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2021.01.13

中学生の社会科|苦手の原因となる暗記の克服方法を社会科教師が伝授します

「社会科が苦手」という言葉を子どもから聞いたことはありますか。実際にテストの点数も取れていない場合、保護者の中には「社会って暗記するだけじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、社会科の暗記には“理解”が伴っていないと点数には繋がらないそう。そこで社会科の克服する方法を社会科教師のohanaさんが解説します。

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中学生が社会科が苦手になる理由とは

社会が苦手な子に、その理由を聞いてみると次のような答えが返ってきます。

「こんなにたくさん覚えられない」
「暗記が苦手」
「頑張っているのに、点数が取れない」
「問題集の解答は完璧に暗記しているのに点数が取れない」

社会科が苦手と感じている子の多くは“社会=暗記をして点数をとるもの”と考えているようです。確かに社会科のテストでは知識を問う問題が多いのは事実であり、ほかの教科に比べて暗記が必要になることは間違いありません。

だからこそ頑張って暗記をしているのでしょう。

しかし、“暗記”しているつもりでも、点数が取れないのには理由があるのです。

社会科で点数が取れない理由

  • 呪文のように語句をそのまま問題文と共に暗記している
  • 問題文とその言葉のみを暗記して、文章を少し変えると、説くことができない
  • 答えと問題文を逆にすると答えられない

つまり、全体像や流れ、何を学んでいるのかを理解しないまま“語句のみ”を呪文のように暗記している可能性があります

社会科の勉強で求められているのは、単語を丸暗記する力ではありません。“社会を正しく読み解くための基礎知識”として語句、用語、記号などを理解し、使いこなせるようになることです。教員はその目的でテストを作成しています。

そのために大切に必要な勉強は、丸暗記するのではなく、理解しながら覚えることです。

そうすることで教科書やワークと違う文章でも解答できて点数を取れていくようになり、苦手意識も和らいでいくことでしょう。理解していくうちに社会への興味や関心もわくかもしれません。

社会科の苦手克服のための3つの勉強法

では、語句の意味を理解し、説明できるようにするためにはどのように学べばよいのでしょう。

【勉強法①】教科書をよく読み理解する

実は、“暗記が苦手”という場合、原因は勉強不足ではなく“教科書を読み込めていない、言葉の意味を理解できていない”という可能性があります。

まずは、教科書をよく読み、何が書かれているか理解しましょう。教科書を読んで全体像を把握し、“どこがポイントなのか”“この分野は何を伝えているのか”を理解します。

社会の教科書には、知ってほしいことが端的にまとめられています。

歴史なら“いつの時代の話なのか”、地理なら“どこの場所の話なのか”、公民なら“政治なのか、経済なのかテーマは何か”など、何について書かれているのかということをまずは理解しましょう。

特に単元・ページの題名や最初の説明文、具体的な語句の説明を読み込むと理解しやすくなります

問題集は教科書の内容を理解できたか確認するためのツールです。教科書を読まないまま、問題集に書き込んだ答えを暗記するのではなく、まずは授業で配られたプリントやノートとともに教科書の内容を理解をしていきましょう。

【勉強法②】その語句を理解することを重視する

教科書を読んでいると、重要なポイントは太文字になっています

確かに太文字は重要なポイントなのですが、勉強する際に太文字の言葉のみを頭に詰め込んでいるという勉強法をとっている場合があります。

ですが、その言葉が示す意味を理解していないと文章が変わってしまうと解答できません。太文字の語句の前後に書かれている文章を読み、語句の意味を理解することが重要です。

例えば、三権分立を覚える時…

シホ――、リッポー、ギョーセー、えっとシホ―はサイバンショ、リッポーは、ナイカク?あれ?コッカイ?

上記のように用語を呪文やパズルのように、音だけで覚える暗記はとても大変です。「シホ―はギョーセーだっけ?」などという間違いが起こりがちです。ですから、下記のように言葉の意味を一つ一つ理解して頭に落とし込んでいきます。

司法は、法を司る場所と書く。

だから、法律を司って、判断をする裁判所である。

裁判所とは裁いて判決をする場所。

どんな人がいて、どのような手順で判断を下すのか。

このように一連のイメージ図を頭に浮かべながら、語句が示す内容を連想ゲームのように引き出して覚えてほしいのです。

「これはどんな意味だろう、どんな場所だろう」と考えながら覚えていくことで、裁判所という語句にまつわるあらゆる情報を同時に連想しながら知ることができます。すると、「法律を制定するのは?」という問いには「国会」と答えられるのに「国会とは何か説明せよ」という問題には答えられないということはなくなります。

【勉強法③】教科書の資料、資料集、地図帳は必ず開く

ただし社会科の語句の中には、歴史の人物名などのように語句を見ただけでは背景を理解、想像を難しいものもあります。

その場合は、資料集などで肖像画や解説を読んで人物像をイメージをしながら覚えましょう

地理の場合は、新しい場所を学ぶ度に地図や地図帳を開いて土地の雰囲気、特徴、気温などをイメージしながら、公民の場合は、政治について学ぶときは資料集で国会の写真、絵などを見てイメージを把握しながら理解をしていきましょう。

テスト前は問題集に意識が集中しがちですが、資料集を開くひと手間をかけることが覚えやすさや理解に繋がります

また、時事問題はテレビや新聞、歴史はゆかりのある物や土地、地理はその土地に触れることが体験として記憶に残りやすくなります。ニュースを見ながら「この法律は困るね」などと普段の会話の中で話し合ったり、旅行先で歴史的な場所に立ち寄ったり、特産品を食べたり、地図を開いてみたりと日常の中で覚えやすいきっかけを増やしていけるのが社会科ならではです。

苦手意識が強いなら教科書をまとめることから始める

ここまで紹介した3つの勉強法は、社会科のおもしろさも感じられるように社会科ときちんと向き合う勉強法です。しかし、上記は大変すぎるという場合は、まずは下記の方法だけでも試してみてください。

教科書のまとめかた

苦手な暗記をしようと思うと嫌になってくるかもしれませんが、まずは暗記することから離れて、教科書を読み、要約することから始めてみましょう。

教科書1ページに書かれていることを数行で説明したり、重要な語句を取り出して、関連する語句を枝に繋げるようにしてまとめます。

例:三権分立の場合

上記のように太文字とその前後の情報を抜き出します。 誰が?どんな人?何人?それぞれどんな仕組み?三権の関係は?と頭の中の疑問の答え探しのように見つけて書き出します。

教科書は、中学生に「伝えたいこと」を中学生にわかる言葉でまとめています。特にここがポイントだというところを太文字で書き詳しく説明しています。まずは頭に詰め込むのではなく、教科書には何が書かれているのかを読み取る、抜き出すことをしてみましょう。

教科書をまとめるのは授業前

教科書をまとめるのは授業の前にするのがおススメです。「授業を受けずに教科書を読んでもきっと理解できない」と思うかもしれませんが、理解できていなくても黒文字をピックアップして書き出すだけでも意味があります。

授業には新しい単語が続々出てきますが、社会科が苦手な子はそれだけで混乱しがちです。知らない単語で頭は混乱状態のままなのに授業はどんどん先に進でしまい、黒板を写すだけで精一杯…。そんな状況を避けるためにも「ちょっと聞いたことがある」状態を作り出すのです。

  1. 授業前にノートにまとめて言葉に触れておく(教科書を全部理解する必要はない)
  2. 番授業で説明を聞いて理解する(分からなかった部分は休み時間に聞く)
  3. 授業後に1のノートに追記などをして理解し、最後に問題集で理解したか確認する

上記の流れで授業に取り組むと、暗記ではなく教科書の内容を頭の中に落とし込めるかということを重視して勉強ができます

教科書を読みなれないうちは授業前にまとめることに時間がかかるかもしれませんが、慣れていくと1授業分を10分程度でできるようになっていき、実はその方が勉強時間が少なく済む可能性があります。

“自分で整理して理解する”ことを繰り返すうちに、暗記すべきポイントが分かるようになっていき、大量の言葉を呪文のように唱えて詰め込むことはなくなっていきます。

親世代とは異なる今、これからの社会科

最後に今、そしてこれからの社会科についても説明をさせてください。実は、保護者世代が受けてきた社会科と今の社会科が違う点があります。

例えば、授業といえば教員が一方的に解説して、生徒は聞く側だったと思いますが、今はただ話を聞くのではなく話し合い、考え、まとめる作業が取り入れられています。

2021年度より中学校では新学習指導要領が全面実施されます。知識を習得するだけでなく、理解したことを使う思考力、判断力、想像力を育成し、学びを人生や社会に生かそうとする“生きる力”が学校教育に求められるようになります。

つまり、飛躍的な進化を遂げるAIの膨大な知識をに負けないよう今の社会について考え、自ら道を切り開くことができる力を養うことが重視されているのです。

また、社会科の目的においては、学習指導要領で下記のように書かれています。

「社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す」

引用元:中学校学習指導要領(平成29年告示)

と書かれても難しいですよね。では、分かりやすく説明してみましょう。

今の中学生が成人するころ、今ある職業の多くはAIが担っているかもしれません。国際化もさらに進んでいることでしょう。そんな中で、大人になった子どもたちは自分自身で課題を見つけ、これまで培った社会的な見方や考え方を使って解決していくことを求められます。

その社会的な見方や考え方を養うのが社会科であり、国際社会で生きていく力をつけ、平和な国や社会の形成者になっていくための基礎を作っているということです。

今回の記事が知識を入れて理解を深めたり、社会の面白さに目覚めたりすることに役立ち、自ら社会に働きかけていく子どもたちが増えていくことを願っています。

Ohana

新聞社勤務を経て、高校教師へ。進路指導部で大学進学等の指導、センター試験対策などを務める。出産を経て現在は2人の子どもを育てながら高校社会科講師と雑誌・WEBマガジンのライター、エディターとして「伝える」ことを軸に活動している。

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