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2020.12.17

中学生の英語スピーチコンテスト|必要な英語力、原稿の書き方、練習方法を英語講師が解説

英語が好きなわが家の中学生。「興味や力を伸ばしてあげたい」と思っているなら、それなら英語スピーチコンテストに挑戦してみるのはいかがでしょう。そこで「中学生向けの英語スピーチコンテストはどんなもの?」「原稿・スピーチに必要な英語力とは?」「高校受験に有利?」など、英語スピーチコンテストについて英語講師の佐竹美緒さんが解説します。

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中学生向け英語スピーチコンテストとは

英語スピーチコンテストは、中学生が英語で自分の考えや夢を人に伝える大会です。自分の思い描くことを整理して他人が理解できるように英作文を組み立て、それを人前で発表します。大変な作業ですが、この経験を通じて英語の文章構成力も伝える力も飛躍的に向上します。

英語スピーチコンテストとはどんな大会か

英語スピーチコンテストの一般的な流れは、英語での表現力や書類審査による予選を行い、通過した人が本大会に出場。実際に人前でスピーチを行うことになります。

イメージをしやすいように具体的なコンテストを見ていきましょう。

中学生対象の英語スピーチコンテストの中で最も歴史が長く、最も全国的に普及しているのが「高円宮杯日本中学校英語弁論大会(高円宮杯)」です。

同大会では、各中学校の校内予選を経て、校長先生の推薦を受けると、まずは都道府県大会に進むことができます。さらに、都道府県大会の上位数名は決勝予選大会へと進んでいきます。

また、「全国ジュニア英語スピーチコンテスト」には、自作の英作文を発表する会場審査の前に2回の審査があります。どちらも課題文を読み上げるという審査で、最初の審査は「MyET」というアプリに録音したもの、2回目の審査は動画を撮影したもので選考されます。

また、英語スピーチコンテストは基本的に個人参加ですが、中にはチームで参加できる大会もあります。

Change Maker Awards (CMA)」は4名までのチームで参加することが可能です。まず日本語のエッセイで書類審査が行われ、予選は動画、本選は会場審査で行われます。

キッザニア東京 ENGLISHコンテスト」も1~5名で応募することができ、動画審査を経て会場審査が行われます。

英語スピーチコンテストのテーマとは

英語スピーチコンテストは、テーマが設定されているものと、参加者が自由に設定していいものとに分かれますが、内容は未発表のものに限ります。

それでは、どんなテーマがあるのかを先ほど紹介したコンテストを例に挙げて見てみましょう。

高円宮杯日本中学校英語弁論大会(高円宮杯)」の場合、テーマは特に設けられていません。5分間の制限時間内に自分の意見や主張を発表します。

全国ジュニア英語スピーチコンテスト」に中学生で参加する場合、最終審査でテーマに沿ったオリジナル英作文を発表しなければなりません。

2020年度のテーマは”What can I do to make the world a better place in the future?”(未来の世界がより良い場になるために、私には何ができるだろう?)でした。このテーマにもとづいていればタイトルは自由。制限時間は3分30秒です。

Change Maker Awards (CMA)」の2020年度の個人部門テーマは「世界に伝えたい私の探究」、チーム部門テーマは「私たち×〇〇」でした。「私たち×〇〇」分野では、「昆布の効能」、「屋根の形状」、「Ethical Consumption」などについて発表が行われたようです。

英語スピーチコンテストの参加者レベルとは

英語スピーチコンテストでは、英語の発音のルールを踏まえているかどうかを問われることもありますが、英語ネイティブスピーカーのような発音である必要はありません。

そのため大半のコンテストが日本語を母国語として育った人を対象にして開催されています。英語圏で教育を受けたことがある、あるいは、両親のどちらかの母語話が英語という場合は、参加を認められないものも少なくありません。

また、日本でインターナショナル・スクールに通っている場合や、過去に他の大会で上位入賞している場合も参加が制限されています。

先ほど紹介した「高円宮杯日本中学校英語弁論大会(高円宮杯)」には、英語圏の扱いについて明確な規定があります。英語を第一言語とするアメリカやイギリスだけでなく、英語を公用語、公用語に準ずる言語として使用する国・地域など、70ヵ国もの国が英語圏として定められており出場できません。規程に違反して出場した場合、失格とされます。

逆に参加できる英語力に下限を設けている英語スピーチコンテストはありません

全国ジュニア英語スピーチコンテスト」は、幼児や小学生でも希望すれば中学生のレベルの審査に応募できます(中学生が下のレベルに参加することは認められていません)。

ただし、参加条件に下限はないとはいえ、各大会とも予選の段階で英語力は審査されます。参加するのであれば、ある程度の努力と練習は必要になると考えておきましょう。

必要な英語力の目安は

英語スピーチコンテストのスピーチ時間は短くても3分30秒間、大会によっては5分間もの時間が設定されています。英語学習者が1分間に話す英語の量は100~130語といわれており、3分30秒間のスピーチでも350語以上の長さの原稿が必要です。ちなみに、英検1級のライティング問題の文字数は200~240語なんですよ。

つまり、英語スピーチコンテストの原稿は、一般的な中学生では書いたことがない分量です。仮に中学校の中で英語力が高くても大変な労力が必要になることでしょう。

さらに、英語の文章構成と日本語の文章構成が異なることにも注意が必要です。日本語は起承転結で書くことが評価されますが、英語は序論(Introduction)・本論(Body)・結論(Conclusion)と3部構成になります。さらに本論も3部構成で組み立てる方が読み手・聞き手にとって理解しやすいとされています。

最後に、英語を外国語として学ぶ日本人が書く英語は、英語ネイティブスピーカーに校正してもらう“ネイティブチェック”を受ける必要があります

文法的に正しい英語を書いたとしても、聞き手が理解しやすいスピーチになっているとは限りません。せっかく大変な労力をかけて書き上げた英語スピーチの原稿が、聞き手に理解してもらえないことがないように、ネイティブチェックのプロセスは省略しないようにしましょう。

挑戦しながら英語力は伸びていく

最近は小学生のうちに英検3級を取得する子も増えてきました。ですが、早くから英語の資格を持っているからといって、社会に出るときに英語力で有利になれるとは限りません。

中学校入学時点で大きな差が開いているように見えても、中学校卒業時、高校卒業時で逆転してしまうケースも決して珍しくないようです。

実際に中学生から英検を受け始めた子が、英語スピーチコンテストの原稿作成を経験したことで英語ライティングの力が付き、中学生の間に英検2級に合格した事例もあります。

原稿作成のためにできること

英語スピーチコンテストでは、原稿を自分で作成することで英語力が向上します。

例えば、校内予選がある場合、英語教師が原稿のチェックやスピーチの練習を担当することになります。徹底した個別指導になり短期間で英語力は大きく改善されることでしょう。

学校での協力が得られなくても英会話スクールなどに通っていれば講師に相談したり、普段は通っていなくても英語スピーチコンテスト対策として、期間限定で家庭教師に来てもらったりという方法も考えられます。

ほかにも最近はインターネットで英語の添削をしてくれるサービスがあり、英語スピーチの添削に強い人に依頼するのも一つの方法です。

いずれにしても、最終原稿のネイティブチェックを忘れないようにしてください。多少お金はかかるかもしれませんが、いい原稿を作成するには欠かせないプロセスです。

スピーチのためにできること

原稿が出来上がると、英語でスピーチする練習が必要です。こちらも英語教師・講師やネイティブスピーカーの協力が得られると上達が早いです。

【練習1】音声を録音する

ネイティブスピーカーに指導してもらう場合は、モデル音声を録音させてもらい少しでも近づけるように練習できるといいですね。

英語スピーチを練習する際は、自分の音声も録音してみるのが上達のコツです。自分ではモデル音声と同じように発音できているつもりでも、録音した音声を聞くと、あまりにもジャパニーズ・イングリッシュな発音であることにショックを受ける中学生がほとんどだと思います。

まずは、自分で「モデル音声とどこが違うのだろう?」と比較しながら考え、自分で修正するのも有意義な勉強法です。

何度も自分で練習してみて、どうしてもモデル音声と違うと感じるところ、あるいは、モデル音声のように出来ないと思うところがあれば、先生や英語ネイティブスピーカーにどうしたらいいか聞いてみてください。解決方法を教えてくれるかもしれませんし、もしかすると心配しなくてもいいところかもしれません。

【練習2】話し方を工夫する

発音がきちんと出来るようになったら、ゆっくり明瞭に話すことや、伝えたいことを強調して話すようにします。間を取りながら話すことも大切です。色々な人に英語スピーチを聞いてもらい、聞きやすいか、分かりやすいか、率直な感想をもらってください

もしアドバイスを取り入れるべきかどうか迷うときは、そのアドバイスを取り入れた話し方と、そうでない話し方をどちらも録音し、自分で聞いてみるといいでしょう。アドバイスに違和感があるようなら、無理に取り入れる必要はありません

【練習3】ジェスチャーについて考える

ジェスチャーをどう取り入れるかについては、人によってアドバイスが大きく変わります。

全くジェスチャーがないと確かに味気ないかもしれませんが、あまりにもジェスチャーが大げさすぎると逆に違和感があるものです。不自然なジェスチャーが入ると気になって話に集中できないという人もいます。

今年はアメリカ大統領選挙が行われました。大統領選の演説をインターネット等で視聴し、どの程度のジェスチャーが入っているか参考にするといいでしょう。

英語スピーチコンテストの選び方

最後にどのような基準で参加を選んだらいいのか考えてみましょう。

高校受験を意識して選ぶ

英語教育に詳しい保護者の中には、子どもが中学生になったら積極的に英語スピーチコンテストに挑戦させる人がいます。子どもが小さいうちから英語スピーチの指導に強い先生に英会話を習わせ、中学校の英語スピーチコンテストに備える保護者もいます。

そのような保護者は、英語スピーチコンテストに出場した実績があると、内申書で有利になることを期待しているようです。実際に、英語スピーチコンテストが決め手となり、高校受験で推薦合格した生徒もいるようです。特に「高円宮杯日本中学校英語弁論大会(高円宮杯)」は、学校の代表として都道府県大会に出場できたという時点で高く評価されるようです。

チームで参加できる大会を選ぶ

英語スピーチコンテストの中にはチーム参加が認められているものがあります。一人で壇上に立つことに抵抗がある場合は、友達を誘ってチーム参加するのがいいかもしれません。

また、英語学習奨励金や図書カード、語学留学など海外での学習活動の支援金などの賞品を目指して参加するのもいいでしょう。

このほか、都道府県や地域の企業が独自に開催する英語スピーチコンテストもあります。学校や英会話スクールに問い合わせてみるといろいろと教えてくれるはずです。

会場審査がないコンテストを選ぶ

英語朗読コンテスト」は課題文を朗読するコンテストで、自分で英語スピーチ原稿を作成する必要もなければ、会場審査もありません。朗読した音声をCDやカセットテープに録音して送付することで参加します。

事前に公開されている朗読のヒントに従って練習するだけでも力がつき、参加者には個別の結果報告書とワンポイントアドバイスが送られてきます。

審査項目は、流暢さ・発音・表現力に加え、元気に読めているかどうかもチェックされるようです。英語を上手に話せるようになりたいけど、人前で話すことに緊張する場合は、このコンテストがおすすめです。

ただし、同コンテストは個人の申し込みができず、学習塾や学校など団体での申し込みとなります。参加したい場合は、教員や講師に相談しましょう。

ライティングのみのコンテストを選ぶ

The1st AIC ESSAY CONTEST~第1回 AIC中学生・高校生対象英語エッセイコンテスト~」は、英語が母国語でない日本の在住の中学生と高校生を対象にした英語ライティングコンテストです。

ちなみに2020年のテーマは、”How I would represent Japan to New Zealand students and what I would do to represent New Zealand to Japanese students on my return to Japan.”(私はニュージーランドの生徒に日本をどう伝えるか、日本に帰国してから私は日本の生徒にニュージーランドをどう伝えるか)で、自作未発表の原稿であること。語数は本文のみ401~600語と指定されています。

同コンテストの魅力は、最優秀・優秀賞受賞者をニュージーランド短期語学留学に招待してくれること。人前で話すことにどうしても抵抗があるけど、英語力や構成力を身につけたい場合は、このコンテストに挑戦するといいかもしれません。

海外へ行けるコンテストを選ぶ

さて、ここまで英語が母国語あるいは第二言語でない中学生を対象とした英語スピーチコンテストを中心に紹介してきました。

最後に、世界54ヵ国が参加する国際的なスピーチコンテスト「EFチャレンジ2020」を紹介します。

これまでに約5万人が参加している同コンテストは、対象年齢が14~18歳。2020年のテーマは”What global issue are you most passionate about solving?”(あなたが最も熱心に取り組む地球規模の課題は何ですか?)でした。優勝者はニューヨークで開催され参加各国の代表とともに約1週間の研修を受ける「EFユースリーダーシップフォーラム」に参加できるそうです。

スピーチのガイドライン自体が英語で書かれていますので、日本の中学生には難しいかもしれませんが、世界に羽ばたこうというガッツがある中学生にはぜひ挑戦してもらいたい英語スピーチコンテストです。

スピーチコンテストを将来につなげるために

いい英語スピーチができるのは、英語の成績がいい人だけとはいえません。学校や英会話スクールの先生が指導に入ってくれれば、英語の添削も発音練習も十分に改善することが可能です。ですので、中学生の子に英語スピーチコンテストに出たいという意思があるなら、英語力を理由に止めさせることだけはしてほしくありません。

実は、一番指導が難しいのは、英語力ではなく、英語スピーチで話す内容です。英語の成績がよくても、五感を使って多様な経験をしたことがなければ、人に共感してもらえるような話のネタを自分の中から見つけ出すことができないからです。

英語スピーチコンテストに挑戦させたいのであれば、親子でさまざまな体験を積み重ねることが大切かもしれません。英語で話すからといって、必ずしも海外旅行や留学の経験が有利ということはありません

例えば、地域のボランティア活動に参加したり、地域の大学で開催される中学生向けの体験講座に参加したりして、その経験で何を得られたのか、参加することで自分がどう変わったのか、自分の言葉で語る習慣をつけると良いでしょう。

コロナ禍の現在、国際交流もオンラインに移行しており、高額な旅費をかけなくても自分の家から海外の同世代の若者と交流できるイベントも多数開催されています。

知識やスキルを詰め込むのではなく、個性を伸び伸びと発揮することができる環境こそが、日本語でも英語でも人に共感される話ができる子に育てるために大切です。

紹介しているコンテストのいくつかは 新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点などから今年度の開催が中止となっています。来年度以降の開催については、各ホームページで確認をお願いします。

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佐竹 美緒

イギリスで修士号を取得した後、海外数ヵ国で勤務した経験を持つ。結婚を機に英語講師に転身し、大学や専門学校で教えて10年以上経つ。大学入試二次試験や大学院入試の英語指導、TOEICやGTECなど国内の各試験指導に加え、TOEFLやIELTSなど留学対策も手掛ける。英検1級、TOEIC 950。

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