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2021.11.24

小論文とは|作文との違いや書き方、4つの上達法を国語のプロが解説【文章が苦手な子向け】

高校受験や大学・短大・専門学校への推薦入試やAO入試の小論文。作文よりは難しそうなイメージだけど違いが何か説明できますか? そこで今回は、多くの受験生を難関校・人気校合格へと導き、『塾で教わる小論文・作文の書き方』(KADOKAWA)の共著者でもあるSchool Post主宰の石井知哉さんが、文章を書くのが苦手な子でも、小論文が書けるようになるコツを解説します。

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記事を執筆したのは

石井知哉さん

高校受験Webサイト「School Post」(https://school-post.com)主宰。塾指導歴20年以上。小学生から大学浪人生まで、教科を問わず個々の成長を引き出す指導を得意としている。共著に『塾で教わる小論文・作文の書き方』(KADOKAWA)がある小論文入試のプロでもある。

受験前に知るべき小論文のポイントと傾向

小論文を得意にするためには、

  •  小論文とはなにか?
  •  作文とはどう違うのか?

ということから始めましょう。 

小論文とは、“与えられたテーマについて、理由(「なぜなら〇〇だからだ」というもの)と根拠(「実際に〇〇という事実がある」というもの)にもとづき自分の意見を述べたもの”のことです。ポイントは次の2点になります。

小論文のポイント

  1. 理由と根拠にもとづいていること
  2. 自分の意見を述べていること

上記の2つがそろって小論文になります。

高校入試の場合、課題文や図表・グラフなどの資料が与えられた上で小論文を書くのが一般的です。特に多くの学校で 見られるのが、”小問が2つある“スタイル。

問1では、課題文を要約したり図表・グラフから読み取れることを書いたりします。そして問2で は、問1の解答をふまえて自分の意見を書きます。文字数は合計で600字前後、試験時間は50~60分程度とする学校が多いようです。

出題されやすいテーマの一例は下記になります。

  1. コミュニケーション
  2. 科学技術
  3. 環境問題
  4. グローバル化・国際化
  5. 社会の変化(少子高齢化、AIの発達など)
  6. SDGs(持続可能な開発目標)

特に④~⑥は最近多く出題されるテーマです。

小論文と作文の4つの違い

小論文と似たものに作文があります。小論文と作文は、以下の点が共通しています。

小論文と作文の共通点

  1. 与えられたテーマについて書く
  2. 日本語の文章で表現する
  3. 原稿用紙のルールにしたがって書く

ですが、小論文と作文は別物です。作文が与えられたテーマについて、体験や見聞をもとに自分の感想や気持ちを述べたものなのに対して、小論文は“与えられたテーマについて、理由と根拠にもとづき自分の意見を述べたもの”です。

具体的には小論文と作文の違いは、次の4点で異なります。

【違い①】小論文は意見 、作文は感想や気持ちを述べる

作文は「感想や気持ち」を述べるもの。代表的なものが読書感想文や運動会・遠足などの感想文 です。「○○○がおもしろかった」「○○○してうれしかった・楽しかった・悲しかった・悔し かった」など、自分が抱いた感情を書いてもかまいません。

一方、小論文では、テーマに対して「○○○と考える」という「自分の意見」を主張します。 作文とは違い、個人的な感情を書いても、ひとりよがりな文章として低い評価になってしまいます

【違い②】小論文は理由と根拠、 作文は体験や見聞を書く

作文は「体験や見聞」を書きます。「私は去年、○○○をしました」「先日、○○○というニュー スを見ました・聞きました」など、個人的に経験したことについて「自分の感想や気持ち」を述べていくのです。個人的な経験を述べることで、説得力をもたせるわけです。

一方、小論文では、「自分の意見」に対して「なぜなら○○○だからだ」という「理由」と「実際に○○○という事実がある」という「根拠」が必要です。

小論文は作文とは違い、個人的な経験ではなく「理由と根拠」があることで、論理的で説得力のある文章になるのです。

【違い③】小論文は客観性、作文は主観性が大切

作文は「ほかの人はともかく、私がどう感じるか」という主観性が大切です。客観的な事実や 一般論ではなく、オリジナリティのある自分の感想や気持ちを書くことが求められていま す。

対して小論文では、論理的であることが重要です。そのためには、“誰から見ても同じように認められる”という”客観性”が求められます。自分とは反対の意見に対してrも一定の理解を示しつつ、自分の意見が妥当だと主張することが必要となります。 作文とは違い、理論的な小論文では客観的な視点に基づいて自分の意見を述べることが大切なのです。

【違い④】小論文は常体(~だ・である)、作文は敬体(~です・ます)もOK

作文は自由度が高いので、”常体(~だ・である)””敬体(~です・ます)”のいずれで書い てもかまいません。ただし、作文全体でどちらかに統一する必要はあります。

しかし、小論文は”常体(~だ・である)”を用いるのが原則です。 作文とは違い、”敬体(~です・ます)”は使いません。

以上のように、小論文は作文と大きく異なっているのです。まずは、こうした違いをおさえておき ましょう。

<石井さんの共著はこちら>

【分かりやすい】小論文の構成や書き方

 小論文の試験を前にして、親子で頭を抱える悩みが次の2点ではないでしょうか。

  • 何を書いたらいいの?
  • どう書けばいいの?

実際、上記2点は、毎年多くの受験生からよく質問をされる悩みです。つまり、ほとんどの受験生が同じような悩みを抱えているわけです。ということは、そこから一歩抜け出すだけで、合格に大きく近づけますよね。

上記の悩みは、”文章の構成”に気を付ければ解決しやすくなります。構成とは文章の組み立て方のこと。建物に設計図、料理にレシピがあるように、小論文には文章の構成があるの です。

小論文の構成は「序論 → 本論 → 結論」

小論文には、3つのパートがあります。

小論文の構成

  1. 序論
  2. 本論
  3. 結論

出題形式にもよりますが、それぞれ下記のようなことを書きます。

◎序論 で書くこと

話題・問題を提起し、それに対する自分の立場を示すパートです。課題文を読んで書く場合には、 筆者の主張を要約して、それに対する自分の立場を示すとよいでしょう。

序論の例文

筆者は○○○と述べている。
この主張について、私は○○○と考える。

◎本論 で書くこと

序論で述べた主張について、理由・根拠を述べるパートです。このとき、自分と反対の立場から想 定される反論を挙げてそれに対する再反論を示せると、客観的な視点から論じることができて説得力がアップします。

本論の例文

なぜなら、○○○だからだ。
実際に、○○○だ。
これに対しては、○○○という反論もあるだろう。
たしかに、○○○は軽視できない。
しかし、 ○○○については、○○○することで解決が可能だ。

◎結論で書くこと

序論・本論を受けて、自分の意見をまとめるパートです。ここでは新たな主張はせずに、序論で 示した自分の立場を再び示すことで、首尾一貫した形でしめくくることを心がけましょう。

結論の例文

以上から、私は○○○と考える。

入試小論文で評価される3つのポイント

入試の小論文は、採点して得点化するものです。合格・不合格の判定に使うわけですから、採点者の好き・嫌いや感覚で採点しているわけではありません。明確な判断基準があるのです。

そこで、入試の小論文で評価されるポイントをおさえておきましょう。入試の小論文は、主に3つのポイントが評価の基準となっています。

小論文の評価基準

  • 判断力
  • 思考力
  • 表現力

上記は、文部科学省が掲げた2020年からの新教育課程実施にともない、大学入試改革や高校のカリキュラムでも使われることが多くなった3つのキーワードでもあります。

これらが小論文でどのように評価されるのか、詳しくみていきましょう。

【入試小論文の評価ポイント①】判断力

1つめのポイントは判断力です。入試の小論文では、設問を正しく読み、出題の意図をつかめて いるかが評価されています。また、課題文や図表・グラフなどの資料がある場合には、資料を正確に読み取れているかも含まれます。

小論文というと、つい自分の意見を述べることばかりに意識が向きがちです。しかし、それより先に意識すべきことがあるのです。それは、何がどう問われているかを正しく理解することです。

入試の小論文はたとえるなら、出題者・採点者とのキャッチボールです。相手が投げて来たボー ルを捕らなければ、キャッチボールになりませんよね。同じく入試小論文では、出題者が投げかけた問題を受け止めることから始まります。これにより、問いに対応した小論文を書くことができるのです。

ここで失敗すると、どんなに字数を埋めても0点になることもあります。小論文試験は、問題を判断するところからスタートします。ですから、判断力は最も重要なポイントです。 なお、「○○○字以内で書きなさい」という字数指定の場合、規定の8割に達していない場合は減点されると考えておきましょう。

【入試小論文の評価ポイント②】思考力

2つめのポイントは思考力です。具体的には、論理的に考える力のことです。入試の小論文では、筋道の通った理由と事実にもとづく根拠から自分の意見を述べているかが評価されています。

なお、”賛成か反対か”というテーマの場合、主張の内容自体で得点が左右されることはありません。小論文が求めているのは、「なぜ賛成か」「なぜ反対か」という理由と根拠なのです。ですから、「賛成」「反対」のどちらかの立場のほうが有利ということはありません

【入試小論文の評価ポイント③】表現力

3つめのポイントは表現力です。入試の小論文では、設問から判断したことや、テーマに対する自分の意見と理由・根拠を的確に伝えられているかが評価されています。

いくら判断力や思考力が優れていても、日本語で書いた文章で採点者に伝わらなければ評価はされないのです。

ですから、判断や思考を明確に伝える表現力が必要なのです。特に適切な言い回しや分かりやすい文章構成が高評価を得るためのカギを握ります。

受験生にありがちな13個の減点ポイント

ここまで解説した3つのポイントに沿って入試の小論文は評価されています。つまり、以下のような13個のミスパターンを知っておくことが、減点防止につながります。

減点の重要度

★★★★:0点になりえる減点
★★★☆:大きな減点
★★☆☆:中くらいの減点
★☆☆☆:小さな減点

判断力に関わる減点

□ テーマに答えていない(★★★★)
□ 字数指定を守っていない(★★★★)
□ 設問の指示に従っていない(★★★☆)
□ 資料の読み取りが不正確である (★★★☆)

思考力に関わる減点

□ はじめとおわりで自分の主張がくい違うなど、首尾一貫していない (★★★☆)
□ 理由・根拠がない (★★★☆)
□ 客観的な視点が欠けている (★★☆☆)

表現力に関わる減点

□ 文章の構成がわかりにくい (★★☆☆)
□ 日本語の用法や文法の誤りがある (★☆☆☆)
□ 話し言葉で書いている (★☆☆☆)
□ 誤字・脱字がある (★☆☆☆)
□ 字が雑で読めなかったり別の文字になったりしている (★☆☆☆ )
□ 原稿用紙の使い方を誤っている (★☆☆☆)

以上の点に気を付けて自分の書いた小論文を見直してみるとクリアすべき課題も見つかりやすくなるのではないでしょうか。

小論文に慣れるための4つのトレーニング

気を付けたいポイントはわかっても、何から始めればいいのか分からない人に向けて、今日からでも始められる小論文の力をアップさせるトレーニング方法を紹介します。

【トレーニング①】論理的な言い回しを習慣づける

“序論 → 本論 → 結論”という構成を頭に定着させるために、日ごろから”主張 → 理由 →根拠 → 主張”の流れで自分の考えを論理的に述べる練習をしてみましょう。書かずに話すだけでも論理的思考のトレーニングになります。

次の流れを実践してみましょう。

【主張】○○○と考える。
 ↓
【理由】○○○だからだ。
 ↓
【根拠】実際、○○○だ。
 ↓
【主張】したがって、○○○

【トレーニング②】文字を正確に書くようにする

小論文は日本語で書く以上、文字は正確に書く必要があります。漢字をはじめ、誤字は減点されます。美文字を書いたから加点されることはありませんが、判読できない文字や明らかに違う文字は減点されます。「ゆ」と「わ」、「ソ」と「ン」と「リ」、「シ」と「ツ」など、 ひらがなやカタカナも改めて正しく書けているか確認しておくとよいでしょう。

【トレーニング③】知識をたくわえる

小論文は社会性の強いテーマが出されます。制限時間のある試験中に理由と根拠に基づき自分の意見を述べるためには、知識があるほうが有利です。ですから、さまざまな社会問題について背景を理解した上で自分なりの意見を考えておくとよいでしょう。

また、課題文や図表・グラフなどの資料から読解・考察するタイプの問題では、背景となる知識が必要となることもあります。中学校の社会や理科の教科書に書かれているような基本的な知識は身に付けておきたいところです。

【トレーニング④】国語の論説文を参考にする

国語の論説文は、理由と根拠に基づき筆者の意見を述べたもの。つまり、論理的に書かれた文章です。ですから、論の進め方や表現など小論文の参考になります。単に国語の読解の勉強だけでなく小論文にも役立てると一石二鳥ですね。

小論文は怖くない!上達できる

小論文と作文の違い、入試小論文の評価ポイント、小論文の構成やトレーニング方法について解説してきました。

小学校・中学校生活を通じて、作文は書いたことがあるけど小論文は書いたことがない。ほとんどの中学生が、そう感じていることでしょう。実際、学校の授業で小論文の書き方を教わることはほとんどありません。そのため、小論文は難しくてとっつきにくいイメージがあります。

しかし、小論文には、ほかの教科と同じく明確な評価ポイントがありますし、考えたり書いたりするための”型”があります。それらを身につけることで短期間でグッと上達できるのです。

小論文で要求される判断力・思考力・表現力は、高校入試だけでなく、大学入試やその先の社会人生活においても役立つ、“一生モノ” のスキル。小論文の勉強に前向きに取り組むことで、多くの ことを得られます。有意義な成果を得られるよう、応援しています。

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石井知哉

教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー。高校受験Webサイト「School Post」(https://school-post.com)主宰。塾指導歴20年以上。小学生から大学浪人生まで、教科を問わず個々の成長を引き出す指導を得意とする。現在は、個別指導塾2校舎を統括する傍で、千代田区麹町に超少人数制個人指導道場「合格ゼミ」を開設。長年の経験と知見を記事にして発信中。アイデアと文面の大半は、こよなく愛するビーグル犬との散歩中に生まれる。

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