中野区の教育/学校数や学力、中学受験率ほか子育て世代の口コミ情報を紹介
23区の教育環境を解説していく連載記事。第6回は、中野区です。JR中野駅を中心に南北にのびる中野区では、少子化などの影響から児童生徒数の減少が進み、2005年度より区立小学校・中学校の統廃合が進められています。
目次
私立中学受験率は25,70%で、23区中14位
データで見る中央区の教育
- 義務教育世代の子どもの数=約1万6000人
- 公立小学校の数=21校
- 公立中学校の数=10校
- 特別支援学級=小学校7校(知的障害6校、難聴、言語障害1校)中学校3校(知的障害3校)に設置
- 特別支援学校(小・中・高)=知的障害1校
- 特別支援教室=区内全21小学校、中学校10校に設置(それぞれ巡回校あり)
- 公設学童クラブ=23
- 民間学童の数=16
- 学童待機人数=50人(2020年11月現在)
- 私立中学進学率=25.70%
- 家賃相場(ファミリー世帯)=3LDK:23.17万円
- 治安・犯罪率=2019年の刑法犯件数:1253件
23区の西側に位置し、中野サンプラザやサンモール商店街、サブカルチャーの宝庫・中野ブロードウェイで有名な中野駅を中心に南北に広がる中野区。
駅北口で再開発が進み、東京ドーム約3.6個分の敷地に複合商業施設・中野セントラルパーク、明治大学、帝京平成大学などを有する「中野四季の街」が誕生しました。
幅広い年代の人々が行き交う街に様変わりしましたが、駅周辺を離れると閑静な住宅地が広がり、落ち着いて子育てできる街として知られています。
公立小学校は21校、中学校は10校。1クラスあたりの児童数は29.7人、私立中学受験率は25.70%で、23区中14位。区内に中央線、総武線、西武新宿線、丸の内線が走り、多地域へのアクセスが便利な割には受験率が低いのが特徴。
中野駅を中心に進学塾は多いものの、「地元の公立中学校がしっかりしていて荒れていない」などの声が多く、「あえて中学受験はしない」と考える家庭の割合が高いようです。
ちなみに、区内には、明治大学付属中野中学校、宝泉学園中学校、新渡戸文化中学校、実践中野中学校、大妻中野中学校という5つの私立中学校に加え、公立中高一貫 校・東京都立富士高等学校付属中学校があります。
小中学校の統廃合が進むなか、保護者から聞こえる「とまどいの声」
少子化などの影響から、児童生徒数の減少とそれに伴う学校の小規模化が続いた中野区。
集団教育の良さが生かされにくくなることから、“区立学校の適正規模、適正配置”を目的に、2005年度より区立小学校・中学校の統廃合が進められています。
学校の統合にあたっては、統合する複数の学校の校長、副校長、PTA、地域の保護者からなる「学校統合委員会」が設置され、新校の開校に向け準備を行いながら順次進めてきました。
しかし、統合により「地域の情報が伝わりにくくなった」「学校の場所が変わったのに通学の安全対策が早期に示されず不安に思った」などの声があがっています。
「建て替えのため、遠くの小学校に通うことになるのが嫌で、多くの児童が越境して別の学校に通っているケースも多いです。それにより、A小学校は全学年5クラスなのに、B小学校は全学年2クラスなど、一部のエリアで児童数がアンバランスに。行政が越境をOKにしているのも疑問に思いますし、『建て替え中、遠方の小学校への通学の不安解消のためスクールバスを出す』など、臨機応変な対応をしてほしかったです」(小4女子、小1男子の母)という声も。
学童クラブと放課後事業「キッズ・プラザ」の一体化をめざして
中野区の区立学童クラブは23カ所、民間学童は16カ所。民間学童といっても区の助成を受けて運営しており、保育内容や利用料は区立学童と同じ(月額5600円)ですが、開設時間が20時まで。子どもたちが過ごしやすい空間となるよう、区立学童クラブに比べ1時間長い点が異なります。
学童クラブに入っていない小学生が、学校の敷地内で学年を超えて交流できる事業「キッズ・プラザ」も展開する中野区。小学校の教室を改修し、子どもたちが過ごしやすい空間になるよう学校とは雰囲気が異なる「専用室」があるのが特徴です。
登録児童は学校が終わったらランドセルのまま入館でき、専用カードをスキャンすると保護者に来館のお知らせメールが届くため、「安心感が高い」と評判です。
現在、「キッズ・プラザ」を展開しているのは、区内21の小学校のうち11の小学校。将来的には区内すべての小学校に学童クラブと「キッズ・プラザ」を設置し、一体型の運営をめざしています。
【中野区の教育の特徴1】小中連携教育を推進
2013年度より、区立小・中全校で小中連携教育に取り組む中野区。小学生が年に3回中学校に行き、授業や部活動を見学する「オープンキャンパス」、小学校には中学校の教員が、中学校には小学校の教員が加わり授業を行う「乗り入れ指導」が行われています。
また、中学生が小学生に勉強を教える「リトルティーチャー」、運動会など学校行事での「中学生ボランティア」など、独自の取り組みを行う学校もあり、小・中の9年間を通して切れ目のない教育を展開しています。
【中野区の教育の特徴2】ICT教育支援員を学校に配置。ICT教育の充実を図る
中野区では、ICT教育推進のため、ICT教育支援員を各学校に配置。2021年2月中には全児童にipadを配布、3月から運用を開始する予定です。
先立って、オンライン保護者会やオンライン学校公開、健康観察や欠席連絡もオンラインで行う学校もあり、保護者はかなり助かっているようです。ただ、導入具合は学校によりばらつきがあり、校長先生の度量とITに強い保護者がいるかどうかで状況は異なるようです。
【中野区の教育の特徴3】2008年から「中野区立フラッグフットボール大会」開催
子どもたちの体力向上に向け、体育の授業やクラス活動の時間に「フラッグフットボール」を取り入れています。
「フラッグフットボール」とは、アメリカンフットボールを基にしたスポーツ。「タックル」の代わりに、プレーヤーの左右の腰につけた「フラッグ」を取ることで、身体接触が無く安全に楽しむことができます。
2012年度から、中野区立学校フラッグフットボール大会を開催。「運動が苦手な子も楽しんで体を動かせる」と好評です。
【中野区の学力】中野区独自で学力テストを実施
中野区では、2004年度から国や都の学力テストの他に中野区独自で(小1を除く)全学年による学力テストを実施しています。
小学2~5年生は国語と算数。小学6年生と中学1年生は国語、算数(数学)、社会、理科。中学2、3年生は国語、算数(数学)、社会、理科、英語のテストを独自に実施。
各教科観点別に学習状況を把握しています。調査結果をもとに授業改善プランを作成、授業に展開し、全ての教科で正答率70%以上を目指していきます。
【口コミ情報】北部は「のんびり」、南部は「教育熱心」?
中野区の保護者に、教育環境について聞いてみました。
うちの子が通う小学校にはグリーンガーデンという畑が校内にあり、学年ごとに野菜を育てて食べて、食育になっています。校庭で芝生も育てています。周辺の環境ものどかで、虫やカエルなどもたくさん。子どもたちは自然にたくさんふれている感じがして、のびのび子育てできます(小4女子、小1男子の母)
中野区は南北に長く、中央線を境に南と北に分けられますが、北部のほうが比較的自由度が高くのんびりした感じ、南部のほうは中学受験する家庭が比較的多く、教育熱心な印象を受けます。中野区全体では、今後もどんどん統廃合が進むので、進学のタイミングに重なるような家庭は私立への進学を検討しているお宅が多いようです(小2女子の母)
今年はコロナで学校行事が軒並み中止。行事を行ったとしても保護者の参加は禁止となるなか、東中野中学校では保護者有志で運動会をオンライン中継し、ニュースでも取り上げられていました。東中野中は、休校中に教員が授業動画を500本作って配信するなど、先進的な取り組みでも話題になった学校です。区内にこのような中学校があると心強いです(小5男子の母)
子どもたちが学童クラブにお世話になっています。施設により状況は異なるとは思うのですが、正直、指導員さんの力量に不安を感じることも少なくないです。バイトの方が多いのか、指導員さんの入れ替わりもひんぱんにあります。保育料が安くで助かりますし、入れるだけありがたいとは思いますが改善を望みます(小3女子、小1女子の母)
中野セントラルパーク、哲学堂公園、栄町公園など自然豊かな公園に加え、プラネタリムや図書館がある「なかのZERO」など、家族で楽しく過ごせる場所や教育施設が充実していると思います。わが家は西武新宿線の「野方」が最寄り駅ですが、住宅街で落ち着いた雰囲気。近くに娯楽施設がないので子どもも遊びに行かず(笑)、高校受験に向けて勉強を頑張っています(中3男子の母)
子どもたちの未来を見据えた学校づくりが進む
小中学校の統廃合に伴い、児童数や教育内容のかたよりなどに対し、保護者からとまどいの声もあがる中野区。ただ、新設校に目を向けると、人工芝の校庭、メインエントランスや多目的スペース、図書室の充実、ユニバーサルデザインなど注目すべき点が多々あり、子どもたちの未来を見据えた学校づくりが着実に進んでいることがわかります。
現時点で、公教育できわだった特色はないものの、適正規模の区立小中学校を地域コミュニティの核とし、集団教育の良さを生かしながらすべての子どもたちが自らの関心や意欲に応じた発展的学習を進められる体制を整備しています。
<参考資料>
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フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。