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ソクたま会議室
2022.01.07
テーマ: ウィズコロナ時代の教育・子育てを考えよう

変化し続ける学校で教員に求められているのは「挑戦し続けること」

二川佳祐

二川佳祐

日本中が新型コロナに翻弄されていた2021年夏の終わり。教育現場で教師たちは何を思い、オンライン授業の導入などどのような取り組みが行われたのでしょうか。都内公立小学校教諭でICT推進リーダーをつとめる二川佳祐さんに、当時の様子から今に至るまで、アフターコロナの教育について聞きました。

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新学期直前、教育現場で起きていたこと

2021年8月、日本では首都圏を中心に新型コロナウィルスの爆発的な感染が続き、1日あたりの感染者が5000人を超える日もありました。

自治体から正式に通達がきたのは、2学期が始まる9月1日の5日前。『緊急事態宣言解除までは給食ありの午前授業。感染不安などから登校を見合わせる児童には、放課後等にオンラインによる学習支援やホームルームを実施する』という内容でした」と、当時を振り返るのは、都内公立小学校教諭の二川佳祐さんです。

学校のICT活用を推進するリーダー(ICT推進リーダー)である二川さんは、自治体から通達を受けて、2学期からどのように教育を進めていこうと考えていたのでしょうか。

「まずは情報収集をしようと思い、ほかの自治体の対応を調べました。夏休みを延長する自治体、全員自宅でオンライン授業を行う自治体、登校か自宅でオンライン授業か選択可能な自治体などさまざまで、『自治体によってここまで違うのか』と驚きました。

また、自治体の対応がどんな内容であれ、『自主休校をされるご家庭は一定数出るだろう』ということは予想していました

そんな中、二川さんが重要視したことは、“オンラインでどう学習を進めていくか”ということではなく、教員と児童、児童同士、教員同士、教員と保護者がオンラインでつながることが“日常化”されることでした。

「コロナ感染が拡大し、子どもたちはもちろん、保護者の方々、そして私たち教員とその家族など、誰がいつどうなるかわからない状態の中でも“つながれる安心感”があること。また、教室にいない子どもが授業を受けられるだけでなく、教室に教師がいなくても授業ができる環境をつくることが大切だと思いました」

そこで、ICT推進リーダーである二川さんが行ったのは、教員同士がGoogle  Meet(※1)でつながったり、Google Jamboard(※2)で会話したりなど、教員の経験値を上げていくことでした。

さらに、全教員に向けて下記のようなことをプレゼンしたといいます。

「オンライン授業を行う際は、最初から完璧を目指すのではなく、『まずは5分でも10分でも、教室で目の前にいる子どもたちとGoogle  Meetをつないで授業をすることから始めましょう』と伝えました。

たとえ失敗しても、試行錯誤する姿を子どもたちに見せることに意味があることを全教員と共有し、『こうしなくてはいけない』『ちゃんとした準備をしなくてはいけない』といった固定観念やプレッシャーを良い意味でときほぐしていきたいと思ったんです」

校長も二川さんの考えを後押しし、「職員室全体を覆っていた緊張感がほぐれ、みんなで同じ方向を見ることができたように思います」

※1=Googleが開発したビデオ会議アプリ ※2=電子ホワイトボード

職員一丸となりオンライン授業を“練習”

その後、新学期が始まり、授業は午前中のみという日が続いた9月は、毎日夕方の時間帯に教師同士でGoogle  Meetをつなぎ、「今日子どもたちはどんな様子でしたか?」「何か困ったことはありましたか?」など近況を報告し合ったり、端末やアプリの活用方法の相談にのったりなどを行っていたそう。

「強制ではなく任意参加スタイルにしましたが、毎日参加してくれる教員も少なくありませんでした。続けるうちに、『みんなで力を合わせてできることを一緒にやっていこう』というムードが高まっていっただけでなく、毎日授業以外でもICTにふれることで教員の個々のスキルが高くなり、ICTへの苦手意識が和らいだような気がします」

<二川さんの著書はこちら>
「GIGAスクール時代 公立校こそもっと使おう!」をコンセプトに、GIGAスクール構想で多くの自治体で導入されている教育機関向けソリューション「Google for Education」の公立小中学校での利活用法について、講義形式でわかりやすく解説された入門書です。

今後の課題は日常への戻し方

10月以降、感染状況は落ち着き、オミクロン株拡大の懸念はあるものの、学校生活は日常を取り戻しつつあります。

「運動会などの学校行事は規模を縮小したり、保護者の観覧を学年ごとに分けたりしながら開催しています。行事を楽しんでいる子どもたちの笑顔を見ていると『学校は友達と一緒に何かを作ったり、触れ合ったりする場所なんだ』ということを改めて実感します」

まだ制限が残る中、二川さんが受け持つ学年での総合的な学習で、地元で収穫された野菜を子どもたちが『食べたい』と言い、校長の許可をもらってみんなで食べたことがあったそうです。

「シンプルに“ゆでて塩をつけて食べる”だけでしたが、おいしそうに食べていました。

その流れで、子どもたちが、地元の野菜を使ったメニューを考えて給食の献立に取り入れてもらおうとGoogleスライドを使って栄養士にプレゼンをしたんです。いくつかのメニューは採用され給食に登場しました。

こんな状況下だからこそ『願いはかなっていくものだ』ということを、子どもたちにもっと体感していってほしいと思いました。

感染の不安が完全になくなったわけではないので時期尚早ですが、今後は、感染予防のためにできた制限をいつどのように元の学校生活に戻していくのかがアフターコロナにおける教育現場の課題になっていくと思います」

挑戦する姿を子どもに見せていきたい

未だ収束の見えない新型コロナウィルス。今後もまた教育現場に予期せぬ対応を迫られることがあるかもしれません。

「2020年春、突然の一斉休校でなすすべがなかったあの頃と比べると、GIGAスクール構想の前倒しで一人一台端末が行き渡り、いつでもどこでもオンラインでつながれるようになったのは大きな進化ですよね。

変わらない部分もたくさんありますが、新型コロナウィルスとGIGAスクール構想の影響で、学校は今、大きく変わろうとしています

先行き不透明で将来の予測が困難なVUCAの時代のなか、私たち教員も新しいことに挑戦し続けることが求められていますし、そんな姿を子どもたちに見せていくことが大切だと思っています。挑戦には失敗がつきものですが、それも含め、子どもたちとともに学び、成長していきたいですね」

また、教育が大きく変化していていく中、挑戦が必要なのは学校や子どもたちだけではないかもしれません。

「子どもたちの成長には、保護者の方々の理解や協力は欠かせません。今後は保護者の方々も子どもたちと一緒にITリテラシーを高めていけるような取り組みをともに行えたらいいなと思っています」

<取材・文/長島ともこ

二川佳祐

二川佳祐

都内公立小学校主任教諭。東京学芸大学卒業卒。教壇に上がる傍ら、「教育と社会の垣根をなくす」「今までの自分を超える」をビジョンとするコミュニティー「BeYondLabo」、Googleを学ぶ教員グループ「GEG Nerima」を運営。2021年9月『いちばんやさしい Google for Educationの教本』(インプレス)を出版。2児の父親

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