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ソクたま会議室
2021.05.12
テーマ: いい先生ってどんな先生?

子どもに寄り添い、心に学びの火をともす“いい先生”は日本中にいます/先生の学校学長・三原菜央

三原 菜央

三原菜央

元教員で、自身が抱いていた教育に対する問題意識から、新たな教育をつくるために必要な知識や情報を多様な人たちと学び合うコミュニティ「先生の学校」を作った三原菜央さん。これまでに、のべ1万人以上もの先生と接してきた三原さんが考える「いい先生」とは。

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先生たちが先生以外の人たちと学び合える「先生の学校」を作った理由

大学時代、栄養士の資格と家庭科の教員免許を取得し、卒業後8年間、保育系の専門学校の教員として働いていました。

教員の仕事はとても楽しく、日々やりがいを感じながら生徒たちと接していたのですが、ある日一人の男子生徒から「将来結婚して家族を養うことを考えると、保育関係の仕事はなかなか給料が上がらないから、資格をとって保育園などに勤めたとしても続けられる自信がない。一般企業に勤めたい」と相談されたのです。

その言葉を聞いたとき、頭が真っ白になりました。それまで何でもわかっているような顔をして、保育専門職につくための知識や保育系の就職先について教えてきましたが、保育以外の企業や社会全般について、的確に答えることができなかったのです。

教員という立場であるにもかかわらず、本当の意味で、生徒の役に立つことができていない自分に気づいたときでした。

それまで教育現場でしか仕事の経験がなかった私は、それを機に、“社会”を実際に経験する必要性を感じて教員の仕事を辞め、ベンチャー企業に転職。企画や広報などさまざまな業務を経験すればするほど感じたのは、教育現場と一般社会との乖離(かいり)でした。

そもそも、学校(教育の場)は、社会の中で自分らしく生きていくために⾃分の強みを⾒つけ、磨いていく場所であるはずです。しかし、実際には、学校は教員と生徒、教材が教室に存在すれば成り立つ“閉鎖的な空間”になりがち。何よりも、教育のキーパーソンである先生が、実は社会と密接につながっていないという現状に違和感を感じたのです。

先生たちが、学校の中では学べなさそうなことを先生以外の人たちと学び合うことができ、新たな教育をつくるために必要な知識や情報を多様な人たちと共有できる場を作りたい。

こんな気持ちから、2016年に「先生の学校」を立ち上げました。

「先生の学校」とは

教師だけでなく、教育に興味がある人なら誰でも参加できるコミュニティ。会員向けの講座やワークショップを開催するだけでなく、会員向けの雑誌「HOPE」を年3回発行。参加することで新しい教育のカタチを一緒に探究、創造していくことができる。
先生の学校

先生が人生を楽しんでいると、子どもが生き生きする

「先生の学校」は、会社勤めとのパラレルワークで始めたプロジェクトでしたが、イベント開催などの活動を進めていくうちに分かったことがありました。

学校では、高度経済成長時代から続く、画一的で均質的な“一斉指導”の文化が未だに色濃く残っていて、現場では「ほかのクラスと合わせなければならない」などの理由から自己選択も自己決定もできなくなっていたのです。

このような状況の中で、“自分がやりたい教育を諦めてしまっている先生”が非常に多く存在していました。

私も教員経験があるのでわかるのですが、“生徒は先生を映す鏡”なんですよね。

先生自身が自分の人生を楽しく生きていたり、前向きな姿勢で自己変革を繰り返していると、その姿が生徒にも反映され、生き生きしてくるんです。先生の存在が子どもに与える影響って、ものすごく大きいと思います。

先生の学校で開催されているイベントの様子

 “いい先生”は、日本全国にたくさんいます

「先生の学校」の活動を通し、これまでのべ1万人くらいの先生にお会いしてきました。

印象に残る“いい先生”を2人あげるとしたら、1人は、静岡県の中高一貫校の美術の先生です。

72歳の女性なのですが、現場にこだわり「子どもたちがワクワクしたり興味関心を抱いたりするきっかけをどのようにつくるのか」を常に考えている方でした。

使えなくなった音楽室の太鼓を美術の授業で使うなど、モノを大切にしながら教育に取り入れる姿勢にも感動しました。

もう一人は、福井県の県立高校で海洋教育に取り組まれている男性の先生です。

海洋教育の実践を希望して教育の現場に入り、生徒とともに14年かけて宇宙食のサバ缶の開発に成功。2020年の冬、その先⽣の取材に伺った際に国際宇宙ステーションにいる宇宙⾶⾏⼠の野⼝さんから朝電話があったんですよと聞いて、びっくりしました(笑)。

その先生がすごいのは、生徒を対象に自分が実践した教育についてのアンケートやインタビュー調査を行い、その結果を鑑みながら、どのような教育が子どもたちにとって主体的で深い学びになるのか“を考えつつ教育手法を進化させているところです。論文も発表されている彼は教育者であり、研究者でもあるのです。

2人に共通しているのは、”子どもたちに徹底的に寄り添い、心に学びの火をともす方法を常に模索しているところ“です。

ほかにも、日本全国にいい先生はたくさんいらっしゃいます。彼ら(彼女ら)を多くの方に知ってもらうことも、「先生の学校」の大きな役割のひとつであると考えています。

いい先生とは「子ども一人ひとりの違いを受け入れてくれる先生」

「子ども一人ひとりの違いを受け入れてくれる先生」というのも、いい先生なのかなと思います。

たとえば、運動が苦手な子がいたとしても、マイナス点に着目するのでなく、その子の別の強みを見つけて伸ばそうとしたり、学校に来られない子に対しては「その子にとって、学校という場所は苦しい場所なんだ」ということを理解した上で、そこから何ができるのかを考えたりという先生。

違いを認め、受け入れることはすごく難しいことだと思うんですけど、子どもたちにとって「先生に理解してもらえている」「見守ってもらえている」という安心感はとても大切だと思います。

それから、自分自身の成長実感を感じさせてくれる先生もいい先生ですよね。子どもひとりずつに合わせた進度で“伴走者”となり、子ども自身が「前よりできるようになった!」と感じ、学び本来の喜びを感じさせてくれる先生もすてきですよね。

「先生の学校」の会員に届けられる雑誌「HOPE」。全国各地で活躍する先生たちに取材を行っています

一人でも多くの先生に元気になってもらいたい

「先生の学校」の会員数は、現在約1500人。約8割が先生ですが、ほかにも会社勤め、教育に興味のある主婦、学生、保育士などさまざまな方がいます。

立場や経験年数によって、教育に対する悩みや知りたいことは異なると思いますが、参加することで、「まずは小さな一歩でも踏み出してみよう」と感じられる、“マインドセットを支えるコミュニティ”であり続けることが大切だと思っています。

小中高合わせると、日本には約100万人の先生がいます。一人でも多くの先生に「先生の学校」を知っていただき、現状を変えられずに苦しんでいる先生たちと、同じ地域の先生同士をつなげて“県人会”的な場を設けたり、ドキュメンタリー映画を一緒に観て対話したりなど、新しい取り組みに挑戦していきたいですね。

「先生の学校」に参加していただくことで、一人での多くの先生に元気になってもらいたい。そして将来的には、公教育の場が誰にとってもベストな学び場になればいいなと思っています。

取材・執筆/長島ともこ

三原 菜央

三原 菜央

1984年岐阜県出身。大学卒業後、8年間専門学校・大学の教員をしながら学校広報に携わる。その後ベンチャー企業を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる『先生の学校』(https://www.sensei-no-gakkou.com/)を、2016年9月に立ち上げる。2020年3月にボーダレス・ジャパンに参画し、株式会社スマイルバトンを創業。

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