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2019.11.13

【いじめ探偵】「学校へ行きたくない」は子どもからのSOS まずは休息を/いじめ探偵・阿部泰尚【第6回】

苦しみながら孤立して戦ういじめ被害者・親子の力になるべく、無償でいじめ事件の内実を調査するいじめ探偵こと阿部 泰尚さん。今回のテーマは「子どもからのSOS」について。いじめが原因である場合、子どもが伝える「学校に行きたくない」というSOSを見逃してはいけないと阿部さん。では、子どものSOSを受け止めるために親はどうすればよいのでしょうか。

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精神的な落ち着きを取り戻せるようまずは学校を休ませて

子どもが自ら学校を休みたいと言ってきたとき、仮に「いじめ」が原因だとすると、私は相当重篤な状態にあると考えます。

なぜなら、いじめ事件では「親に心配をかけたくないから」「自分でなんとかしたかったから」などを理由に被害者が大人にいじめを隠す傾向が高く、多くのケースでは、いじめが隠しきれなくなるか、耐えきれなくなって、被害を告白をして“いじめ発覚”に繋がっていきます。

ですから、いじめを子ども自ら告白するような時は、それ自体が強い「SOS」であると考えられるのです。

「SOS」を感じ取ったら、まずは学校を休ませることが大事です。学校から離れることで精神的に落ち着く効果があります。

さらに何をすれば回復できるのかというのは十人十色です。ゲームなどで別のことを考えて回復を図ろうとする子もいれば、とにかく寝てダメージを回復しようとする子もいます。一概にこれをやればよいという統一的な答えはありません。

保護者として、その子にもっともフィットすると思う対応で、子どもの自由にさせてみるというのがいいでしょう。

落ち着いてきたら子どもからの告白を待つ

落ち着いてきたら、いじめの具体的な内容についての告白を待ちます。このとき覚えておきたいのは、被害者の多くは、最も印象に残る被害から先に話す傾向があり、時間軸をしっかりと保ちながら聞かないと、全体的に辻褄が合わない内容を聞き取ってしまうということです。

性格に聞き取るコツは、個々の出来事の時系列をその都度確認するのではなく、一旦全てを話させてから、全情報の整合性を見て確認。親が時系列に並べ替えて不足だと感じる情報を、前後の内容で予測しながら確認するという方法です。

エピソードごとに時系列の整理を行うと、話しの腰を折ることになり子どもにストレスがかかりやすくなります。

私の場合は、いじめ事件の話を聞くことに慣れているので、大学ノートに書きながら整理しますが、複雑な事案や時系列に並べ替えるのが困難な内容の時は、大きめのポストイットに聞き取った内容を書き込み、日時が見えてきたら、並べ替えて時系列を整理します。

また、被害者は被害を過小報告する傾向があります。話を聞いて大したことないと大人の感性で判断すると、誤った対応をしてしまうこともあるので注意してください。

子どもが話してくれないときのテクニック

しかし、場合によってはいじめられた内容を話してくれず、事実を把握することが難しい場合もあります。

例えば、いじめで不登校になった中学1年生のA君は、保護者に「いじめられた」と言うだけで、それ以上の情報を話そうとはしませんでした。そこで、私は3歳違いの兄に話を聞き出してもらうようにしました。年齢が近い兄弟がいる場合、兄弟にお願いするというのは常套手段の1つです。

ほかには、クラスメイトの写真を見せていき、テレビドラマの紹介記事で見るような人物相関図を書いてもらったこともあります。相関図をつくっていくときに、矢印の向き、つながりの太さ、関係性など被害者本人との距離感を質問していくなかで必然的にいじめの具体的な内容まで話が出やすくなります。

不登校中も復帰への準備を考える

いじめで学校を休み始めると、多くの保護者は学校で対策をしてもらい、相手の子が反省していじめが止んだら登校させようと考えるようです。そうでなくても、いつかはクラスに復帰させようというゴール設定をする保護者は多くいます。

しかし、クラスへの復帰をゴールに定め、加害者や学校の謝罪や対策だけに注力してしまうと結果的に復帰はできなくなる可能性があります。だから私は、いつでも復帰できるように準備するように推奨しています。

私の実感では、いじめと不登校は密接な関係があると思っています。たくさんのいじめ被害者に会ってきましたが、かなりの率で不登校状態になっていました。そして、いじめが始まったときから不登校に至るまでの成績をみると、ズルズルと下がっています。いじめで成績が上がった子は、これまで一人しかいません。そして不登校中はもっと下がり、運動能力も下がります。それは当事者本人もわかっていること。そして、成績や学力、運動能力は子どもの将来の可能性に繋がる大事なことです。

もちろん、心のダメージが大き過ぎると、人はなかなか物事に集中できなくなりますから、復帰の準備をするのは相当に気持ちが落ち着いてからです。そして、復帰する先は、通っていた学校だけでなく新たな場(転校先、フリースクールなど)もあると思います。いじめの対処ができない学校には、何が何でも通学しなければならないという価値はありません

次回の記事では、学校復帰への準備とはどのようなことで、実際に私がどんなことを行っているのかを事例を交えながら紹介しましょう。

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阿部泰尚

特定非営利活動法人ユース・ガーディアン 代表。 1977年、東京都中央区生まれ、東海大学卒業。 2004年に、日本で初めて探偵として子どもの「いじめ調査」を行ない、当時ではまだ導入されていなかった「ICレコーダーで証拠を取る」など、革新的な方法を投入していき解決に導く。 それ以来、250件を超えるいじめ案件に携わり、NHK「クローズアップ現代」をテレビ朝日、TBSラジオ、朝日新聞、産経新聞他多くのメディアから「いじめ問題」に関する取材を受け、積極的に発言をし続けている。日本テレビ「世界仰天ニュース」でもいじめ探偵として取り上げられている。 著書に「いじめと探偵」 (幻冬舎新書 2013/7/28)。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー、国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務めている。

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