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2021.04.09

特別支援学級を卒業後の進路|将来を考えた進学先の選び方を分かりやすく解説します

義務教育の間は特別支援学級に在籍していた発達障害の子の進学にはどのような選択肢があるのでしょうか? 向き不向きや進学先によって子どもの将来は変わってしまうの? さまざまな疑問を抱える保護者に向けて、児童発達管理責任者の谷松啓史さんが分かりやすく解説します。

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さまざまな選択肢への情報収集が不可欠

そもそも特別支援学級というのは障害を持っているなど、教育を受けるうえで特別な支援を必要とする児童や生徒のために、小中学校に設置されている学級のことを指します。

特別支援学級で学んでいた生徒の卒業後は特別支援学校へという流れが一般のような風潮がありますが、実はそれだけではありません

特別支援学級からの進路については実に様々な選択肢があり、一つひとつをしっかりと情報収集したうえで進路を検討していくことが必要になってきます。保護者にとっては大変な作業になりますが、子どもの将来を考える上で必要不可欠なステップです。

では、具体的にどのような選択肢があるのか紹介していきましょう。

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【選択肢①】特別支援学校高等部

文部科学省によると特別支援教育の概念は、「障害のある子供たち一人一人の教育的ニーズを把握して、適切な指導や必要な支援を行い、子どもたちの自立と社会参加を目指す教育」とされています。

そこで、特別支援学校高等部では、個々の教育・支援ニーズに合わせたきめ細かい教育をするために個別指導計画と個別の教育支援計画が立案実行されているのが特徴です。

カリキュラムに関しては各学校によって異なりますが、一般の全日制高校で行うような教科学習ではなく、専用の教科書を使い、生活や言葉の学習を行い自立と社会参加する力を育みます。挨拶やマナーから労働の訓練に加えて、企業研修やインターンなどのキャリア教育が行われます。

また、1クラスにおける人数も3~6人ほどになっており、勤務する教員は、通常の教員免許に加えて特別支援学校の教員免許を持っています

特別支援学校高等部卒業後の進路

特別支援学校高等部は、卒業後の就労を見据えて早めに社会のルールを学ぶための高校という認識ですが、大学などに進学する生徒もいます。

特別支援学校高等部を卒業後の進路状況は、直接学校に問い合わせてその先の進路状況を確認するのが最も正確です。

一例を挙げると以下のような進路があります。

  • 進学:大学、専門学校、留学
  • 就職:一般就労、障害者雇用枠、福祉就労、就労継続支援A型,B型
  • 準備:生活訓練、就労移行支援、職業能力開発校、サポステ(地域若者サポートステーション)

特別支援学校高等部のメリット・デメリット

特別支援学校高等部へ通うメリットは大きく3点あります。

【メリット①】こどもの特性にあった指導や支援を受けられる

ひとことで”特性”といってもさまざまです。例えば、物事への理解の仕方(分かり方)ひとつとっても、部分から全体へと理解を進めることが得意(継次処理)な子と、全体から部分へと理解を進めることが得意(同時処理)な子がいます

例えば、英語の長文を特性に合わせて学ばせようとすると、継次処理の子の場合は、文法を学ばせて一文ずつ理解させながら文章全体を把握していく進め方が適当ですが、同時処理の子は、文章全体ややりとりから場面やテーマの概略を把握して、細部を理解していく学習が適当とされています。

特別支援学校では、このような特性に合わせた学習のすすめ方ができます。

【メリット②】職業教育が受けられる

職業教育とは、一定または特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育のことです。

特別支援学校では、例えば”接客・サービス”といった仕事に関する各教科・科目の履修ができるよう配慮され、基礎的・基本的な事項が確実に身に付くよう体制ができています。

また、実験・実習する機会が多く設けられていることが多いです。このように働くことに直結する教育を受けられることも特別支援学校にすすむメリットと考えてもよいでしょう。

【メリット③】特別支援教育コーディネーターがいる

また、特別支援学校高等部のメリットには、特別支援教育コーディネーターの存在もあります。

特別支援コーディネーターとは児童心理の専門家や児童精神科医、作業療法士、言語聴覚士など発達障害に関連する専門家や各関係機関と連携しながら支援していく役割を担っています。

特別支援教育コーディネーターを中心に子どもの発達段階や特性に応じた会議を実施しながら支援計画を作成し、外部機関と協力していくため、その子に合った指導を受けることができます。

一方で、デメリットとされているのは、特別支援学校高等部は卒業しても高校卒業資格を得ることができないということです。

特別支援学校高等部の卒業資格は、高卒資格とは別物であり、中学までの卒業資格しか取得していないことになります。そのため、就職先も限られて進路を狭めてしまう場合があります。

【選択肢②】全日制高校

全日制高校は、決まった時間に登校し、時間割に沿って授業を受けるなど学校が定めたカリキュラムに従って学校生活を送ります。義務教育ではないので、特別支援学級が設置されていない学校がほとんどです。

ですが、支援がまったくないわけではありません。

私立高校の中には発達障害への理解と支援について独自の方法をとっている学校があるほか、公立高校では教育委員会の主導の下で、特別支援学校と同一の支援体制が敷かれていることもあります。

全日制高校への課題は入試

また、重要なのは全日制高校には入試があるということです。学力試験では、子どもの学力に合った学校しか選ぶことはできません。

それだけではなく、中学校で特別支援学級に入った場合、通知表がもらえないケースがあるため、公立高校への進学ができない可能性があります。

成績表をもらえるかは、自治体や学校によりますが、特別支援学級に所属している場合、通知表の内容は言葉で表現されることが多く、一般的な段階別の評価に変換するのは難しいとされています。もし変換されても評価は低いことが多いため、選択できる高校は絞られていきます。

全日制高校へ入学後のリスク

前述の通り、全日制高校の多くには支援級はないため、普通級に通うのが一般的です。

ですが、普通級と支援級では1クラスの人数が違います。少人数制の支援級と違い、普通級は、1クラスの人数が多くなるため丁寧な指導が受けられにくく、場合によっては卒業後の生きていく力を身に付けられにくいかもしれません。

また、学習環境が激変することが子どものストレスになる可能性、友人関係がうまくいかずに不登校となる可能性もあることも考えておかなければなりません。全日制高校は、サポート体制の有無を学校側と確認してから選択することをおすすめします。

【選択肢③】通信制高校、定時制高校、新しい学校

ほかにも“全日制高校よりも通いやすい”などの理由で下記の高校を選択し、高校卒業資格の取得を目指す人もいます。

平成21年に文部科学省が行った「全国の各中学校において発達障害等困難のある生徒の卒業後の進路を分析・推計した調査」によると、中学卒業後、高校へ進学した全体のうち発達障害等困難のある生徒の割合は、下記のようになっています。

引用元:高等学校における発達障害等困難のある生徒の状況/文部科学省

では、それぞれはどんな学校なのでしょうか。

通信制高校

通信制高校は、自宅学習をメインに単位習得し、高校卒業資格を得る学校のことを指します。毎日通学する必要もなく、さまざまな事情を抱えた人が通っています。

対人関係などでつらさを抱えやすい子や周囲からの刺激に対してイライラしやすい子、自分のペースでやりたいなどのこだわりが強い子は選択肢に加えてみてはいかがでしょう。

ただし、卒業までに74単位の取得が必要のため、卒業に向けては自分で学習管理をしていく必要があります。

通信制高校について詳しい記事はこちら

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定時制高校

定時制高校は、全日制高校と同じように毎日登校しなければなりませんが、1日の授業時間は4時限目までという学校が大半です。そのため、全日制高校よりも1年長い4年間で卒業までの単位を取得するのが一般的です。

※最近は「単位制」を導入し、3年間で卒業できる学校もあります

1日の拘束時間が短いので自分のペースで過ごす時間を確保できるため、体力や集中力に自信がない場合も通い続け安いかもしれません。

定時制高校について詳しい記事はこちら

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新しい学校

ひとりひとりの教育支援へのニーズに対応するために設立された公立高校も増えつつあります。

東京都はチャレンジスクール、エンカレッジスクールなど、神奈川県や大阪府はクリエイティブスクール、埼玉県はパレットスクールなど、都道府県によって呼び名はさまざまですが、目的は、個々の能力や適性に合わせて興味関心を大切にした教育を行う学校であり、進路希望に合わせた学びができると注目を集めています。

【選択肢④】進学ではなく就職をする

中学を卒業し、就労という選択肢ももちろんあります。しかし支援級を卒業後、すぐに就労となるのは、下記の理由から考えてハードルは高いかもしれません。

  • 就職活動を突破するだけの実力がまだ身に着けられていない
  • 性が分かり切ってないから自分にあった職業が選ぶことができない
  • 中学では専門の就労のスキルが身に着けられない
  • そもそも中学卒業で採用してもらえる求人票がない

なにより自分の適性がわからないまま就職活動を行っても就職先が決まらず、生きづらさを感じ自己肯定感を失っていきます。

就職を考えたときの相談先

それでも就職という選択肢を選ぶ場合は、下記へ相談してみましょう。

<公共職業安定所(ハローワーク)>

仕事の探し方や履歴書の書き方の説明や適職についてのアドバイス、職業訓練できる制度・施設への案内などがあるほか、障害者を対象とした求人も紹介してもらうことができます。また、就職が長続きするための支援も実施されています。

<地域若者サポートステーション>

働くことに悩みを抱えている15~49歳の男女に対し、キャリアコンサルタントなどが専門的な相談、コミュニケーション訓練などを行います。協力企業への就労体験などにより、就労に向けた支援が受けられます。

<若年者職業支援センター(ジョブカフェ)>

各地域の特色を活かして就職セミナーや職場体験、カウンセリングや職業相談、職業紹介などを行っています。また、保護者向けのセミナーも実施されています。

職業訓練校とは

高校へ行かずに就職するという場合でも、いきなり就職ではなく就職に特化した場所へ通うという選択肢もあります。

職業訓練校とは、厚生労働省が管轄する職業人を要請するための訓練機関であり、職業人としての実践的な専門知識、技術や技能を習得するための施設です。しかし、卒業しても経歴は高卒資格の取得はできません

入学にはテストがあり、難易度は中学卒業程度~高校卒業程度など科目によって異なります。

わが子に合った進路を選ぶ2つのポイント

さまざまな選択肢がある中で、多くの保護者が一番に気になっているのが、「わが子が通い続けられるのか」という点ではないでしょうか。

それを踏まえて、より良い選択を導き出すためには、子どもの特性を把握し、親子で意思を共有し理解することが重要になります。

ぜひ、親子で以下の2つのポイントについて考えたり、話し合ったりしてください。

【ポイント①】保護者の願い(子どもにどうなってほしいのか)

子どもが将来〝大人〟として見られるようになったとき、どうなっていてほしいかを考えることは進路選びの際の大切な要素です。

「心優しい子になってほしい」「仲間に恵まれた子になってほしい」など人間関係の部分はもちろんのこと、「動物が好きだから関連のある仕事についてほしい」「集中力を活かせる仕事についてほしい」など社会との関わり方についても考えると良いかもしれません。

ただし、注意したいのは、子どもに「普通になってほしい」という願いです。

これは保護者からよく耳にする願いの1つのですが、”普通”という言葉は非常に厄介です。なぜなら”普通”の定義はあらゆる要素で変化し曖昧だからです。

そこで、保護者が考える”普通”についてもう一度考えてみてください。「保護者自身が親に言われた言葉」「保護者を取り巻く人が大切にしている価値観」に影響されてはいませんか?

今一度、保護者自身の願いの背景・要因を考えてみることが本当の意味で「子どもにどうなってほしいか?」を導き出すことにつながります。

【ポイント②】子どもの願い(自分はどうなりたいのか)

障害の有無に関わらず、子どもが自分らしく主体的に生きていくためには、本人自身の願いを欠かすことはできません。

「将来何になりたい?」「どんな仕事につきたい?」「どんな生活がしたい?」といったコミュニケーションの中からでも本人の願いを知りましょう。

直接本人と話すのが難しい場合は、関わりの深い人などから話を聞くことで、興味、関心、特性などのほか、新たな一面も知ることが出来ます。

ただし、本人の願いは固定されたものではありません。考え方は体験などによって変化してくものです。本人の願いが変化していくことに対して、保護者も柔軟に対応してください。

なによりも本人の願いこそが、より良い未来に向けて進みだす為の重要な原動力となります。

とはいえ、時には親子の間で意見が分かれ、収拾がつかなくなることもあるでしょう。そんな時はぜひ、下記のような外部の協力者をふまえ相談してみてください。

相談先の一例

  • 療育について:子ども専門病院や地域の療育センター
  • 健康や育成について:児童相談所や保健所、保健センター、福祉事務所内の児童相談窓口
  • 発達障害について:発達障害者支援センター
  • 就労について;障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、ハローワーク

子どもにどのような進路を歩ませるか、働く力、自立して生きる力を身に付けるために、どのような道があるのか、長期的な視点も入れながら考えていきましょうね。

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谷松啓史

通所支援事業所において児童発達管理責任者として勤務。子供自身の既往やその家族のニーズ、心理発達面を汲み取り、これまで1500件以上の相談対応、個別支援計画書の作成を担当。ほかにも、児童養護施設の児童指導員として8年間の勤務、クリエイティブ系の大学にてキャリア支援に従事し、専門スキルを活かした職業選択の支援を行うなどの経験を経て現在に至る。

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