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2020.09.07

世田谷区の教育/学校数や学力、中学受験率ほか子育て世代の口コミ情報を紹介【23区の教育②】

23区の教育環境を解説していく連載記事。第2回は、世田谷区です。23区の南西部に位置し、面積は23区中第2位、義務教育世代の子どもの数は、第1位。2015年には「子どもが輝く参加と協働のまち せたがや」の実現に向け、「子ども・子育て応援都市」を宣言しました。私立中学受験率は33,7%と、教育熱が高い地域といえるでしょう。

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義務教育世代の子どもの数は23区内で最多の世田谷区

データで見る世田谷区の教育環境

  • 義務教育世代の子どもの数=約6万5000人
  • 公立小学校の数=61校
  • 公立中学校の数=29校
  • 特別支援学級=小学校24校、中学校10校に設置
  • 特別支援学校(小・中)=視覚障害1校、聴覚障害2校、知的障害2校、肢体不自由1校、病弱1校
  • 特別支援教室=区内全61小学校、中学校28校に設置(それぞれ巡回校あり)
  • 公設学童クラブ:61カ所
  • 民間学童の数=調査中
  • 学童待機人数=ゼロ
  • 私立中学進学率=33.7%
  • 家賃相場(ファミリー世帯)=3LDK:23.52万円
  • 治安・犯罪率=2019年の刑法犯件数:1369件

23区の南西部に位置し、神奈川県と隣接する世田谷区。面積は約58㎢で23区中2番目に広く、人口は約90万人、義務教育世代の子どもの数は約6万5000人。共に、23区内第1位です。

公立小学校は61、中学校は29と、その数も多い世田谷区。高級住宅地として知られる成城、大型商業施設やタワーマンションなどが一体化した「二子玉川ライズ」がある二子玉川を中心に、富裕層、両親が高学歴で教育熱心な家庭が比較的多く、私立中学への進学率は33.7%と、23区中で第6位になっています。

二子玉川の風景

中学受験率が高く、“名門公立小学校”も存在

教育熱心な世田谷区では、区内の公立小の中でも、松沢小学校(赤堤)、松丘小学校(弦巻)、桜町小学校(深沢)、八幡小学校(奥沢)は、中学受験率、難関中学校合格率共に高く、“名門公立小学校”として知られているという声も。

再開発が進む二子玉川エリアには、中学受験塾が林立。このエリアの二子玉川小学校、砧南小学校、瀬田小学校、玉川小学校の中学受験率も高く、50%前後とも言われています。

中学受験熱がヒートアップするいっぽうで、中学受験“しない組”の保護者からは、「もともと受験させるつもりはなかったのに、周りの友達の様子をみて子どもが『私も塾に行きたい』と言い出し、中学受験を考えざるを得ない状況になった」「受験しない子は、ある種のコンプレックスを背負わされるような気がする」などの声も聞かれます。

校則、定期テスト、制服をなくした桜丘中学校

区立中学校の中で、ひときわ存在感をはなっているのが、桜丘中学校です。2010年、西郷孝彦(前)校長が着任して以来、校則なし、制服なし、定期テストなしと、他の中学校には当たり前にあるものをすべて廃止。

一人ひとりの子どもの個性を尊重した柔軟な教育に挑戦し、それらの取り組みが大きな話題となりました。

西郷(前)校長は2020年3月に退任されましたが、現在も子どもや保護者への発信を続け、講演会などで、学校や教育についての話をしています。

いっぽうで、桜丘中学校とは正反対ともいえる昔ながらの指導を未だに続けている中学校が存在するのも事実。学校選択制ではない世田谷区では、公立中学校の「格差」が、課題としてあげられるのではないでしょうか。

【世田谷区の学童】待機児童ゼロ! その理由は?

世田谷区では、2014年から従来の学童保育を廃止。代わりに、子ども教室「BOP(放課後に児童が遊べる場)」と、いわゆる学童機能がある「新BOP学童クラブ」を校内に併設する「新BOP事業」を開始しました。

現在、区内61の全小学校の敷地内にあり、「BOP」は学年を問わず参加を希望する児童、「新BOP学童クラブ」は保護者の就労・病気等により1〜3年生が入所できます。

「新BOP事業」では定員制が廃止されているため、申請書と就労証明書が受理されれば「新BOP学童クラブ」利用可能。つまり、世田谷区の公立学童の待機児童はゼロというわけです。

しかし、待機児童問題は解決された反面、定員を設けないことにより“適正規模”をはるかにこえた多数の児童が入所している学校もあります。そのため、児童に目が行き届かない、利用時間の延長ができない小学校が多いなどの理由から、あえて民間学童を利用する家庭も少なくないようです。

【世田谷区の教育の特徴1】小学校・中学校で教科「日本語」を推進

世田谷区では、2007年度から、すべての区立小学校・中学校で「日本語」の教科を実施しています。日本文化を理解し大切にして継承・発展させることなどを目的に、小学校では週に1時間、短歌や俳句の音読、民話や日本の伝統文化について調べる活動を行っています。

中学校でも同様に、週に1時間、「哲学」「表現」「日本文化」の3つの視点から授業が行われています。

【世田谷区の教育の特徴2】近隣の小学校・中学校が連携し「学び舎」を構成

義務教育9年間を通して質の高い学校教育を推進するため、近隣の小学校・中学校が29のグループ(学び舎)を構成。「大志の学び舎」「さくらの学び舎」などそれぞれが名称を掲げ、小・中の職員が協同して学校運営を進めています。

中でも、砧中学校、砧小学校、明正小学校、山野小学校からなる「砧の学び舎」は、9年教育パイロット校、キャリア教育課題校として区内の教育を牽引。砧中からは、都立西高、都立日比谷高校といった都立トップ校に進学する生徒も多く、人気校の一つとして知られています。

また、令和2年度からは、小中学校の取り組みに区立幼稚園・こども園の幼児教育2年間をプラスして一体の教育を行う「せたがや11+(イレブンプラス)」の取り組みも開始。探求的な遊びと学びを世田谷区独自のカリキュラムで行うほか、地域の体験活動を通して子どもたちが将来を描けるキャリア教育の推進などをはかっていく予定です。

【世田谷区の教育の特徴3】不登校支援では「保護者のつどい」も開催

世田谷区は不登校支援にも力を入れています。月に2回程度、区内の公共施設で保護者のつどいを開催し、カウンセラーがコーディネイターとなり、保護者同士の情報共有を行っています。

そのほか、心理的理由などにより不登校の状態にある生徒が、体験活動やスポーツなどの集団生活を通して自分らしい進路を見つけるためのサポートを行う「ほっとスクール」が、区内に3カ所(城山、尾山台、希望丘)あります。

なかでも「ほっとスクール希望丘」は、全国でも珍しい公設民営の支援施設。日本のフリースクールのパイオニアである「東京シューレ」が運営し、必ずしも学校復帰を目標とせず、それぞれの子どもの状況に応じて学びの機会を提供する場となっています。

ほっとスクール希望丘

【世田谷区の学力】小・中ともに東京都平均、全国平均を上回り、上位層に

平成30年4月に行われた全国学力テスト(小5と中2に実施)では、世田谷区の公立小学5年生の正答率は、国語Aが77%、国語Bが59%、算数Aが73%、算数Bが60%、理科が64%。全科目が東京都の平均、全国の平均を上回る上位層にあります。

また、中学2年生の正答率は、国語Aが78%、国語Bが65%、算数Aが72%、算数Bが54%、理科が68%。小学校と同様に中学校も、全科目共に東京都平均、全国平均を上回り、上位層にあります。

土地柄といったらそれまでかもしれませんが、中学受験率の高さとなんらかの相関関係があることが推測できます。

【口コミ情報】世田谷区は「意外と子どもがのびのび育つ環境」

次に世田谷区の保護者に、教育環境について聞いてみました。

地方から転勤で世田谷区に住み始めました。世田谷というと都会、おしゃれな住宅街というイメージでしたが畑や緑が多く、ママ友が育てた野菜をもらったり、毎日泥まみれになって遊んでいたりしているので意外とのびのび子どもが育つ環境だなと驚いています。(小3男子の母)

ものすごく教育熱心な家庭と放置に近い家庭の両極端な印象を受けます。放置されている子は学校でも自由に振る舞うようで、そんな子と同じ学校へ進みたくないと言う理由で私立に行きたがる子もいます。その結果中学受験率が高く、親はそんな気がないのに、高い塾代を背負わされるような気がします。区として対策を考えてもいいようにと思います。(小4女子の母)

うちの子の小学校はおやじの会が盛んで、PTAにもお父さん方が積極的に参加されています。父親が学校や教育に関心をもち、父親同士でも交流があるのは世田谷に限ってではないですが、私が子どもの頃にはなかった光景で好ましく感じています。(小3女子の母)

世田谷区は、住んでいるエリアにより、教育環境がかなり異なる区だと思います。わが家は、世田谷区の中でも“田舎”で、小学校はのんびりした雰囲気です。中学受験する子はいますが、どちらかというと少数派。息子は来年中学生ですが、近くの公立中学でサッカーを続けるとはりきっています。(小6男子の母)

区長が教育ジャーナリストということで革新的な教育を期待していましたがICT導入も遅く、コロナの際も感染者数は23区で一番多かったのに他区より先に登校再開に踏み切ろうとするなど施策には納得できない点も多いです。(小4女子の母)

ICT環境整備に向け、教育長を交えてオンラインミーティング

新型コロナウィルス感染症のための休校時、区として独自の取り組みがなされず、ほかの多くの自治体と同様ICT教育の遅れが露呈した世田谷区。

一方で危機感を抱いた保護者有志が「世田谷区公教育ICT活用を考える会」を設立し、教育長をまじえたオンラインミーティングなどの配信を開始。教育現場と保護者が歩み寄りながら、ICT教育を推進するべく動き出しています。

「みんなで学ぶPTA」の研修会の開催、家庭の教育力の向上を目的に、区から区内の小中学校のPTAに家庭教育学級(講座)を委託するなどPTA活動への支援も手厚い世田谷区

ICTの環境整備とともに、Withコロナ時代における新しい学校のあり方について、区をあげて探っていこうという機運が高まっているようです。

<参照ページ>
ライフルホームズ
警視庁ホームページ 
世田谷区ホームページ
幻冬舎ゴールドオンライン

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長島 ともこ

フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。

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