教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.11.12

わが子がいじめの加害者… 親がすべきことは?/いじめ探偵・阿部泰尚【第3回】

今までに6000件以上いじめの実態調査を引き受けてきた探偵の阿部泰尚さん。クラスで起きるいじめの構造を見てみると、いじめの大半は被害者1人に対して加害者は3~5人いるそう。わが子の教室でいじめが起きた際、被害者よりも加害者になる確率の方が高いのです。そこで今回は「わが子が加害者だったら」ということについて話を聞きました。

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加害者であることを自然に見抜くのは不可能

いじめの加害者は、いじめによる変化があまりありません。わが子の様子だけを観察して「いじめをしている」と確信するのは至難の技といえます。

 

ここで、ある事例を紹介しましょう。中学1年生であるA君のお母さんは、学校からの連絡でわが子がいじめの加害であることを知りました。A君は活発な性格で友人も多くて学校での成績もとてもいい文武両道といえる自慢の子でした。

 

一方、いじめの被害者であるB君は、体が弱くて勉強も得意ではない正反対の男の子。いじめの内容は、B君の持ち物を捨てたり、汚した上ばきを無理やり履かせるなど荒っぽいものです。

 

当初、B君はいじめられていることを隠していましたが、たまりかねて不登校になり、B君の保護者から学校への通告で発覚したというものでした。

 

自分を責めていても前に進まない

学校が詳しく調査したところ、いじめは当初の想定よりもひどく、殴る蹴るなどの暴力行為が日常的に行われていてB君は精神的にも肉体的にもボロボロの状態でした。

 

A君のお母さんは、学校からすぐに謝るように指導を受けたそうですが、B君の自宅に電話をしても本人が謝罪を受けられる状態ではないと謝罪を断られてしまいました。 そして、家庭ではA君を注意しましたが、A君は「Bを鍛えてやっていたんだ。それなのに、いじめだなんていうなんてずるい」と納得をしていない様子。お母さんは、自分の育て方が悪かったのか、それとも何か不満がありA君にいじめをさせてしまったのか、自分を責めてしまうばかりで、問題はいつまで経っても前に進みません。

 

さて、こんな状態に陥ったA君のお母さんは、どうすればよいのでしょう。あなたならどうしますか?

 

 

否定も同意もしない姿勢が大切

もし、話を前に進めるのであれば、このタイミングでお母さんが行わなければならないのは、現状を正確に把握することです。

 

わが子が何をしたのかを本人や学校からよく聞き取らなければなりません。話を聞く際に、聞き漏らしてはならないのは、「いつ」「どこで」「誰と」「誰に」「何をしたのか」という基本の要素。

 

一般的ないじめの場合、行為は徐々にエスカレートしていきます。順を追って話を聞いていくと目を覆いたくなったり、解釈を変えてみよう、原因を探っていこうなど、我が子を防衛しようとする本能が働くこともあるでしょうが、まだその段階ではありません。 保護者は、ありのままを客観的事実に沿って知るべきです。

 

そして、事実が分かったら否定はせずに「なぜそのような事をしたのか?」と本人から聞き出します。この際のポイントは、否定もしないが同意もしないという一貫した姿勢です。

 

 

わが子の心ととことん向き合うこと

次に、もし被害者がわが子だったらどうかと考えてみてください。たいていの保護者は許せるはずもありません。その気持ちをわが子と話し合うようにしてください。学齢が進むと反抗することもあると思いますが、きちんと心が向き合うまで根気強く話し合います

 

ここまでくると、いじめをしてしまった当事者も何がいけなかったのか、自分自身でも考えるようになってきているはずです。しかし、具体的に何がいけないのか、言葉しようとしても心で感じていることと言葉がうまくリンクせず、相手に伝えるべき言葉がうまく表現できないかもしれません。 それでも、相手に何を謝るべきか、自分がどうするべきかという事をしっかり考えさせるいい機会だと思って根気よく考えさせサポートします。

 

わが子の中に「なぜいじめはしてはいけない事なのか」自分なりの答えが出てきているはずです。

 

一方、いじめの被害を受けた子の心は、時間によって癒されることもありますが、トラウマになっていたり、心がひどく傷ついてしまったりしていると簡単には回復しません。つまり、謝罪を受けられる状況にはなかなかならないと思っておきましょう

 

 

保護者が謝罪の見本となり成長へとつなげる

“相手が謝罪を受けられないというときは手紙で謝罪をすればいい”という提案もありますが、被害者の思考と非被害者の思考は異なります。字面でのコミュニケーションは、被害者側の解釈によって同じ言葉でも意味が変わることもあるので良策とはいえません。態度で示すしかないのです。

 

真の謝罪とは、態度と行動、そして言葉がしっかりと一致しています。言葉をかけてはならないのであれば、姿(態度・行動)で謝罪をしていくしかないのです。 保護者の中には、当事者は子どもであるという考え方から、子どもと一緒に行動しないという方もいますが、わが子が過ちを犯したら保護者が一緒に謝罪し、子どもの見本となるような対応をするのが一番いい方法です。

 

ニュースでみるような事件化しているいじめは、加害側の保護者が「わが子を守る」という意味を履き違えて、いじめを肯定したり、誰がどう見てもいじめであるのに「いじめではない」と主張するなど、問題が深刻になっていく振る舞いをしています。

 

わが子がいじめを加害者になったときは、もう二度といじめをしない、させないための教育の機会でもあるのです。保護者がどう振る舞うかで、いじめという過ちを犯したわが子が成長できるかが決まります

 

阿部泰尚

阿部 泰尚

特定非営利活動法人ユース・ガーディアン 代表。 1977年、東京都中央区生まれ、東海大学卒業。 2004年に、日本で初めて探偵として子どもの「いじめ調査」を行ない、当時ではまだ導入されていなかった「ICレコーダーで証拠を取る」など、革新的な方法を投入していき解決に導く。 それ以来、250件を超えるいじめ案件に携わり、NHK「クローズアップ現代」をテレビ朝日、TBSラジオ、朝日新聞、産経新聞他多くのメディアから「いじめ問題」に関する取材を受け、積極的に発言をし続けている。日本テレビ「世界仰天ニュース」でもいじめ探偵として取り上げられている。 著書に「いじめと探偵」 (幻冬舎新書 2013/7/28)。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー、国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務めている。

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