不登校になりやすい家庭に特徴はある?母親が原因なの?親ができるサポートも解説
「なぜ我が子は学校に行けなくなってしまったんだろう」「もしかして、私たち親に原因があるのではないか」不登校の子どもがいるご家庭では、このように自問自答を繰り返す保護者の方も少なくないのではないでしょうか。不登校の問題は複雑で、その原因をひとつに特定するのは困難です。しかし、世間では「不登校は親の育て方に問題がある」「家庭の影響が大きい」との声も聞かれます。このような言葉を耳にすると、不安や自責の念に駆られてしまう保護者の方もいるかもしれません。
そこで本記事では、不登校の原因と家庭環境の関係について、さまざまな角度から考察していきます。また、不登校の子どもを持つ親が抱えやすい悩みや、親ができるサポートについても詳しく解説していきます。
目次
不登校の原因が「親や家庭にある」と言われることがある理由
不登校の問題を語る際、「親や家庭に原因がある」という意見を耳にすることも少なくありません。このような見方が生まれる背景には、いくつかの要因が考えられます。
親に対する社会的プレッシャー
特に現在の日本社会では、子育ての責任が親に集中しがちです。「良い親」であることへの期待が高く、子どもの問題が生じると、まず親の育て方が疑問視される場合があります。
このような社会的プレッシャーは、不登校の問題にも影響を与えています。「親がもっと頑張れば子どもは学校に行けるはずだ」といった考え方が、無意識のうちに広まっているのです。
しかし、このような見方は親に過度の負担を強いるだけでなく、不登校の本質的な原因を見逃す危険性があります。
不登校児の5人に1人が「家庭環境」に要因というデータ
確かに、子どもの成長と発達において、家庭環境が大きな影響を与えることは広く認識されています。このため、子どもに何か問題が生じた場合、その原因を家庭環境に求める傾向が強くなりがちです。
不登校も例外ではなく「家庭に何か問題があるのではないか」と考えてしまう方も多くいます。
また、令和4年に文部科学省が発表している児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によると、不登校の小中学生のうち「家庭の生活環境の急激な変化」「親子の関わり方」「家庭内の不和」を要因に挙げる割合が高いとわかります。
しかし、家庭環境の重要性を認識すると、不登校の原因を単純に家庭のせいにすることは別問題です。子どもの成長および不登校には、家庭以外の要因も大きく影響しています。
不登校の子の親が抱えやすい悩みとは?
不登校の子どもを持つ親は、さまざまな不安や悩みを抱えがちです。ここでは、不登校の子どもと暮らすご家族がよく話される悩みと、それに対する考え方をご紹介します。自分を責めるのではなく、前向きに子どもと向き合うためのヒントにしてください。
「自分の育て方に問題があったのではないか」という自責の念
多くの親が、子どもの不登校の原因を自分の育て方に求めてしまいます。「もっと厳しくしつけるべきだった」「逆に甘やかしすぎたのかもしれない」など、過去の自分の対応を振り返り、後悔の念に駆られている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、不登校の原因は複合的で、親の育て方が原因とは言い切れません。自責の念は「自分が子どもを大切に思い、真剣に向き合おうとしているからこそ起こるもの」と考えてみましょう。
不登校は、社会の変化や学校システム、子ども自身の特性など、さまざまな要因が絡み合って起こります。「自分が完璧な親じゃなかったから…」が理由ではありません。
「周囲の目が気になる」というプレッシャー
「子どもが不登校になると、つい周りの目を気にしてしまう」「近所の人に何と言われるだろうか」「親戚に説明するのが恥ずかしい」など、さまざまな声も聞かれます。
しかし、周囲の目を気にしすぎることは、かえって子どもへのプレッシャーになってしまいます。不登校は特別なことではなく、どの家庭にも起こりうる問題です。
大切なのは、子どもの気持ちに寄り添い、家族で協力して向き合うこと。周囲の理解が得られにくい場合は、同じ悩みを持つ親の会などに参加し、情報交換や心の支えを得るのも良いでしょう。
「この先、子どもの人生はどうなるのか」という将来への不安
不登校が長期化するにつれて、子どもの将来への不安が大きくなっている方もいらっしゃるはず。「このまま学校に戻れないのではないか」「進学や就職はどうなるのか」と心配が尽きませんよね。
しかし、不登校経験者には、その経験を糧に独自の道を切り開いた人も多くいます。学校に行けないのは人生の失敗ではありません。
むしろ、この時期に子どもが自分と向き合い、本当にやりたいことを見つける機会になるケースもあります。焦らず、子どもの成長のペースを尊重しながら、一緒に将来を考えていくのが大切です。
上記の悩みは、不登校の子どもと過ごす多くの親が経験します。一人で抱え込まず、専門家や同じ境遇の親との交流を通じて、適切な対処法を見つけていきましょう。
子どもが不登校になりやすい家庭や親の特徴はある?
前述したとおり、不登校の原因は複雑で、特定の家庭環境や親の特徴だけでは説明できません。しかし、一般的に言われる要因や不登校のきっかけとなりやすい家庭の状況について、いくつか例を挙げてみます。
以下の例は不登校の原因に必ずしも当てはまるわけではなく、また、直接的に不登校を引き起こすとは限りません。
家族とのコミュニケーションが不足している
家族間のコミュニケーションが不足している家庭では、子どもが悩みや不安を打ち明けにくい雰囲気があるかもしれません。
・親子で会話をする時間が少ない
・子どもの話を十分に聞く余裕がなく、聞き流してしまう
・子どもの気持ちを理解しようとせず、一方的に叱責してしまう
このような環境では、子どもが学校での問題を一人で抱え込んでしまい、結果的に不登校につながる可能性があります。愚痴や悩みを誰にも話せない、話しても聞いてもらえない状況は、大人でも苦痛を感じるものです。
家族で食事をする機会を増やしたり話をじっくり聞く時間を作るなど、コミュニケーションを充実させることは、子どもの意外な気持ちや言えなかった本音が聞けるきっかけになります。
過度な期待やプレッシャー
子どもの学業成績や進路に対して、親が過度な期待やプレッシャーをかけることがあります。例えば、以下のようなことです。
・「兄弟と比べて成績が悪い」と叱る
・「この学校に行かないと将来が危ない」と焦らす
・子どもの興味や適性を無視して、特定の進路を押し付ける
このような態度は、子どもに強いストレスを与え、学校に対する嫌悪感や不安を引き起こし、自己肯定感を下げる可能性があります。子どもの個性や能力を認め、一緒に適切な目標を設定するのが重要です。
家庭環境の急激な変化
家庭環境が急激に変化すると、子どもは大きなストレスを感じる場合があります。不登校のきっかけになりやすい例として挙げられるのが、以下のような変化です。
・離婚や別居
・引っ越し(特に転校を伴う場合)
・家族の病気や死別
・経済状況の急変
これらの変化は、子どもの生活リズムや心理状態に大きな影響を与えます。環境の変化が避けられない場合は、子どもの気持ちに寄り添い、十分なサポートを提供することが大切です。
過保護または放任の育児スタイル
極端な育児スタイルも、不登校のリスクを高める可能性があります。
過保護…子どもの自立心や問題解決能力の発達を妨げる可能性がある
放任…子どもが適切な生活習慣や社会性を身につけられない可能性がある
適度な見守りと、子どもの自主性を尊重するバランスの取れた関わり方が大切です。
繰り返しになりますが、これらの特徴があるからといって、必ずしも不登校になるわけではありません。また、これらの特徴がなくても不登校になるケースはあります。不登校の原因は複雑で、家庭環境以外の要因も大きく影響します。
大切なのは、子どもの変化に敏感になり、困っていることがあれば早めに気づき、適切なサポートを提供することです。
不登校の原因は家庭や親以外にあることが多い?
不登校の原因を考える際、家庭環境や親の関わり方だけに焦点を当てるのは適切ではありません。実際には、家庭や親以外にも多くの要因が関係しています。ここでは、家庭や親以外で考えられる不登校の原因を詳しく見ていきましょう。
学校環境に関する要因
学校での経験や環境が、不登校のきっかけになるケースは少なくありません。例えば、いじめや仲間外れ、友達関係のトラブルは不登校につながる大きな要因です。いじめを受けたりクラスで孤立した結果、学校に行くことへの恐怖や不安が生まれます。
また、テストや成績に対する過度のストレス、理解できない授業内容の蓄積などが、学校への抵抗感を引き起こす可能性もあります。
さらに、教師の厳しすぎる指導または無関心な態度も、子どもの学校生活に悪影響を与えるきっかけの一つです。厳しすぎる校則や競争的な雰囲気が、一部の子どもにとってストレスになるケースも珍しくありません。
子ども自身の特性や状態
子ども一人一人の個性や特性も、不登校の要因となり得ます。例えば、内向的な性格やコミュニケーションが苦手な傾向にある子どもが「学校生活に馴染みにくい」と話すことも少なくありません。
また、ASDやADHDなどの発達障害がある子どもは学校の環境に適応することが難しく、不登校につながりかねません。慢性的な疾患や睡眠障害など、身体的な問題で登校が困難になってしまったとの声も聞かれました。
さらに、自己アイデンティティの模索や将来への不安など、思春期特有の悩みが不登校のきっかけになるケースもあります。
社会的要因
不登校の背景には、より広い社会的な要因も存在します。日本社会における学歴重視の風潮が、子どもたちに過度なプレッシャーをかけている可能性も否定できません。
また、オンライン上のコミュニケーションの発達で多く見られるようになったSNSを通じたいじめも、不登校になり得る大きなきっかけです。匿名やなりすましアカウントで瞬時に広範囲へ拡散されやすいSNSでのいじめは、物理的な暴力や言葉によるいじめと比べ、大人や教師には気づきにくい特徴があります。
なお、プラス面での社会的要因を挙げるとすれば、従来の「学校に行くのが当たり前」という価値観が変化してオルタナティブ教育の選択肢が増えているのも、不登校の増加に関連している要因です。
環境の変化
環境の急激な変化も、不登校のきっかけになる場合があります。転校で新しい環境への適応が難しくなったり、小学校から中学校、中学校から高校への進学時に新しい環境に馴染めずに不登校になるケースも少なくありません。
また、自然災害や新型コロナウイルス感染症のような予期せぬ事態が、子どもたちの生活リズムや心理状態に大きな影響を与え、不登校の要因になるケースもあります。
とはいえ、これらの要因は互いに複雑に絡み合っていることが多く、一つの原因を特定するのは困難です。また、同じ状況下でも、不登校になる子どもとならない子どもがいます。
重要なのは、不登校を「家庭の問題」や「親の責任」として片付けるのではなく、多角的な視点から子どもの状況を理解しようとする柔軟さです。そのうえで、子ども一人ひとりの個別の事情に応じた適切なサポートの提供が求められます。
不登校の子に対して親ができるサポートとは?
「親として何をしてあげたらいいのか…」そう悩まれる方も多いでしょう。不登校の子どもに親としてできる具体的なサポートの例を、以下にいくつかご紹介します。
安心できる家庭環境を作る
家庭は子どもにとって、安らぎを感じられる大切な場所です。まずは、学校に行けなくても子どもの価値が下がるわけではないことを伝えましょう。
親の立場としては「なぜ学校へ行きたくないのか」「どうしたら学校へ行けそうか」などを詳しく聞きたくなりますよね。しかし、子どもが不登校の話題を出したくない状況で根掘り葉掘り聞くと、精神的な負担を与えてしまうかもしれません。
「行きたくない日もあるよね」と寄り添いつつ、子どもが話しやすい環境を少しずつ作っていけるのが理想的といえます。「見放す」ではなく「見守る」イメージです。
子どもの気持ちを受け止め、理解しようとする
子どもが学校に行けない理由や気持ちを話し始めたら、批判や否定をせずに傾聴するのがポイントです。「そう感じるのは当然だね」「辛かったんだね」など、子どもの気持ちに共感する言葉をかけると、悩みや気持ちを安心して話せる環境が整いやすくなります。
また、子どもの気持ちは、言葉だけではなく表情や態度からも読み取れるものです。たとえ手に取るようにわかってあげられなくても「気持ちを理解しようとする姿勢」は子どもに安心感を与え、信頼関係を築く基礎となります。
生活リズムを整える支援
不登校が長期化すると、生活リズムが乱れがちです。なかには、昼夜逆転の生活になってしまう子どももいるかもしれません。しかし、不登校の子どもの生活リズムが乱れるのを、怠惰が原因だと決めつけるのは避けるべきです。
例えば、日中は周りの友達が学校で過ごす時間のため、学校へ通っていない自分を責めてしまいやすくなります。その罪悪感を避けたいがために、周りが活動していない夜中に起きていると安心するパターンもあるのです。
体内のリズムが、もともと夜型な可能性も十分あるでしょう。また、私たち大人も「もし自分の生活に仕事や家事がなかったら」と考えてみると、毎日決まった時間に起きて決まった時間に就寝するなど、規則正しい生活を自分できっちり管理するのは難しいかもしれません。案外、学校や仕事の決まりがあるからこそできているだけとも考えられます。
もちろん、不登校中も決まったリズムで生活できるのは大切です。しかし、昼夜逆転している子どもを責める必要はありません。
まずは「早寝早起きを欠かさない」ではなく「ひとまず12時までには起きる」「起きれなかった場合はゆっくり過ごす」など、気軽な目標から始めましょう。午前中に散歩やお買い物へ一緒に出かけたりするなど、外へ出る機会を作るのもおすすめです。
学習支援をする
学校に行けなくても学習の機会を確保しておくと「勉強が完全に遅れてしまう」といった精神的な負担の軽減につながります。担任の先生と連携し、学習進度や課題について情報を得ましょう。
前提として、不登校中の子どもに限らず、どのような勉強スタイルが向いているかは人それぞれです。フリースクールで学ぶのが向いている場合もあれば、通信教育や個別指導塾で学習支援を受けるほうがはかどるタイプもいます。
大切なのは、子どもに合った学習方法を探すことです。学習にプレッシャーをかけすぎないように、子どものペースに合わせ、無理のない範囲で進めてみましょう。
社会とのつながりを保つ支援
不登校の子どもは、どうしても社会から孤立しているように感じがちです。そのため、フリースクールや不登校の子どものコミュニティなどで同年代との交流ができるようにしてあげるのもいいでしょう。そういった場所が、安心して過ごせる場所になり得ます。
また子どもの興味関心に基づいた活動や習い事を見つけてあげるのもいいでしょう。できる範囲で地域のボランティア活動などへ参加すると「役に立つことができた」と自信の回復にもつながります。
専門家や支援機関の活用
子どもが不登校になっても「親の自分が何とかしなくては…」と抱え込む必要はありません。必要に応じて、専門家や支援機関の力を借りることも検討してください。
学校のスクールカウンセラーに相談すれば、不登校に関しての専門的なアドバイスを受けられます。地域の教育支援センターを利用し、学習支援や交流の機会を得るのも一つです。また、腹痛や頭痛、倦怠感など身体症状が発現している場合は、小児科医や児童精神科医の診察をおすすめします。
なお、意外と忘れがちなのが、親自身のメンタルヘルスケアです。「不登校の子どものサポートに親として集中するあまり、自分が体調を崩してしまった」とお話される方も少なくありません。
定期的に同じ悩みを持つ親の会に参加したり、自分自身のカウンセリングを受けたりすることもお考えください。
不登校の問題に完璧な解決策はありませんが、子どもの気持ちに寄り添い、適切なサポートを提供し続けることが、最終的には子どもの成長と自立につながるのです。
子どもの不登校は「長期的な視点」で対応を
不登校の問題は複雑で、親や家庭だけの責任ではありません。学校環境や子どもの特性など、さまざまな要因が絡み合っています。大切なのは原因の追及ではなく「これからどう子どもをサポートしていくか」という姿勢です。
同じ悩みを持つ親との情報交換や専門家のアドバイスは、新しい視点をもたらすかもしれません。不登校は子どもの人生の一時期に過ぎず、この経験を通して新たな強さや個性を見出すこともあります。
長期的な視点を持ち、子どもの成長を信じて見守り続けることが、親にできる最大のサポートです。
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