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2020.10.01

いじめ相談員が語る、ネットいじめの特徴と対応策とは?親子の会話が予防への近道

LINEやTwitterといったSNSの台頭から、コミュニケーションの幅は広がっている一方、それらを使ったネットいじめが子どもたちの間で増えています。そこで今回はいじめ相談員である小野田真里子さんの監修のもと、ネットいじめの内容や特徴、家庭でできるネットいじめ予防策と対処方法まで解説していきます。

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監修者

小野田真里子さん国内航空会社のCAを経て、学習塾業界に従事。

2006年に「NPOいじめから子供を守ろう!ネットワーク」のいじめ相談員・いじめ防止指導員としての資格を取得し、活動を開始。以降、ネットや電話を中心にいじめ問題の解決を行っている。著書に『いじめ相談の現場から いじめられっ子を子供に持つ両親のための、いじめへの具体的対処法』(プラスワン・パブリッシング)

ネットいじめとは?

ネットいじめについての対応を解説する前に、まずはネットいじめの現状について一緒に見ていきましょう。

LINEやTwitterといったSNS、メールといったオンライン上で行われる、嫌がらせの言動や態度、誹謗中傷を指すネットいじめを指します。

対面いじめと異なり「匿名」でいじめを行うケースも多いネットいじめは、加害者の特定が難しく長期化しやすいのが特徴です。時として不特定多数の人たちに個人情報が拡散されることもあります。

文部科学省の調査(*)によると、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるネットいじめの実態は以下のような結果が公表されています。

【いじめの態様のうちパソコンや携帯電話等を使ったいじめ】

平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度
9,187件10,783件12,632件16,334件

以上の表の数値で示しているとおり、ネットいじめの発生件数が右肩上がりとなっています。このような動きを受け、小学校・中学校ともに外部講師を招いた授業でSNSの正しい使い方などを学ぶなどといった啓蒙活動が盛んに行われています。前述の文部科学省の調査結果報告において、実態は以下の通りです。

【インターネットを通じて行われるいじめの防止及び効果的な対処のための啓発活動の実施】

平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度
小学校66.0%73.1%77.2%82.0%
中学校76.0%81.7%84.0%87.4%

特に小学校において、啓蒙活動の実施率が上がっていることがわかります。

では、小・中学生に多いネットいじめの現状は、どのようなものなのでしょうか。小野田さんに寄せられた相談内容を交えながら、より詳しくネットいじめについて説明します。

(*)文部科学省|児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(平成27年度 平成28年度 平成30年度

ネットいじめ特有の特徴

ネットいじめはオンラインの特性上、対面いじめとは異なる特徴があります。そんなネットいじめの特徴について、小野田さんが指摘したのは以下の5点です。

匿名性が高く、加害者を特定しにくい

一つ目のネットいじめ特有の特徴として、対面いじめと比較すると匿名性が高く、加害者を特定しにくい点が挙げられます。

SNSやフリーのメールアドレスは、匿名で複数のアカウントを同時に持つことが可能であり、いじめが起きても誰によるものかがをユーザー側はすぐに特定できません。

加えて、24時間いつでもアカウントは削除可能。誹謗中傷メールやツイートが少しでも問題になれば、証拠隠滅としてアカウントを即時に消すユーザーも少なくありません。

そのため加害者を探し出すには、運営側に依頼して過去の履歴(足跡)をサーバー上で追跡するという手間を加えなければ、容易に判明できないのです。

手軽に行われやすい

匿名で行われることの多いネットいじめは、アカウントを手軽に削除(シャットアウト)できます。そのため「バレたらアカウントを削除すればいいや」と、安易な気持ちでいじめが行われやすい傾向があります。

LINEの場合は、そのやり取りのしやすさから、加害者側も気軽な気持ちでいじめを行いやすく「いじめてるつもりはなかったが、いつの間にかいじめになっていた」というケースも多いようです。

発見しにくく、長期化しやすい

ネットいじめは、LINEやメールなど第三者からは見えない場所で展開されるため、対面いじめよりも発見しにくいといわれています。

そのため「いじめが長期化しやすく、より深刻化するケースが多い」と小野田先生は指摘します。

いじめが繰り返され逃げ道がない

さらにネットいじめには、いじめが繰り返されやすく逃げ道がないという特徴があります。

インターネットが普及する前の対面いじめであれば、教師や親が気付きやすく、加害者と物理的に距離を取ることで、いじめが緩和される部分もありました。

一方でネットいじめは、ネットがつながっている環境であれば“24時間365日、いつでもどこでも”繰り広げられることが可能なため、逃げ道・逃げ場がありません。

それゆえ、学校以外の時間でも四六時中いじめに悩まされる可能性の高いネットいじめに対し、被害者側は精神的なダメージを抱えやすい傾向があります。

加害者と被害者の立場が逆転する

ネットいじめには、SNSやメールがあれば手軽に行いやすく、面と向かわないことからキツい言葉を発しやすいため、加害者と被害者の立場が逆転するという特徴もあります。

電気通信普及財団による研究(*)では「ネットいじめの加害と被害は相関関係にあり、(中略)ネットいじめの被害に遭った子の約3分の2が別の子のいじめに加わっている」(p.118)との報告が出ています。

このようにネットいじめでは、被害者が加害者に向かってやり返すことも少なくありません。

(*)公益財団法人電気通信普及財団|ネットいじめの実態とその抑止策に関する実証的研究

小・中学生に多い、ネットいじめの内容

日々子どもからのいじめ相談を受ける小野田さんのもとには、ネットいじめに関する相談も後を絶たないのだとか。小野田さんによると、ネットいじめの相談で圧倒的に多いのがLINEを用いたネットいじめで、ほかにもメールや、TwitterといったSNSが利用されているそうです。

では実際にネットいじめは、どのような形で繰り広げられているのでしょうか。

LINE

LINEは学生から高齢者まで幅広いユーザーが使う、メールよりも手軽に連絡できるツールです。一斉に配信ができるため、連絡網よりも利便性が良く、最近では部活動などの連絡手段として利用されることも増えているそう。

その一方、利便性の高さや複数の人が一つのトークルームを利用できる特性から、小野田さんに寄せられる相談件数で一番多いのがLINEによるネットいじめとのこと。LINEで実際に起きているいじめには、次のようなものが挙げられます。

仲間外れ

小野田さんによると、LINEいじめで圧倒的に多いのが「最初からトークグループに招待せず、グループからあえて仲間から外すパターン」だそう。

ほかにも仲の良い者同士でグループを作り、最初から特定の子を完全にスルーする目的で意図的に招待するケースもあるそうです。

無視

LINEいじめで次によくあるケースが「無視」。グループLINEでなくても、LINE上で友達になっても既読スルーという「無言の圧力」をかける場合もあるのだとか。

クラス全体のグループチャットで、特定の人物が発したLINE上の投げかけに全部無視するという陰湿なパターンも存在するようです。

集団いじめ

またLINEいじめは、仲間外れや無視だけがいじめとは限りません。主に学校で発生するリアルな集団いじめがLINE上でも発生しているそう。

特定のターゲットに向けて、グループ総出で誹謗中傷する流れにもなっている」と小野田さんは指摘しています。

なりすましメール

メールもLINE同様、連絡ツールとしてよく使われています。加えて今の時代、匿名でも無料で複数のメールアドレスを作ることができます。しかしその利便性がネットいじめの引き金にもなっていると小野田さんは語ります。

メールでのいじめでよくあるのが、同級生や架空人物になりすましてメールを送信する、いわゆる「なりすましメール」です。加害者を特定しづらいため、ストーカーのように執拗に相手に対し不愉快な気持ちにさせるメールを送信し続ける例もあるのだとか。

Twitter

Twitterは140字以内と短いつぶやきを発信してコミュニケーションを楽しむSNSであり、実名でなくてもアカウントが開設できる特徴があります。

原則としてTwitterのアカウントは13歳以上しか開設ができないため、小学生の利用はほとんどなく中高生の利用が目立ちます。

実際に東京都教育庁の調査(*)によると、中学生の32.5%、高校生になると72.5%がTwitterを利用しているといいます。

そんなTwitterを活用したネットいじめは、どのような内容なのでしょうか。

(*)東京都教育庁|平成30年度 「児童・生徒のインターネット利用状況調査」 調査報告書(概要版)

不特定多数に画像・動画の拡散

小野田さんいわくTwitterによるいじめは「不特定多数に自分の嫌な画像や動画を拡散されられるケースが多い」と指摘。

メールアドレスさえあれば、一人で複数のアカウントを保有できるTwitterでは、しばしば「裏アカウント」と呼ばれる、メインで用いるアカウントとは別のアカウントを開設する子も少なくありません。

こうした裏アカウントを用いて、普段仲良くしているクラスメートや部活仲間の画像や動画を拡散し嫌がらせをする例もあるそうです。加害者が特定しづらいTwitterの特性の特性を悪用したネットいじめだといえるでしょう。

DMで集中攻撃

TwitterなどのSNSには、個々に連絡のやり取りができるDM(ダイレクトメッセージ)機能が備わっています。そんなDM機能を使い、加害者が被害者に向けて心無い言葉などを送り、嫌がらせをするパターンも少なくないのだとか。

被害者がブロックしても、加害者はアカウント名を頻繁に変えて攻撃し続けるという“なりすましメール”に似たいじめもあるそう。

子どもたちの身近にあるLINE、TwitterといったSNSで繰り広げられているネットいじめ。子どもたちがネットいじめの被害者/加害者にならないために、家庭でできることは何なのでしょうか?

わが子が被害者/加害者にならないために 家庭でできるネットいじめ予防方法

手軽に行われやすい上に、見えにくく深刻化しやすいネットいじめ。親の知らないうちにネットいじめが加速している例も少なくありません。

とはいえ小野田さんは「いじめの火種が小さいうちに対処ができれば、ネットいじめは沈静化しやすい」とコメント。

ネットいじめの被害者、加害者どちらにもならないために、家庭でできるネットいじめ予防方法を小野田さんが教えてくれました。

スマホに触れた前後の子どもを普段から観察しておく

一つ目に紹介する予防方法は、スマホに触れた前後の子どもの様子を普段から観察すること。ネットいじめを受けている被害者は、スマホ利用頻度が低くなりやすいそう。

子どもがスマホをチェックした後の様子で落ち込む・不機嫌になる・スマホをあまり見たがらない・着信音をオフにするといった普段と違う様子を見かけた場合、ネットいじめを受けている可能性があるかもしれません。

一方、加害者側はネットいじめが始まるとスマホ利用頻度が高くなりやすい傾向があるようです。

家庭の通信料金(特にパケット料金)については注意深くチェックしてみるのも良いかもしれませんね。

ルールを設定する

親子間でスマホ利用に関するルールを決めることは、いじめ予防にもつながることもあります。子どものスマホにフィルタリングやペアレントモニタリングを設定したり、使う時間を決めたりすると、スマホ本来の正しい使い方やマナーも身につくでしょう。

親子間でスマホ利用のルールを設けることで、ネットいじめの早期発見にもつながりやすいと小野田さんは指摘します。

家族間でもネットコミュニケーションに注意する

ネットでは、お互いの表情が読み取りづらく、言葉だけで相手の気持ちを捉えるしかなく、しばしば勘違いが起こりやすいもの。その勘違いからネットいじめに発展することも少なくありません。

ネット環境が整っている今日でも、いじめを防ぐ第一歩は相手のことを考えながらコミュニケーションを行うことです。

小野田さんの家庭では、日常の何気ないLINE上のやり取りで娘さんが「!(絵文字)」を多用していたそう。しかし絵文字の「!」は人によっては威圧的な印象を抱きやすく、怒っているようにも捉えられかねません。

そこで小野田さんは「絵文字の『!』がたくさんあると、怒っているように感じられたよ。○○(娘さん)は怒ってなかったとしても、そう感じる子もいるかもしれないから「!」をたくさん使うのは気をつけた方がいいんじゃない」と話したそうです。

言葉だけのやり取りだと、どうしても誤解が生じやすいものです。上記のように子どものLINEなどのやり取りで何か気づいた点があれば、親がアドバイスするのも良いでしょう。

「こうした親子のコミュニケーションを繰り返すことで、子どもは自分が書いた言葉を客観視できるようになります。スマホ越しの相手に配慮ができるようになると、友達同士のコミュニケーションも円滑に行われやすく、ネットいじめの予防策として、一定の効果はあると思います」と小野田さんは話します。

わが子がネットいじめに遭った場合の対処方法

では実際にネットいじめに遭遇した場合、どのようにネットいじめに対応するのが良いのでしょうか。

ただしネットいじめに遭っても、なかなか親に言い出せない子も多いはず。スマホを持った子どもに寄り添いながら、親ができるアドバイスも合わせて紹介します。

まずはトラブルの証拠を保存しておく

子どもがネットいじめの被害に遭ったら、トークや投稿のやり取りをスクリーンショットで証拠として収めるよう促しましょう。仮に加害者がアカウントを削除してアカウント名を検索できない状況になっても、スクリーンショットがあれば加害者が特定しやすくなります。

「子ども同士のちょっとしたケンカでしょ」と安易に考えていると、ネットいじめはより深刻化する可能性があります。少しでも不安がある場合は担任の先生やいじめ相談員、スクールカウンセラーなどに相談してみましょう。

必要に応じて通報機能を活用

トラブルの証拠を保存すると同時に、しつこい誹謗中傷などのにネットいじめには、通報機能を活用しましょう。

通報機能はLINEやメールアカウントを始め、TwitterなどのSNSにも備わっています。

Twitterでは、ツイート画面の右上の「▽」部分をクリックし、「ツイートを報告」で対応可能です。

ひどい場合は警視庁や法務省の相談窓口に相談を

ネットいじめがあまりにもしつこい、あるいはいじめから恐喝に発展しているという場合には、警視庁や法務省の相談窓口を利用するのもおすすめです。

【参考:ネットいじめに関連した国内の主要ないじめの相談窓口】

・警視庁|ヤング・テレホン・コーナー/電話番号:03-3580-4970

※受付時間:平日8:30~17:15は心理職及び警察官が対応、夜間および土曜・日曜・休日など宿直の警察官が対応

・法務省|子どもの人権110番/フリーダイヤル:0120-007-110

※受付時間:平日8:30~17:15
※強化週間中は受付時間を延長 詳細は公式ホームページを参照

親子間のコミュニケーションがネットいじめを防ぐ

LINEグループで特定の人物を仲間外れや無視(既読スルー)だけでなく、別の人物になりすまし嫌がらせのメールをしつこく送信するといった、ネットいじめ。

増加しているネットいじめを予防する鍵は、普段から子どもの様子を観察することと、スマホ利用ルールをきちんと決めておくことです。

このような働きかけが、ネットいじめから子どもを守ります。親子でネットの利用について話し合う機会(時間)を作り、ネットいじめを防止していきましょう。

取材・編集:ソクラテスのたまご編集部

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小田 るみ子

都内在住の編集ライターであり、一男一女の母。13年間の専業主婦生活を経て編集ライター業に転身。子どもは小学校・中学・大学受験の経験者。これまで子育て・教育・ライフスタイル・働き方を中心に、数多くの記事企画や執筆を手掛ける。記事に携わることで、自分の知識が増え、視野が広がることに喜びとやりがいを感じる日々を過ごしている。今の関心事はSDGsとサスティナブル。

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