中学受験で母親がノイローゼに…ストレス対策やメンタルを整える6つの方法とは
親子二人三脚で挑む中学受験。ストレスでノイローゼになる親も少なくありません。そこで、子どもをサポートする親が少しでも気持ちを楽にし、安定したメンタルを取り戻せるように受験指導エキスパートであり、カウンセリングやコーチング、コンサルティングなどにも取り組む石井知哉さんが、アドバイスをします。
中学受験で母親がつらくなる理由
受験に対する不安や勉強からくるストレス、結果に対するプレッシャーなどが原因で食欲が減ったり、眠れなかったり、肌荒れが出たりなど、精神や体に不調があらわれる受験ノイローゼ。
親の受験ともいわれる中学受験では子どもよりも保護者が受験ノイローゼに陥ってしまうケースは少なくありません。
中学受験にどの程度の熱量で向かい合っているかは家庭によってさまざまですが、保護者がそこまで自分を追い詰めてしまう理由には、次の3つが考えられます。
【理由1】子どもの成績が上がらない
中学受験の目標が合格である以上、子どもの成績が上がらないと不安が募ります。
「このままでは、志望校に合格しないのでは?」「どこも受からなかったらどうしよう?」と、悪いイメージを思い浮かべては必死にかき消すことは、多くの保護者が経験していることでしょう。
しかし、いくら気持ちを切り替えようと思っても不安や悪いイメージが消えず、1日に何回もネガティブな思いにとらわれてしまうことで、どんどんつらくなってしまいます。
【理由2】周囲の協力や理解が得られない
中学受験では「成功・失敗は親次第で決まる」といわれており、保護者の役割は重要です。親とは、母親ひとりのことを指すのではありません。父親の協力も必要です。
ところが、父親に協力をしてもらおうと思っても取り合ってくれず、実家や義実家の親から「無理に受験なんかさせてかわいそう」「子どもはのびのび遊ぶのが一番」と言われてもフォローすらしてくれない。
「わが子のために」と誰よりもがんばっているのに、夫からの協力や理解が得られない母親は、自分ばかりが空回りしているような気がしてきて、ついには、「もしかして自分の判断や行動は全部まちがっているのではないか?」と不安でたまらなくなってしまいます。
【理由3】具体的な原因がわからない
不安になったりイライラしたり、どうにも気持ちが落ち着かずに苦しいけれど、なぜ苦しいのか分からない。そんな漠然としたストレスを抱え続けるのは非常に苦しいものです。原因が分からないから対処ができず、そんな自分にさらにイライラしてしまう…。負のループから抜け出せずに深みにハマっていってしまうのです。
上記のように、さまざまな理由で保護者はメンタルをすり減らしていきます。ですが、子どもの受験でメンタルがおかしくなるのは保護者失格だからではありません。わが子のことを大切に考えているからであり、親として自然な流れです。自分を責める必要はありませんよ。
母親のヒステリーが受験に与える影響
上記のような理由でつらい思いを抱えたままの母親は、激しい興奮や怒り、悲しみをむき出しにするなど、感情がコントロールできない状態になってしまうことがあります。
しかし、いくら苦しいからといっても親の言動が子どもに与える影響は、親が思う以上に大きなものです。特に親のネガティブな感情や言動は、子どもの心をネガティブな方向へと引っ張り、受験勉強に打ち込めずに、成績は下がっていくことでしょう。
親の愛情を受けることで、子どもは自己肯定的に生きる力を身につけていき、勉強もがんばることができます。それは、塾の講師や学校の教員にはできないことであり、母親だからこそできる中学受験生への最大のサポートです。
受験ノイローゼから脱却する6つの方法
しかし、愛情をもって子どもに接するためには、保護者自身に余裕がないとできません。子どもが安心して勉強に集中できるようにノイローゼ気味の保護者が実行しやすい対処法を紹介します。
【方法①】不安やイライラを紙に書き出す
イライラや不安の内容を紙に書き出し、頭の中から取り出す心理療法「エクスプレッシブ・ライティング」。自分がどんな感情を抱いているのかを客観的な視点で知ることができます。
書き出した紙は最終的にはビリビリに破くことで、気持ちの切り替えやストレスのコントロールに効果があります。
【方法②】自分を喜ばせる時間をつくる
多忙な母親にとって、自分のための時間はなかなかありません。特に共感力が高い女性は、ほかの人と一緒にいると気疲れすることも多いでしょう。
そこで、ひとりになって自分のために時間を過ごしてください。そして、がんばっている自分へごほうびをあげてみてはいかがでしょう。
すぐに実現することが難しい、あるいは、何をしたらいいか分からない、という場合は、「やりたいことリスト」を作ってごほうびタイムを想像するだけでもストレスの軽減にはつながります。
【方法③】責任の所在を考え直してみる
何か困ったことや問題が起きたとき、母親は自分自身のことなら自分で解決すると思いますが、子どものこととなると親と子のどちらが解決に動いたり、責任を負ったりすべきなのか判断が難しく感じてしまうのではないでしょうか。
例えば、子どもが宿題をしないとき、親がやらせるべきなのでしょうか? 受験に失敗したら親が責任を負うべきなのでしょうか?
そこで、考えるヒントにして欲しいのがアドラー心理学の「課題の分離」という考え方です。
課題の分離
- 他人には他人の事情があり、自分と他人は違う課題を持っている。
- 他人の課題には踏み込まない。
- 自分の課題に他人を踏み込ませない。
上記の”他人”とは、自分以外のほかの人のことを指します。親子であっても夫婦であっても、自分以外は”他人”です。つまり、子どもの課題には親であっても踏み込まないということです。
この考え方に立つと、宿題をしないのは子どもの課題、受験に落ちるのも子どもの課題となり、どちらも子どもが自分で解決すべきことになります。
「志望校に落ちても子どもの問題」なんて「無責任で冷たい親だ」と思うかもしれませんが、子どもの課題を親が肩代わりするのは、真の問題解決を先延ばしにしているだけ。子どもの成長や自立がいつまでも訪れません。それは、本当の優しさではないのです。
「その課題を解決するための行動が、最終的に誰の成長と自立につながるか?」という視点で考え、母親だからといって「子どものすべてに責任を負って解決しなければならない」という思い込みやプレッシャーから離れてみてください。
ただし、子どもが解決方法を相談してきたら、それは親子が共同で解決すべき課題です。話し合い、一緒に考えていってくださいね。
【方法④】家族で話し合う
冒頭の【理由②】でも説明したように、受験ノイローゼになる理由には、「家族の協力が得られない」ということがあります。
では、なぜ家族なのに分かりあえないのでしょう。
それは、同じ出来事を体験しても、感じ方や受け止めからは人それぞれだからです。人間は客観的に見ているつもりでも、実は主観的な見方をしてしまっていることが少なくありません。
感じ方や受け止め方の違うままで話し合っても、ストレスは強くなるばかりです。だから、自分と夫(子ども)では考えていることがまったく違うという前提から話し合いを始めてください。そして、ズレがより小さくなるよう、すり合わせていってください。
「家族だから、話さなくてもわかってくれる」わけではありません。むしろ、「家族だからこそ、話し合ってわかり合おうとする」ことが大切です。
【方法⑤】プロに話を聞いてもらう
悩み事を友人に相談したら、解決策は出なくても気持ちが楽になったという経験はありませんか? つらいときは誰かに話を聞いてもらってください。
ただ、受験や家族のことはナイーブな話題なので、誰にでも話せることではないですよね。
もし、身近に相談できるような人が思いつかない場合は、カウンセリングやコーチングを利用するのもよいでしょう。あなたの苦しみに寄り添ってくれます。
また、子どもや中学受験に詳しい塾講師や家庭教師は、第三者の視点から客観的なアドバイスをしてくれることでしょう。
ただし、食欲不振や睡眠障害など、体の不調がある場合は、まず体のケアが必要です。心療内科を受診することも考えてみてくださいね。
【方法⑥】親子関係の「原点」を思い出す
今、受験に挑んでいるわが子が生まれたときのことを思い出してみてください。うまれたばかりのわが子を見て「難関中学校に合格して欲しい」「偏差値が高い子になって欲しい」と思った人はいないはずです。
健やかに、幸いに生きていくことを願ったのではないでしょうか?
幸せな人生を歩むこと。それこそがこの世に生まれてきた目的であり、学歴は幸せになるための手段のひとつに過ぎないということを忘れないでくださいね。
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相談相手を探してみる親が中学受験の犠牲になる必要はない
中学受験の世界では「受験の成功・失敗のカギをにぎるのは親」といわれ、「子どもの受験が最優先 」「親は献身的に生活しなければならない」という考えを抱きがちです。
その気持ちや愛情はとても尊いものですが、冷静に考えてみましょう。
日本社会には「育児は母親が担うもの」という認識がまだまだ根強く、家事や子育ての面では、まだまだ母親の活躍がなければ成り立たない家庭が多いです。
さらに、子どもが中学受験のために塾通いを始めると、塾の宿題をチェックしたり、プリントを管理したり、お弁当を作ったりと、母親が活躍する場面はさらに増えます。
家事・子育てという通常の母親業務に加えて、受験生の保護者としての業務。それだけで、中学受験生の母親は「二刀流」の活躍をしています。中には、共働き家庭で「三刀流」の母親もいます。
母親たちは、もう充分、献身的に生活をしていますし、すでにがんばっている母親がもっとがんばろうとすれば、思考とは裏腹に心や体が「もうがんばれない…」と悲鳴を上げるのは当たり前です。
保護者の「受験ノイローゼ」は、いわば、がんばりすぎている状態です。そこまでがんばっている母親の想いや行動は、労わられてしかるべきことであり、恥じることでも非難されることでもありません。
もし「受験ノイローゼかな?」と思ったら、一度「もっとがんばらなきゃ」という気持ちにふたをしてください。少し休んでください。
「中学受験の成功のカギをにぎるのは親」ですが、自分を犠牲にする必要はありません。
「わが子は大切、自分はもっと大切」と、開き直るくらいの気持ちで肩の力を抜いて受験までの日々を過ごしていってくださいね。
<参考文献>
『毎日見るだけ!自己肯定感365日BOOK』中島輝 (SBクリエイティブ株式会社)
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教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー。高校受験Webサイト「School Post」(https://school-post.com)主宰。塾指導歴20年以上。小学生から大学浪人生まで、教科を問わず個々の成長を引き出す指導を得意とする。現在は、個別指導塾2校舎を統括する傍で、千代田区麹町に超少人数制個人指導道場「合格ゼミ」を開設。長年の経験と知見を記事にして発信中。アイデアと文面の大半は、こよなく愛するビーグル犬との散歩中に生まれる。