失敗は成功のもと!プログラミング教育で失敗を成長に変える力が身に付く
「子どもに成功体験を!」そう思う保護者は多いかもしれません。しかし、成功ばかりの人生はありません。人生に失敗はつきもので、失敗のダメージは大人になるほど大きくなります。失敗した時に立ち直れない大人にしないためには、子どものうちに失敗を経験させ、失敗を成功に変える力を育てておくことが大切です。その点、プログラミングは“失敗することを学ぶ”という意味では最適のツール。今回は親子で「エラーする力」を磨く方法を解説します。
天才も一流企業も失敗なくして成功なし
世の中にはたくさんの成功者たちがいます。しかし彼らも失敗しています。
2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんは、本来混ぜるべきものと違うものを間違って混ぜてしまい、どうせ失敗だろうと思いながら実験したら、結果的に成功したというエピソードがあります。天才にだって失敗があり、むしろ、失敗を成功に生かすことができるからこそ天才なのかもしれません。
また、トヨタ自動車では失敗のことを問題や不良と呼びます。失敗という言葉には、“取り返しのつかないこと”というイメージがあるため、あえて問題、不良と呼ぶのです。問題や不良は、最終的な結果ではないため、今後をよりよくしていくための改善のタネ。不良・問題(=失敗)があるからこそ業務は改善されていくのです。
このようにどんなに優れた人や組織にでも失敗はあります。むしろ失敗から学び、その学びを生かしていくことの方が重要なのです。
つまり、必要なのは失敗しないことではなく、失敗から立ち直って、努力していくことです。その力のことを「エラーする力」としています。
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学力アップにもつながる「エラーする力」
私が「エラーする力」の大切さを感じたのは、学習塾で講師をしていたときです。「同じ授業を受けていても子どもによってテストの点数に差があるのはなぜだろう」と思い、子どもたちを見ていると“不正解しても諦めずに再度トライする子かしない子か”によって点数が違うことが分かりました。
すぐに諦めてしまう子どもは点数が伸びず、間違っても挑戦している子どもは点数が伸びていくのです。そう考えると「エラーする力」とは、努力や挑戦をして失敗しても“諦めない力”ともいええます。
しかし、諦めないということは簡単ではありませんよね。同じく「エラーする力」も簡単に身に付くわけではありません。私は、講師として中学受験の勉強を教えながら「エラーする力」を身に付けるためには、下記の4つの要素が必要になると考えました。
「エラーする力」を育てる4つの要素
何にでも興味をもつ好奇心
好奇心があると、失敗しても、別の興味の対象を見つけて気持ちの切り替えができ新たな挑戦をしていきます。
自分ならできるという自負心
自負心があると、今回うまくいかなくても、次は、うまくいくかもしれないと思い、がんばることができます。
失敗しても諦めない忍耐力
忍耐力があれば、失敗しても諦めずにやり続けることができます
失敗してもすぐに次の挑戦ができるという回復力
回復力があれば、失敗を引きずらずに次の挑戦へ切り替えることができます
こうした4つの要素は密接に関係しているので、厳密に分ける事はできませんが、プログラミングでこれら4つの要素を育んでいくことができれば、「エラーする力」は身に付いていきます。
「エラーする力」はプログラミングで育っていく
なぜ、4つの要素をプログラミングで育てていくことができるのでしょうか。それは、プログラミングの特徴に関係あります。
プログラミングで諦めない力が育つ3つの理由
失敗する前提で正解を求めていくから
プログラミングでは、1回のトライで最適なプログラミングができるということはまずありません。何回もトライ&エラーを繰り返しながら最適なプログラミングにたどり着いていくというのが正しい手順です。
つまり、エラー(=失敗)するのが当たり前なのです。失敗の先に成功があるということも身をもって学んでいくことができます。
分からない問題も「まずは挑戦しよう」となりやすい
紙の上の勉強では、分からない問題や習っていない問題にぶつかったとしてもフリーズするしかない場合が多いですが、プログラミングは分からなくても挑戦していくことができます。
これは、初めて出会った問題でも同じです。プログラミングは、正解がひとつではありません。用意された回答を決められた経緯で求めるのではなく、自分が考えて挑戦してみないと始まりません。プログラミングをすることで、壁が出てきたり、初めてのできごとも「まずは挑戦してみよう」と思えるようになっていき、簡単に諦めない人に成長していけます。
デバッグする力が身に付いていく
プログラミングは、自分の考えた内容が正しいかどうかを自分で実行して確かめることができます。そして、間違っているときは「どこがおかしいのか」を自分で考え、プログラミングをし直すということを繰り返します。
このように、間違いを探して直していく行為をデバッグといいます。デバッグすることは、勉強でも仕事でもエラーが起きた時に他人任せにするのではなく、自分で原因を見つけて軌道修正していこうとする姿勢につながります。
自分で正解、成功を見つけていくことは簡単なことではありません。しかし、プログラミングで諦めずに挑戦していく経験を積んでいけば、大人になって失敗しても失敗したままで終わらせない「エラーする力」が育っていくはずです。
「エラーする力」を身に付けた子どもたちの変化
「エラーする力」は、将来だけでなく子どもたちの今も変化させます。最後に、私の主宰するプログラミング教室で「エラーする力」を身に付けた子どもたちがどう変わっていったのかを紹介します。
勉強に前向きに取り組めるようになった
これまで算数や漢字が嫌いだった子が、少しずつですが前向きに取り組むようになっていくというのは多いパターンです。学校の勉強はしっかり取り組めば成果が出ることが多いので、前向きに取り組むことで点数が良くなり、努力の成果が点数として出るので達成感があり、継続的に頑張れるようになる。いいサイクルが生まれます。
指示を待たないで挑戦できるようになった
なんでもすぐに「分からない」「先生、答えを教えてください」と言っていた子が、人に聞く前に自分で勉強に取り組むようになりました。先生の指示を待っている状態から、まずは自分で挑戦してみようと考えられるようになったのは大きな変化です。
諦めないで考え続けられるようになった
プログラミングは「もしAならBになる」という条件分岐を使いますが、子どもたちの中には日常生活でも「もし〇〇だったらどうしようかな」と考えるようになっていく子がいます。これまでは、「簡単に答えが出ないことは考えない」というタイプだった子が、「〇〇ならどうか、△△ならどうか」と考え続けて、自分なりの答えを出せるようになっていきます。
「エラーする力」が身に付けられるのは子どもだけではありません。大人もプログラミングで「エラーする力」を身に付けていくことができ、仕事にも役立つはずです。仕事では思い切った挑戦はなかなかできないことでしょう。しかし、子どもとのプログラミングなら、一緒に挑戦し、一緒に失敗できるのではないでしょうか。
大人も子どもも「失敗は怖いもの」「失敗はしてはいけないもの」という考えから解放され、「失敗こそ意味がある」という考えにたどり着いてほしいと思います。ぜひ、自宅でプログラミングに取り組んでみてください!
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プログラミング教室スモールトレイン代表。1976年生まれ。横浜市立大学大学院博士後期課程単位取得退学。 大学では数学、大学院では文系(国際政治)を学ぶ。大学院時代から中学受験塾で4教科を15年間指導した後、子どもたちが「考える力」を身につけるためのプログラムを開発したいと思い、プログラミング教室「スモールトレイン」を開校。著書に「エラーする力──AI時代に幸せになる子のすごいプログラミング教育」(自由国民社)などがある。 スモールトレイン https://www.smalltrain.com/