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2021.02.03

高校や部活でeスポーツを行う理由とは?社会で役立つ力が育ち、進学や就職につながる

オンラインゲーム全盛の時代。ゲームばかりしているわが子にモヤモヤしている保護者も多いのではないでしょうか。しかし最近では、部活や専攻にeスポーツ(コンピューターゲーム)を取り入れる高校が増えています。そこで、eスポーツを導入し、さまざまな大会にも参加する「KTCおおぞら高等学院」のスタッフである小原亨さんに「なんのために学校でゲームをするの?」という疑問をぶつけてみました。

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オリンピック種目になる可能性もあるeスポーツとは

eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称です。ゲームの競技化が進んだ1990年代を経て、2000年代に入ると世界的に拡大を見せるようになりました。

現在では欧米をはじめ世界各国でeスポーツのイベントが開催され、海外では賞金総額が億を超える大会も多数存在します。スポーツの国際大会でも徐々に認められつつあり、2024年に開催予定のパリオリンピックでは新種目として採用が検討されているといいます。

また、アジア競技大会(アジア版オリンピック)では、2018年のジャカルタ大会で公開競技としてeスポーツが採用され、2022年杭州大会では正式なメダル競技となることが決まっています。

日本でも、2019年に国体の文化プログラムとして「都道府県対抗eスポーツ大会」が開催されました。

話を伺った人

小原亨さんKTCおおぞら高等学院 東京秋葉原キャンパス 教務スタッフ

KTCおおぞら高等学院東京秋葉原キャンパスに着任後、2019年度から「eスポーツ」をテーマにした教育企画を開始。「全国高校eスポーツ選手権」や「Stage:0」などの高校生大会に学校として初出場させる。また、キャンパス内eスポーツチーム運営、在校生向けeスポーツ大会や体験講座、eスポーツ関連の専門学校や施設見学などの進路イベント、プロゲーマーを招いての中学生向けeスポーツ体験講座などを企画。自身もeスポーツ大会「RAGE Shadowverse」などに出場している。

eスポーツと一般的なゲームの違い

国内でも認知が高まりつつあるeスポーツですが、保護者の中には「eスポーツと呼び方を変えても所詮はゲームでしょう?」と考える人もいるかもしれません。

そもそも、eスポーツと一般的なゲームの違いはどこにあるのでしょう。通信制高校サポート校「KTCおおぞら高等学院」でeスポーツを担当する小原亨さんは「あくまで個人的な考えですが」と前置きしながらも、eスポーツと一般的なゲームは次の2つの点で違いがあるといいます。

eスポーツと一般的なゲームの違い

  1. 他者とのつながり
  2. 競技性

「コンピューターを相手に1人でプレイするゲームとは異なり、eスポーツでは必ず他者とのつながりが生まれます。勝利を目指すには対戦相手の戦略や心理状態を意識し、競争していかなければなりません。チーム戦であればメンバー同士のコミュニケーションも必要でしょう。プレイすることで人とのつながりや競技に必要な様々な力が磨かれていくと考えています」(小原さん、以下同)

なぜ高校でeスポーツを取り入れるのか

上記のようなゲームとの違いがあるからなのか、最近では、高校生を対象とした大規模なeスポーツ大会も開催されるようになり、部活や専攻コースなどにeスポーツを取り入れる高校が増えています。

中でも、「KTCおおぞら高等学院」のような通信制高校は、eスポーツの導入に積極的な傾向があるようです。

「通信制高校の場合は、ネットを通じて学校と家庭がやり取りをしているので、生徒たちがパソコンをはじめとした情報機器に慣れているせいもあるかもしれません。

当校の場合は、一般的な学習指導のほかに、生徒の好きなものを取り上げてレッスンする時間を設けているのですが、そのときに生徒たちから挙がった声に『ゲーム』という答えが多かったんです。

生徒の好きなものを否定するのではなく共有することで、コミュニケーションや学校生活を楽しむきっかけにしてもらいたい。そう考え、eスポーツを取り入れることに決めました」

現在はeスポーツの全国大会などにも参加している「KTCおおぞら高等学院」ですが、当時(2019年)は、競技性を重視したものではなくゲーム好きの生徒が集まって一緒にプレイする同好会のようなものだったといいます。

「集まったのは“ゲームが好き”ということだけが共通項の生徒たち。コミュニケーション力が高いわけでもなく、最初のうちはお互いの顔も見ないで、それぞれが黙々と一緒にゲームを行うだけでした。

ですが、何度も一緒にゲームをしているうちに、『実はこんなゲームが得意なんだ』『次はこのゲームをやってみたい』と前向きな会話が交わされるようになっていきました。そして、いつの間にか『ゲームとして遊ぶだけではなくeスポーツとして本気でやりたい』という声が生徒たちから出て、eスポーツの大会に向けた本格的な活動をスタートさせました」

eスポーツチーム練習の様子

eスポーツを取り入れる目的はさまざま

「KTCおおぞら高等学院」は上記のような経緯でeスポーツに取り組んでいますが、大会出場を目指すのか、コミュニケーションを重視するのか、学内イベントとして実施するのかなど、eスポーツを取り入れる目的は学校によってさまざまです。

小原さんは「大会に出場してストイックに勝利を目指す学校があれば、同じタイトルを楽しむ仲間を探したいという団体もあるというのは、サッカーや野球などほかの部活や同好会と同じだと思います」と語ります。

eスポーツが育む社会で役立つ4つの力

サッカーや野球と同じと言われても、一緒にプレイしたことのない保護者には成長が分かりづらいのがeスポーツです。ですが、目に見えて“できること”が増えているようには見えないかもしれませんが、eスポーツはさまざまな力を育むことができるようです。

【eスポーツで育つ力①】“好き”という気持ちが挑戦する力になる

「KTCおおぞら高等学院」が初めてeスポーツの大会に参加した当時、実はチームメンバーのほとんどのメンバーはeゲーム初心者。初参加となった大会は、初戦は不戦勝、2戦目敗退というほろ苦い結果に終わりました。しかし小原さんは「非常に意義のあるチャレンジでした」と胸を張ります。

「メンバーの中にはそれまで不登校でほとんど家を出れない生徒もいました。ですが、eスポーツをするために久しぶりに学校に来たんです。大会という大きな舞台に向けて一歩踏み出せたこと。そして努力して成長し、挑戦したという結果を残せたこと。生徒たちも勝ち負けだけではない達成感を得られたのではないかと思います」

【eスポーツで育つ力②】ネット上のルールやマナーなどモラルを学べる

オンライン上での対戦も多いeスポーツでは、顔の見えない相手とやり取りすることになります。だからこそ、「ルールやマナーを守ることはとても大切です」と小原さんは言います。

「インターネット全体に言えることですが、直接話すときはきちんとマナーを守っているのにオンライン上になると途端に攻撃的な言葉が増えるケースがあります。

今の時代は、大人も子どももインターネットから離れて生活することは難しいでしょう。大人になってから失敗することのないように、今のうちにきちんとネットリテラシーを身につけてほしいという思いがあります。

ですから、eスポーツの活動の際には、オンライン上のルールやマナーについてもしっかり伝えるようにしています」

【eスポーツで育つ力③】コミュニケーション力と問題解決能力

eスポーツには個人戦とチーム戦がありますが、「KTCおおぞら高等学院」ではチーム戦を主体として活動しています。

練習や大会では各自がモニターに向かいながらも、ヘッドホンとマイクを使って会話を交わし、メンバー同士が意思疎通を図りながら戦います。勝つためには個人のスキルを上げるだけではなく、チームコミュニケーションが欠かせません

「過去の大会では、初対面の生徒同士がチームを組んだこともありました。それでもプレイを通じて少しずつコミュニケーションを重ね、本番では全員が協力して試合に臨むことができました。

また、eスポーツには『どうすれば勝てるのか』という論理的思考や、対戦を有利に進めるための戦略が必要になります。情報を収集・整理しながら、自分たちに何が必要かを話し合う過程の中で、問題解決能力も向上しているのではないかと感じています」

【eスポーツで育つ力④】負けた経験も成長につながる

競技であるeスポーツには必ず勝ち負けが伴います。当然誰もが勝つことを目指してプレイしますし、強い相手に勝ったときの喜びや達成感は大きいものでしょう。しかし一方で、小原さんは「たとえ負けてしまったとしても、生徒たちにとって得るものは大きい」と言います。

「負けて口惜しがる子、やる気をなくしてしまう子など、生徒のタイプは本当にさまざまです。でも、失敗や挫折にどう立ち向かうかという経験は、人生において大きな糧になるはずです。

『もうeスポーツはやめる』というなら別にそれでも構いません。『じゃあ次に何をしようか』と、私たち教職員も生徒と一緒に考えます。学生時代の挫折は、社会に出てからきっと人としての強みにつながると思います」

大会に参加したKTCおおぞら高等学院の生徒たち

eスポーツの経験は将来に役立つ

「KTCおおぞら高等学院」では、『eスポーツの専門学校ではどんなことをしているんだろう』『eスポーツスタジオでは何ができるんだろう』など、学校見学や施設見学を通して進路を考えるきっかけになるようなイベントを開催しています。

実際に卒業生の中には、eスポーツに関わる業界に進学や就職した人もいるそうです。eスポーツの経験は、将来の進路にどのようにつながっていくのでしょうか。

講師やゲームクリエイターを目指す人も

「eスポーツを仕事にする」と聞くと、プロチームや企業と契約するプロゲーマーを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかしそれ以外にも、eスポーツの経験を活かせるさまざまな道があるようです。

「たとえば当校の場合、eスポーツの専門学校で講師を務めている卒業生がいます。eスポーツの競技人口や大会が増えるにつれて、講師のニーズは今後ますます高くなっていくと予想されます。また卒業後、eスポーツの専門学校に進学した生徒もいました。ゲームの制作や開発に携わるクリエイターや、配信をするエンジニアを目指して勉強しているようです」

eスポーツに限らず将来の進路を考えるきっかけに

卒業後の進路は、eスポーツに直結するものだけに限りません。小原さんは「eスポーツが、さまざまな職業や進路について知るきっかけのひとつになれば」と語ります。

学校には進路に関する資料も揃っていますし、実際にeスポーツ業界で活躍している外部講師と接する機会もあります。『eスポーツ業界にはどんな仕事があるのか』『そのためにはどんな知識が必要か』を知ることが、進路を考える第一歩となるでしょう。結果的に違う分野に進むことを選んだとしても、好きなものを軸に、将来を具体的に考えるきっかけにしてほしいと願っています」

外部の専門学校から招いたeスポーツ講師によるレッスンの様子。職業選択の考え方が広がるきっかけになる

ゲームを成長につなげる2つのアドバイス

eスポーツを取り入れる学校が増えているとは言え、子どもがゲームに熱中していると、保護者としてはつい心配になってしまうのが実情です。小中学生がeスポーツをする場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

【アドバイス①】生活リズムや学習とのバランスが大切

小原さんが注意点としてまずあげるのが「健康管理」です。オンライン・オフラインに関わらず、ゲームにのめり込んで夜遅くまでプレイしてしまい、結果として朝なかなか起きられないというケースはよく聞かれます。

「KTCおおぞら高等学院」でも、登校時間に間に合わない生徒に話を聞くと、ゲームをしていて就寝時間が遅くなっていることが多いといいます。

学校でeスポーツに取り組む上で、課題などやるべきことがきちんとできているか、というのは大前提です。生活リズムや学習に影響が出ている場合は、やりたいこととやらなければいけないことのバランスが偏っている状態。それを生徒自身に理解してもらい、『ではどうやって改善すればいいのか』という本人の気づきを引き出すようにしています」

以下の記事では、公認心理師監修のもと、小・中学生のゲーム障害(依存症)についてより詳しく解説しています。

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【アドバイス②】子どもの好きなことを否定せず、うまく方向転換を

「小中学生のお子さんの場合は、なかなか話し合いが難しいこともあるかもしれません。でも『ゲームはダメ!』と無理矢理やめさせようとすると、子どもは余計反発してしまいます。

子どもの様子を気遣いながらも、夢中になっていることを否定しないであげてほしい。何かに夢中になることがスキルを向上させたり、勉強などのモチベーションにつながったりすることもあります。

大人が『こうしなさい』と押しつけるよりも、子ども自身に『好きなことを続けるためにはどうすればいいか』と考えさせる方が、行動は変わっていくと思います」

<取材協力>
KTCおおぞら高等学院
「KTCおおぞら高等学院」では、体験入学で親子向けのeスポーツ講座を開催することもあるそうです。そのような講座に参加してみると、高校でのeスポーツ活動が具体的に見えてくるかもしれません。

<参考資料>
世界に通じる日本のeスポーツ市場の現状と将来性 – KPMGジャパン
eスポーツに「教育的価値」はあるか、高校生向け振興団体が発足│日経クロステック
eスポーツ専攻コースがある学校まとめ – ズバット通信制高校比較
プロゲーマーが競い合うeスポーツとは?基礎知識や楽しみ方を紹介

加藤朋実

加藤朋実

広告代理店、企業の広報を経て、2008年よりフリーランスライターとして活動。子育て、ライフスタイル、教育、医療、住まい、グルメなど、幅広いジャンルで執筆を行う。人物インタビューや企業インタビュー、イベント取材など、取材経験も多数。そのほか、コラム原稿や書籍原稿の執筆なども手掛けている。趣味は音楽鑑賞と読書、野球観戦。プライベートでは一児の母。

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