教室は可能性の宝庫! 子どもたち同士の可能性の化学反応を起こせるのは先生しかいない/コンサルタント・コーチ 白土詠胡
白土詠胡
企業でのコンサルティングから夫婦関係のコーチング、食育事業など幅広い分野で活躍する白土詠胡さん。仕事柄、人との関係性について客観的に見ることを意識している白土さんでも、わが子のことになると客観的でいられないこともあるそう。一人の親として、「いい先生」について話してもらいました。
大人の役目は、子どもたちの学ぶ環境を整えること
どんな先生が「いい先生」だと感じるかは、人それぞれ異なるものでしょう。また、昔と今とでは「いい先生」に対する考え方もだいぶ変わっているのではないでしょうか。けれど、今も昔も前提として変わらないのは、“子どもは自分で学ぶ”ということだと思うんです。
親は子どもに「教えてあげなくちゃ」「何かしてあげなくちゃ」と思うことは多いものですが、それは大人のエゴなのかもしれません。
私自身は子どもたちを学ばせるのではなく学ぶ環境を整えること、それが先生や親をはじめとする大人の役目ではないかと思っています。
先生が持つ“客観的なまなざし”が子どもを導く!
先生の役目として大きいのが、親にはない“客観的な視点”ではないでしょうか。これは確信を持って言えますが、親はわが子のことになると絶対と言ってもいいほど客観的にはなれません。
一方、先生の客観的でフラットな意見は親として頼りになりますし、子どもたちにとっても親にはない影響力を持ちます。
私が思う「いい先生」は、客観的な視点で子どもをしっかりと観察し、意図的に良い化学反応を起こせる人。
わが家の例で言えば、うちの子はとても負けず嫌いで、負けてしまうと「嫌だ、もうやらない!」と逃避してしまう傾向にありました。けれど、子どもが通う算数教室の先生がその気質を理解し他の子どもたちとゲーム感覚で競わせたり、子ども自身の得意なことを認知してくれたことで、今ではゲームに負けても、その悔しさを次のチャレンジにつなげるようになってきました。
わが家の経験からすると「いい先生」とは、客観的な視点で子どもをしっかりと観察し、意図的に良い化学反応を仕掛けてくれる人なのではないかと思うのです。
当たり前ですが、子どもも一人の人間です。親以外にさまざまな関係性があります。
親には見えていないけれど先生には見える、先生しか知らないということはたくさんあるのではないでしょうか。それを引き出し、つないでくれる先生が「いい先生」だと私は思います。
妥協が許されない“先生”は、本当に大変な仕事
見方を変えると先生という職業は、常に妥協できないサービスを提供する大変な仕事です。しかも、1クラス30~40人ほどの子どもたちを一人で平等に見なければなりません(物理的に無理でも、それを求められる仕事です)。
子どもの背後には、いつも保護者がいる。「今日は、ちょっと寝不足でしんどいな」「体調が万全じゃないな」と思っていても、いざ学校に入れば手を抜くことなんてできませんよね。例えて言うなら子どもと親という“お客さん”は常に本気なわけです。正直、疲れてしまう日もあると思います。
けれど、こんなにも大変な仕事であるにもかかわらず、何となく今の社会の中での先生への風当たりはとても強いように感じます。
先生の教え方や資質を問うような議論が非常に多く、ちょっとした発言が切り取られて批判にさらされることもありますよね。それゆえ、先生たちも親や社会の顔色をうかがわざるを得ないことも少なくないのではないでしょうか。
親も社会も、先生に求めすぎてはいけない!
例えば、大学を卒業したばかりの若い先生はまだ結婚もしていないし子どももいない人がほとんどです。そんな状況でも、たくさんの子どもたちとその保護者と関わる必要があります。
経験していないことがあってもプロフェッショナルとして、現場に立つ。その点に関しては他の職業と何ら変わらないと思いますし、その辛さ・大変さは誰しも経験があるのではないでしょうか。
親は、先生と向き合うときに“わが子のことがかわいいあまり”に我を忘れてしまいがちです。
先生はフラットにお話されていても、親は何だか自分の子どもが蔑ろにされているように感じることもあるかもしれません。私自身そう感じるときは、気のせいだと思うようにしています(笑)。それぐらい、親は子どもへの愛情が強く、冷静さを欠くのだと思います。
もし万が一、先生の対応に期待にそぐわないことがあったとしても、過度に責めたり求めたりするのは違う気がします。
“いい先生だから”、“信頼できる先生だから”信頼するのではなく、まず信頼するからこそ、信頼しあえる先生との関係性が産まれる気がするのです。
先生は、わが子に真剣に関わってくれる貴重な大人の一人。一緒に子育てに関わってくれる存在として、信頼できる関係性を築きたいと思っています。
また、誤解を恐れずに言うと、先生が全て答えを持っている必要はないと思いますし、持てないと思います。親と先生が一緒に子どもと関わり、先生が子どもを大切に思ってくれること、何より、他の職業と同様に、先生自身が先生という仕事をもっと楽しめることが一番大事なのだと思います。
<取材・執筆 ソクラテスのたまご編集部>
つなぐカンパニー代表。筑波大学出身。大学卒業後、大手人材サービス企業に就職した後、(株)リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所研究員を経て、コンサルタント・コーチとして独立。大手企業~中小企業まで幅広く各種研修・コンサルティングを行いながら、夫婦関係やパートナーシップ・家族のより良い関係性をテーマに活動中。小学生の娘と保育園児の息子の育児にも奮闘中! 【つなぐカンパニーお問い合わせ eikoshirato@tunagu-all.jp】 サステナブルな社会を目指し、オーガニックな野菜の生産・販売などを行う(株)いかす(https://www.icas.jp.net/)にてワーキングマザー向けの食育イベントなど実施している。