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ソクたま会議室
2020.05.27
テーマ: 学校ってなんだろう

好きや得意を極めたいなら、まずは学校で“脳みそ”を鍛えよう!/タレント・パトリック ハーラン(パックン)

パトリック ハーラン(パックン)

アメリカでは学生として、日本では講師や親として”学校”を見てきたパックンさんにとって、勉強する意味、学校の意義とはどのようなものなのでしょうか。二児の父親として積極的に子どもの教育に取り組むスタイル、賛否沸騰中の“9月入学制”についても話してくれました。

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“学ぶこと”を学ぶのが学校。生きるための強いスキルが身につく

もし、子どもに「どうして学校に行かなきゃならないの?」と言われたら…。「法律で決まっているから」「義務教育だから」と言っても子どもは納得しないでしょう。

僕は、学校は脳みそを鍛える場所だと思っています。社会的なスキルや集団生活、倫理道徳、思考力といったもの全てを鍛えることで脳は強くなります。それを、子どもの価値観や興味のあることに関連付けて答えを導くと良いのではないでしょうか。

習い事でもお絵描きでも何でもいいのですが、例えばサッカーに熱中している子なら学校とサッカーの練習を結びつけます。「君はサッカーが上手くなりたいから、練習しているんだよね? でも、スポーツにしても一番の武器になるのは、耳と耳の間にある“脳みそ”。学校で脳みそを鍛えて人間として強くならないと、周りに負けるしポテンシャルも満たされないよ」って。

学校は脳みそを鍛えられるだけではなく、行くことで得られるものもあります。

お金に興味のある子なら、金銭感覚を使って話してみても良いでしょう。学校を卒業するのとしないのとで得られる生涯収入の違いについてを、分かりやすく解説します。「君が好きな1冊300円の漫画が1万冊買えるよ。ディズニーランドの5000回分のチケットが手に入るよ。学校にこれから10年通うだけで、そのくらいの経済力が身につくよ!」と話すことができます。

弁護士になりたいなら法律を学ぶ、医師になりたいなら医学を勉強するといったように「〇〇になりたい」という明確な目標や夢があるのであれば、そのための知識や技術を身に着けるために専門の学校に行きますよね。でも、将来の目標ややりたいことが分からなくても学校は行くべきです。

一般教養というのは“学ぶこと”を学ぶこと。どのように情報を収集し処理して、それをまた出力できるかを習得できるんです僕が学んだ比較宗教学という分野も、普段はなかなか使わない知識です。でもその興味のある分野を4年かけて勉強したおかげで、新しい分野に触れる時のスキルを身に着けることができました。これが学校で学ぶ一般教養の意義、どんな勉強をしても結局は“勉強の勉強”なんです。

現代の暮らしや仕事のほとんどは、脳みそが支えています。脳みそを鍛えておけば、やりたいことが見つかった時にたとえ分野が違ってもそれを世界に出せるはず。学校で培うコミュニケーション能力や情報収集処理能力を身に着けることができれば、何だってできるんです!

日米の学校教育の良さを子育てにも生かしていきたい

僕が通ったアメリカの学校、娘が通った日本の公立小学校を見た中で感じるのは、どちらにもたくさんの長所とほんの少しの欠点があるということ。欠点に集中すると良いところを忘れてしまいがちなので、僕は良い部分をきちんと認識するように心掛けています。

日本の学校の長所

  • 集団生活がしっかり学べる。
  • 世界トップレベルの学力を誇る。
  • 基本的な倫理道徳がしっかりと身に着く。

アメリカの学校の長所

  • 社会人として必要とされる提案力・コミュニケーション能力といったスキルが身に着く。
  • 飛び級などもでき、能力の高い子はさらに伸ばしてもらえる。
  • 学校教育の選択肢の幅が広いので、自分が必要とする教育に応じてもらえる。

僕も二人の子どもの父親です。勉強をチェックしてあげたり学校で学んでいることを教えてもらったり、頑張っています。日本とアメリカの学校教育の良い部分を子育ての参考に、わが子には“空気も読める、発信もできる”人間になってほしい。日米問わず、世界各国で通じる人間になってほしいというのが父親としての願いですね。

子育ては本当に大変ですが、子どもほど面白いものはないしこれだけ報われる作業もないんじゃないかな。だからこそ、関わらないのはもったいない! もちろん、僕は恵まれた立場や環境にいるというのは分かっています。朝から晩まで会社に行っているお父さんたちは、大変です。帰宅して子どもが寝ていたら勉強を見る時間はないし、週末は勉強ばかりに時間を割きたくないですよね。でも、だったら父親との時間は学校以外の教養にかけていいと思うんです。「ビーチ行こうよ」「ドライブ行こうよ」「ボードゲームやろうよ」と関わることで、親が子どもに与えられることはたくさんあります。

“9月入学制”には、日本の教育に必要な柔軟性が問われている

一斉休校の措置を機に“9月入学制”についての議論が持ち上がっていますが、僕は前向きに考えて良いと思っています。

アメリカやヨーロッパの大学と同じスケジュール、つまり9月入学制という、ほぼグローバルスタンダードに合わせることで世界と行き来しやすくなるのであれば海外留学のチャンスが増え、子どもたちの学びもより充実させることにつながるのではないでしょうか。

「僕は海外留学しないから、関係ない」と考える子もいるかもしれません。でも、今の日本の4月スタートだと海外から日本に来る人は仲間入りしにくい。日本の企業の一括採用も、海外にいる優秀な人材を逃していることだってあります。教育は一人だけのものじゃない。皆の教育、国の教育なんです。

もちろん、今のこの状況で9月入学制にいきなり変えるというのは難しいというのはよく分かります。日本では卒業・入学の季節といえば桜がシンボル。それがカブトムシやセミになりますからね、違和感があるのも当然でしょう。

ずっと続いてきた4月入学制は、日本の学校制度における伝統的文化ともいえるでしょう。しかし、時代によって見直すべき部分や変革すべき部分が異なるのは当たり前のこと。これからの日本の教育に必要なのは、今までの“当たり前”に固執しない柔軟性ではないでしょうか。教育制度に柔軟性がなければ、子どもたちにも柔軟性は求められません。

今年は4月スタートのまま、1年のカリキュラムをそのまま終える。でも卒業と学年の修了は来年の6月、7月にズラしてもいいんじゃないでしょうか。学校が休校していたこの期間の学習を夏休みを削ったり祝日を飛ばしたり、1日の学校時間を伸ばすことで補うことはできますが、それこそスケジューリングが大変です。だったら、今の学年を6月~7月まで少し延長してもいいんじゃないかと思うんです。そうすれば、来年の9月から次の学年へとスムーズに移行できる。9月入学制が採用されて10年経ったら、きっとそれが普通になっているはずです。

パトリック ハーラン

アメリカ合衆国出身・ハーバード大学比較宗教学部卒業。大学卒業後に来日し、お笑いコンビ「パックンマックン」を結成。芸人やタレントとして活動する他、コメンテーターや講演会への登壇、執筆業など活躍の場は多岐に渡り現在は 福井ブランド大使、東京工業大学非常勤講師も務める。2児の父親でもある。【パックンマックン公式Twitter:@packunmackun】

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