豊島区の教育/学校数や学力、中学受験率ほか子育て世代の口コミ情報を紹介【23区の教育③】
23区の教育環境を解説する連載記事。第3回は、豊島区です。教育環境の整備にも力を入れ、ICT教育では、2020年9月、区内の全小中学校において子ども一人につき1台タブレットが支給され、注目を集めています。
目次
私立中学受験率は23区中8位
データで見る豊島区の教育環境
- 義務教育世代の子どもの数=約1万6000人
- 公立小学校の数=22校
- 公立中学校の数=8校
- 特別支援学級=小学校5校、中学校3校に設置
- 特別支援学校(小・中/豊島区が通学地域の学校)=視覚障害2校、聴覚障害1校、知的障害1校、肢体不自由1校
- 特別支援教室=区内全22小学校、中学校8校に設置(それぞれ巡回校あり)
- 公設学童クラブ:22カ所
- 民間学童の数=調査中
- 学童待機人数=ゼロ
- 私立中学進学率=32.20%
- 家賃相場(ファミリー世帯)=3LDK:27.37万円
- 治安・犯罪率=2017年の刑法犯件数:4.778件
23区の北西部に位置し、都心部だけでなく埼玉方面のアクセスも良い豊島区。面積約13㎢、人口約30万人と、人口密度は23区内中1位です。
豊島区=池袋=繁華街というイメージがありますが、下町情緒が漂う巣鴨や駒込、学生で賑わい庶民的な雑司が谷、高級住宅地が広がる目白などさまざまなエリアがあり、住みやすさを魅力にあげる保護者も多くいます。
公立小学校は22校、中学校は8校。1クラスあたりの平均児童数は28.7人で、学級編成の弾力化により国の標準(40人、小1は35人)を下回り、児童へのきめ細やかな対応が期待できます。
私立中学校受験率は32.20%で、23区中第8位。区内にある巣鴨中学校、豊島岡女子学園中学校、学習院中等科、立教池袋中学校をはじめ、近隣の区やさいたま方面にも名門私立中高一貫校が点在することから、中学受験熱が高まりやすい環境といえるでしょう。
「SDGs未来都市」に選定。各校で「SDGs」に取り組む活動が広がる
現在、人口密度1位の豊島区ですが、2014年時点では少子高齢化の影響もあり「日本創世会議」で「消滅可能都市」(=2010年から2040年にかけて、20〜39歳の女性の数が5割以下に減少する自治体)のひとつとして名指しされていました。
その後、「消滅可能都市」へと進んでいくことを回避すべく、「女性にやさしいまちづくり担当課」の設置、公園の整備、待機児童ゼロなどの施策を急速に推進。
その成果、0〜14歳の人口増加、2年連続待機児童ゼロなど数字として現れ、「共働きしやすい街」ランキング(2017年・日経DUAL)で1位を獲得しています。
また、待機児童の解消以外に家族にとって魅力的で住みやすい街づくりに力を入れています。
2016年、2017年に南池袋公園、池袋西口公園をリニューアルオープン、2019年には中池袋公園、2020年には、すべての子どもが遊べるインクルージブ公園「としまキッズパーク」を擁するイケ・サンパークをオープン。2019年7月、豊島区は内閣府より「SDGs未来都市」に選定されました。
SDGsに関する取り組みは、行政のみにとどまりません。豊島区の公立小中学校でも花壇づくりや公園を育てるプロジェクトなど、SDGsに取り組む活動が広がっています。
【豊島区の学童】希望すれば参加可能。文科省の補助事業・「放課後子ども教室」も実施
豊島区には、「子どもスキップ」とよばれる放課後対策事業があります。放課後の校内を利用して子どもたちが安全に遊べる場所を用意する事業で、学童クラブもこの事業に含まれます。
学童への希望者は、“全入(全員入れる)”が豊島区の方針。“入れない”という心配はないものの、学校によっては「人数が多すぎて落ち着かない」「大人の目が行き届かない面もある」などの課題もあるようです。
指導員も不足しており「常に募集中」という状況ではありますが、現状を把握しながら状況の改善につとめています。
また、各校の「子どもスキップ」では、文部科学省の補助事業である「放課後子ども教室」が実施されており、コーディネイターの裁量により、将棋、工作、英語、野球、ヒップホップ、フラダンスなどさまざまな体験ができます。
【豊島区の教育の特徴1】ICT教育を強化し区内の全生徒にタブレット配布
豊島区では、GIGAスクール構想の基盤となる「小・中学生1人1台タブレットパソコン貸与」にかかるICT環境の整備を進め、2020年9月、区内の全児童に配布を完了。
自分専用のタブレットを家庭から持って登校し、授業や自主学習に生かしていくなどの体制を整えています。
顔を見ながら双方向の対話が可能であるため、学校に通うことができない生徒と教師との関係づくりにも活用していきます。
【豊島区の教育の特徴2】小・中学校で隣接校選択制を採用
小中学校共に、隣接校が選択できるのも豊島区の特徴です。部活や学校の雰囲気などにより、自分の校区に隣接する通学地域の学校も選択できる制度を実施し、電車やバスを利用して通うことができます。
この制度により、「A小でいじめにあい不登校気味になったが、B小に転校し学校に通えるようになった」というケースもあるようです。
【豊島区の教育の特徴3】全中学校で検定対策「水曜トライアルスクール」を実施
豊島区では、英語検定、数学能力検定、漢字検定、パソコン検定などの受検指導に対応できる外部指導員を原則水曜日に希望する中学校に派遣し、講座を開いています。
2016年度から始まり、区内の全中学校で開設。検定合格という明確な目標達成に向け、学力の向上を図っています。
【豊島区の学力】小学校はトップクラス、中学校は平均をやや上回る
平成30年4月に行われた全国学力テスト(小6と中3に実施)によると豊島区の公立小学6年生の国語の正答率は、国語Aが75%、国語Bが59%、算数Aが69%、算数Bが58%、理科が63%。
全科目共に、東京都平均、全国平均を上回り、上位層にあります。また、中学3年生の国語の正答率は、国語Aが78%、国語Bが64%、数学Aが68%、数学Bが50%、理科が66%。全科目共に東京都平均、全国平均をやや上回っています。
この結果について豊島区の教育長は「問いをもち、言語活動で考え合い深め合う学習、ノートの活用、家庭学習の努力が学力の定着につながった」と語っています。(出典:「教育だより豊島」平成30年9月)
【口コミ情報】区をあげて教育環境改善の姿勢が伝わる
豊島区の保護者に、教育環境について聞いてみました。
「区をあげて、子育てや教育環境を良くしていこうという姿勢が伝わってきます。たまたまかもしれませんが、子どもたちがお世話になった先生は、皆さん熱心で、PTA活動にも協力的。今年はコロナの影響で、中止や縮小になったイベントもありましたが、親子で楽しめる行事をたくさん企画してくださり感謝しています。」(中1男子、小5女子の母)
「学童にお世話になっていますが、大規模マンションがひとつできるとファミリー層が急に増えるため、一時的に芋洗いのような状況になることも。使用するスペースが子供の人数に対して狭すぎるため、トラブルや運動不足などが心配です」(小2女子の母)
「給食は、それぞれの学校の栄養士が食材選び発注をかけて独自で給食の献立を考えています。日本の行事食や子どものリクエストに答えるなど工夫してくれているのに加え、アレルギーのお子さんにもきめ細やかな配慮をしてくれているようです。子どもが通う学校の給食試食会に参加しましたが、小学校と中学校、どちらもとても美味しかったです!」(高2男子、小6女子の母)
「中学校は、部活動の種類が少ないので、できれば増やしてほしいです。また、高校受験に対してもう少し手厚いフォローが必要ではないかと思います。高校受験のためにほとんどの子が塾に行かねばならない現状は、正直疑問に思います」。(中3男子の母)
「全学校の体育館に冷暖房を設置、生徒全員にタブレット配布など、設備面で充実していると思います。タブレットをどのように活用し、ICT教育をどのように進めていくのか見守っていきたいですね」(小4女子の母)
「消滅可能都市」から「子育て・教育環境にすぐれた街へ」
「消滅可能都市」と名指しされて以来、「家族にやさしい街」「子育てしやすい街」をめざし、行政サービスを年々充実させてきた豊島区。
上述した4つの公園に加え、郷土資料館、舞台芸術交流センター、芸術文化劇場などさまざまな施設を擁する文化都市でもあります。
「SDGs未来都市」に選定されたことを足がかりに、持続発展する都市として「だれもが主役になれる街」「国際アート・カルチャー都市」をめざしていくそうです。
街の進化とともに、子育て・教育環境のさらなる進化が期待されています。
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フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。