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2020.08.19

本当のICT教育とは?小金井市の導入事例、メリット・デメリットを解説します

「ICT教育」。聞いたことはあるけれど、どんな教育なのか、具体的にイメージできる人は少ないのではないでしょうか。今、学校現場では、急速にICT教育の導入が進んでいます。ICT教育の意味やメリット、問題点、自治体での導入事例を紹介します。

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ICT教育とは、「情報通信技術」を用いた教育

ICT教育の「ICT」とは、「Information and Communication Technology」の略で、「情報通信技術」のこと。ICT教育とは、「パソコンやタブレット端末、インターネットなどを用いた教育」を意味します。

たとえば、

  • 学校にあるパソコン教室で、インターネットで調べ学習をする。
  • パソコンやタブレットを使って授業を行う。
  • 教室にあるプロジェクタに図表などを投影して授業を行う。
  • 生徒がタブレットで作った内容を、瞬時にクラス全員の端末で共有する。

などが、ICT教育の一例です。

ICT教育は、ICTを活用することにより、「教員が生徒に向かって一方的に教え、生徒はそれを聞き、黒板をみてノートをとる」といった、従来の“詰め込み式、受け身型”の教育からの脱却を図ることができます。

また、動画やアニメなどのコンテンツを効果的に使うことで生徒の視角や聴覚により訴えかけることができ、「学びへの意欲や関心が高まりやすい」という特徴があげられます。

現代は、デジタル化の加速により、知りたい情報や必要な情報はすぐにインターネットで手に入れられるようになりました。これからの時代を生きる子どもたちに大切なのは、あふれる情報の中から必要なものを主体的に選び取る「情報活用能力」や「創造力」と言われています。

質のよいICT教育により、これらの能力を育むことも期待されています。

ICT教育のメリットと問題点

ICT教育のメリットは、以下の3つです。

生徒の興味を引きつける授業ができる

映像やアニメ、音楽なども利用しながら多角的に授業の展開ができるため、生徒の興味関心をひきつけることができます。

板書の手間が省けるなど学習時間を効率良く使える

電子黒板などを利用すれば、たとえば算数の授業の時に、教員は図形データを用いることで板書の手間が省け、それを各生徒のタブレットに送信することで、生徒も板書の手間が省けます。板書の時間を効率化できるぶん、その時間を思考力や創造力を深める活動にあてられます

生徒一人ひとりに応じた学びの提案が可能に

専門アプリやコンテンツの利用により、教員の管理画面で、クラス全員の学習の進行状況やどこでつまづいているかなどが一度に可視化できるため、生徒に合う学習を提案できます。

一方で、以下のような問題点も指摘されています。

ICT機器の故障対応など、管理が負担になることも

授業中にタブレットを使っていてフリーズするなどの不具合が出た場合、その対処に時間がさかれるなど、ネット環境の管理が負担になることもあります。

教員のITリテラシーの格差が授業に影響

ICT機器に苦手意識を持つ教員もいます。教員のITリテラシーの格差が、授業内容に影響することが懸念されています。

ICT教育環境に地域格差がある

文部科学省の調査によると、日本全国における普通教室の無線LAN整備率は、1位の静岡県が73,6%なのに対し、最下位の新潟県は13.3%。教育用コンピュータ1台当たりの生徒数は、1位の佐賀県が1.8人/台なのに対し、最下位の愛知県は、7.5人/台。これらの地域格差が、教育格差につながるのはないかという声もあります。

日本のICT教育は、世界から取り残されている

問題点はあるものの、教育の質の向上や、時代が求める新しい学びの実現に有効な手段であるICT教育。日本では、2010年以降、文部科学省を中心に、国をあげてICT教育の推進に取り組んできました。

しかし、2018年に行われたPISA(国際的な学習到達度に関する調査)のICT活用調査によると、授業中のICT機器使用時間は、北欧のスウェーデンやデンマークが上位にランクインするなか、日本はOECD加盟国の中で最下位。先進国であり、情報技術も発展していると思われがちな日本ですが、ICT教育については、残念ながら海外と比べて遅れている傾向にあります。

「コロナ休校」で改めて意義が問われたICT教育

これらをふまえ、文部科学省は、2019年12月、「GIGAスクール構想」(〈GIGA = Global and Innovation Gateway for All.〉を打ち出しました。変化の激しい時代に合わせ、教育現場でICTを活用し、2023年までに、すべての小・中・高等学校、特別支援学校で1人1台の学習用PCの導入をめざすという計画です。

そんな中で起こった、新型コロナウィルス感染症の流行拡大、突然の休校要請。

学校と家庭が、何の前ぶれもなく分断された中、“学びの手段”として注目されたのが、教師と生徒が同じ場所にいなくてもできる、ICTを活用したオンライン授業です。

しかし教育現場では、「端末不足でオンライン授業ができない」「家庭のネットワーク環境がバラバラでどうすることもできない」「そもそも教員が、ICT機器を使いこなせない」など、大混乱。コロナ禍により、改めて、日本におけるICT教育の現状が浮き彫りとなったのです。

危機感を抱いた文部科学省は、教育現場でのICT活用を加速化するため、当初は2023年度までに生徒一人一台の学習用PCの導入を達成する計画だった「GIGAスクール構想」を、今年度(2020年度)中に生徒一人一台の学習用PCの導入を達成すると、前倒し実施に踏み切りましました。

Withコロナの時代を生きる子どもたちの学びを止めないためにも、学校現場では、一刻も早いICT教育の推進が望まれています。

ICT教育の事例〜東京都・小金井市の場合

日本国内でICT教育が進んでいる地域では、どのようなICT教育が行われているのでしょうか。

1999年、日本で初めて電子黒板を導入するなど、ICT教育の先駆者的自治体として全国的に知られている東京都・小金井市(小学校9校、中学校5校)。市の教育を司る小金井市教育委員会の大熊雅士教育長に、小金井市のITC教育の特徴と現状、これからについて伺いました。

小金井市では、2015年度から、「子どもたちが一人一台のICT端末を使用できる環境」を目指し、小金井市立前原小学校や小金井市立南中学校をICT教育研究校に指定。検証を重ねながら、ICT端末や通信インフラの導入、整備に取り組んできました。

2019年度には、7000人を超える市内の小中学校の全生徒がICTを利用できる通信インフラを整えました。一人一台の学習用端末としてGoogle社のノートPC「Chromebook」を使用し、現在も導入を進めています。「他社のタブレットとChromebook、どちらを使用するが悩みましたが、タイピング学習もできるChromebookに決めました」(大熊教育長)。

通信インフラとして、フルノシステムズの無線LANアクセスポイント「ACERA 1110」を採用。生徒全員が、いつでも、どこでも、どんな状況でも接続できるICT環境を整えました。

「ICT教育を進めていく上で大切なのは、このような環境整備はもちろんのこと、学校なり自治体が、主体的にビジョンを描くことです。小金井市では、『ICTを活用してどのような教育をめざしていくのか』について、ホームページやYouTubeなどを通じて積極的に発信し、情報共有につとめています」と、大熊教育長は語ります。

小金井市教育委員会の大熊雅士教育長。東京都の公立小学校教諭から区・市の指導主事を経験し、東京都教職員センター統括指導主事になる。その後、東京学芸大学付属世田谷小学校教諭、東京学芸大学教職大学院特命教授、カウンセリング研修センター学舎ブレイブ室長を経て、2018年4月より現職

ICTをどのように活用するか

ICTを活用した授業というと、テレビのクイズ番組などでも目にする

  1. 司会者(教員)がゲスト(生徒)に問題を出す
  2. ゲスト(生徒)全員がタブレット端末に書いた答えがそのまま大型スクリーンに映しだされる
  3. 答えが発表され、解説する

といった光景を思い浮かべる人が多いと思いますが、「これは、ICTを授業で“ただ使っている”だけ。本来のICT教育ではありません」と、大熊教育長。

ICTを道具として使っているだけの導入イメージ

「小金井市のICT教育では、デジタル教材プラットフォーム『まなびポケット』を活用しています。このプラットフォームを経由して、教員が生徒の学習状況をリアルタイムに把握したり、生徒は生徒同士で回答を共有しながらみんなで学び合える授業支援システム『スクールタクト』を利用しています。これにより、他の生徒の解答に対して『いいね』やコメント機能で意見交換ができます。また自分が解答したら終わりでなく、友達の解答を見ることで、考える時間を増やすことができます。ICT教育においては、この“協働学習”が、いちばん大切であるととらえています」。

ICTを活用した教育のイメージ

習熟度が異なりがちな算数などの教科では、各生徒の理解度が可視化され、生徒の理解度にあった問題が自動出題されるようなデジタル教材を用い、授業に活用している小金井市。これにより、その生徒の特性や習熟度に最適な学習=個別最適化学習を進めることができています。

小金井市のホームページでは、ICTを活用した教育について今後の施策の方向性などを見ることができます

ICT教育のモデル校・小金井市立前原小学校

前述した小金井市立前原小学校は、全国に先がけてICT教育やプログラミング教育を行う「公のICT教育の鑑」的存在として知られており、教育関係者の視察やメディアによる取材がたえません。

突然のコロナ休校の中でも、当時5年生担任の蓑手章吾教諭による取り組み、教師と生徒がオンラインでつながり、学校がなくても子どもたちが毎日課題を自分で決め、進んで学び続けることができた事例はさまざまなメディアで取り上げられ、大きな話題となりました。

「ICT教育を推進するためには、教員のICT活用指導力が必要不可欠です。現場の若手教師には、『どんどんやりなさい(活躍しなさい)』と背中を押し、バックアップしています。小金井市では、教員のICT活用指導力向上や教育資源の情報共有を目的に、市内の小中学校14校がオンラインでつながり、指導事例、個別対応事例、デジタル教材などの情報を共有ホルダーにインプットしています。教員も、いつでも、どこでも学ぶことができるのです」(大熊教育長)

大熊教育長が掲げる小金井市の教育スローガンのキーワードは、「Agency」(エージェンシー)

「Agency(エージェンシー)とは、子どもが日々の生活のなかで感じる疑問や課題など、“心のなかでモヤモヤしている何か”に対し、当事者意識をもって創造的に解決しようとする力です。ICTで未来の教育を実現するためには、教師は、これまでの“権威的な存在”から、子どものモヤモヤを言語化し、創造的な解決に向けサポートしていく、“子どもの学びに寄り添うガイド役”に変容していくことが求められています。子ども一人ひとりのAgencyの育成に向け、地域や保護者の方々と連携しながら、これからも、小金井市ならではのICT教育を進めていきたいと思います」

小金井市立前原小学校の授業風景

ICT教育の推進には自治体のパワーが必要

新型コロナウィルスなどの疫病、地震や台風などの災害、AIの進化など、社会の変化を予測しずらい今はVUCA(ブーカ)の時代ともいわれています。

VUCA(ブーカ)の時代とは

  • Volantility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

子どもたちが、この時代をたくましく生き抜くためにも、情報活用能力や創造性を育むICT教育を学校教育のなかで効果的に活用していくことが必要不可欠です。

ICT教育の推進には、事例としてあげた小金井市のように、教育委員会が主体性を発揮し、環境整備や活用を推進するなど、自治体のパワーが必要です。

最近では、教育委員会が企業と連携し、教員のICT活用力をサポートしている自治体もあります。

学校、教育委員会、行政が三位一体となって、ICTの導入を皮切りに、ICTを活用した授業の見直し、生徒への適切な指導など、トータルな環境整備が求められています

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長島 ともこ

フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。

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