「若い女性を雇用しない」中小企業の経営者の葛藤と、子育て当事者の思い。求められる「異次元の少子化対策」の形とは
先日大きな話題になった、ある女性経営者の「若い女性は正社員として雇用していない」というツイート。ショッキングな内容とは裏腹に、経営者の苦しい本音も見えました。
今回は、「ソクラテスのたまご」が行ったアンケート調査、「『異次元の少子化対策』に求める具体的な政策」に寄せられた子育て当事者の思いと合わせて、今求められる「異次元の少子化対策」の形について考えていきます。
「若い女性を雇用しない」は特別な話ではない
「若い女性は正社員として雇用してません」という話題のツイートの内容は下記の通り。
批判覚悟ですが、私は、寿退社や産休や育休をされると困るので、若い女性は正社員として雇用してません。本音は雇ってあげたいし心苦しいのだけど、うちのような弱小企業では雇う余力がありません。こういうところに政府の助成金を出してほしいと思う。
@ensemble43530
このツイートをしたのは、大阪で2つの会社を経営する、弁理士の瀬戸麻紀さん。この言葉の背景には「小さな企業であるがゆえに、寿退職したり産休育休したりされると、人手が足りなくなり困る」という切実な思いが込められています。同ツイートには「本当は雇ってあげたい、心苦しい」という葛藤も。
経営する2社で約10人の従業員を抱える瀬戸さんはこのツイートについて、Webメディア「ENCOUNT」のインタビューの中で次のようにも話しています。
(前略)女性の社会進出を応援したいと思い、20代30代の女性を雇ったことがありました。しかし、それまで一生懸命、その子に仕事を教えて育ててきたのに、結婚を機に退職されてしまったり、産休と育休を取得した後に退職された経験があります。また、ツイートの意図とは逸れてしまいますが、30代の女性を雇った際は、子どもの風邪などで仕事を欠勤するので、その女性が休んだ際、その女性の業務の穴埋めで他のスタッフへの負担増加が半端なかったです
Webメディア「ENCOUNT」より引用
企業が子育て家庭や若い女性を雇いたいと思っても、会社の規模や経営状況では限界がある場合もあります。日本の企業の99.7%が中小企業であることを考えると、同じ悩みをもつ経営者は多いはず。
一方で共働きが当たり前の現代。就職し、経済的に安定した状態で子どもを産み育てたいと思うのは男女ともに当然のこと。これが叶わなければ、出産や結婚自体を諦める人も少なくないでしょう。
企業側の課題解決と社員の希望を同時に叶えるために、企業の人材確保に関する助成やサポートがもっと手厚くなるべきなのかもしれません。
「他の人にしわ寄せがいかないような支援」も必要
「ソクラテスのたまご」が実施したアンケートには、「産休育休中の社員の代わりに活躍している社員を一時金などで支えることも重要(30代後半・愛知県・女性)」「産休育休を使っている社員以外に何かサービスが行くような仕組みがあるといいのでは。(30代後半・東京都・女性)」という意見もありました。
子どもをもつ人ももたない人も納得して働ける環境でなければ、仮に産休・育休を取得したとしても、復帰後の働きやすさや居心地が変わってきます。こういった悩みは、時短で働く方も同じなのではないでしょうか。
「不在の穴を埋めてくれる社員へのサポートや支援」という面からも、少子化対策を考えていく必要がありそうです。
国民が求める、本当の「異次元の少子化対策」とは
ツイートについてネットでは大きく賛否が分かれましたが、少子化対策はより多面的に考えなければならない問題ということが改めて浮き彫りになりました。政府が打ち出す「異次元の少子化対策」は、こうした企業への支援も視野に入れて考えられるべきなのかもしれません。
アンケートでは、「母親に仕事と育児家事を押し付けないような環境づくり。休みたいとき(学校行事、災害時など)に気軽に休める環境づくり(30代後半・北海道・女性)」「女性が出産・育児・仕事をもっとらくに(すべて背負わなくても良いように)できるような体制づくり(30代後半・埼玉県・女性)」という、まさに社会全体で子育てを支える環境を望む声もありました。
子どもを産むことがゴールではなく、産んでからの生活も支えられるような「異次元の少子化対策」を期待したいですね。
<参考資料>
・中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果を公表します(中小企業庁)
・「若い女性は正社員として雇用してません」 女性社長が炎上覚悟の投稿 中小企業の切実事情(ENCOUNT)
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1991年生まれ、ライター兼編集。小学生向けファッション誌のほか、小学校教員向け専門誌の編集を経て、2022年にフリーに。小学校教育や性教育、10代のトレンドなどについて執筆している。夫と猫の3人暮らし。