ソクたま会議室
2019.02.06
テーマ: どうして勉強させなきゃいけないの?

脳科学からみた勉強をする意義と子どもの本能に合った学び方

吉田たかよし

吉田 たかよし

「貧乏でも生きていければいい」。そう子どもに言われたら、あなたはなんと答えますか? 日本では憲法で「国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされており、最低限の収入と公的扶助で生きていけるかもしれません。では、なぜ勉強をするのでしょう。勉強に悩む数多くの親子を見てきた医師の吉田たかよしさんに話を聞きました。

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人間の脳は真っ白なキャンパス

―「勉強は自分の人生に必要がない」と話す子どもに吉田先生はなんと声をかけていらっしゃるのでしょうか?

 

私は医師なので、精神論ではなく医師としての範疇で話をすると、脳の機能だけみれば人間は必ず勉強しなきゃならないわけではありません。でも脳を育てることは絶対に必要です。

 

脳は、真っ白なキャンパスのようだといわれていて、生まれてきた後にさまざまなことを体験したり、両親や友達といった自分と違う人間、環境との相互関係を利用したりして脳が発達します。

 

つまり、人間の脳は生まれたままだと真っ白なキャンパスのままで何の役にも立ちません。例えば、生まれたての赤ちゃんをそのままほったらかしても、人間らしく生活するための活動なんてできませんよね。本人が納得する人生を歩めるように脳に育てていくことが必要で、本来は特に教育をしなくても本能的に脳を育てていけるはずなんです。

 

―しかし、今は教育は必要とされ、脳を育成するために勉強をしていますよね。

 

それは、人間の脳が原始的な社会で生きていくことを想定してできているからです。人類の歴史が約20万年としたら、牧畜と農業が始まったのが約1万年前。約19万年は勉強なんて必要がなかったわけです。

 

当時は、生きるために狩猟が必要でしたが、誰かに「生きていくために狩猟をしなさい」と言われたわけではありません。本能的に狩猟を行って脳を育成していたんです。

 

しかし、今の文明社会では、本能からかけ離れた脳の育成として勉強を行っていかなければなりません。そこで、私は、「本能的な脳の遺伝子プログラム」と「現代社会で必要な脳の育成」をつないで、本能的に無理のない形で勉強していけるようお手伝いをしています。

 

 

子どもの本能に合った勉強法とは?

―子どもにとって本能的に合った勉強法とはどんなものでしょう。

 

うちのクリニックでは、家での勉強は基本的に禁止しています。だって男の子は、狩猟本能があるわけですから、本能的にずっと座ってなんていられません。なのに、それをジッと椅子に座らせて、勉強させることがそもそも子どもの脳に合っていません。

 

ですから、私は受験勉強であってもできるだけ座りこまずに気候のいいときは外に出て勉強をしてもらい、雨の日は部屋の中をぐるぐる歩きながら勉強してもらっています。知識の一方通行は子どもの脳には合いません。子ども中心で発見してもらったり何か感じてもらったりという勉強の仕方を教えています。

 

それでも、勉強が楽しくなっていかなかったら、それは学習の仕方が間違っているんです。楽しくなるように、あの手この手で考えていかなければなりません。合格・不合格が明確に出る受験もひとつの手なんですよ。狩猟だって成功、失敗で明確に結果が出ますよね。人間の脳には、結果が見えないものに努力をする機能はついていませんから。

 

その点、よく考えられているのがゲームです。ゲームは、脳科学を取り入れて子どもの脳に合った仕組みになっています。

 

―では、知育アプリなど勉強できるゲームは、子どもの脳に合った勉強法になるのでしょうか?

 

悪くはないですが、結局は製作者の舞台で踊らされているだけということを忘れてはいけません。ゲームをやったからそれでよしではなく、子どもが“こういう知識を得るためにこのゲームのここをする”というように賢く利用することが必要です。

 

とはいえスマホを取り上げるのも難しい時代です。AIが実装化されるのは、遠い未来の話ではありません。2030年、2050年の社会の需要に合わせた脳を育成していくためには、スマホに依存せず子ども自身が主体となってスマホを活用していくことが必要です。

 

 

保護者の古い価値観を押し付けないこと

―AIとの共存時代なんて今の大人が小中学生だった頃とは違う世界の話のようですね。

 

親御さんも人間力が問われています。今がどういう時代なのかという認識がうまくできておらず、目先の成績が上がればいいという誤った考え方で子どもを育てていても時代が求める脳を育成することはできません。

 

まず、親御さんは自分の体験が過去のものだと知ってください。自分の学生時代の経験をもとに子どもの勉強法を考えるのは意味がありません。昔の勉強の仕方や方法論を子どもに押し付けようとしているのは根本的な間違いです。今は4、5年で社会が変わる時代ですから。

 

―過去ではなく未来をみながら勉強(脳の育成)というものを考えていかなければなりませんね。

 

すべての方に申し上げていますが、0点の親御さんはいないです。みんな50点以上を絶対取れている。なぜなら、お子さんは日本語しゃべれていますよね。親が教えるから子どもが話せているんです。言語というのは、脳の本能的な部分にすごくマッチした形で親から子どもに伝えることができているんです。

 

それに比べて高度な情報っていうのは、親から子どもに伝えるということは、はるかに難しいことです。我々は今、子どもの脳を育てることが凄く困難な時代を生きているということは確かです。

 

特にスマホを中心とした情報ネットワークが社会を支配し、人間を支配していくという所まできています。その中でどう子どもの脳を育てていけばいいのか、答えはまだ出ていません。ただ、勉強について考えるのであれば、目の前の点数を上げることが目的ではなく、子どもが生きてくための知恵、社会が求めている脳の機能を高めていくことが目的であるという前提でお子さんと向き合ってほしいですね。

 

吉田たかよし

吉田 たかよし

医学博士・心療内科医師。灘中学、灘高校、東京大学工学部卒業。東京大学大学院(生命科学)修了。北里大学医学部などを経て、東京大学大学院医学博士課程を修了。現在、脳科学と学習医学を活用して受験生を合格させる心療内科「本郷赤門前クリニック」院長を務める傍ら学習カウンセリング協会の理事長として、脳機能やメンタルトレーニングを応用した勉強方法の指導・普及に努めている。著書も多数手がけており、最新著書に「脳科学と医学からの裏づけ! スマホ勉強革命」(青春出版)がある。

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