、論理的思考を育むためのツールのひとつであり、ICT教育、GIGAスクール構想も、“アクティブラーニング・主体的・対話的で深い学び”を実現するためのツールのひとつです。教育改革だからといって、習い事をふやすなど新しいことを始める必要はありません。
ただし、何でも興味をもたせて、興味や関心とか疑問にしっかり反応し、返してあげることが大事だと思います。
仕事、家事、子育てと忙しい毎日かもしれませんが、わが子が「ママ、〇〇って、△△だよね」などと言ってきたら、「今忙しいから後でね」などとスルーするのではなく、「なるほど、いいところに気が付いたね」「そうそう。そういうのもあるよね」などと答えながら、たくさん会話を重ねてほしいのです。
ユニークな子どもの発想をなるべく受け止めてあげてください。それにより、子どもは自分に自信がついていろいろなことに関心をもつようになり、学校の授業でも、自分の意見を言えるようになると思います」(森田さん)。
非常にすぐれた日本の教育に足りないものは何か
「教育改革元年」ともよばれる2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大による突然の休校などもなり、これまでになく、学校や教育が注目された年となりました。
「さまざまな角度であらゆる議論がなされていますが、大前提として知っておいて頂きたいのは、日本の小・中学校の教育内容は、世界でもトップレベルであるということ。北海道から沖縄まで、誰もが一律に教育を受けることができ、それにより、誰もが読み・書き・計算ができるようになる。非常にすぐれたシステムなのです。
後足りないのは、論理的思考やICTを活用する力、自分で考える力、考えたことを発信する力です。これらをしっかり育ていくための教育改革であることを認識しながら、学校、家庭、地域が一体となって子どもの学びをサポートしていくことが大切です」(森田さん)。
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フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。