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ソクラテスのたまご

2019.04.07

いじめ対策に正解はある? 保護者としていじめ問題と向き合ってみよう

今までに6000件以上いじめの実態調査を引き受けてきた探偵の阿部泰尚さん。いざわが子がいじめの被害者になったとき、学校の対応を責める保護者は少なくないはず。しかし、いじめが起きる前、わが子が通う学校がいじめに対してどんな方針をもっているのか調べている保護者はどの程度いるのでしょう。今回は、保護者ができるいじめ対策のひとつ、学校のいじめ対策を知る方法、そのうえで親のできることについて解説します。

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いじめ対策を学校に期待してはいけない

平成30年3月、「いじめ防止対策の推進に関する調査の結果に基づく勧告」が、総務省から文部科学省と法務省へ行われました。


大まかにいえば、いじめ対策をしている割には増加傾向にあることいじめの認知数が都道府県によって不自然な差(約19倍)があること自殺などの重大事態が後を絶たない状態だということが、総務省の調査でも浮き彫りになったことから「いじめ防止にきちんと取り組んだ方がいいと思いますよ」という勧めをしたという形です。


第1回目の記事で詳しく書きましたが、“いじめの定義”は「いじめ防止対策推進法」で定められています。にも関わらず、未だに自己解釈を優先している学校が多く、本来ならいじめとして対応されるなのに誤った指導で悪化させていたり、放置して不登校になっていたりと、私が呼ばれた頃には、手のつけようのない末期症状となっていることがあります。


私は、被害者の代わりに教育機関(公立の小中学校であれば市区町村の教育委員会、高校であれば都道府県の教育委員会)などへ出向いて話をすることがありますが、各機関では担当者レベルでの温度差を激しく感じますし、私立校に関してはセーフティネット的な機能を持つ機関がないため公立校より対応がひどいと感じることもしばしばです。


だからこそ、「学校は子どもを守ってくれるに違いない」「説明会ではいじめはないと言っていた」という根拠のない情報を妄信するのではなく、どの学校にもいじめがあるという前提で「もし、いじめが起きたらどのような対策をしているのか」と考えないと、わが子を守ることはできません。

 

 

 

各学校のいじめ防止方針について知っておく

実は、前述の「いじめ防止対策推進法」では、各学校で「いじめ防止基本方針」を策定するように決めています。

 

この方針には、いじめが起きたときに誰に相談すればよいかや、いじめ防止対策委員会のメンバーは誰になるのかなど、いじめが起きた際に重要なことが記載されています。基本的には、いつでも誰もが確認できるよう公開しておく必要がありますが、実際に公開している学校は多いとはいえません。

 

いじめ対策を行わない学校の特徴は、この「いじめ防止対策指針」が教育委員会などから提供された雛形の校名部分のみを書き換えたに過ぎないものがほとんどで、最もひどいケースでは、防止対策指針すらがないということもあります。

 

いじめの対策を行う際、私は必ず事前に「いじめ防止対策方針」を入手して読むようにしています。私は、さまざまな学校の「いじめ防止対策方針」を読み込んでいるので、校名のみを書き換えたなということがわかりますが、一般の方は、市区町村などの地域行政が配布している雛形と照合してみましょう。また、隣接地域や学校ホームページなどを検索して比較することをおすすめしています。

 

そもそも学校には地域ごとに特色があり、必要な要件を満たすために提供された雛形を利用するのは問題ないことですが、学校に特色がある以上、いじめ対策も学校ごとに違うのは当然のことなのです。


東京都足立区の小学校で、いじめの対応が全国的に最も良いとされている辰沼小学校の「いじめ防止基本方針」は、学校の特色や独自の取り組みが明確に示されており、全国的なモデルとして様々な地域から視察が絶えないと聞きます。

足立区立辰沼小学校「いじめ防止基本方針」

 

また、ほとんど役に立たないのが「学校評価のシート」です。学校のホームページなどで紹介されているケースが多いのですが、ネガティブな要素が排除されていることが多く、正確に学校の実態を掴むにはフェアではない評価だと認識しておいた方が無難です。

 

 

 

いじめ発生認知数が高くてもいい学校はある

いじめの発生については国立教育政策研究所の追跡調査のデータを確認しましょう。同データでは、小学4年生から中学3年生までを追跡調査した結果が出ていますが、いじめの加害行為もしくは被害を受けたことがある子は9割にも及んでいます。

 

わが子は大丈夫、うちの学校は大丈夫と思っている親が多いように感じますが、それは単に、親だけが知らないだけの“いじめゼロの幻想”だと思っておいた方がよいでしょう。

 

世の中でこれだけ多くのいじめが起きているのであれば、学校自体で特別で効果的な取り組みをしていない限りいじめが起きないということは現実的に考えられません。


ところが、現実では、特別で効果的ないじめ防止の取り組みをしていてもいじめは発生します。むしろ、そういう学校の方がいじめ認知数は多い傾向があります。

 

なぜなら、いじめはどこでも発生してしまうものであり、完全に防止するよりは、早期に発見・対処することが、いじめ対策では効果的だからです。ですから、いじめの早期発見力が高ければ、必然的にそのいじめの認知数は増えてしまうのであって、いじめの認知数のみでいじめ対策の優劣を判断するのは誤った判断です。

 

いじめは発生するということを前提に考え、もし、いじめが起きても生徒間が自己修復できる程度のダメージのうちに早期解消できている学校を選ぶべきです。

 

また、そうした学校には、必ずその学校の特色に合わせた特別で効果的な取り組みがあります。いじめについてきちんと取り組みをしているか、保護者自身が学校を評価しましょう。

 

情報収集を行うのは喫茶店やファーストフード店

では、学校は頼りにならないことが判明した。そんなときはどうすればよいのでしょうか。ここで私が実際に行っている探偵の技術をお教えしましょう。

 

「ん?」と思われる方もいるかもしれませんが、私は時折、補聴器を使って情報収取をします。これは多くの会話を効率的に聴くためです。

 

学校の現状を知るためには、校内を歩き回ればよいのですが、学校や教育委員会はなかなか許可をしてくれません。


それに、許可をしてくれても案内がついて学校側が見せたいところだけを回らせるということもよくあります。ですから、私は学校のママたちが集まりやすい場での情報収集の方が効率的だと考えています。

 

例えば、モーニングの終わった学校近くのファミリーレストランやファーストフード店のテーブル席に座り、ママ友たちの会話に耳を傾けます。教員の悪口や受験の話題、いじめなどの学校でのトラブルについての意見交換など、さまざまな話題がものすごいスピードで交わされます。

 

私立校でも学校の最寄駅などの喫茶室などで耳を傾けるだけ。それを数日続ければ、最初は点だった情報が線として繋がっていきます。

 

いじめに立ち向かうとき、すべて受け身では物事がスムーズに動くとは限りません。親として学校を冷静に分析し、情報収集することも必要なのです。

 

阿部泰尚

阿部 泰尚

特定非営利活動法人ユース・ガーディアン 代表。 1977年、東京都中央区生まれ、東海大学卒業。 2004年に、日本で初めて探偵として子どもの「いじめ調査」を行ない、当時ではまだ導入されていなかった「ICレコーダーで証拠を取る」など、革新的な方法を投入していき解決に導く。 それ以来、250件を超えるいじめ案件に携わり、NHK「クローズアップ現代」をテレビ朝日、TBSラジオ、朝日新聞、産経新聞他多くのメディアから「いじめ問題」に関する取材を受け、積極的に発言をし続けている。日本テレビ「世界仰天ニュース」でもいじめ探偵として取り上げられている。 著書に「いじめと探偵」 (幻冬舎新書 2013/7/28)。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー、国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務めている。

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