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ソクたま会議室
2022.01.24
テーマ: ウィズコロナ時代の教育・子育てを考えよう

コロナがなかったら…と思うことは多かったけれど選択の余地が拡大したのは大きな収穫!/昆虫ハンター・牧田 習

牧田 習

東京大学大学院修士課程に在学中の、昆虫ハンター・牧田 習さん。「三度の飯より虫捕りが好き」という彼がコロナ禍で一番つらかったのは、意外にも大学のリモート授業だったそう。オンライン授業という教育スタイルが日常化しつつある状況に関して、現役の学生目線で考えてくれました。

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大学院入学から修士課程修了まで、リモート授業がスタンダードに

僕が、東京大学大学院に入学したのが2020年4月。1度目の緊急事態宣言が発令された頃で、入学後最初の1ヵ月は大学側もリモート授業の準備体制にありました。それから少しずつリモート授業が始まり、修士課程の2年間はリモート授業がスタンダード。授業とゼミは全てリモートです。研究はできるだけリモートで、用事があれば大学に赴くというスタイルでした。

当初は、初めての出来事で大学側も大変だったと思います。電波の状況が悪くて、授業やゼミに出席できないという場面もしょっちゅうありました。ゼミであれば先生がLINEで連絡してくれるのでコミュニケーションは取れますが、大勢のいる授業だとなかなかそれもかないませんから。

今は大学の敷地内に入るためには当日、健康であることを証明しなければなりません。コロナ前は大学関係者でなくても誰でも入れましたし、図書館で本を借りることもできました。けれど、今は大学関係者のみ。それも、証明がないと入校できないんです。これまでは“開かれた学校”でしたが、閉鎖されてしまったという印象があります。

大学だけではなく、閉ざされてしまった場所は他にもたくさんあるのではないでしょうか。

自分本位では動けない…日常がいかに恵まれていたかを痛感

この2年の間、何度も「コロナがなかったらな…」と思う場面がありました。外出や旅行ができないこと、リモートによる不便さ。他の学生の皆さんが感じていたのと同じように、相当なストレスを感じていました。

稼働できない仕事は多くありますし、大学院での学業や研究もできることが限られているので、できる範囲のことをするしかない。調査で地方に行くことはできないし、むろん趣味で虫捕り旅行なんて論外。

緊急事態宣言が明けて感染者が少ない状況であっても、以前のように気軽に「虫捕りに沖縄や海外に行こう」などとは思えません。

僕は大学院で研究をしながら、昆虫ハンターとしてタレント活動も行っています。もし自分が感染したら、仕事でお世話になっている方や家族に迷惑をかけてしまうと思うと、自分本位な行動は絶対にしてはいけないと思いました。

当たり前が当たり前じゃなくなるという経験をしたことで、これまでの環境がとても幸せなことだったんだなと強く思いました。

“当たり前”が失われたことで心にダメージを受けた友人も…

教育現場でリモートが導入されたことに関しては、やはり良い面と悪い面があると感じています。

メリットとしては、やはりどこからでも授業を受けられることではないでしょうか。例えば、コロナが収束してからの話になりますが都内を離れて虫捕りに出掛けていても滞在先から授業を受けることができますよね。国内だけでなく、海外にいても可能です。移動時間の負担がないため、その時間を有効に使うこともできるでしょう。また、録画や録音といったオンデマンド活用ができるのも実際に授業を受けて感じた利点です。

けれど約2年、リモート授業を経験して感じたデメリットもあります。研究中にちょっと先生に質問したいことがあっても、すぐに大学に行くことができない。入校するのにも都度、手続きが必要で気軽に大学に行けないというのは不便に感じました。

リモートでの人間関係構築には高いコミュニケーション能力が必要かもしれない

そして、僕の中で一番のデメリットだったのは友人がつくりにくいことでした。東大で会う東大生より、仕事先で会う東大生の方が多いくらい(笑)。同じ研究室の仲間とも、交流が全くないんです。

コロナ禍で“オンライン飲み会”という新しい交流法が生まれましたが、これもあまり得意ではなくて…。画面越しだと、相手との温度感がつかみにくいんです。

“温度感”は、就職活動にも影響があったと思います。リモートでの面接や説明会が多く、いざ働いてみたら「想像していた会社と違った」と感じて転職した友人がいました。

周りの友人とも話していたのですが、ずっと同じ作業を同じ場所で行っていると、気持ちが暗くなって精神的にしんどくなることもあるんです。外出できない、誰にも会えない、誰からも肯定されない…。結果、大学院を辞めてしまった人も少なくありません。

僕が小学生や中学生、高校生の頃にこの状況だったら、対応できていなかったかもしれません。大学院生で、リモートの授業も10人前後の少人数だから何とかできていますが、それが数十人単位となるときっとしんどくなっていただろうなと想像できます。言葉の伝達はできても雰囲気が伝わらない、目と目が合わない中で“空気を読む”というのは、かなりのコミュニケーション能力を強いられることなのではないでしょうか。

選択できる未来を開拓していく社会に

学校をはじめ、社会全体がリモート主体になってしまうのは「違う」と感じます。便利ではあるけれど、これがずっと続いていくと人間関係の希薄化につながるのではないでしょうか。僕が友人関係を構築しにくいと感じたように、直接会ってコミュニケーションを取る方が好きだという人は多くいるでしょう。

また、年齢の低い子どもほど注視する必要があると思います。大学生は学校に行けなくてもアルバイト先やサークルなど、何かしら他の社会とのつながりがあるものです。しかし、子どもたちは学校が家庭以外で唯一の社会という場合がほとんど。学校の友達や先生との直接的な触れ合いは、とても大事だと思います。

もちろん、学校でのオンライン授業導入はとても素晴らしいこと。病気やけが、不登校などさまざまな理由で学校に行けない子どもにとっても希望のツール、新しい選択肢になるでしょう。

今までよりも選択の余地が広い社会になっていくことが、新しいスタイルを発見したメリットを生かす道なのだと思います。

牧田 習

昆虫ハンター。1996年、兵庫県宝塚市生まれ。オスカープロモーション所属。2015年北海道大学 総合教育部入学後、理学部に転部。特技は三線、小学5年生時に取得したダイビングのライセンス資格を所持。現在、昆虫ハンターとして「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)水曜レギュラー出演の他、「3度の飯より昆虫が好き」(WEBザテレビジョン)にて現在連載中! その他、 テレビやラジオなど各メディアでも活躍中。2020年4月から東京大学大学院に在学中。

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