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ソクたま会議室
2020.05.26
テーマ: 学校ってなんだろう

学校はリーズナブルに不快や不自由を体験できる場所/コンサルタント・コーチ・白土詠胡

白土詠胡

ソクたまでは、「専門家が教える 夫婦関係のコーチング」の連載を担当するコンサルタント・コーチの白土詠胡さん。普段、社会に出た大人を相手に研修を行う白土さんは、”学校”をどのように考えているのでしょうか。二児の母親としての視点も参考にしてみてくださいね。

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不快や不自由の経験が、未来の楽しさを獲得する

学校とは何なのか…。この問いを見た時、「私が自分の子どもに聞かれたら何と答えるか?」と置き換えて考えてみました。前提として、人によって学校から得られたことは違うでしょうし、その認識もさまざまだと思います。しかし、あえてわが子に一言で伝えるなら私は“不快や不自由を体験できる場所”だと説明します。

例えば家のリビングやネットの世界では、嫌であればパッと抜けられたり離れたりすることができます。一方、学校は授業中、嫌なことがあってもいきなり教室から抜け出したり漫画を読むことは難しいでしょうし、誰かが先生に怒られていたら付き合わなくてはいけない…起きていることに対しての関係性を遮断しにくいのです。つまり、半ば強制的にプチ不快・プチ不自由を体験することができます。

ではなぜ、不自由や不快をわざわざ経験する必要があるのか。大人であれば「成長するためだよね」とすぐに理解できるでしょう。しかし、それでは子どもは納得しません。子どもは面白いことに興味を持ちます。あえて、不快や不自由を体験する意味なんて通じません。

子どもが体験する不快や不自由が、実は“世界が広がること”、“もっと楽しいことがある”につながっていくことを理解するには、大人である親が寄り添い、根気よく対話していくことが不可欠だと考えています。

例えば子どもがハマっているゲームに対し、「ゲームばかりしちゃダメでしょ!」なんて叱った経験はありませんか? どのようなゲームかを理解していないのに、頭ごなしに否定するのは無理があるしフェアでない気がします。

わが家の息子はMinecraft、通称「マイクラ」というゲームにハマっています。平仮名・カタカナを読めず、攻略本を読めません。「文字の勉強なんて面倒くさい!」と嫌がる息子に、私は「こんな建物、一人で作れたらかっこいいよね!」と、不快の先にある楽しいこと、面白いことを少しずつ説明しています。

今では、もっとゲームのためにと文字の勉強をするようになりましたが、やはり幼児にとって学びは大変な作業。一人でやらせるのではなく、ゲームをする傍に座り「なんて読むんだっけー?」と声をかけながら学びのサポートをしています。このやり方は、わが家が偶然にうまくいっただけかもしれません。

しかし、子どもが経験をしていない・知らない“楽しみ”に親が根気よく“お誘い”していくことは、好奇心を育てるうえでとても大切なことだと思っています。ゲームもYouTubeも遊びや子守の道具として見ることもできますが、親の観察や関わり次第ではその子の学びのツールとしても十分機能すると思うのです。

とはいえ、子どもと話そうにも学校生活に嫌な思い出を持っている人も多いでしょう。しかし、どんな学生活だったとしても全ての経験が今の自分を作っています。嫌だった経験が社会に出て役に立ったというのは、大人なら誰しも経験したことがありますよね。

好きなことをしているだけでは得られない“プチ不快・プチ不自由”が溢れている学校だからこそ、自分を形づくる豊かな経験をしているともいえます。

生徒会長やリレーの選手でなくても、素晴らしい経験を無条件にさせてくれるのが学校です。むしろ生徒会長やリレーの選手になれなかったからこそ、悔しさや痛みを知ったりその体験が社会での活躍につながったりということも多々あります。 学校やクラスの状態によっては不登校も選択肢の中にあると思いますが、こんなにドラマが溢れているリーズナブルな場所は他にないように思います。

もちろん、家庭でも不快なことはあるでしょう。しかし、もともと信頼関係のある家族間での出来事は、他人が関わる不快とは種類が違います。外の社会で起きた不快の方が、よりシビアですよね。

子どもからすれば、親や家庭は休息の場、外界(不快)から守ってくれる繭のようなものどんなに生意気なことを言ってきても、ふてくされても、成績が悪くても(笑)、学校生活を本人なりに全力で体験しています。家庭は、子どもが安心して「ただいま!」といえる場所であることを忘れてはいけないように思います。

日本においては、小・中学校は義務教育です。いろいろな意味でリーズナブルな教育制度だと思います。しかし、矛盾するようですが学校は子どもが育つうえでの選択肢の一つであり十分条件ではありますが、必要条件ではないようにも思います。

学校は多くの人にとって有意義なものだと思う反面、大人である私たちは子どもを既存の枠にとらわれず、もっと大らかに見守る必要があるようにも思うのです。

子どもは可能性に溢れており、自分とは違う環境を生きています。環境が激しく変わる昨今、私たち親も思考のアップデートが求められているのかもしれません。

私自身、“子育ては親育て”を肝に銘じながら子どもと向き合っていきたいと思います。

白土詠胡さんの連載はコチラから!

専門家が教える 夫婦関係のコーチング

白土詠胡

つなぐカンパニー代表。筑波大学出身。大学卒業後、大手人材サービス企業に就職した後、(株)リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所研究員を経て、コンサルタント・コーチとして独立。大手企業~中小企業まで幅広く各種研修・コンサルティングを行いながら、夫婦関係やパートナーシップ・家族のより良い関係性をテーマに活動中。小学生の娘と保育園児の息子の育児にも奮闘中! 【つなぐカンパニーお問い合わせ eikoshirato@tunagu-all.jp】  サステナブルな社会を目指し、オーガニックな野菜の生産・販売などを行う(株)いかす(https://www.icas.jp.net/)にてワーキングマザー向けの食育イベントなど実施している。

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