『戦略子育て』|働く親に向けた子育ての実録
編集長の本棚、第1回は『戦略子育て』。
子育て本によくありがちなのが、理屈はわかるんだけど結局実践できずに終わるというもの。
しかし『戦略子育て』は、教育理論ばかりを説いた本ではなく、超一流コンサルタントが一人の親として残した実践の記録。「働く親」は必読です。
ごあいさつ
はじめまして。『ソクラテスのたまご』編集長の片岡と申します。
本日から(不定期で)連載する『編集長の本棚』は、僕自身がこれまでに読んできた教育に関する本をご紹介するコンテンツです。
が、第1回目ですので、
まずは自己紹介を兼ねて、このメディア『ソクラテスのたまご』を始めるに至った理由などについて少しお話させていただこうと思います。
教育メディアの編集長と言っても僕自身は教育について全くの素人で、小学生の子を持つただの一人の父親です。普段は、株式会社SUIという会社で企業のマーケティング支援をおこなっています。
そんな僕が『ソクラテスのたまご』を始めるきっかけになったのは「本」でした。
僕は、仕事で企画を練るときや自分の知らないことに直面したときなど何かしら問題を抱え悩んだときには、まずその答えやヒントが書かれていそうな本を探します。
なぜなら、僕が思い悩んでいることなんてもうすでに先人たちがより深く悩み抜きその末に辿り着いた答えを記してくれているだろうし、それを教えてもらったほうがラクだと思うからです。
この習慣は子どもの教育においても同様で、娘の幸せのために何をすればいいのかと思い悩んだとき、いつものように 先人たちの知恵を拝借しようと多くの本を読んできました。
それによって、教育問題について普段メディアが報じている情報がいかに不十分なものなのか、普通に生活しているだけでは知りえない真実がたくさんあることを知りました。
しかし、悩みがスッキリ解消されたことは実はほとんどありません(笑)。
むしろ、次々と新たな疑問が湧いてきて、家庭教育から学校教育、教育行政、格差や貧困などの社会問題、社会思想の変遷、人の生き方に至るまで、連鎖的に興味がどんどん拡がっていきました。
子どもの教育は、多くの事柄が複雑に絡み合い明確な答えを見つけることがとても難しい問題です。
しかも、時代とともに変化していきます。
なのに、「自分が子どものときはこうだった」論だけで立ち向かおうとするのはさすがに無謀だし、僕のような親世代は今の教育についてちゃんと学んだほうがいいよなあ、
と考えるようになったことが、『ソクラテスのたまご』を始めるに至った最初のきっかけでした。
前置きの自己紹介が長くなってしまいましたが、
前述のとおり、子育ての悩みを解消しようと本を手に取ることがなければ、教育への興味が拡がることも、このメディアを始めることもなかったかもしれません。
というわけで、この『編集長の本棚』では、
これまでに僕自身が子育てに悩む中で出会ってきた本の中から、特に共感したものや気づきを得たおすすめの本をご紹介していきたいと思っています。
影響を受ける本は人によってさまざまだとは思いますが、子育てに悩む人たちの助けに少しでもなれたら嬉しい限りです。
第1回目の今回ご紹介するのは、『戦略子育て』という最近読んだばかりの本です。
なぜこの本を選んだかというと、
僕と同じように何かに悩んだとき「まずは本を探す」という方、特にビジネス本をよく読む男性に多いんじゃないかなと思いますが、そんな皆さんにピッタリだと思ったからです。
一流コンサルタントの子育て戦略
『戦略子育て』は、
これからの時代(AI時代)に求められるのは「試行錯誤力(発想力×決める力×生きる力)」と定め、これらの力を家庭で鍛えることを目的に、筆者(=親)が実践した家庭教育メソッドをまとめた本です。
「叱る・ほめる」「遊び・おもちゃ・ケータイ」「おこづかい」「コミュニケーション」「勉強・読書」など日々の生活における具体的な施策が記録されています。
著者である三谷宏治氏は、
東京大学卒業後、大手外資系コンサルティング会社などで経営戦略コンサルタントとして活躍。その後、教育の世界に転じ、子ども・保護者・教育向けの授業や講演に注力され、大学教授やNPO法人理事なども務めておられる方です。
まずは、”はじめに”の冒頭の文章を読んでみてください。
本書は「働く親」に向けての「育児書」です。
でも書かれているのは、子どもを難関大学に入れる方法でも、天才アスリートにする方法でもありません。
世界で活躍するグローバルエリートの育て方でもありません。
書いてあるのは、将来大人になったとき、「一緒に働きたい」「採用したい」「いろいろ話してみたい」「ついていきたい」
と言われるような人間に、わが子を育てる方法です。
たとえこれから、どんな未来が訪れようとも、です。
日々熱く仕事をしている皆さん、どうですか。
子育ても「子どもの将来に向けた人材育成プロジェクト」だと捉えると、仕事と子育ての距離がぐっと近くなったように感じませんか?
仕事が忙しくて子育てに関与していないという方も少なくないと思います。
自分の子どもの教育には興味を示さないくせに、やたら社員の育成に一生懸命なお父さんを見ていると、お母さんはさぞ腹が立つことでしょう…。
でも、そんなお父さんもこの本を読むと、子育てという仕事の面白さに気づくかもしれません。
子育て理論ではなく、実践の記録
しかし、こういう子育て本によくありがちなのが、結局実践できずに終わるというもの。
なぜなら教育は、ノウハウを手にすれば解決できるというものではなく、実践することこそが難しいからだと思います。
子育て本を読んでいるとき、「自分の子どもには向かないんじゃないかな」と思うことありますよね。
実際に試してみても全く子どもに響かず、しまいには、筆者に対して「この人、理論ばっかりで実際に子育てしてないんじゃないの?」と感じてしまうことも。
でも、『戦略子育て』は理論書ではなく、実践の記録です。
著者の三谷氏が3人の娘さんに対し、どういう意図を持って具体的に何を実践してきたのかが記録されています。
しかも、その教育を受けた側の「現場の証言」として、娘さんご自身が、当時どのように感じ、振り返って今どう受け止めているのか、ということまで語られています。
さすが超一流コンサルタントがまとめた育児書と言いますか、
筆者(=親)の思い込みや偏見を感じることなく、実例としてフラットな気持ちで学ばせてもらうことができました。
おそらく、仕事が好きすぎて常に「仕事脳」で考えてしまう人ほど、共感する部分が多いんじゃないでしょうか。
まさに働く親にオススメの書だと思います。
それでもやっぱり、実践するのは難しい
僕も以前、ある子育て本を読んでいいなと思ったことを実際にやってみようと試みたことがあります。
それは、休日の遊びの計画を子どもに決めさせるというもので、
毎月1回、決められた予算内であればどこにでも連れて行ってあげるというルールでした。
自ら自由に考えて決断したり交渉したりといった経験を重ねることで、自立を促すのが狙いです。
これは楽しそうだぞ、と早速娘に提案してみたところ、
娘「じゃあ、近くのショッピングモールに行って、◯◯(好きなキャラクター)のグッズを予算内で買いまくる!」
僕「ああ…なるほど。まあ、自由だもんね。そういうのもあるよね…。」
という、親の期待から外れた自由な答えがかえってきて、いきなり難しさを痛感する始末。
でもそこで諦めず、このルールをきちんと家族で運用するために協力してもらおうと、妻に趣旨を説明したのですが、
「また本の受け売り? 本と現実は違うんだから。そんな時間があったら、現実の娘と向き合いなさいよ。」
という、ルール以前のところでダメ出しをされる始末。
「まずは本を探す」という皆さん、
子育て本から得た内容をパートナーに話すときは、十分に気をつけてください。
確かに、本を読むことで自分の経験だけでは到底学びきれない多くの情報や見解を得ることができます。
が、実際に行動するのは自分自身です。
子育て本から得た情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考え消化できたものを自分の言葉で相手に伝えなければ、パートナーの理解を得ることすらできないかもしれません…。
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『ソクラテスのたまご』編集長。 中学生の娘を持つ父親。『ソクラテスのたまご』の運営を通して、我が子に関わる教育について日々学んでいる。 現在、書評コラム「編集長の本棚」を連載中。