教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.09.17

【情操教育とは】鑑賞もいいけれど実演も。演劇に触れてみよう!

学校で年1度ほど「芸術鑑賞会」などがあり、演劇に触れたことがあるという子どもは多いのではないでしょうか。しかし、お芝居(演劇)を見たのはそれきりで、ましてや演じるなど俳優などは専門の仕事、と思っている人もいるでしょう。しかし実はテーマパークのキャラクターなど、「演じている」存在に知らず知らずのうちに触れる機会はたくさん。だとしたら、一度お子さまに「演じる」経験をさせてみるのも良いかもしれません。

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演劇は実は子どもにとって身近なもの

もともと、学校での舞台芸術鑑賞は地方文化振興のための施策として採択されたものでした。戦後、舞台芸術を実演できる場所の少なさや採算性から芸術団体の講演機会が減っていることを危惧し、当時の文部省が昭和25年度以後、地方公演を実施するようになりました。各地を回ったことから「移動芸術祭」と呼ばれたこの試みは、昭和42年度から「青少年芸術劇場」、昭和49年度から「こども芸術劇場」、昭和59年度から「中学校芸術鑑賞教室」として全国の児童、青少年たちが優れた舞台芸術に直接触れる機会となったのです。

 

子ども向け番組では着ぐるみなどが主人公になったものもありますし、テーマパークではキャラクターがステージで演じる姿を見ることがあります。演劇は意外と子どもの近くにあるものだといえます。いま一度、自身のまわりにどんな「演劇」があるのかを考えてみてはいかがでしょうか。実に身近で、さまざなところに演劇の要素は存在しているのです。

 

まずは実際に舞台を見てみませんか。児童向けの演劇は数多く行われています。これは日本に限ったことではなく、海外でも同様。例えばミュージカルカンパニー イッツフォーリーズでは子ども向けのミュージカルを全国で多数公演。人気の児童文学『ルドルフとイッパイアッテナ』も舞台化しました。人形劇団プークは1929年の結成以来、たくさんの名作を生み出してきました。劇団四季は演目によっては子どもも大人も楽しめるものもあります。お住まいの近くでどんな子ども向け演劇が行われているかを知りたい方は、「子ども舞台芸術作品ガイド」などを参考にしても良いでしょう。

 

 

演じることが子どもの感性を磨くことに

しかし、演劇を見る機会があっても実際に演じる機会はほぼないというのが現状です。もしかしたら、学芸会や文化祭のようなもので「劇」や「人形劇」に参加することもあるかもしれませんが、台本に沿ったセリフを覚えて口にすることに必死で、なかなか演技というレベルにまで至らないことが多いのではないでしょうか。けれども、演劇は子どもの感性を磨くことが可能です。 

 

演劇に参加して何かの役を演じる際、子どもは与えられた役のセリフを覚える以外に、その役の人物がどんな人であるのかを想像しなければなりません。そうした人物のバックボーンは脚本に書かれていることもありますが、セリフやト書きでの動きから想像しなくてはならないことも多いのです。同じように別の役の人物と接する時、「この人はどのような人でなぜこういうことを言って、こんな行動をするのか」に思いを巡らせます。つまり、自分とは違う人の生活を舞台上で体験できるのです。 

 

こうした経験はやがて大人になってからロールプレイングなどの場で生かすこともできるでしょうし、相手の気持ちをよく考えて行動することにもつながるでしょう。文部科学省の「コミュニケーション教育推進会議」でも「演劇・ダンス等の芸術表現を用いたコミュニケーション教育推進のための学習プログラムの開発」が取り上げられたことがあります。子どもが演じることには、プラスの要素がたくさん含まれているのです。

 

 

 

 

まずは子ども向けの演劇ワークショップを体験してみて

演技をしている子どもは、テレビで見かける子役だけではありません。意識してインターネットなどで検索してみると、以下のように多くの子ども向け演劇ワークショップがあり、実際に参加している人もたくさんいることが分かります。

 

アーツカウンシル東京の「コドモ発射プロジェクト 未来の大人と演劇はじめました ワークショップコドモ」

東京芸術劇場 芸術監督・野田秀樹氏の発案から始まったプロジェクト。子どものヒラメキを募集するためのワークショップが行われています。「子どもの書いた台本をよってたかって演劇にすることはできないだろうか?」という野田秀樹氏のアイデアのもと、子どもたちのアイデアを原案に、岩井秀人、森山未來、前野健太の3氏が舞台で演じます。

 

世田谷パブリックシアター

赤ちゃん向けから中学生向けまでと、幅広い層に向けたワークショップが多数企画されています。「あかちゃんの部」では、赤ちゃんも大人も一緒になって体と感覚を使った遊びを楽しみながら、物語の世界に飛び込むという仕組み。「中学生の部」の舞踏編では、演劇集団・大駱駝艦の田村一行氏を進行役に、体の感覚に強く意識を向けてイメージ膨らませながら体を動かします。

 

早稲田大学演劇博物館

2019年10月12日~14日の3日間は劇作家で演出家の平田オリザ氏を講師に小学5・6年生、中学1~3年生を対象とした「エンパク★こども演劇教室2019 演じるってなんだろう?」が行われます。コミュニケーションゲームなどを通じて演劇に触れるワークショップと、グループに分かれて演劇を創る創作コースの二つの内容があり、表現や演技に関心を持っている小中学生ならだれでも参加が可能。学んだ後は「早稲田小劇場どらま館」という本格的な小劇場の舞台に立って発表できます。

 

演劇の世界は、実は子どもにも開かれた世界。そして、演じることは他人の人生を生きることでもあり、豊かな心を育むきっかけにもなります。また、しなやかな身体性も養われることでしょう。なかなか自分を上手に表現できない子どもが増えている中、表現力を養うことにも演劇はとても有効だと考えられます。 

 

まずは子どもの気に入りそうな演劇を見た上で、子どもに合いそうなワークショップを見学すると良いでしょう。親子で参加できるものもあります。もし、恥ずかしがって参加を躊躇してしまうしまう場合には絵本を親子で登場人物になりきって読み合うのでも構いません。ぜひ子どもと一緒に演劇の世界に触れ、豊かな表現力で世界の波に乗る大人への一歩を踏み出してみませんか。

 

 

近藤 とも

近藤 とも

大学院で日本近代の都市生活史について研究し、博士号を取得。現在は歴史、文学、教育、ITについてのライティング、編集、書評などを手がける。教育情報メディアの編集部に在籍していた経験から、教育事情に造詣が深い。「紺野とも」の名前で現代詩を書き、詩集も出版。趣味は宝塚歌劇と漫才を見ることと散歩。 https://tomomeronpan0.wixsite.com/tomokondo

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