親子で楽しむカブトムシの幼虫の育て方/昆虫ハンター・牧田 習が成虫まで育てるコツを教えます!
昆虫ハンター・牧田 習さん連載「好きが仕事になりました」。第7回目は、カブトムシの幼虫の育て方を教えてもらいます。「もうすぐ冬だけど、カブトムシの幼虫見つけられる?」と思った人もいるかもしれませんが、カブトムシの幼虫は秋の今が旬! カブトムシは飼ったことがあっても、幼虫から育てたことはないという親子必読の面白さです。
目次
カブトムシの幼虫は“購入”で手軽に手に入れよう
子どもたちが大好きな昆虫の一つ、カブトムシ。今の時代はネット販売やホームセンター、昆虫ショップ、ペットショップなどで確実に手軽に幼虫を手に入れることができます。
でも、毎年手に入るがゆえ何となくカブトムシへの愛着がマンネリ化してはいませんか? 「最初はあんなに喜んでくれたのに、今は感動が薄い!」なんて感じている親もいるはず。
そんな家庭におすすめしたいのが、カブトムシの飼育を一歩レベルアップさせて幼虫から育てることです。
僕がカブトムシの幼虫を育てることをおすすめする理由は、子どもの好奇心を伸ばすことができると思っているからです。
カブトムシの幼虫で好奇心が伸びるポイント!
【カブトムシと共に過ごす時間が長くなる】
カブトムシは越冬できないため、来年の夏まで一緒にいることはできません。迎え入れたばかりなのに、すぐに死んでしまった…という経験をしたことのある人も多いのではないでしょうか。でも、幼虫から買えば冬を越して次の夏~秋まで一緒にいることができます。
【どのような成長過程をたどるのかを観察できる】
幼虫→さなぎ→成虫までの過程を、間近で見守ることができます。自然の中にいる幼虫は、その成長過程を全て見ることは不可能です。
自然界のカブトムシは8~9月に卵を産み、2週間程度でふ化。その後、次の夏が来るまでゆっくりと成長していきます。秋の今、土の中にはふ化した幼虫がたくさんいるはず! カブトムシの幼虫は、クヌギやコナラなどが生える雑木林の木の根元の土に住んでいますが、土の中が透けて見えるわけでもなく、どこに幼虫がいるかは土を掘ってみなければ分かりませんよね。
もし、見つけるのが難しい場合は手軽に購入するという手があります。
温室管理をしているお店では一年中、販売していることもありますが、だいたいは秋~冬にかけて幼虫を販売するお店が増えます。10~11月は、幼虫販売のピーク。まずはお子さんとネットショップやホームセンターをチェックしてみましょう。
カブトムシの幼虫飼育セットを用意しよう
カブトムシの幼虫を購入することが決まったら、お迎えする前に飼育環境を整えておきましょう。
幼虫飼育に必要なもの
- 飼育ケース(虫かご)
ホームセンターはもちろん、100円ショップでも購入可能。複数匹飼うなら、飼育ケースは幼虫の数分を用意するのが幼虫にとって親切です。一匹なら、幅15㎝くらいのものが良いでしょう。 - 飼育用マット(土)
幼虫の寝床であり食料でもあるマットは、市販されているものだと腐葉土を粉砕したものや樹木のチップを発酵させたものが一般的。発酵マットは発熱したり臭いが気になったりする場合があるので、ガス抜きという作業が必要です。開封して1~2日程度置いて殺菌したものを使用しましょう。
あらかじめガス抜き処理のされてあるマットなら、購入してすぐに使えますよ。 - 霧吹き
幼虫をマットで飼育するにあたって、マットが乾燥しすぎないようにするために霧吹きを使って適度に湿らせてあげるようにしましょう。
基本的には、これだけ用意しておけば飼育可能です!
カブトムシの幼虫は1ケースに一匹がいい
一つの飼育ケースに一匹飼いが良い理由は、二つあります。
- 幼虫は、さなぎになるとき(前蛹)に「蛹室(ようしつ)」という空間を作ります。複数匹飼っていて空間を作るスペースが十分でないと他の幼虫に蛹室を壊されてしまったり、羽化の際に羽を十分に広げられず形態異常になったりする可能性も…。成虫のように“けんか”をするわけではありませんが、エサもスペースも有限であるため栄養分やスペースの取り合いになってしまうんです。
- 幼虫も人間と同様にウイルスや病原菌の流行があります。大きい飼育ケースであっても、複数匹飼っているとそのうちの一匹が病気になってしまうと他の幼虫にも感染してしまい最悪の場合、全滅することもあります。
購入した幼虫がまだ小さいサイズのものであれば複数匹飼うのもアリですが、丸まっている状態で4~5㎝程度(伸びた状態では8㎝くらい)まで成長して大きくなっている場合は1ケース一匹が良いでしょう。
ペットボトルで飼育できるって本当?
僕は試したことがないのですが、ペットボトルで飼育する方法もあるようです。複数匹飼いたいけれど、飼育ケースをいくつも用意できない場合などには良いかもしれません。
2リットルのペットボトルの上部1/3くらいをカッターなどで切り落としてから、マットを敷いて飼育します。
けれど、僕のおすすめはやはり虫かごです。土の交換といったお世話もしやすいですし、横幅のある方が幼虫ものびのび生活できますから。
飼育マットは必ず“カブトムシの幼虫用”を使おう
カブトムシもクワガタムシも成虫になれば飼育方法にそれほど違いがありませんが、幼虫の場合は別です。
クワガタ幼虫の場合、菌糸瓶を飼育ケースとして使う場合があります。これは、木を粉砕させたものにキノコ菌を植えたもの。クワガタムシの幼虫は朽ち木を食べるので菌糸瓶は最適ですが、カブトムシの幼虫には不適です。土は食べますが、木は食べられません。
また、家庭菜園などで使う園芸用の土もNG。自然界にいるカブトムシの幼虫は、クヌギやコナラがあるような雑木林の土を食べています。“腐葉土”という記載のあるものであれば飼育マットとして使えるかもしれませんが、農薬などが入っている場合もあるので避けるのが無難です。
カブトムシの幼虫を飼育しよう
幼虫飼育の手順
飼育の手順は次の3ステップだけ。実に、簡単です!
- 飼育ケースに、高さ20㎝くらいのマットを敷きます。
- 霧吹きなどで手で土を握り、団子状になるくらいの硬さに湿度を調節します。
- 幼虫をそっと土の上に置きます。
幼虫の見た目から拒否反応を示す人もいると思いますが、触ったり直接目に触れたりするのはマット交換の時くらい。あとは、自宅のインテリアのようにそっと飾っておきましょう!
幼虫は、編集部員の自宅でスクスク成長中。ほとんど土の中に潜っているため「元気でいるかな?」と心配になることもありますが、来年の夏を楽しみにそ~っと見守っています。幼虫の成長記録は、次回の「好きが仕事になりました」でも紹介します!
カブトムシの幼虫飼育中の注意点は三つ
- ふんが目立つようになったら、マット交換
カブトムシの幼虫のふんは、見たことがありますか? コーヒー豆のような小さな粒で、土がふんでいっぱいになってくると、土の表面にその粒がたくさん出てきます。
表面に出てきたふんだけを取り除いて土を足すというやり方をする人もいますが、土は総入れ替えするのが良いと思います。なぜなら、表面にふんがあるということは土の中はふんだらけですから。どの昆虫にもいえることですが、ふんがあるとストレスを感じやすくなってしまうんです。また、土を全部入れ替えることで病気になるリスクも下げることができます。
ふんが目につくようになったら土を入れ替えてあげてくださいね。新聞紙などに優しく土を広げ、幼虫を取り出します。新しい土を入れた虫かごに幼虫を入れるのが嫌な人もいると思いますが、ここはお子さんにやってもらってください! - 湿度管理は土が手でギュッと握れるくらいがちょうどいい
お子さんが張り切って「お世話するぞ!」と、何度も土に水を加えてしまうことはあるでしょう。でも、湿度を保とうとして水を加えすぎると土がべちょべちょになってしまいカビが発生することも…。
「〇日に1回が良い」というものはなくて、その家の湿度や温度によっても変わります。ベストな土の状態は、パッとみて“森の土”くらい。べたべたでもパサパサでもなく、手で握って団子状になるくらいの硬さが相応です。 - 衝撃は絶対に与えないで!
幼虫を観察したいからといって、虫かごを手に持って揺らしたり振ったりするのは避けましょう。虫かごを落としてしまうのは、絶対にNGです。
成虫のように殻があるなら良いのですが、幼虫は真っ白な体が何にも守られていない状態なんです。できるだけ優しく扱うようにしてくださいね。
幼虫は寒さに強い!
カブトムシの成虫を森で見かけるのは、夏が多いですよね。けれど、実は暑さに弱い昆虫。真夏の部屋の中で30℃以上になると、弱ってしまいます。
では、寒い真冬の季節を土の中で過ごす幼虫は寒さに弱いのでしょうか。
答えは、ノーです。
とても寒い冬の森でも、地面の下では幼虫たちがたくましく生活しています。家の気温が極端に低くなってしまうなら別ですが、5℃くらいであればヒーターを用意する必要はありません。暖かいとエサを食べるスピードが速くなりその分、成長も進みます。つまり、ヒーターを使うのは、早く羽化させたい場合。
湿度も温度も、一定に管理する必要はないんですよ。その点からも、カブトムシの飼育は本当に育てやすい昆虫だと思います。
カブトムシの幼虫はどう成長していく?
カブトムシの幼虫は、1齢幼虫(体長は8㎜前後)→2齢幼虫→終齢幼虫(体長は100mm前後)と成長していきます。終齢幼虫になった段階で越冬に入る(冬眠)ため、ほとんど動かずエサとなるマット交換も必要ありません。
幼虫が元気に生きているか気になると思いますが、できるだけそっとしておいてあげましょう。
終齢幼虫が十分に育つと、6月頃に蛹室を作り「前蛹(ぜんよう)」になります。その後、1週間ほどでさなぎに。
さなぎは、カブトムシの成長過程で一番デリケートな時期になります。よって、この時期に土の交換は絶対にしてはいけません。終齢幼虫の間に土交換を済ませておきつつ、湿度の管理だけはしっかり継続してくださいね。
幼虫がオスかメスかを見分けるのはおすすめしたくない!
カブトムシの幼虫を飼っていると気になるのが、オスなのかメスなのかとういことでしょう。カブトムシといえば強そうな角が特徴ですから、多くの子どもは「オスのカブトムシがいい!」と思いますよね。
幼虫の段階でオスかメスかを見分ける方法は、もちろんあります。国産のカブトムシの場合、お腹側のお尻の辺りにV字の線が入っているものがオスになります。
けれど、オス・メスを見分けるために幼虫をつまんだり触ったりするのはおすすめできません。幼虫はすごくデリケートで、触れば触るほど弱ってしまいます。さなぎになれば(虫かごの外から見えるとは限りませんが…)100%見分けることができるので、焦らず待ってあげるのが幼虫のためでもあると思います。
僕がオススメのカブトムシの幼虫
以前に比べ、カブトムシの成虫も幼虫も子どもたちのお小遣いで購入できる値段になってきています。最後に、外国産のかっこいいカブトムシを幼虫から育ててみたいという子どもたちにおすすめの幼虫を紹介しましょう。
子どもたちに人気の外国産というと、ヘラクレスオオカブト! でも、こちらは成虫になるまでに長いと3年くらいかかることもあります。熱量の高い子どもなら良いのですがお世話に飽きてしまう可能性があります。
おすすめは、アトラスオオカブトやコーカサスオオカブト。東南アジアにいるもので、ビジュアルもかっこいいしそれほど高価でもありません。僕の場合、捕まえるために現地に行っているので15万円もかかっていますが(笑)。
何でも手に入れやすくなった時代だからこそ、カブトムシもあえて幼虫から育ててみるという選択肢は新鮮なのではないでしょうか。幼虫も見たことがあるし成虫も見たことがある、けれどその成長過程は見たことがない。「僕の育てている幼虫はどんなカブトムシに成長するんだろう」とワクワクしながら育てるのは夢があります。カブトムシの幼虫はもちろんですが、自分よりも小さく弱い生き物のお世話をすることは子どもたちの情操教育にも良い影響を与えるんじゃないかな、と僕は思っています。
牧田 習の今月の虫!
今回から始まった、僕が飼育している昆虫紹介のコーナー。ここでは、今まさに一緒に暮らしている僕の相棒を紹介していきます。
まずは、大学で研究もしている「アオオサムシ」というオサムシの一種。ミミズや昆虫、芋虫を食べる肉食で近所の公園や神社など比較的、身近な場所で見つけられる虫です。後ろ羽
が退化しているため、飛ぶことができません。移動手段は、“歩く”だけ! 長距離の移動ができないため山や川があると右側と左側とに分化して進化、地域によって体色が異なることもあります。
もう一つ飼っているのが、オカメコオロギ。雑食で、虫や葉を食します。秋になると外から聞こえる虫の声は、だいたいがコオロギの鳴き声です。鳴くのはオスだけ、メスは鳴きません。僕が飼っているのはメスのオカメコオロギなので、夜中にうるさくて眠れないなんてこともないんですよ。
<取材・執筆>濱岡操緒
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昆虫ハンター。1996年、兵庫県宝塚市生まれ。オスカープロモーション所属。2015年北海道大学 総合教育部入学後、理学部に転部。特技は三線、小学5年生時に取得したダイビングのライセンス資格を所持。現在、昆虫ハンターとして「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)水曜レギュラー出演の他、「3度の飯より昆虫が好き」(WEBザテレビジョン)にて現在連載中! その他、 テレビやラジオなど各メディアでも活躍中。2020年4月から東京大学大学院に在学中。