教師の働き方は生徒にも影響する? 知っておきたい教育現場の現状
昨今、ブラックな労働環境が問題視されている教育現場。教師の負担が大きいことで、生徒一人ひとりにまで目配りするのが難しいという現状は親としては看過できない問題です。この記事では教師の置かれている状況を整理し、学校ごとの取り組みを紹介。学校選びの参考にしてみてください。
小中学校の先生たちが置かれている現状が分かる「給特法」
教師には残業手当も休日出勤手当もほとんどつきません。これは「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」、略称「給特法」によって定められているもの。公立校では給与の約4%の額があらかじめ上乗せされているだけで、あとはサービス残業、サービス休日出勤で回しているのが現状です。
部活に関しても手当が出るわけではありません。しかし、運動部を割り当てられた教師は朝練、残業、土日出勤などを求められがちです。人数合わせの配置で教師に専門性がない場合も多く、安全性の確保を徹底するのが難しいのに当たり前のように教師を顧問にする風潮に、保護者側からも疑問の声が挙がっています。
現在、多くの学校が抱える深刻な教師不足。教師一人あたりの仕事量が増大し、過重労働が社会的にも問題となっています。団塊の世代の退職や少子化の見込みから、教員採用定数の削減をしていた時代の煽りを受けてのことです。
教師の「働き方改革」は非現実的?
文部科学省では「教師のこれまでの働き方を見直し、自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにする」ことを目的に「学校における働き方改革」について議論してきました。
平成31年1月に答申がとりまとめられ、ガイドラインで「残業の上限を月45時間、年360時間」と定めました。しかし、その実効性には疑問が残ります。残業せざるを得ない仕事量があるからそうしているのであって、原因が取り除かれなければ根本的な解決には至らないのです。
文部科学省が2016年に実施した「教員勤務実態調査」によると、時間外勤務が80時間を超えている割合は小学校では34%、中学校では58%。この数字が今後、どのように改善されていくかに注目が集まっています。
“部活の顧問を外部の専門家に頼む”といった業務削減や、“教員採用数を増やし現場の負担を軽くする”といった解決策が挙げられていますが、これらは長年議論されてきたにもかかわらずいまだ実現していません。
このままではいじめ問題をはじめ、何か事件が起きても教師の側が「これ以上面倒な仕事を増やしたくない」という気持ちにもなりかねません。家庭にとって教師が信頼できる存在であるためにも、教師の働き方の見直しは急務なのです。
教師の働き方を改善するために各学校が行っている取り組み
国の動きとは別に、教師の働き方を見直す取り組みをしている学校もあります。
たとえば、千代田区立麹町中学校では「全員担任制」を採用。全員担任制とは、学年ごとに配置された教師全員がその学年の全学級の担任になるという方法です。三者面談の際には、生徒が教師を指名することもできます。これによって、生徒はいわゆる「担任の当たりはずれ」を回避できますし、教師も一人きりで担任としての重責を抱えこむことはありません。
また、教師の負担を軽減する取り組みとして教師経験のある人などを業務アシスタントとして雇い、仕事量の軽減を図っている学校もあります。教師が質の高い授業をするためには教材研究の時間を確保する必要がありますし、生徒一人ひとりに目配りし学級経営を進めていけるだけの余裕が大切です。
学校の公式サイトで具体的な改善内容を紹介している学校もあります。わが子が通っている学校、これから進学する予定の学校の教師の働き方についてチェックしてみるのも良いでしょう。
教師の働き方の改善は“子どもが安心できる学級づくり”や“質の高い授業を受けられること”にもつながります。教師たちの現状に対し各学校がどう取り組んでいるかを知り、より良い進学先を考える上での参考にしてみてください。
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教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー、フリーライター。大学卒業後、書店に勤務し、実用書や旅行書、新書等、幅広く売場を担当。書籍を扱うプロとして常にアンテナを張り、多岐にわたるジャンルに対して学びの姿勢を貫く。その後、医療系商社勤務を経て、難関中学受験をメインに据えた進学塾の講師を務める。 出産を機に退職し、現在はフリーライターと双子の母を兼業中。台風のようなちびっ子たちに日々振り回されている。