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2024.09.05

親に甘えられなかった人の特徴は?親子関係の大切さや生きづらさの解消法などについて解説

生きづらさや人間関係の構築に悩んでいる方のなかには、その根源に「親に甘えられなかった経験」が隠れているケースがあります。

この記事では、親に甘えられずに育った方の特徴や及ぼす影響、そしてどのように向き合っていけばよいのかについても触れていきます。

「子どもが親にうまく甘えられずに育つとどうなるの?」「自分の生きづらさの原因は親に甘えられなかったことにある?」そのように気になっている方が、自分の過去と向き合い、より良い未来を築くためのヒントを見つけていただければ幸いです。

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記事を執筆したのは…

梅田 ミズキさん認定心理士、サービス介助士

大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

幼少期の親子関係が大切な理由とは?

心の発達の面で非常に重要な役割を果たすのが、幼少期の親子関係です。安心して甘えられる環境は、健全な自己形成と対人関係の基盤になります。

子どもの心理的発達に影響するから

アメリカの発達心理学者エリク・エリクソンが提唱した「心理社会的発達理論」では、乳幼児期に親子のスキンシップを通じて基本的信頼感を育むことは、その後の人生に大きく影響するとされています。子どもが安心感を感じたり自己肯定感や自信を持てるようになったりするためには、この時期にいかに十分にケアしてもらえるかが大切です。

安定したアタッチメント(愛着)の形成に関わるから

アタッチメントとは、子どもが親との間に形成する強い情緒的な絆を指します。この絆は、子どもが不安や恐れを感じた際に、安全基地として機能するものです。

幼少期に安定したアタッチメントを得た子どもは、親を安全な避難所として認識しやすくなります。これは、自立心や好奇心の発達を促進し、後の人生の健全な対人関係の基盤になる大切な要素です。

他者とのコミュニケーションを学べるから

幼少期の親子関係は「子どもが他者とのコミュニケーションを学ぶ最初の場」といっても過言ではないかもしれません。親との日々のやりとりを通じて、子どもは言語スキルを獲得するだけでなく、非言語的なコミュニケーションの方法も学んでいきます。

例えば、表情や身振り、声のトーンなどから相手の感情を読み取る能力や、適切な反応の仕方を身につけられます。また「抱っこをせがんだら親が応えてくれた」など、子どもが自分の思いや欲求を表現する練習ともなる場所です。

このような経験では、後の社会生活での円滑なコミュニケーション能力が少しずつ育まれます。友人関係や学校生活、将来の職場での人間関係を築く際の基盤になり得るのです。

親に甘えられないとどんな悪影響があるのか

親に甘えられない環境で育つと、子どもの心理的発達にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響は成人後も長く尾を引くケースがあり、生きづらさの原因となる場合も少なくありません。

自己肯定感の低下

親に甘えられない環境で長く頑張っている子どもからは「自分の存在価値を十分に感じられない」との相談がよく聞かれます。常に親の期待に応えようとしたり、自分の感情を抑え込んだりすることで「ありのままの自分を受け止めたい」「自分に自信がある」との気持ちが育ちにくくなるのです。

その結果「自分は価値がない」「愛されるに値しない」など、否定的な自己イメージを持ちやすくなります。

対人関係の困難

幼少期に情緒的なつながりが安定しない場合、成人後の対人関係に影響が及ぶケースも少なくありません。他者を信頼できず、親密な関係を築くことに恐れを感じたり、逆に依存的になりすぎたりする傾向が見られやすくなります。

これにより、友人関係や恋愛関係、職場での人間関係など、さまざまな場面で困難が生じる可能性も否定できません。

感情が適切に表現できない

親に甘えられない環境では、自分の感情を素直に表現しにくくなってしまいます。「迷惑をかけてはいけない」「弱みを見せてはいけない」などの思い込みから、喜怒哀楽を適切に表現できず、結果として周囲とのコミュニケーションに支障をきたしやすいのです。

ストレス耐性の低下

「自分の感情を抑えて環境の平和を保とうとする癖がついてしまった場合、困難な状況に直面したときの適切な対処法を学ぶ機会も自然と少なくなってしまいます。そのため、大人になってもストレスに弱くなってしまいやすいのが特徴です。

些細なことでも強い不安や緊張を感じやすくなるものの、他者にどう頼ったり相談したりしていいかわからず、一人で抱え込んでしまいがちになります。

アダルトチルドレンの問題

親に甘えられなかった経験は、アダルトチルドレン(AC)の問題とも密接に関連しています。ACとは、幼少期に親や保護者からの適切な愛情やケアを受けられずに育った方が成人後も抱える心理的・行動的特徴です。

アダルトチルドレンには、以下のような特徴があります。

・完璧主義
・他者承認への過度の依存
・自己犠牲的な行動
・自己肯定感が低い
・自己否定的な思考パターン

これらの特徴は、親だけではなく他者との関係を築くうえでもいい影響がありません。さらに、ストレスや不安、うつ病などこころの病気を引き起こす要因にもなり得ます。

関連記事はこちら「機能不全家族とは?特徴や子どもへの影響、立て直し方を専門家が解説」

親に甘えられずに育った人の特徴とは?

親に甘えられずに育った方には、いくつかの共通した特徴が見られる場合があります。

過度の自立心と責任感がある

親に甘えられずに育った方は「幼い頃から自分のことは自分でしなければならない」と感じやすくなります。そのため、他人に頼ることを極端に嫌い、何事も一人で抱え込もうとする傾向を持つのが特徴です。

また、年齢不相応な責任感を持ち、周囲の期待に応えようと必要以上に頑張ってしまうケースもあります。そのため、他者との協力関係を築くのが難しく、孤立感を深めてしまう可能性があるのです。

「自立心と責任感があるのはよいことではないか」、そう思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、常に自分を追い込み、休息を取ることができずに燃え尽きてしまうほどの自立心と責任感は、自分で自分をつらい状況へ追いやってしまいます。

感情表現の困難さがある

親に甘えられない環境で育つと、自分の感情を適切に表現しにくくなります。幼少期に感情を受け止めてもらえなかった経験から「感情を正直に出すのは弱さの表れだ」「感情を出すと拒絶される」との思い込みを持つようになるためです。

その結果、以下のような特徴が現れる場合があります。

・喜怒哀楽の表現が乏しい
・自分の気持ちを言葉で説明することが苦手
・ストレスを感じていても自覚できない
・他者の感情を読み取りにくい

感情表現の困難さは、対人関係でも大きな障壁となり得ます。自分の気持ちを伝えられず誤解が生じたり、相手の感情に共感できずコミュニケーションがうまくいかなかったりする場合があるのです。

完璧主義の傾向が強い

親に甘えられない状況が長く続くと、しばしば強い完璧主義的傾向を持つ場合があります。「完璧でなければ認められない」「失敗は許されない」との思い込みから、常に高い基準を自分に課し、些細なミスも許せなくなってしまいがちです。

この完璧主義は、以下のような形で現れる場合があります。

・仕事や勉強に過度にこだわり、燃え尽きてしまう
・相手に高い期待を持って失望しやすい
・自分の欠点や弱点を極端に恐れ、新しいことに挑戦できない
・常に自己批判的で、自分を褒められない

完璧主義は、一見するとよい特徴に思えるかもしれません。しかし、極端な場合、慢性的なストレスや不安、うつ症状などを引き起こす原因となり得ます。

他者との親密な関係構築の困難さがある

親に甘えられずに育った方は、他者と親密な関係を築きにくい、または築き方が分からないケースも少なくありません。幼少期に安定した情緒的つながりを形成できなかったのが原因で、以下のような特徴が現れる場合があります。

・人を信頼するのが難しい
・親密になるのが恐い
・自分の本当の姿を見せられない
・他者に依存することへの抵抗感

これらは、友人関係や恋愛関係、さらには職場での人間関係にまで影響を及ぼしかねません。その結果、深い絆を築くことができず、孤独感を抱えてしまう場合もあります。

自己否定的な思考パターンに陥りやすくなる

幼少期に十分な愛情や肯定的なフィードバックを受けられなければ、自分自身の価値を低く見積もってしまう可能性も否定できません。

この自己否定的な思考パターンは、以下のような形でみられる場合があります。

・「自分には価値がない」と感じる
・成功しても自分の力だと認められない
・常に他人と比較して自分を卑下する
・褒められても素直に受け取れない

このような思考パターンは、日常生活のあらゆる場面で自信を失わせ、本来の能力を発揮するのを妨げてしまいがちです。また、うつ症状や不安障害のリスクを高める要因にもなり得ます。

過剰適応と本当の自分を喪失しやすい

親に甘えられずに育った人の多くは、周囲の期待に応えようとするあまり、過剰に適応してしまう傾向があります。「いい子」でいようとするため、自分の本当の気持ちや欲求を抑えてしまいがちなのです。

この過剰適応は、以下のような形で現れる場合があります。

・自分の意見よりも他人の意見を優先する
・はっきりと断れない
・周囲の顔色をうかがいながら行動する
・本当の自分が何を望んでいるのかわからなくなる

過剰適応は、一時的に周囲との軋轢を避けられるかもしれません。しかし、長期的には自己喪失感や虚無感、さらには心身の不調をもたらす可能性があります。

なお、親に甘えられずに育った方に必ず上記の特徴がみられるわけではありませんし、同様に、上記の特徴があるからといって必ずしも家庭環境に問題があったとは言い切れません。あくまで、親に甘えられずに育った方の「生きづらさ」の根源となっているケースが多い特徴として捉えてみてください。

相談先について

親に甘えられずに育った経験から生じる問題は、さまざまなサポートで軽減しやすくなります。ここでは、相談先の選択肢について紹介します。

全国や地域の相談窓口を活用する

こころの病気に関する不安や悩み、精神医療に関わることは、お住まいの地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターで相談できます。「生きづらさを一人で抱えてしまう」「医療が必要かわからない」とお悩みの方におすすめです。

▼ お住まいの地域の保健所、保健センターの相談窓口を検索できます

保健所管轄区域案内|厚生労働省

▼お住まいの地域の精神保健福祉センターの相談窓口を検索できます

全国精神保健福祉センター一覧|厚生労働省

こころの問題に悩んでいる本人だけではなく、ご家族や周囲の方も気軽に相談できます

こころの健康相談統一ダイヤル|厚生労働省

グループセラピーへの参加

同じような経験を持つ人々が集まるグループセラピーも、効果的な選択肢の一つです。グループセラピーには、以下のような利点があります。

・孤独感を軽減できる
・他者の経験や対処法を知って新たな気付きが得られる
・グループ内でのコミュニケーションを通じて対人スキルが磨ける
・参加者同士で励まし合える

カウンセリングや心理療法を受ける

心理カウンセラーや臨床心理士のカウンセリングは、自己理解を深めながら新しい対処法を学ぶうえで非常に効果的です。否定的な思考パターンを改善して適切な行動を身につけられる「認知行動療法」や、不安定な愛着を形成し直して健全な対人関係を築く力を養える「愛着療法」などが主に用いられます。

また近年では、インターネットを利用して悩みや問題を相談できる「オンラインカウンセリング」も普及してきています。時間や場所の制約が少なく、自宅からでも専門家のサポートを受けられるため、以下のような方におすすめです。

・忙しい仕事や家事で時間が取りにくい方
・対面でのカウンセリングに抵抗がある方
・地理的に専門家へのアクセスが難しい方

繰り返しになりますが、幼少期に親に甘えられずに育った場合、生活を送るうえでさまざまな困りごとが起こるだけではなく、二次的に他の疾患を引き起こす場合もあります。そのため「一人で解決しなくては」と抱え込まず、まずは専門家への相談がおすすめです。

ただし、相談を検討する際は、自分に合った方法や専門家を慎重に選ぶのが大切です。初回の面談で相性を確認したり、複数の選択肢を比較したりしましょう。

すぐに劇的な変化は期待できないかもしれません。しかし、専門家のサポートを受けながら焦らず自分のペースで取り組めば、自己理解が深まって自分なりの対処法が見つかりやすくなります。何より「一人じゃない」と安心感を得られるのも大きなメリットです。

専門家に相談して生きづらさを解消できた方々の事例

【Aさん(30代女性)の事例】
幼少期から両親の期待に応えようと頑張り続け、常に完璧を求める生活に疲れ果てていた。しかし、カウンセリングを通じて自身の価値観を見直し「完璧でなくても大丈夫」と思えるようになった。結果として、仕事と私生活のバランスが取れて充実した日々を送っている。

【Bさん(20代男性)の事例】
親密な関係を築くことを恐れ、恋愛から逃げ続けていた。愛着療法を中心としたカウンセリングを受け、幼少期のアタッチメントの問題に向き合った結果、少しずつ他者を信頼できるようになった。時間はかかったものの、現在は安定した恋愛関係を築いている。

まとめ

この記事を読まれている中にも、親に甘えられなかった経験から人生に影響が出ている方がいらっしゃるでしょう。

「生きづらさ」の原因を理解して向き合うのは、非常に勇気のいる作業です。しかし、幼少期の経験がいまのあなたを形作っているのも事実といえます。

自分を責めたり、過去に囚われたりする必要はありません。いまからでも、自分自身を大切にしながら自己理解を深めていくことはできます。

専門家のサポートも上手に活用しながら、アイデンティティの確立や自信への大切な一歩に繋げてみてください。

【参照】

教育心理学的視点からエリクソンのライフサイクル論及びアイデンティティ概念を検討する|東京工芸大学工学部紀要.人文・社会編 Vol.37 No.2(2014)

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梅田 ミズキ

大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

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