劇団四季『バケモノの子』の子役に見る成長の道のり。学校との両立についてもインタビュー
将来の夢を持つことや、目標に向かって努力する姿勢は、子どもの成長においてとても重要です。では、夢中になれることを見つけた子は、どのようにその道を極め、どんな経験を経て、その先で何を得るのでしょうか。
今回は、劇団四季のオリジナルミュージカル『バケモノの子』の主人公 蓮/九太(少年)役を射止めた野田航世さんにお話を伺い、夢を叶える子どもの努力と成長や学校との両立、そして親や親以外の大人たちとの関わり方についても探っていきます。
目次
好きなことを続けるなかで見つけた目標と挑戦
大好きなことが夢の幕を開けた
2024年12月、名古屋四季劇場で上演中の『バケモノの子』の公演後、先ほどまで力いっぱい役を演じていた印象とは少し違う、緊張した面持ちで「よろしくお願いします」と取材の場に登場してくれた野田航世さん。
先日11歳になったばかりの小学5年生。歌うことが大好きで、幼少の頃から「ずっと歌っていました」と話す彼が、ミュージカルの世界に足を踏み入れたのは、5歳のときに児童劇団に入ったことが始まりだったといいます。
趣味として歌やダンスを楽しむ日々を過ごすなかで、いつしか「ミュージカルの舞台に出演したい」と、気持ちが変化していきます。その大きなきっかけとなったのは、あの大人気ミュージカルを観劇したことだったのだそう。
「東京で『ライオンキング』の公演を観て、僕もミュージカルの舞台に立ってみたいと思うようになりました。その数年後に観た『バケモノの子』にも感動して、子役オーディションがあることを知り、挑戦しました」と、夢を抱いた当時を振り返ってくれました。
諦めずに挑む強い意志
実は、小学3年生のときにも、同作の別の役でオーディションに挑戦しましたが、残念ながら不合格。しかし、それほど時間を空けずに再びチャンスが巡ってきます。自分自身で決めた”舞台に出演する”という目標を諦めず、決意を新たにして挑んだのが『バケモノの子』名古屋公演の蓮/九太(少年)役のオーディションでした。
ある日習い事から帰宅すると、オーディションの結果通知が届いていることをお母様から知らされました。恐る恐る自分でメールを開くと、結果は見事合格!
声を出して喜んだ野田さんですが、「驚いたし嬉しかったけれど、本当に合格したのか、実感が沸かなかった」という気持ちも。それから実際に稽古が始まるまで「どんな稽古をするんだろう?と思ったり、本当に舞台に立てるのかな…と不安になったりもしました」と、これから始まる新たな世界にドキドキしていたようです。
大好きな歌やダンスに打ち込んできた経験が実を結び、ついに子役として劇団四季の舞台に立つスタートラインに立ちました。
大人たちに支えられながら成長
子どもと大人が理解しあい、関係性を深めていくストーリー
オーディション結果を受け取ってから開幕初日を迎えるまでの間、ほかの子役や大人の俳優との厳しい稽古を積み、今は『バケモノの子』への出演を重ねる野田さんに、一番好きなシーンを伺ってみると、「バケモノたちに支えられて成長していく、修行のシーンが好きです」と笑顔。
<『バケモノの子』あらすじ> バケモノたちが住む異世界・渋天街に迷いこんだ、一人ぼっちの人間の少年・蓮は、乱暴者ですが心に強い信念を持っているバケモノ・熊徹と出会います。彼の弟子となった蓮は、「九太」と名付けられ、修行を重ねます。九太と熊徹は、ぶつかり合いながらも共に成長し、まるで本当の親子のような絆を深めていく、希望の物語です。 |
人間の世界を離れてバケモノの世界に飛び込んだ九太が、未知の環境で大人のバケモノたちに料理や洗濯を教わり、習得していくこの場面。戸惑いながらも徐々に大人たちの輪に馴染んでいく表情の変化は、見ている人の顔も思わずほころんでしまいます。
子どもが、大人たちとの交流を深めながら自分と向き合い、成長を遂げていくという点は、劇中の役と野田さん自身の姿が重なります。
課題は稽古や指導者のアドバイスで克服
楽しく華やかに見える修行シーンの裏には、稽古での苦労もたくさんありました。一番大変だったことを聞くと、「自分自身の声でセリフを話すことに苦戦しました」と教えてくれました。
舞台に立つと、元気よく喋らなければと思ってしまい、どうしても力が入って、声が高くなってしまったり、調子が外れたりしてしまうことがよくあるのだと、子役指導の遠藤さんも解説してくれました。
日々直面する様々な課題も、子役指導の方々からの助言や、稽古を重ねることで乗り越えています。試練を克服するために、試行錯誤を繰り返し、努力すること。このプロセスを着実に歩んで行けるかどうかが、夢を叶えられるかどうかの分かれ道なのかもしれません。
公演ごとに感じる自分自身の成長
「いつも新鮮に演じています」と、毎回の公演を大切にしている野田さん。この日の公演については、「登場シーンから出番の終わりまで、しっかりと役に入り、役を生きることができました」と、今日もまた成長を感じた様子。
「舞台に出ている瞬間は、最初から最後までずっと楽しい!」と明るく話す野田さんが、特に注目して欲しいというポイントは、師匠である熊徹と九太が、ぶつかり合いながらも絆を深めていく過程。野田さんも「どんどん強くなっていく絆を感じながら演じている」のだそうです。
挑戦したことやもらったアドバイスを自分のものにして公演に臨むだけでなく、演じている間にも進化を続けているのですね。
舞台と勉強の両立を工夫して実践中
プロとして舞台で輝く野田さんですが、一歩劇場を出れば普通の小学5年生でもあり、宿題や勉強にも取り組む必要があります。
演じる役を理解し、歌や動きを体や心に染み込ませ、本番で発揮するという舞台俳優としての顔と、勉学に励まなければならない小学生としての顔。二足のわらじを履くことになり、少なからず生活にも変化があったといいます。
舞台と学校の勉強との両立はどのように実現しているのかを聞いてみると、それぞれに優先順位をつけるのは難しいと感じながらも「舞台に出演する日は、朝起きてから勉強や宿題をやる時間を決めて取り組むようにしています。お母さんとも相談しながら、一番良い時間の使い方を考えています」と、大人も見習いたくなるような回答。
また、「寝起きは声が枯れているので、時間をかけてストレッチや発声練習などの準備をしてから劇場に向かうようにしています」と、舞台俳優として自宅でのウォーミングアップも欠かしません。
体調管理も舞台に立つ子役の仕事
たくさんのお客様を前に歌ったり踊ったりする彼らにとって、身体は資本。特に、寒さや乾燥が堪えるこの季節は、体調管理が重要です。しっかりと食事や睡眠をとり、生活習慣を整えることは家庭の役割でもありますが、野田さんが気をつけていることはあるのでしょうか。
「体調が良くないなと思ったら、とにかく寝ます!でも開幕してからは1度も体調を崩していません」とのこと。開幕から数ヶ月、プロとしてしっかりと健康にも気をつけながら過ごしているのですね。
真剣に取り組んだ経験が将来の姿につながる
野田さんにこれから目指す将来の姿を尋ねると、「大人の蓮/九太役として出演してみたいです。今は子役指導の方々や、キャストやスタッフのみなさんに支えられているので、僕も大人になったら、劇団四季の俳優として子役を支えられるような人になりたい。みんなで協力して、ひとつの作品をつくり上げられたら良いなと思います!」と、まっすぐな目で語ってくれました。
劇団四季で子役として活躍した子どもたちは、大人になって改めて劇団の門を叩くケースも少なくありません。一方、小道具や衣装などの技術スタッフに興味を持つ人や、子役時代の体験を他の道で活かしていく人たちもいます。
道は人それぞれですが、子ども時代に情熱を傾けた経験は、確実に未来につながっていくようです。
大人との良い関係性も子どもの成長のポイント
大人たちとの関わりの中で、様々なことを学び、自ら考え抜き、役と向き合う野田さん。支えてくれている大人のスタッフやキャストたちへの感謝を口にしていたことからも、良い環境の中で関係性を築いていることが分かります。
夢をつかみ、進化し続ける道のりにおいて、家庭でのサポートは非常に大切です。しかし、指導者や仲間など親以外の大人たちとの密な関わりも、考える力や、課題に取り組み乗り越える力を身につけることに役立ちます。子どもにとって、”家庭”と”もうひとつの環境”の2つの存在が、自己成長に大きく影響するのではないでしょうか。
劇団四季オリジナルミュージカル『バケモノの子』名古屋公演は、2025年2月9日まで名古屋四季劇場(愛知県・名古屋市)で上演中です。たくましく成長していく蓮/九太の少年時代を演じる野田さんはじめ、夢をつかんだ子役たちの活躍を、ぜひ劇場でご覧ください!
▶劇団四季公式サイトはこちら
<子役指導/遠藤剛さんのインタビュー記事はこちら>
劇団四季の子役指導に聞く 子どもの可能性を広げる「嘘をつかない」指導ポリシー
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武蔵野美術大学卒業後、住宅設備機器メーカーにて広報・ブランディング、デジタルマーケティングの分野に約13年間従事し、Webや販促物などのディレクションおよびデザイン、記事やメールマガジンの執筆も担当。現在はフリーランスとして活動。舞台やミュージカル観劇が生き甲斐の、デザイナー兼ライター。