2019.12.11

【高等教育無償化】対象世帯や支援額は? 対象世帯は今後拡大していく!?

2020年4月から高等教育無償化がスタートしますが、実際にどんな世帯が対象でいくらぐらいの支援を受けられるのかを知っていますか? 現在、大学講師としてキャリア教育に携わる筆者が、公表されている政策の内容を紹介しながら、今の小中学生が大学受験をするころには、どうなっているのか今後の展望なども分析していきます。

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高等教育とは大学、専門、短大などのこと

まず、高等教育という言葉について説明しましょう。高等教育の無償化と聞くと、高校の教育をイメージする人もいるようですが、教育用語では、以下のような分類になっています。

 

教育の分類(日本の教育制度の場合)

初等教育=小学校の教育

中等教育=中学・高校の教育(一貫校含む)

高等教育=高校から先の教育機関における教育で学歴になるところ

 

つまり、高等教育とは、大学(もちろん大学院も含みます)・短大・専門学校・高専の4・5年生などの教育機関が入ります。浪人生用の予備校など学歴にならないところは含みません。

 

 

高等教育無償化の対象世帯や支援額は?

それでは、2020年4月に開始される高等教育無償化の内容を確認しておきましょう。

 

高等教育無償化は2種類の支援があります。1つは入学金・授業料の減免で、もう1つが「給付型奨学金」と呼ばれる生活費の支援です。後者は、「給付型」ですので返済義務はありません。ちなみに、この2つの支援は両方受けることができます。

 

また、支援を受けられるのは低所得者世帯。生活保護世帯・住民税非課税世帯・住民税非課税世帯に準ずる世帯になります。これは、同政策の導入する目的が、保護者の経済力によって希望する高等教育を受けられないことがないよう支援し、格差固定を防ぐためだからです。

 

では、どのくらいの所得層に、どの程度の支援があるのでしょうか。政府広報がホームページで出しているモデルケースを引用して説明します。

 

両親・本人・中学生の4人家族で、世帯年収が270万円未満の場合

 

ア)入学金の減免

国立大学…入学金(28万2,000円)を免除

公立大学…国立大学の入学金(28万2,000円)が上限

私立大学…私立大学の入学金の平均額(25万3,000円)が上限

 

イ)授業料の減免

国立大学:授業料(53万6,000円)を免除

公立大学:国立大学の授業料(53万6,000円)が上限

私立大学:国立大学の授業料+私立大学の平均授業料(87万8,000円)と国立大学の授業料の差額の1/2を加算した額(70万7,000円)が上限

 

ウ)生活費等の給付型奨学金

国公立大学:自宅生 約35万円、自宅外生 約80万円

私立大学:自宅生 約46万円、自宅外生 約91万円

 

※短期大学・専門学校・高等専門学校4・5年生の支援額はこちらから

 

「知って欲しい!高等教育無償化のこと」政府広報

 

さらに、上記のモデル年収が約300万円の場合、入学金や授業料の減免は上記の3分の2の額になり、給付型奨学金の額も3分の2に。約380万円になれば、3分の1へと減免も給付も減っていきますが、この目安ラインを超えますと高等教育無償化政策の対象世帯外になります。

 

こちらのサイトでは、自身の世帯が支援を受けられるかどうかのシミュレーションをすることができます。対象となる年収金額は、控除されるもの、家族構成(ひとり親か否か、子どもの数)、障害の有無などで変わっていきます。気になる人は確認してみてください。

 

※上記の内容は、2019年10月31日現在の情報です。最新情報はこちらなどで確認を

 

 

 

学校の成績も支援の判断基準になる

さらに、世帯年収の要件を満たすだけでは支援は受けられません。

 

高等学校等の全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上であるか、もしくは、将来、社会で自立し、活躍する目標をもって進学しようとする大学等における学修意欲を有することになっており、レポート提出などで審査されます。

 

さて、ここまで読むと分かるように、無償化の対象となる世帯は、あまり広くはありません。

 

比較として、すでに行われている高校の無償化政策を挙げましょう。現行の政策(2020年度に変わる部分は後述)では、何らかの支援が受けられる世帯年収が910万円となっています。高等教育無償化政策は、その目的どおり低所得者層に限ったものなのだと分かりますよね。

 

 

対象世帯は今後拡大していく!?

しかし、筆者は、高等教育無償化政策の対象世帯は拡大すると考えています。なぜ、そう考えるのかは、下記の5つの理由からです。

 

【理由1】反対されにくい政策ジャンルのため

行い方や財源などの面で多少意見が違っても、負担なく子どもたちが大学に通えるようにするための政策は、与党も野党も価値観的に反対しづらいものがあり、政党の支持層拡大にもつながります。したがって、何らかの財源上の工夫を行って拡大策を行おうとすることは十分考えられます。

 

つまり、消費税増税のように、今後、国民に痛みを伴う何らかの政策が行われる際には、セットで高等教育無償化の対象世帯を増やそうという動きが起こっても不思議ではありません。あるいは、選挙前の公約として掲げられる可能性もあります。

 

【理由②】高校教育の無償化は現に拡充されているため

高校教育の無償化(高等学校等就学支援金制度)は、2020年4月に現行の内容から新しい制度に変わります。

 

何が変更になるかを簡単に解説すると、今までは、私立高校に通わせていた場合は、学費から就学支援金を引いても無償にはならず、学費負担が必要だったのですが、新制度では、世帯年収が590万円未満であればこれが無償に近づくようになります。

 

私立は学費設定が各学校に委ねられているため、すべての学校で無料化にはならないものの、平均学費水準の私立高校に通うならば無償になるような支給が受けられるようになります。

 

高等教育無償化も、制度を始めれば、同じように“次は拡充”と考えられるでしょう。そして、その場合、まずは支援世帯の拡大、後に支援額の加算という流れを経ていくことが十分に考えられます。

 

 

【理由③】高等教育の拡充策は執政者にとってコスパがいいため

日本は、言わずと知れた少子化が進行する国です。ということは、拡大策の恩恵を受ける人数は昔のように多くはありません。そして、高等教育というターゲットは、その少なくなっている子どもの、さらに全員ではない人数を指しています。つまり、年金や医療で高齢者を労わる何らかの拡大ないし拡充策を行うより、はるかに安い費用で政策が行えるわけです。

 

そして、行えば、世帯の年収に関わらず子どもの望む大学へ進学しやすくする政策は、価値観的に望ましいことになり政権支持につながります。つまり、安い費用で支持されやすい政策を行うことができ非常にコスパがいいことになります。したがって、漸進的にでも支援世帯を増やしていく可能性があるのです。

 

【理由④】高等教育無償化は経路依存(ロックイン)効果の産物だから

経路依存効果という言葉を知っていますか? 

 

例えば、車をAメーカーで購入した人が、乗り換え時期がきても今までの営業マンとの付き合いに慣れてしまって、ほかのメーカーで車を探すことを面倒に感じたとします。つまり、メーカーを切り替えるのが手間だと感じたわけですよね。なお、この切り替えの手間自体はスイッチングコストといわれています。

 

経路依存効果とは、このスイッチングコストをためらって既存の判断を踏まえた行動をとってしまうことです。上記の例では、またAメーカーから購入する行動をとった場合は、経路依存効果が起こっているといえます。

 

では、話を高等教育無償化政策に戻しましょう。

 

高等教育無償化政策は、この経路依存効果の産物です。少子化が進んでいても大学数が増え続けたように、高等教育機会の拡充政策はずっとさまざまな形で行われてきています。

 

その中でも、費用面に介入してきたのが高等教育無償化で、この政策だけ実施しないということは、高等教育関連の政策全体を、その方向性から見直すことになり、そのコストは嫌われます。

 

すなわち、高等教育無償化は、完成系に向かって続いていくのが自然な流れであり、支援世帯拡充が行われると見込めるのです。

 

【理由⑤】国際人権規約の絡みもあるため

日本は、国連で締結された国際人権規約の下記の内容を長らく留保してきました。つまり、取り行わないと明言してきました。

 

<日本が保留してきたもの>

国際人権規約の13条2項b、cで、教育についての権利の完全な実現を達成するための条件を挙げているものになります。

(b)では、中等教育に無償教育を漸進的に導入することを定められ、

(c)では、高等教育の無償教育を漸進的に導入することが定められています。

簡単に言えば、徐々に、中等教育と高等教育は無償化していこうということです。

(外務省HPを参照)

 

実は、これらの条項の留保は、2012年の民主党政権時に撤回されています。その後、自民党政権下で再撤回が行われてもいません。

 

したがって、日本は徐々に中等・高等教育を無償化へ進めることを国際的な約束事にしています。国際的な約束事の観点からも拡充策へ向けて後押し材料になることでしょう。

 

以上の理由から、高等教育無償化政策は対象世帯の拡大を行う可能性が大いにあります。高等学校等就学支援金制度も6年ほどで拡充策がとられました。何十年かけてではなく、何年かのちには取り組まれることが予見できますよね。

 

今回の記事では、高等教育無償化についての概要や、今後の対象世帯拡大の可能性について解説してきました。高等教育の進学先(4年生大学か短大か専門学校かなど)によって、給与や待遇の格差があるのが現状です。稼得所得を上げたいなどの合理的な判断をすると、多くの人が大学進学を目指す可能性があります。

 

次回の記事では、社会的な変化も踏まえて、今に小学生、中学生が大学受験をする際に、大学選びの基準はどう変わっているのかを分析していきましょう。

 

宮園啓介

宮園啓介

大学卒業後、高校教諭(教科主任や学年主任、科コース長など歴任)や専門学校講師として教育に携わる。並行して大学院へ通い経済学を修める。得意分野は進路指導(特にAO推薦入試)やキャリア支援。現在は、大学講師としてキャリア獲得に役立つ講義を追及している。

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