中央区の教育/学校数や学力、中学受験率ほか子育て世代の口コミ情報を紹介【23区の教育⑤】
23区の教育環境を開設する連載記事。今回は中央区を紹介します。居住地区と商業地区のエリアがはっきりと分かれている中央区では、独自の特認校システムを導入し、地域の特色を活かした教育を取り入れています。
目次
人口は増加傾向にありオリンピック後はさらに変動の可能性も
データで見る中央区の教育環境
- 義務教育世代の子どもの数=2万4000人
- 公立小学校の数=16校
- 公立中学校の数=4校
- 特別支援学級=小学校3校、中学校2校
- 特別支援学校=学区により江東区の特支学校へ越境
- 公設学童クラブ=8ヵ所(区内選択可能)
- 民間学童の数= 調査中
- 私立中学進学率=37.15%
- 家賃相場(ファミリー世帯)=3LDK:35.63万円
- 治安・犯罪率=2019年の刑法犯件数=591件
東京23区のほぼ中心にある中央区。日本橋や銀座などの商業地、八重洲や茅場町などのビジネス街を抱え、区内の77%が商業地区に指定されています。一方、豊海や晴海などの月島臨海地区には大型マンションが次々新築され、人口は増加傾向にあります。
東京オリンピックの選手村は中央区晴海に建築されており、開催後は大規模リニューアルを経て、マンションとしての販売が予定されています。計画では、2024年以降に5600戸・1万2000人の街ができる予定ですが、小中学校が建設されるかどうかは未定。オリンピック終了後は区内の人口地図が大きく変化するかもしれません。
3人に1人以上が私立中学に進学! 都内3位の私立中学進学率
2020年度の私立中学進学率は37.15%で都内3位の高さを誇り、1月下旬から2月上旬の中学受験時期は、6年生のほとんどが受験のために欠席という日も珍しくありません。特に久松小学校や泰明小学校、常盤小学校といった歴史ある公立校では中学受験熱も特に高いといわれています。
また、東京駅八重洲地区の再開発により、2022年には超高層のブルガリホテルの一角に開校することになった城東小学校や、アルマーニ制服で話題になった泰明小学校など、「高級感がある」「庶民は大変そう」というイメージを抱いてしまいがちな中央区の小学校。
しかし各小学校で標準服が決まっているので、朝の服選びに時間がかからず、競い合いもないので、「私服よりも楽」という保護者の声も意外に多く聞かれます。
【中央区の学童】公設学童は区内8カ所にあり、基本は無料
中央区の公設学童は区内8カ所、児童館に開設されています。小学1~4年生で一定の条件を満たしていれば利用申請をすることができますが、各施設とも定員があり、基本的には新年度が始まる時点で定員に達しているよう。
また、利用料は午後6時まで(土曜は午前9時~午後5時)という時間内であれば無料。ただし、午後6時以降も利用する場合は、延長利用料(1回400円、月上限5,000円)が必要になります。延長の場合は午後7時30分まで利用可能です。
【中央区の教育の特徴1】中央区ならではの特認校制度
中央区では商業地やビジネス街に小学校が位置するケースが多く、学区内の児童数だけでは定員に満たない学校もあるよう。
そこで定員に余裕がある5校を“特認校”と定め、区内在住であれば学区外でも選択できる“特認校制度”という学校選択制を平成21年度から導入しています(入学希望者が多い場合は抽選)。
現在の特認校は、城東小学校、京橋築地小学校、常盤小学校、阪本小学校、泰明小学校の5校。中でも城東小学校、常盤小学校、阪本小学校の3校にはスクールバスがあり、晴海や勝どきなどの月島地区からも安心して通学できるシステムが整っています。
また、城東小学校は理数教育に、常葉小学校は英語教育に特に力を入れるなど、認定校は各校、特色のある学校作りにも取り組んでおり、学区外の保護者・児童から選ばれるための工夫もしているようです。
【中央区の教育の特徴2】地域や文化に根づいた学習
繁華街のみならず、昔ながらの下町の顔も併せ持つ中央区。銀座や八重洲、築地市場、日本橋、佃島、人形町など、特徴ある地域性を活かした体験学習などを積極的に行っています。
例えば常葉小学校では日本橋洗いのイベントに学校で参加したり、老舗をめぐる授業が取り入れられていたり、泰明小学校では帝国ホテルや三越などの見学や画廊めぐりなど、中央区ならではの豊富な資源を活かした学習ができます。
また歌舞伎座がある影響か、太鼓や笛、三味線などの日本の伝統芸能に触れる授業を設ける小中学校も多くあります。
地域のイベントに学校単位で参加し、地元の施設や人材に協力を仰いだ学習活動などを積極的に行うことで失われつつある郷土愛を育み、地域の人たちとの交流を深めています。
【中央区の教育の特徴3】放課後の居場所「プレディ」の設置
プレディは保護者が働いている・いないに関わらず、子どもたちが放課後に安心して過ごせる居場所づくりとして区内12校の小学校に設置されているます。8ヵ所ある学童に比べても、当日に急遽参加できたり、帰宅も随時許されているなど自由度の高いシステムが人気です。
また、保護者の帰宅が遅くなる場合は夜19時30分まで預かってもらえるなど、学童保育と条件を全く同じにしているのもプレディの特徴。夏休みなどの長期休暇や土曜日もオープンしており、「学童に入れなくてもプレディがあるから大丈夫」という安心感につながっています。
プレディが設置されていない学校に通学している場合、隣接する地区や自宅近くのプレディに参加することも可能。校庭を広く確保できないのが悩みの中央区の小学校において、放課後プレディではのびのびと走り回って遊ぶ子どもたちの姿が多く見られます。
【中央区の学力】小学校は平均を大きく上回るものの、中学は領域によって下回ることも
令和1年4月に文部科学省が実施した全国学力テスト(小学校6年と中学校3年対象)によると、小学校の国語と算数の平均正答率は、それぞれ73.0%と77.0%と東京都平均や全国平均を大きく上回る結果でした。
高い私立中学受験率・進学率を誇る中央区では、通塾している子どもも多く、これは妥当な結果ともいえます。
それに対し中学校の学力テストでは、国語の平均正答率は74.1%で東京都の平均を上回ったのはわずか0.1%。数学の平均正答率は62.8%、英語では平均正答率62.3%と東京都平均と全国平均は上回ったものの、小学校ほどの差は出ていません。
国語の「話す・聞く能力」「言語についての知識・理解・技能」の領域では東京都の平均を下回る結果となり、平均正答率も東京都とほぼ同じにとどまりました。
この結果を見ると、小学校では東京都や全国を大きく上回っていたものの、中学に入るとほぼ東京都の平均程度に落ち着いてしまうようです。小学校で高得点をマークしていた子どもたちが私立中学進学してしまったことで、公立中学校では平均点が下がるという結果につながったともいえるでしょう。
中央区の保護者は地元の公立中学で身に付けられる学力に不足感・不安感を持ち、より私立中学志向を加速させているのかもしれません。
【口コミ情報】中央区の教育は学校や地域により特色が多彩
中央区の保護者たちの教育環境への意見をピックアップしてみました。
「長男と次男で中央区内の別々の小学校に入学させました。学校により特色、先生・保護者・子どもの雰囲気、行事への取り組み方、力を入れている学習などが全然違うので、一度見学なり先輩ママに聞くなどしてから入学を決めた方がいいと思います」(小6男子の母)
「派手な部分をクローズアップされがちな中央区の小学校ですが、通っている子どもも親も普通です」(小2男子の母)
「地域の人たちとのつながりが強いと思います。日本橋や神田にまつわるイベントにも声をかけてもらったり、老舗めぐりなどが学習内容に組み込まれていたり、自分の育った街がどんなところかを理解できる環境があります」(小4男子の母)
「上の子は中央区で、下の子は隣の区の小学校に通学しており、差は顕著に感じています。中央区は先生が子どもの意見を聞きながら年間行事にも取り組んでいて子どもの成長にプラスになっています。中学進学に向けての準備もしっかりできました」(小6女子の母)
「臨海地区は様々な地区から引っ越してきた人ばかりで、古い慣習などに縛られず自由な雰囲気です」(中3女子の母)
「有名な日本橋中学校をはじめとして、ブラスバンドや音楽に力を入れている中学が多いと思います」(中2女子の母)
高まる教育熱に対し、教育ICT化には課題も
年々私立進学率も上がり、保護者の教育熱が高まっているのに対し、教育用コンピュータの整備や普通教室の無線LAN普及率などは、東京都平均や全国平均よりも大きく下回っている中央区。
学習用PC1台あたりの児童生徒数は7.9人で、23区内でも19位と出遅れ感は否めません。
2020年の一斉臨時休講時のオンライン授業対応でも各校に大きく差があり、対応が遅れた学校では保護者から苦情が出たケースもあったといいます。教育に対する関心がますます高まるなか、今後の課題も浮き彫りになっています。
<参考サイト・文献一覧>
中央区ホームページ
幻冬舎ゴールドオンライン
東京都/平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
学校教育情報サイト
警察庁ホームページ
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大学卒業後、編集プロダクションや業界新聞などを経て、フリーの編集ライターへ。街紹介サイトや子育てサイトでの記事執筆で、トータル1000件以上の学校や子育て支援施設、ママサークルなどを取材。現在は実用本の編集・ライティング、人物インタビューなどを中心に活動中。2人の息子の母。