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ソクラテスのたまご

2019.02.06

どこからを“いじめ”と呼ぶの? いじめの法律的な定義とは

今までに6000件以上いじめの実態調査を引き受けてきた“いじめ探偵”の阿部泰尚さん。今やいじめの専門家として講演を行うこともある彼だからこそ知るいじめの対処法を紹介します。第一回目となる今回のテーマは「いじめとは何なのか」。わが子を守るためにも覚えておきたい「いじめの定義」についてリアルを知る阿部さんの想いを紹介します。

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被害者が苦痛を感じればいじめである

現在、講演会やメディアでいじめについてお話しする機会がありますが、実は、プライベートでも知人らといじめ問題について語る機会がよくあります。

 

いじめの話題の間、私はあえて彼らの発言の否定はせず、子どものいじめ問題に対して30~40代の大人が一体どのような考えをもっているのかを知るために黙って耳を傾けることに注力しています。

 

そんな中で改めて気づいたのは、“何がいじめにあたるか”という基準が世代によって異なるということです。

 

“いじめ”という言葉が世間に出始めた昭和61年ごろから現在に至るまで、自殺や裁判などをきっかけにして“いじめ”が社会問題として取り上げられることがあり、その都度いじめの基準、定義というものが変化してきました。

 

つまり、“いじめ”には全世代が共通で認識しているはっきりとした基準も定義もないのです。

 

ですが、現在の日本には法律によって定義づけられたいじめの基準・定義があります。それが「いじめ防止対策推進法」に書かれているいじめの定義です。そのことを知らないままでは、いじめについて語ることはできません。 

 

児童等に対して当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)

「いじめ防止対策推進法」第一章第二条

 

簡単にいうと、行為を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じた際にいじめだと定義されるのです。そして、被害者の立場に立つことがいじめ対策の原則的な姿勢となっています。

 

 

悪気がなくてもいじめに該当する

ここで一例を挙げてみます。

 

ある児童(仮にAとします)がクラスメイトからプロレス技をかけられています。Aが苦痛に苦しむ姿を滑稽だと思ったクラスメイトが行為をエスカレートさせ、Aは精神的、身体的な苦痛を受けてしまいました。

 

先ほどの法律に照らし合わせて考えてみるとこのケースの場合、定義上の“一定の人間関係”はクラスメイトに該当するのでプロレス技をかけた時点でいじめに関する行為が成立していることになります。

 

また、Aが苦痛を感じたため「いじめである」と定義することができます。 ただし、ここでAが「普段から大げさな動作でクラスメイトを笑わせる存在だった」という情報があればどうでしょうか。

 

プロレス技をかけた側も普段と同じようなじゃれ合いの一環として悪気無く該当行為をおこなったと言われてしまうと、いじめかどうかはわからなくなってしまうかもしれません。

 

しかし、現在の法律ではAが「心身の苦痛を感じた」のであれば、いかなる情報があったとしても間違いなくこれはいじめに該当します。

 

 

被害者の立場で考えて最悪の事態を防ぐ

法律でいじめが定義される前は、いじめの定義に「学校が認めているもの」や「人間関係として上位の者が下位の者を」「一方的に」といった条件がついていました。「被害者の立場に立って」という原則すらなかった時代もあったのです。 そのため、いじめの認定を受けるのは困難でした。

 

「本人が嫌と言わなかった」「悪意はなかった」と言ってしまえば、いじめとは認められなかったのです。 その結果、助けを求めていた児童が救済されずに自殺するという事態も起こり、世間で「いじめ」が危険視されるようになり、ようやく現在の法律のように「被害者の立場に立って対策する」ということが大前提になりました。

 

現在でもこの定義が徹底されているとは言い切れません。 ですが、状況・立場・人間関係などに関わらず、行為自体と被害者側の心身の苦痛が認められればいじめは成立します

 

このことを念頭に置き、いじめは被害者が苦痛を感じた時点で早期対策ができるということを覚えておいてください。最悪の事態を防ぐためには早期対策が不可欠であり、何よりも優先されるべきです。

 

阿部泰尚

阿部 泰尚

特定非営利活動法人ユース・ガーディアン 代表。 1977年、東京都中央区生まれ、東海大学卒業。 2004年に、日本で初めて探偵として子どもの「いじめ調査」を行ない、当時ではまだ導入されていなかった「ICレコーダーで証拠を取る」など、革新的な方法を投入していき解決に導く。 それ以来、250件を超えるいじめ案件に携わり、NHK「クローズアップ現代」をテレビ朝日、TBSラジオ、朝日新聞、産経新聞他多くのメディアから「いじめ問題」に関する取材を受け、積極的に発言をし続けている。日本テレビ「世界仰天ニュース」でもいじめ探偵として取り上げられている。 著書に「いじめと探偵」 (幻冬舎新書 2013/7/28)。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー、国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務めている。

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