練馬区の教育/学校数や学力、中学受験率ほか子育て世代の口コミ情報を紹介【23区の教育①】
23区の教育環境を解説していく連載記事。今回取り上げるのは、練馬区です。23区の西のはじっこに位置し、都心部のアクセスが便利な割には自然も多く、“子育てしやすい街”として知られています。教育環境、学力共に平均的ですが、ICT教育の導入に遅れている点などが大きな課題としてあげられます。
目次
データで見る練馬区の教育環境
- 義務教育世代の子どもの数=約4万8000人
- 公立小学校の数=65校
- 公立中学校の数=33校
- 特別支援学級=小学校24校、中学校10校に設置
- 特別支援学校=肢体不自由1校、知的障害3校
- 特別支援教室=小学校17校、中学校4校に設置(それぞれ巡回校有り)
- 公設学童クラブ:89カ所
- 民間学童の数=15カ所
- 学童待機人数=366人
- 私立中学進学率=16.3%
- 家賃相場(ファミリー世帯)=3LDK:15.31万円
- 治安・犯罪率=2019年の刑法犯件数:1536件
東京都の23番目の特別区として、1947年に板橋区から分離独立した練馬区。緑の多い閑静な住宅地で、人口は約70万人、義務教育世代の子どもの数は、約4万8千人と、世田谷区、江戸川区に続いて23区内で3番目に多い区です。
子どもは多いが私立中学受験率は低い。「地元志向」が高いエリア
公立小学校、中学校の数も多く、特別支援学級は、24の小学校、10の中学校に設置。区立中学校は、通学地域外の中学校を選ぶことができる「学校選択制度」が導入されています。
私立中学への進学率は23区内18位
区内には、難関大学に多数の合格者を輩出している私立中の雄である「武蔵中」(男子校/練馬区豊玉上)、名門早稲田大学の直系・「早稲田大学高等学院中学部」(男子校/練馬区上石神井)、国立では学芸大学付属の「東京学芸大学付属大泉小学校」「東京学芸大学付属国際中等教育学校」(練馬区東大泉)が存在します。
また、区内には、都立中高一貫教育校のひとつ、大泉高校付属中学校(練馬区東大泉)もあるなど、いわゆる名門校が点在しますが、私立中学校への進学率は16.3%で、23区中18位。
練馬区は、地元で生まれ育った親の比率が高く「中学までは地元の公立中に通わせたい」と考える家庭が多い傾向にあることが、私立中学進学率の低さにつながっているのはないかと推測されます。
【練馬区の学童】待機児童数が23区内で2番目に多い
学童クラブは公設、民間合わせて102か所ありますが、待機児童数は366人。足立区に次いで23区内2番目の多さです。
待機児童対策として、学校の敷地内で放課後や夏休みなど長期休業期間も過ごせる放課後事業「ねりっこクラブ」の推進を進めていますが、導入されているのは、公立小学校65校のうち19校。学童クラブ、「ねりっこクラブ」共に、子どもの放課後をサポートする施設やマンパワーが求められています。
【練馬区の教育の特徴1】「中1ギャップ」の解消に。小中一貫教育を推進
小学校の6年と中学校の3年、計9年間を一つの枠組みととらえ、長期的な視点で教育を行う小中一貫校「大泉桜学園」が、平成23年4月、練馬区大泉学園町に開校されました。
同校は、同じ敷地内に小学校と中学校の校舎が併設され、1年生〜4年生、5年生〜7年生、8〜9年生と、3段階のステップで教育に取り組んでいます。このような形態の学校は、区内で1校のみですが、近隣の小学校と中学校が連携し、行事や地域活動に合同で取り組む「小中一貫教育」に力を入れています。
【練馬区の教育の特徴2】英語指導を充実。3・4年生の授業からALT配置
学習指導要項の改定に伴い、小学校3・4年生で「外国語活動」が導入されることをうけ、ALT(外国語指導助手)による指導体制を実施。
また、中学3年生を対象に英検の検定料を補助することで英検受験を促し、モチベーションアップを図ります。
国際社会に貢献できる中学生の育成を目的に、区立中学校生徒海外派遣も実施。毎年60人ほどの生徒が、オーストラリア・イプスウィッチ市にホームステイし、現地の生徒と交流します。
※2020年度はコロナウイルス感染症拡大のため中止
【練馬区の教育の特徴3】習熟度別に少人数指導を充実
個に応じた指導を充実させるため、非常勤講師として小・中学校に学力向上支援講師を配置し、少人数指導に力を入れています。
学力向上支援講師とは、小学校全科の教員普通免許状を有する、または中学校の数学・英語いずれかの教員普通免許状を有して指導補助を行う非常勤講師のこと。
例えば、小学校の算数の授業では、学力向上支援講師がいることで習熟度別に少人数のクラスに分けることができ、子どものレベルに合わせた授業を行っている学校があります。
【練馬区の学力】小・中ともに東京都平均、全国平均をやや上回る
平成31年4月に行われた全国学力テスト(小5と中2に実施)。練馬区の公立小学5年生の国語の正答率は66%、算数の正答率は72%で、両科目共に、東京都平均、全国平均をやや上回っています。
また、中学2年生の国語の正答率は75%、数学の正答率は64%、英語の正答率は61%で、すべての科目で東京都平均、全国平均をやや上回っています。
私立中学受験率は低いものの、教育熱心な家庭が少なくない練馬区。近隣には、都立高校トップクラスの「都立西高等学校」(杉並区宮前)、私立高校では「国学院大学久我山高等学校」(杉並区久我山)「中央大学杉並高等学校」(杉並区今川)など進学校が多数存在し、高校受験に目標を定めて学力向上をめざす傾向が強いといえるでしょう。
【口コミ情報】練馬区の教育はよくも悪くも「特徴がない」
さまざまな情報を見てきましたが、気になるのは実際に練馬区で小中学生の保護者の声ですよね。そこで、練馬区に住む保護者に教育環境について聞いてみました。
「これといった特徴は感じられませんが、子どもは毎日楽しく小学校に通っています。各学年2ラスでこじんまりとしているせいか、ゆったり、のんびりしている感じ。中学受験も、今のところ考えていません」(小5女子の保護者)
「働いているため、小学1年生のときから学童クラブにお世話になっています。2年生になってもお世話になろうと思っていたら、新1年生の入所希望が多いということで、継続することができませんでした。学童施設をもっと充実させて欲しいと思います」(小2男子の保護者)
「どの区も同じかもしれませんが、先生の力量に差があるような気がします。その日の気分で子どもたちを理由なく叱る、特定の子をかわいがるなど、クセのある先生が担任になった時は、親も子もストレスでした」(小4男子、小1女子の保護者)
「よくも悪くも特徴がない。均一化されていて、個性のある公立学校は見受けられないです」(小3男子の保護者)
「主人の転勤で練馬に来ました。練馬で生まれ育ったという保護者が多く、保護者同士も幼なじみだったり、先輩後輩だったりするケースが少なくないようですが、部外者扱いされることはなく、皆さん親切だなぁと思いました。自然も多いですし、小中を過ごす環境としては恵まれていると思います」(小4女子、小2男子の保護者)
【練馬区の教育の課題】ICT教育環境はまだまだ発展途上
コロナによる休校をきっかけに、全国でオンライン教育の必要性が叫ばれていますが、練馬区のパソコン1台当たりの児童生徒数は16.5人/台と、23区中最下位。23区内で1位の渋谷区(1人1台)と大きな差がついています。
練馬区は児童生徒数が多く、端末の配置などには多額の費用がかかりますが、子どもがより多い世田谷区は6.8人に1台配置ずみ。23区平均(4.7人に1台)や全国平均(5.8人に1台)と比較しても遅れは明らかです。
休校期間中も、オンラインによる授業が行われた区内の公立校はごく一部。これらの状況に危機感を抱いた保護者有志が、練馬区のオンライン学習の現状とこれからについて保護者アンケートを行い、集計結果をもとに、教育委員会にオンライン学習の推進を提言しようという動きも起こっています。
コロナの流行が続き、教育環境の先行きが読めない今だからこそ、一刻も早いICT教育環境の整備が望まれます。
【データ出典元および参考サイト・文献一覧】
・ライフルホームズ
・警視庁ホームページ
・練馬区ホームぺージ
・幻冬舎GOLDONLINE
・日本経済新聞
・東京都/平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
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フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。