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ソクたま会議室
2020.05.25
テーマ: 学校ってなんだろう

学校は“人生の問題集”の1ページ。子の悩みを親が分かち共に解決していこう/いじめ相談員・小野田真里子

小野田真里子

いじめ問題の相談員・防止指導員・アドバイザーとして活動する小野田真里子さん。多くの学校が休校措置を取っている今、いじめの相談は減り、改めて「いじめの現場は学校だ」と認識しているそう。いじめの問題、子どもの悩みという観点から学校についての思いを話してくれました。

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世界中を席巻しているコロナウィルスの感染拡大防止のため、3月から休校となっている学校が多いせいか、いじめの相談は減っています。やはり、いじめの現場は学校なのだということを改めて認識しています。

休校の影響により“学習時間の差”、“運動不足”、“ストレス、心のケア”等、さまざまな問題が発生しています。今まで当たり前にあった“通学”の機会がなくなったこの機会に、学校について考えてみたいと思います。

学校には“社会で生きていくための基礎訓練”という意義がある

私自身も子育て中であり、学習塾や教育機関での指導、いじめ相談を受ける中で「どうして学校に行かなければならないの?」という質問はよく受けます。そのような時は、

国民の義務だから(憲法の話)

将来のため

など一通りの話をしますが、基本的には“人生は一冊の問題集”という話をします。

人間は一人では生きてはいけないけれど、他の人と助け合うためにも自分が人に与えられるものを身につけなければならない。そのための基礎訓練を学校でしているのです。

その中で、学校に行く/行かないは自分で決めることが大事であり、“問題集”なのでつらいから逃げるという選択肢を安易には選ばない方が良いと話します。

いじめ被害者の場合は、“避難”という方向で話をします。現代のいじめは、卑怯かつ巧妙で“心を確実に壊していく意図”が見え隠れするものがあります。大人に置き換えると、“悪意を持って自分を害しようとしている人達の集団の中に身を置くのか”という問題になります。

大人であれば転職、または司法判断に委ねるという手段をとれますが学校、特に義務教育ではすぐにその手段をとることが難しいのが現状です。ですから“学校に行きたくない”理由を、まずは丁寧にヒアリングします。そして、その場から“避難”という手段をとることが適切だと判断した場合は「行かなくて良い」という選択肢を与えます。転校やインターネット学習で出席認定ができるという情報や選択肢があることも伝えます。この場合に大事なのは“避難”、つまり人生にとって必要な積極的な判断だということを子どもに理解してもらうこと。“いじめに負けた”という立場をとってしまうと、どうしてもその後のその子の人生にとって“負け犬根性”がつきまとうようになってしまうためです。

子どもの悩みは、親が子育ての目標を考える好機に

子どもに何かしらの問題が起きた時、親にとっては“子育ての目標を考える良い機会”だと考えています。

あなたにとって、子育ての目標は何でしょうか。

子育ての目的は、やはり親にとっても“人生は一冊の問題集”だと考えますが、目標となるともう少し具体的に考える必要があります。子育ての目標は“どうすれば子どもが思いやりを持った強い大人になれるか、その方法を探すことが親の大きな目標”ではないでしょうか。

自分のことができて礼儀正しくても、人が苦しんでいるのを見て放っておくなら、親は何のために子育てをしてきたのでしょうか?

トップクラスの成績を修めても、その知性を人を操るために使ったら、それは子育ての目標を達成したことになるのでしょうか?

適応能力が高いがゆえに、不正な状況にも適応してしまっても良いのでしょうか?

“どうすれば子どもが思いやりを持った強い大人になれるか”ということを軸に考えれば、子どもが「学校に行きたくない」といった場面でも、共に現状を認識し子どもの思いを受け止め、将来を考えるというプロセスが大事だということが理解できると思います。なぜなら、そうしてもらった子どもは、誰かが困っていたら“そうするのだ”ということを学ぶからです。そして、そのプロセスを経るうちに、子ども自身が自分にとって何が大事なのかをつかんで適切な選択をしていくものです。親はそれを信じ、共に人生の問題集を解いていくことが大事だと思います。

 一つ、事例を紹介しましょう。

発達障害の傾向があり、それが原因でいじめを受け、中学ではほとんど不登校だった女子生徒がいました。発達障害についての研究は、海外の方が進んでいます。その母親自身も発達障害の傾向があり、イギリスの学校を卒業したので「この子は海外に行った方が良いのではないか」と考えていました。しかし、女子生徒は母親への反発があり英語も嫌いで英語の勉強自体に抵抗していました。母親は、娘の発達障害についての理解を深めながら何に興味があるのか、何に傷ついているのかを共に考えて過ごしました。そしてある日、英語の歌やドラマに興味を示した機会を見逃さず「イギリスの高校に行ってみない?」と勧めたところ、「行く」という返事だったのでイギリス留学を決めました。現在、その子は日本の大学を卒業し、自分の経験を生かして発達障害や学習障害が原因で学習が進まない子どもたちへの英語指導にあたっています。

子育ては十人十色、いじめ問題や不登校も十人十色です。だからこそ、親が“子育ての目標”をしっかりと軸に持つことが大事であると考えています。

小野田真里子

国内航空会社のCAを経て、学習塾業界に従事。2006年に「NPOいじめから子供を守ろう!ネットワーク」のいじめ相談員・いじめ防止指導員としての資格を取得し、活動を開始。以降、ネットや電話を中心にいじめ問題の解決を行っている。著書に『いじめ相談の現場から いじめられっ子を子供に持つ両親のための、いじめへの具体的対処法』(プラスワン・パブリッシング)

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